やはり俺の実力至上主義な青春ラブコメはまちがっている。 作:シェイド
ところどころおかしいところがありますので、指摘してくださると嬉しいです。
今回は葛城と綾小路に眼鏡八幡をお披露目するだけの回です。そうだと言ったらそうです。
なお、この作品はハーレムではありません、よ?勘違い(させているのは私ですが)しないでくださいね?
八幡「よ、よう」 清隆「…誰だ?」
『心というものは、それ自身一つの独自の世界なのだ。―――――地獄を天国に変え、天国を地獄に変えうるものなのだ』
これはイギリスの詩人、ミルトンの代表作『失楽園』の一文である。
楽しく毎日が過ごせるかどうかは、それぞれの各個人の心掛け一つで変わってくる。この世の天国か地獄かは、個人個人の気持ちの有りよう次第だと訴えているのだが、それについてはとても理解できる。
どんな出来事だろうと、俺が楽しいと思えば楽しいのであり、つらいと思えばつらいことなのだ。ならば、俺がどう思うかによって出来事に対する気持ちが変わるのはごく普通のことだろう。
しかし、今の俺が置かれている状況、これはどう思うべきなのだろうか。
「あ……んんっ♡はっ、あんっ♡気持ちいい~♡」
「にゃあああ♡ああっ、ん、んん……!」
「……」
目隠しをした状態で、俺はベットスパを受けていた。
……左右を星之宮先生と一之瀬に挟まれて。
これは、天国と呼ぶべきだろうか?それとも地獄と呼ぶべきだろうか?
そもそもどうしてこうなったのだろう……
***
豪華客船スぺランザ。
外観も施設も充実しており、一流の有名レストランから演劇が楽しめるシアター、高級スパまで完備されている。一般的庶民の俺からすれば一生関わりのなかったはずのものだ。
これを学校の旅行で使用するんだから、日本政府も太っ腹である。もし今家族と連絡を取っていいのなら、即座に自慢しているところだろう。
朝四時半には学校に集まり、五時にはバスに乗車。東京湾に着いたかと思えば、この客船に乗せられて今に至るというわけである。
「……で、何の用だ坂柳」
『つれないですね比企谷君。私は一人で寂しく寮の部屋にいるというのに、もう少し優しくできないものでしょうか』
「お前相手に優しさ?無理無理、俺の優しさは8割が彩加に、残り2割が椎名に注がれている。お前に渡せるものは残ってないんだ」
『相変わらず通常運転で安心しました。もしバカンスに気を良くして、優しくしてあげるとか言い出したら即座に電子掲示板に写真を投稿し、私があなたに捨てられたと書くところでした』
危なすぎる……何故坂柳との会話はここまで神経を尖らせてやらないといけないんだ……。
「おま、それはやめようね?未だに、お前に対して俺が迫ったとか誤解されるようなことを言ってくれたせいで一之瀬に文句言われてるんだからな」
『それは申し訳ないです……でも事実ですよね?』
「いや、抜けてるところがあるから。写真を没収したかっただけだから」
『そういうことにしておいてあげましょう』
本当にそうなんだが……まあ、なんでもいいや。
ここまでくれば理解しているだろうが、今回の豪華客船による旅行に坂柳有栖は参加していない。
……参加できないと言った方が正しいだろうか。
坂柳が参加
……今までに分かっている情報を整理しただけでも確実に何かがあることだけは間違いない。
例えばだが、無人島のペンションが島にある山の頂上に作られており、クラス対抗で一番早くペンションに辿り着くなんでもありの競争……なんてことも考えられる。
運動前提で考えられるところは、坂柳の情報提供に感謝するのだが、だからといって暇つぶしに相手をしろと言うのはきつい。
「……」
「……」
「……」
だってこれ見られてるんだよ?内容まで聞くのはプライバシーの侵害だと文句をつけたら、近くの物陰からこちらを見つめているのだ。ちょっと可愛いなと思ったのは内緒だ。
……写真は撮れたし、今度四人のグループに貼って辱めてやろう。日頃の仕返しだ。
「んで、俺は今回、何をすればいい」
『いい心掛けです。この調子で私の駒として死に物狂いで働いていきましょう』
「いや、違うから。嫌々だから。神室と同じだから」
『真澄さんはあれで結構可愛いのですが……まあいいでしょう。そうですね、おそらく無人島では私と通信をすることが出来なくなると思われます。そのため橋本君や神室さんと連絡を取ってください』
「悪いが確約は出来ない。お前らとの繋がりを黙っていたせいで、クラスメイトに見張られててな……」
『何をやっているんです。もっとしっかりしてください』
「いや、他でもないお前のせいなんだけどね?プールで爆弾発言しまくってたお前のせいだからね?」
『身に覚えがないですね。比企谷君は記憶能力が欠如しているのではないですか?』
「……切るぞ」
『写真、貼っていいんですね』
「……やっぱり切るのやめた」
『そういうところ、面白いので私は好きですよ』
「はいはい。で、そろそろ具体的に何をすればいいか言ってくれ。後ろで見つめてきていた奴らが少しずつ目力を上げてきてるから怖くて仕方がない。急げ」
「…………」
「…………」
「…………」
ついに彩加まで怒ってる顔しちゃってるよ。一之瀬と白波についてはもはや何も言うまい。
『しょうがないですね……今回、Aクラスは葛城君が仕切っています。ですので、今回Aクラスの結果がよくなければよくないほど、彼の権力と勢力は低下していくでしょう』
「……つまり?」
『BクラスとしてAクラスを追い抜いてください』
「……は?待て、それはいくらなんでも無理があるだろ」
現在のAクラスのポイントが1034clなのに対し、Bクラスは660cl。実に374ポイントも差がついているのだ。
五月当初の差が340だったことから、Cクラスの揉め事と中間考査と期末考査で、結局のところさらに差が開いてしまっている。
それをどう、追い抜けと……?
『ふふふ……さあ、どうでしょうか。橋本君たちにも動いてもらいますが、それだけでは覆らないでしょう。期待していますよ比企谷君。それでは』
「あ、おい!ちょ、待て……!くそ、あいつ切りやがった」
最悪だ。というか坂柳が最低だ。俺が切ろうとしたら脅しかけて来る癖に、俺に対しては切るなんて……もうあいつからの電話には出てやらん。
いや、でも出なかったらその時点で写真バラまくとかやりそうだ……出るしかないな(白目)。
「さて、どうしたもんかね……」
俺がこれからの行動を少しばかり考え始めたところだった。
「比企谷君、随分と長電話だったね~坂柳さんのこと嫌いとか言ってたけど、嫌いな相手とそんなに電話するんだ?比企谷君は偉いなぁー?」
しまった、こいつらのこと忘れてた……。
「そうだよ!嫌いとか言いつつ楽しそうだったよ?」
嘘だろ……俺のM疑惑がどんどん信憑性を増しているじゃないか……もうちょっと嫌な顔を作るようにしよう。って、作らなきゃ出来ないのかよ。
「八幡、坂柳さんと僕……どっちが大事なの?」
それはもちろん彩加に決まってる。だけど……彩加からと坂柳からの電話。どちらに出るかと言われたら……涙を流しながら坂柳を選ぶ(強制)んだろうが……。
「彩加が大事だ」
「な、ならいいけど……///」
あ、口からつい滑っちゃった。
「さすが比企谷君……!」
うわ、白波さんちょっと目が凄いことなってるって!ここまでキラキラした瞳……入学時に俺と彩加のやり取りを見て向けていた視線と同じですね……コイツもブレないよなぁ。
「せっかくの皆での旅行なんだよ!確かにただの旅行だとは思えないけど、今はこの客船を満喫すべきだよ!」
「そうそう!」
「電話ばっかりしちゃ駄目だよ八幡!」
「彩加、それだと俺が坂柳と電話したがっているように聞こえちゃうから……違うからな、断じて違うから。脅されていなければ関わらないと言い切れるぐらいには嫌いだからな」
「「「……」」」
あれ?なんかすごい疑われているが……坂柳のことが嫌いなのは事実だが、会話や掛け合いが少し楽しいと感じている俺がいるのも事実。あ、俺Mだわ。もう認めよう……。
「あっ、ここにいたのね~」
「星之宮先生?」
ついに俺がMであることを認め、弱めのMか強めのMかの考察に移ろうとしたところで、星之宮先生が現れた。
……嫌な予感がする。
「何してるの~?他の子たちは色んな施設を回ってるのにー」
「比企谷君がさっきまでAクラスの坂柳さんと長電話していたんです」
「おい!」
一之瀬!!この先生にそんなこと言ったら駄目だろうが!また揶揄われるネタが増えてしまった……逃げていいかな?
「あら~そうなの!もしかして坂柳さんと恋仲になっちゃった?」
「違いますのでそんな恐ろしいこと言わないでください。想像しただけで地面にひれ伏す俺とそれを見下ろす坂柳しか浮かんでこないので」
「でも比企谷君ってMじゃない?坂柳さんとは病気の関係で何度か話したことあるけど、あの子はSもSだよー?相性ばっちりじゃない!」
「なんで俺がMであること前提なんすか……」
「でも比企谷君…」
「うん、私たちから見ても…」
「は、八幡!僕は八幡がMでも友達だからね!」
嘘だろ……こいつらにまでMだと思われていたなんて……彩加の言葉が今は痛いです。
「それに、十股してる比企谷君なら選び放題でしょ~?」
「なんでアンタそのネタ知ってんだ……」
「この学校の風紀を守るために、必要最低限の監視はしているのよ。私の名前があるって言われて、何だろうって見たら比企谷君と付き合ってることになってるんだもん。びっくりしたよー?」
「俺が何かしたわけじゃないんですけどね……」
おそらく、この学校に慣れてきて余裕が出てきた一年生がそういうネタを探していた時、俺が椎名と堀北と読書をしているところから、この三人と出かけることで女子を変えては色んな所に出没する奴みたいな認識に変わり、Bクラスの誰かが星之宮先生との関係(誤解)を漏らしてしまったせいで食いつきが強まった、ってとこだろうな……。
坂柳と神室、小橋に網倉に関しては完全にこじ付けであるため大体が無視していたとしても、一度そういう話が広がるだけでとりあえずヤバい奴認定されているのだろう。
あ、綾小路は俺のことを前々から変人だと思っていたんだし、今更だろう。でもアイツに変人扱いされるって相当だよな……少しだけ俺と同じ、いや、綾小路的には俺より変人らしい高円寺と話してみたくなるな。
……変人度二位って全く嬉しくねえな。
「それで、星之宮先生は何か用ですか?」
「そうそう!一之瀬さんちょっと借りてくね?話したいことが……そうだ、比企谷君も連れて行っていい?」
一之瀬か。クラスの代表だし、星之宮先生が呼び出すのは夏休み前までの総括をするためか……?つーか、ついでとばかりに俺も連れて行こうとしているなこの教師。
「いや、俺はいらんでしょ。一之瀬で十分でしょうが」
「八幡?どういうこと?」
「
「星之宮……先生?」
少しだけ、雰囲気を変えた星之宮先生。
……天使が怯えてる!?こ、このビッチ何してくれてんだ!
「そっかー、まだ私のことそんな風に呼ぶんだ?」
「え、今俺声出してた?」
「出してないけど……」
「比企谷君は顔に出ちゃうから。普段だと露骨と言っていいほど顔に出るよね~」
「ツンツンするのやめてください」
「なら今後私のことをどう呼べばいいか分かるよね?」
「美人なお姉様!」
「まあ、及第点かな。でももし今後破ったら……襲っちゃうぞー?」
「うひゃあ!?」
こっわ、星之宮先生怖すぎるだろ……。生徒襲いだすとかマジもんのび……痴女じゃないですか。
ま、まあちょっと興味がないと言えば嘘になるけどね?
「あと~同じような言葉も厳禁だよ?わかった~?」
「……はい」
俺は無力だな……。
「……というわけで、二人借りていくね?お昼前には返すから~」
「「はーい」」
白波と彩加は神崎や小橋達と合流するんだろう。俺もそっち行きたいな……
「じゃ、ついてきてね~」
「はーい!」
「……うす」
そうして星之宮先生に連れられてやってきたのは高級ベッドスパの店であった。
……なるほど、ここなら個室だろうし他のクラスに聞かれる心配がない。こういうところが地味に優秀さを感じさせるんだよなぁ。
「すみませーん、三人でお願いできますー?」
「はい、かしこまりました。こちらへどうぞ」
スパという言葉には様々な意味が含まれているが、今回はどうやらエステなどトリートメント的な意味合いで使われているのだろう。なんかいい匂いするし、辺りを見渡せば色んな液体が置かれていた。
「ここでまずは着替えた後、奥の部屋にお進みください」
「はーい」
どうやらここで服を脱がなければならないらしい。確かに全身エステを服着たままやるのもおかしな話だし。
「あ、あの、星之宮先生……比企谷君がいるんですけど……」
……くっ、さっきまで無理矢理違うこと考えて、邪な思いを抱かないようにしてたのに!!
「え~、だから面白くなるなーっと思って比企谷君を呼んだのにー」
「私たちはまだ未成年ですよ!中学校卒業して半年も経っていないのに……」
「あれ~、一之瀬さんどんなこと考えているのかなー?」
「そ、それは……///」
あー……一之瀬はそこらへん純粋だからな。星之宮先生ニヤニヤしてるし、分かってて遊んでんな。可哀想に……ま、あとは若い二人に任せて、俺はこっそりと退出……
「比企谷君、もし一緒にやらなかったら……ね?」
「ぜひ共に受けさせてください!」
出来なかった。
や、何が恐ろしいって、坂柳とは違い明確には何をするのか言わないのが恐ろしい。元々が美人なこともあってか、こういうときに微笑まれると本気で恐怖を感じる。
「でもさすがに、このままってわけには行きませんよね?」
「そうだねー、もし私がそんなことさせたなんて学校に伝わったら、一発アウトだし」
「な、なんでそんな危険な行為をしようとするんですか!!」
一之瀬が抗議するも、星之宮先生は笑うだけだ。
そりゃそうだ、だってこの人……
「その方が面白いでしょう~?リスクがあってこそ、楽しくなるって思わない?」
狂っているのだから。
俺もある意味で言えば狂っている。世間一般の言う普通の人は誰これ構わず言葉の裏を読み取ろうなんてしない。だが、まだ俺は可愛いほうではないだろうか。
坂柳に龍園もそう、この学園は歪んでしまった奴らを集めているのかというぐらいに、一般的な普通と言うものが存在していない。
どこか、欠点をもった奴らが集められているかのようにも感じられるくらいには、個性的な奴が多い。どこかにバンドリ!で全部good出しちゃうような普通の子はいないものか……ってどこの七深さんだ。つくしちゃんがスクショ撮ろう言ってる時点で普通じゃない。あれ、普通な奴ってもしかしてどこにもいない?
「で、でも!」
それでもなお食い下がる一之瀬。
よっしゃもっとやれ!そして俺を追い出せ一之瀬!
「さ、最低でも目隠ししてくれないと無理です!」
「いや、抗議するところ違うだろ!……第一お前はいいのか?男とエステ、しかも彼氏でも何でもないただのクラスメイトだぞ?」
「そ、それはそうだけど……星之宮先生もいるし、比企谷君は変なことしないって信じてるから……」
むしろ変なことをしたら俺は牢獄にぶち込まれると思うんだが……そんな度胸は俺にはない。相手のことをしっかり考えるのが八幡クオリティだ。……断じてチキンなどではない。
「じゃあ早速着替えよう!」
「待って待って、いきなり脱ぎださないでくださいよ。ちょっとゾーン分けましょ、さすがに刺激が強すぎます」
「え~?仕方ないなぁ、じゃあ後ろ向いててね?一之瀬さんはこっちにきなよー」
「は、はーい」
星之宮先生が後ろを向いたことをしっかりと確認してからすぐに着替え、下半身はバスタオルに包んだ状態で着替えた。
案の定俺の後ろに迫ってきていた星之宮先生が抗議してくる。
「ぶーぶー!普通に着替えなよ!」
「いや、アンタがちょっかいかけてくると思ってたからわざわざこうしてるんです。って近いです、生徒を襲う気ですか?」
「……それもいいかもね」
舌なめずりやめて!びくっ!って身体が反応ちゃうから。
しかし俺は星之宮先生の誘惑には乗らない。だってこの人あれだよ?付き合ってヤることヤったらポイ捨てする人だよ?ここまでサバサバしてる人他に居ねえよ……加えて美人なのが難点だ。今までに捨てられてきた幾多の男たちもその見かけに騙されていい様に使われていきなりポイってされてきたんだろう。
俺も自分の貞操を守るために頑張らないと……って、教師から迫られるとかどこのラノベだ。そんなのは二次元で十分だっつーの……。
「あの、これお使いになりますか?」
「あ、はい、ありがとうございます」
「……苦労されているんですね」
「……はい」
近くで控えていた女性従業員に目隠し用のアイマスクをもらい、装着する。同性から見てもそうだということは、やはり星之宮先生がおかしいんだな。
よかったー、普段から昼を一緒に食べ、毎日話を聞かされていたせいか、俺の女性に対する偏見が強まっていたのは感じていたのだ。危ない危ない、変な認識を植え付けられるところだったぜ。
「一之瀬さんも脱いだ?」
「……はい」
「じゃあいこっか。比企谷君の手を引っ張ってきてねー」
「え、うええ!!?」
「よろしく~」
そういって遠ざかる足音……あのアマ……一之瀬虐めるのも大概にしてやれよ。純粋すぎて反応が面白いのだろうが、一之瀬の変なトラウマになったらどうすんだよ……。
「ど、どうしよ……比企谷君は見えてないの?」
「全く見えない、このまま帰りたいのはやまやまだが、この状態で出ていくと捕まって強制送還&警察行きだからどうしようもない……すまん」
「いや!比企谷君は悪くないよ!星之宮先生の悪ふざけがすぎるだけだし……じゃ、じゃあ引っ張っていくから」
手を握られ、少しずつ移動させられる。
……まずい、視覚という感覚を使っていない分、他の感覚が鋭くなっている。
肌もちもちしてるなあ、女子ってなんでこんなに柔らかいんだろ。小町と手をつないでもここまでドキドキしないのに……って、実の妹にドキドキしたら駄目だろ。うちは高坂さん家とは違うのだ。あくまで兄妹愛の範疇である。多分。
一之瀬に連れられてしばらくしたところで、ある場所に倒れこんだ。
ふかふかなベッドだ。最初はうつ伏せの状態でやるらしく、されるがままに手でオイルらしきものを塗られていく。
「あ……んんっ♡はっ、あんっ♡気持ちいい~♡」
「にゃあああ♡ああっ、ん、んん……!」
「……」
無心だ。何も考えてはだめだ。何も聞こえない。何も感じない何も「ああっ♡」星之宮先生絶対わざと声大きくしてやがるな。
くそ、カネキくんを見習って1000から7ずつ引いていくか。いや、これはやられる側?
まあ、なんでもいい、他のことに意識を向けて……993、986、979、972、965、958「にゃあ♡……あっ!」……一之瀬は普通に我慢できないだけだろうな。もうどうにでもなれ。
「で、星之宮先生。本来の目的はいいんですか」
「そうね~思ってたよりも比企谷君が反応しなくて悔しいけど、お昼前には返すって言っちゃったしね」
反応しまくってるけどね。ただそれを表には出さず、心の中でミニマム八幡が狂喜乱舞してはすさまじいことになっていることでなんとか留めているだけだ。
長くはもたない。ここまでの精神的攻撃は受けたことがない。
だって去年まで女子と会話すること自体が稀だったのだ。それがこんな状況になってしまったらどうしようもない。
ホント、この学校に来て今まで一之瀬や白波と会話しててよかった。少しだけ耐性がついたから理性の強度が増している。耐えろ俺!
「本来の目的……一学期を終えての私なりの見解を示すことですか?」
「そうそう。一之瀬さんも頭の回転が速くて助かるよ~。ま、比企谷君はもっと……」
「それ以上はやめてください。……たまたまですよ」
「……そっか~君がそれでいいなら私が何か言ったら駄目だね」
「あ、あの……」
「あ、ごめんね一之瀬さん。話してくれるかな?」
「……Bクラスの皆は良い人たちばっかりです。少しばかり衝突したり、喧嘩したり、逃げ出したりするクラスメイトもいますが、それ以外は概ね良い関係を築けていると感じています」
なんか視線感じるんだが……目隠ししてるからわからないなー(棒)
「続けて~?」
「Aクラスの坂柳さんと葛城くんには注意をするべきだと思います。どちらとも接触して、片方とは教官と生徒のような関係を。もう片方とは長電話するぐらいの仲の良さを築いているクラスメイトもいますが、気を付けておかないといけないと思います」
あ、そこ気持ちいいな……ジト目が強くなった気がするが気のせいだろう、うん。
「それで~?」
「Cクラスの龍園くんは、危険な戦略を使ってきます。あるクラスメイトは告白と呼び出されてリンチされ、少しだけBクラスの団結力に罅を入れられました。結果的に絆が深まったのでその程度で済みましたが、Dクラスの須藤くんを嵌めたことといい、引き続き警戒するべきです」
……なんか全部俺が関与してるな?でもCクラスのはたまたまなはずだ。……そうだと思おう。目が気持ち悪いとか言ってたけどそうだと思うんだ(泣)。
「Dクラスはどう思うの~?んっ♡」
「Dクラスとは協力関係を築きました。昨日、プールであるクラスメイトがDクラスの男子を脅していたそうですが……概ね関係は良好です」
いや、だって盗撮だよ?見逃した俺が超優しいね!ってなるのは分かるけど、批難される道理はないだろ?……ポイント根こそぎ奪ったけど。
「もし敵になったとしたら、誰が厄介だと思うのー?」
「堀北さんか平田くん、櫛田さん辺りでしょうか」
「そうじゃなくて~もっと他にいるんじゃない?」
「高円寺くんは身体能力も学力も途轍もないとの噂ですけど……」
「他にいるじゃない」
「……綾小路くん、ですか?」
「そ!私の勘が、彼が要注意人物だって言ってるんだ~」
「ほ、星之宮先生の勘は当てになりませんから!」
……綾小路が、要注意人物……。
やっぱこの教師性格さえ除けば相当優秀だな。俺はたまたま綾小路の隣の部屋であり、なおかつ関わることが出来たからなんとか見抜けたってところだが、どれほどの力を持っているのかすら未知数だ。
星之宮先生がいつ綾小路と接触したのかは分からないが、多分それほど多くは関わっていないはず。……敵に回したくない担任だわ。
「比企谷君はどう思うの~?綾小路君と仲いいでしょ?」
「別に仲いいわけじゃないですけど……どうでしょうね」
「うふふ、
「……どういうことなの?比企谷君」
こ、この教師……本当に他人の心情なんて知ったこったとばかりにズケズケ言いやがって。
確かに俺は多くの場所を回って多くの情報を集めてきた。これまでの試験の内容や、上級生の会話から予想される将来あるであろう試験、生徒会の権力の大きさや、三年、二年の危険人物の特定、及び思考回路の傾向と行動基準なんかをある程度までは把握するくらいに、情報は得ている。
しかし何の確証もない。今まで俺が見てきた人間に当てはめて考えているため、思考パターンは読み違えること前提で考えている。一年だって危ない奴ばっかりなのに、二年三年を今気に出来るほど俺は優秀じゃない。
行動基準もそう、俺が考える中での最低から最悪の行動を予想しているだけであり、確証は全く持ってないのだ。
だからこそ、この情報を共有することを恐れている。
Bクラス全体に伝われば少なくとも動揺は必然。加え、間違っていたとなれば最悪自滅もありうる。
それが怖いのだが……まあ綾小路については予想したところで無駄だし、考えるだけ頭が混乱するから別にいいか。
「ボッチはお前らが用事や部活だと暇でな。図書館で本を読んでない時は敷地内歩きながら他人の会話を聞いてるんだ」
「盗み聞きなんて悪い子だね~」
「別にいいでしょ、この学校では実力が全て。誰かに聞かれたら困る会話を普通にしている奴が悪い」
「その通りだよー」
「で、一之瀬。綾小路のことなんだがな……分からん」
「え?」
「いや、俺は中学まで彩加以外とは、会話という会話をしてこなかったから……彩加といない時は暇でな。人間観察を趣味としてやってきたんだ」
「えぇ……」
「一之瀬さんドン引きしたら比企谷君が可哀そうだよ?比企谷君だって好きでしてたわけじゃないんだろうし~……」
「……好き好んでやってました」
「「うわぁ……」」
一之瀬はまだわかるが、星之宮先生に引かれるとダメージが大きすぎる!この人変なところで適当に俺の黒歴史を暴露させに来るからな……。
「そ、それで綾小路くんのことが分からないってどういうことなの?」
「普通、例えばお前なら行動や視線、発言から『優しくてお節介焼きなクラスの中心である美少女』と判定ができる」
「び、美少女……///」
「だが、綾小路はそれが通用しない。イマイチ会話が成り立たない時もあるし、表情にも出ない。表情が変わらない奴が一番面倒だ」
「比企谷君のコミュ力がないだけじゃなーい?」
ひ、否定できねえ……。
「ですが綾小路も人付き合いが苦手な様なのでお互い様です」
「それで、どうして綾小路くんが危険人物になるの?」
「……須藤の一件、覚えているか?」
「うん、私たち協力したからね」
「あの時……二つ奴が行動を見せてくれた」
「二つ?」
「一つは一之瀬、お前が櫛田にBクラスも手伝うと告げた時だ」
「あの時か……でも綾小路くん何かしてたっけ?」
「お前がある程度手伝うことを計算して提案したことを即座に見抜いた」
「……本当に?」
「ああ、ほぼ間違いない。もしかしたら本当にBクラスを信用しきれなかっただけかもしれないが、櫛田を押さえつけることまでするのはちょっとな……」
そういやあの時、櫛田も『にゃあああ!』とか言ってたな……一之瀬と色々似すぎじゃない?
「それだけじゃ、全然証拠にはならないよ」
「もちろんだ。そして二つ目、お前が綾小路に匿名の相手に対してポイントを送る方法を聞いたとき」
「あ、あの時?綾小路くんには助けられたけど……」
「お前のポイントを見られた」
「え……ええ!?」
「一応口止めはしている……本人も誰かに言ってないし、多分大丈夫だろう」
さすがに驚くか……まあ、他クラスからしたら、あんな早い時期に大量にポイントを持っていた一之瀬が何をしたのか気になるのは当然だ。
むしろ綾小路でよかったのかもしれない。あれが堀北だとか三馬鹿だったら厄介になること間違いなしだ。
綾小路が何を考えてここに来たのかなんて知らん。ただ、普通に接している限りじゃいい奴だ。ところどころ俺を生贄にしようとしているところがあるが、それさえ除けば楽に会話できる相手でもある。
しかし……高円寺と同様、やる気になった場合にどこまで化けるのかが計り知れない。何せ坂柳が一番興味を持つ相手だ。これは本人から聞いたわけではないから俺の勘だけど。
ほんと、厄介な奴しかいない……それでも、俺が少し楽しいと感じているのも事実。
これからどう他クラスが動くのかは分からない。もしかしたら俺の見逃しているヤバい奴が出てくるのかもしれない。BクラスがDクラスまで落ちるかもしれない。逆にDクラスがAクラスに上がるかもしれない。誰かが退学になるかもしれない。誰かがクラスを移動するかもしれない……。
無限とも思える可能性がある。すべてを把握など凡人には到底無理な話。
だからこそ、俺より優秀だが純粋すぎるきらいがある一之瀬帆波には……自力で頑張って欲しい。俺には使えないカードを持つ彼女なら、きっとBクラスをいい方向に導ける。
きっと、俺は彼女に期待を押し付けているのだろう。
今までも、今も、これからも。
星之宮先生に解放され、スパを出た俺は彩加からの連絡を受け一店の飲食店に向かっていた。
一之瀬とはスパの前で別れた。少しだけ考えたいことがあるのだとか。
一先ず向かっていく……と、彩加から追加の連絡が来た。
『神崎君と柴田君も一緒だよ!』
……部屋で眼鏡を取ってから行くか。
***
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
「ありがとうございます」
数分後、俺は彩加、神崎、柴田と共に高級店に入っていた。
俺たちが座った席の周りからは、ざわめきが聞こえる。
……あれだろ、あの席イケメン率高い!(俺を除く)ってやつだろ。
「ねえねえ、あそこにいるのBクラスの柴田君じゃない?」「本当だ!やっぱイケメンだね」「神崎君もクールでカッコいいよね」「分かる~落ち着いた雰囲気でさ~」「あれ、テニス部の王子様じゃない!?」「え、可愛い!あれ本当に男なの?」「信じられない……」
ほら、やっぱりそうなった。肩身が狭く感じる……
「あの眼鏡の人もかっこよくない?」「あんな人Bクラスに居たっけ?初めて見たかも」「確かに!見たことない!」「まさか見逃していたイケメンがいるなんて……」
……おや?
「クール2×熱血×2!」「なんだあのグループ、いいとこどりしすぎだろ」「面子がおかしいだろ、なんであれが一クラスに集まってるんだ!」「バランス良いよね~」
「……おい、なんか注目度高すぎないか?」
「そうか?これくらいなら見られても平気だろ」
柴田……お前は俺の苦労を分かってくれるいい奴だと思っていたのにな……忘れていたよ、お前のポジションがリア充だったことをな!
「あ、あはは……なんか照れちゃうね」
「長居はしたくないな。食事をしたら他を回ろう」
「そうだな、それがいいぜ」
各々が注文を済まし、雑談を始める。
「八幡、さっき星之宮先生に連れていかれたけど何があったの?」
「……少しこれまでのことでな。一之瀬の見解を聞いていたんだ」
「へえ、どこで?」
「……」
言えないんですけど……二人に挟まれてベットスパ受けながら話してましたとか言えるわけねえだろ……。
「……場所は置いておくにしても、比企谷まで呼ばれるとはな。何かあったのか?」
神崎ナイス!上手く話題を変えてくれて助かるぜ。
「別に……ただ、一之瀬の他クラスへの考察やBクラスへの考察に大体俺が関与していただけだ」
「「「あー……」」」
三人は確かにと言った感じで納得したような声を出した。ま、まあ事実だから仕方ないが、ちょっとばかり目立ちすぎている気がする……。
「比企谷は巻き込まれるのが運命なのかもしれないな。入学してここまでの期間で、どうしてあれほど問題を起こすのか……」
「問題起こしたっけ?全部巻き込まれただけとか偶然じゃないか?」
「……多くの濃い連中に目を付けられているのは事実だろう」
「……そうだな」
「まあまあ。比企谷は苦労してるって。バカンスぐらいゆっくりするべきだ」
「うん、八幡は頑張りすぎてた。少しぐらい休んだ方がいいよ」
「そうか……ありがとな」
神崎だけ辛辣だが、他二人の慰めもあり少しだけ疲れが取れた気がする。よし、あとで下の階にある温泉スパに行こう。疲れを取るんだ!
「あのー!すんませーん!注文良いっすかー!?すんませーん!!」
……誰だ、うるさい声出してるのは……店内にいる生徒全員黙っちゃっただろ。
声のした方を見れば、三馬鹿と綾小路がいた。声を出しているのは熱血野郎……山内とか言う奴だ。
おいおい……ここでそんな大きな声出しちゃ駄目だろ。周り見ろよ、お前らヒソヒソ言われてるぞ。
「お前ら、Dクラスだな」
ほら、言わんこっちゃない。怒られてしまえ……って、アイツは確か……おっ、やっぱり教官がいた。葛城派の男だもんな。
「ああ?だったらなんだ?」
「いいか、ここはお前らみたいな屑がくるところじゃない」
「ああっ!?」
「屑にはジャンクがお似合いだ。ハンバーガーでも食ってろ!」
え、えー……ジャンク美味しくない?サイゼとかどうサイゼとか?お勧めだよ?もし屑にしかジャンクが似合わないんだったら、俺屑でいいんだけど……
んー、さっきから喋ってる緑髪の奴、名前なんだったっけ?確か……
「てめえ!ハンバーガー馬鹿にしてるんじゃねーよ!!」
いいぞ、須藤!もっとやれ!ジャンクの良さを教えてやれ!
「弥彦……下らない挑発はやめたまえ」
「葛城さん……」
そうだっ、戸塚弥彦だ。俺の彩加と同じ苗字だったから軽く数十回は呪ってやったぜ。戸塚と呼ばれて二人で返事したら夫婦に見えなくもない……そんなこと許せるか!!
「バカンス中とはいえ、生活態度で減点されることも考えられる。Aクラスの生徒という自覚を持て」
「あ、はい……」
「君たちもマナーを勉強したらどうだ?周りの迷惑にならないように」
「ああ?俺たちゃ別に……!」
「アイツだろ、須藤って」
「ああ?」
「ほら、確か暴力事件を起こしたとかいう……」「目付きこわーい」「何人か殺してるだろ…」「えー?」
……こればっかりは須藤の普段からの生活態度が悪いな。喧嘩に走りやすい須藤の悪い癖が、Cクラストの揉め事でさらに顕著になっている。
「ざけんなよてめえら!」
「君はまた、同じ過ちを犯すつもりか?」
「ぐっ…!」
葛城の言うことはもっともだし、最初に騒いだDクラスの連中が悪い。だが……煽っちゃった戸塚(偽)も悪いだろ。完全に見下してやがる。
……はあ、教官相手だし、俺が間を取り持った方がいいか。
「八幡?」
「比企谷?」
「どうした?」
「……ちょっと話してくる」
「「「(なんで自分から厄介ごとに……)」」」
……別に巻き込まれたくて行くわけじゃない。ただ、戸塚(笑)の態度がふざけてると思っただけだ。
「それくらいにしといてやってくれ、教官」
「……誰だ?」
は?え、俺ってもしかして葛城の記憶にないの?
「いや、俺だよ。なに、忘れたの?」
「……まさか、比企谷か?」
「「「はあ!?」」」
……あ、そういえば眼鏡かけてたんだった。
でもさー、そこまで変わるもんなの?みんな俺のこと目で認識してたりするの?それはさすがに……いや、ありえるな。
「比企谷?」
「よ、よう」
「…誰だ?」
「だから比企谷八幡だって言ってんだろ。なんなの?俺のこと忘れたの?」
「……?」
「だぁー!もう、眼鏡外せばいいんだろ外せば!」
そうして眼鏡を外し、改めて葛城や戸塚(仮)、三馬鹿に綾小路を見つめる。
「て、てめえは俺たちから根こそぎポイントを奪っていった10股野郎!!」
「やめて、それ完全なデマだからやめて」
「本当に比企谷だったのか……新手のオレオレ詐欺だと思ってしまった」
マジでこいつ俺のこと目で判断してたのか……。
「それで、比企谷は何の用だ?」
「いや、さっきまでの話を聞いていてイライラしてな。Dクラス、てめえらうるさすぎだ」
「んだと!」
「別に喋るなとは言わないさ。俺たちだって他の生徒達だってお喋りはしてただろ。周りの迷惑にならない音量で喋ってもらいたかったんだよ」
「……それについては俺たちが悪いな」
「わざわざそれを言いに来たってのか?」
綾小路が素直に非を認めるが、お前は喋って無かったよね?三馬鹿が謝らないとダメじゃね?
さらに須藤がその程度のこと言いに来るんじゃねーよとばかりに睨みつけてくるが、ここ最近地獄を経験し続けている俺からしたら生ぬるいにもほどがあるぜ。
「いや、違う。……戸塚」
「な、なんだよ……」
「戸塚、お前はさっきDクラスを馬鹿にしたな」
「あ、ああ。それがどうしたって言うんだ?お前もBクラスだから俺の気持ちが分かるだろ?」
「は?全然理解できないんだけど……Aクラス(暫定)のお前が現段階でどうDクラスを馬鹿にできる?まさかAクラスに属しているだけで他クラスより優秀だぜ俺とか思ってないよな?」
「え、Aクラスが唯一学校の恩恵に預かれるのは事実だろ!優秀じゃなかったら何だって言うんだ?!」
こいつ……どうして教官はこんな奴を側近にしているのか……もしかしてコイツ以外に腰巾着的ポジションに収まる奴がいなかったりするのか?
「俺はそうは思わない。例えば、今しがたお前が馬鹿にした須藤。確かに勉強面ではお前に劣るだろう」
「てめっ、喧嘩売ってんのか!?」
「当たり前だ。DクラスにAクラスの俺が劣るだなんてありえない」
言っちゃったよ……わざわざ勉強面を強調してやったのになぁ……残念だ。
「だが、運動神経においてはどうだ?須藤ほどのポテンシャルを秘めている奴が一年で何人いる?張り合えるのは何人かいるかもしれないが、須藤に勝てると言える生徒はほぼ0に等しい」
「お前……」
「そ、それは須藤が脳筋だからで!?」
「あっれ~?おっかしいな~?これなんだろうね?」
「あ、あいつもしや……」
昨日、被害にあった池が顔をどんどん青くする。
そうだ、池の想像通りだ。
『当たり前だ。DクラスにAクラスの俺が劣るだなんてありえない』
「これ、誰のセリフだったっけ?」
「そ、それは……お前録音して……!?」
「相手から言質が取れるなら取っておかないとな?で、誰が優秀だって?」
「そ、それは……」
いい気味だぜ。俺を差し置いて戸塚なんて名乗るからこうなるのだ。今度からは弥彦と名乗ってくれ。
「比企谷、もういいだろう。弥彦だって痛感している。俺もあとで言っておくから、これ以上はやめてくれないか」
「教官が言うならやめるわ。ま、現段階でどのクラスにも優秀だの不良品だの言えるほどの差はないんだから、見下すのも勝手に自らを下に置くのもやめようぜ。俺たちはただの高校一年生なんだからな」
一瞬、沈黙が店内を支配して……
「「「おおおおお!!」」」「いいこと言うじゃねえかあいつ!」「彼、Bクラスなんだよ!」「やっぱりBクラスには良い人が多い!」「見直したぜ!いけ好かないイケメンだと思ってた自分が恥ずかしくなってくるぜ!」「ちょっと感動した~!」
お、おおう……勢いに任せて言ってしまったが……またやらかした奴ですねこれ……。
「でもあいつ、あの10股男なんだよな」
ピシッ。
先程までのイイハナシダナームードはどこに行ったのか、ある一人の発言から少しずつヒソヒソ話の内容が変わっていく。
「彼があの南雲副会長越えだとかいう……」「確かCクラスとDクラスに一人ずつ女がいるんだっけか?」「だからさっきの発言を!?」「自分のクラスにも五人彼女がいるって聞いたぞ」「嘘ッ、私Aクラスの坂柳さんに襲い掛かったって!」「それを止めようとしたお付きの女子生徒も一緒に……」「マジか……さっき一瞬尊敬しちまったけど、別の意味で尊敬するわ」
あれれ?なんか内容が前より過激になってない?
「俺、さっきベッドスパの辺りで星之宮先生と一之瀬さんと一緒にいるところ見たわ」「マジで!?先生にまで魔の手を……」「次は茶柱先生に手を伸ばすのかな?」「いや、他クラスの有名どころを抑えるかもしれないな」「例えば?」「Dクラスの櫛田さんとか」「やべえ、俺たちの桔梗ちゃんが汚される!!」「愛理ちゃんも狙われるかもしれねえ!」「そんな……鈴音はもう……ちくしょう!」「いや、先輩とか?」「あー、南雲先輩の手に堕ちてない女子ならワンチャン」「朝比奈先輩が危ない!」「いや、堀北会長の橘書記を狙うかもしれない……あの人も可愛いしな」「駄目だ、もう俺たちは女子全てをあいつに取られちまうのか……」「俺は橋本が狙われたって聞いたから、男かもしれんぞ」「「「まさかの両刀!?」」」
……もう嫌だおうち帰りたい。
「じゃ、じゃあそういうわけで……!」
俺は即座に眼鏡をかけなおし、元居た席に戻った。
お前何してんの?的な目線を向けられるも、ここにいるほうが俺の命に係わる。
「悪い、俺は先に部屋に戻る!」
「八幡!」
「あいつ注文は……あ、キャンセルしてる」
「今の比企谷程自業自得という言葉が似合う奴はいないな」
逃げ出した俺は店を出た後、すぐさま自室に戻りベットの上でゴロゴロ転がり続ける。
しばらくはこうしてないと俺の気が済まない。既に心に住むミニマム八幡は羞恥心による攻撃に爆散してしまっていた。
数時間後に、帰ってきた三人を見て、そういえば宿泊班で一緒だったなと、呆然としてしまったのは言うまでもないだろう。
はあ、今日も疲れたし、温泉にでも行ってみるか……。
一日目すら終わってないのに15000字越え……やべえな、書いてるの私なのに気づいたら書き終わってる(笑)
夏休み六日目の内容と感想にて見つけた葛城のズラネタ、高円寺と櫛田との絡みは次回に持ち越しです。
……無人島編、5話で終わる気がしないのは気のせいかな?