やはり俺の実力至上主義な青春ラブコメはまちがっている。   作:シェイド

19 / 30
今回は二日目~五日目の模様をお送りいたします。
本当なら六日目まで行くつもりでしたが、キリが良かったので切りました。
次の章の五話目で五日目続き~最終日としようと思っています。
終わりが見えてよかったです。

……アンケート、ハーレム強すぎるんだよなぁ。一之瀬と星之宮先生で争ってる時は良かったのに……また新しくしたので投票お願いします。
参考にさせていただきますので。


帆波「昨日は凄かったよ」 八幡「……は?」

「は?お前!それはキーカードだろ!?」

 

「ああ、そうだがどうした?」

 

 俺は二人に見せるように自身のキーカードを持っている。

 葛城は一瞬目を見開いたが、すぐに疑問を投げかけてくる。

 

「どういうつもりだ比企谷。リーダーの情報を相手に与えるなど愚かにもほどがある」

 

「そうだろうな。これでBクラスは50ポイントを失う。だがお前らAクラスのリーダーを当てればプラマイゼロだ」

 

「だからどうしてお前がそれを見せる!?見せなければ俺たちだけにダメージを与えられただろ!」

 

 弥彦の言うことはもっともだ。クラスのリーダーなんてバレただけで動揺は必須、どうにかして相手の情報もつかまなければと躍起になるだろう。

 ……それより俺の後ろで黙っている彩加が怖すぎる。後で説明しないと嫌われるかもしれん。それだけは避けなければ!

 

「……確かにさっきのはお前らの不注意だ。だが、俺は教官を尊敬していてな。尊敬している男が失態でクラスのリーダーから降ろされるのは嫌なんだよ」

 

「お前は坂柳と通じていると耳にしたが?」

 

「坂柳?ああ、あのロリっ子な。俺は弱みを握られてるから嫌々で情報を提供しているだけで、他意はねぇんだよ」

 

「なんだ、お前いい奴じゃないか……」

 

 弥彦は俺への警戒心を解いたのか、近づいてこようとする。

 

「待て弥彦。比企谷、まだ何か隠しているな?」

 

 しかし、それを葛城が止める。

 …にしてもやっぱり、葛城は優秀な部類に入るな。もう少し理由が必要だろう。

 

「……Aクラスで葛城派と坂柳派が争っているのは俺も知っている。加えて坂柳派が優勢なこともな。もし葛城が今回の試験で失態を犯せば、坂柳派がさらに優勢になるのは目に見えているだろ。俺はあのロリっ子にトップを立たれたくないんだよ。嫌いだし……大嫌いだしな」

 

「……試験に私情を挟むつもりか?」

 

「別にいいだろ。あ、これ俺の独断だからBクラスの他の連中には気づかれないようにしておいてくれ。バレたらバレたで面倒だし」

 

「後ろの奴はいいのか?」

 

「ああ、協力者だからな」

 

「葛城さん、ここは比企谷を信用していいと思います。ここまで言う奴に裏はないでしょう」

 

「……そうか」

 

 弥彦の助言もあってか、ついに葛城が折れる。

 

「ボーナスポイントが50を超えないかぎり、お互いに指名し合うことにしよう。どうだろうか?」

 

「ああ、わかったよ」

 

 そうして会話を終え、二人は俺たちとは反対方向に去っていった。

 ……裏がない、か。まあ俺は()()()()()()()()し、気づかれないだろうな。

 さて。

 

「……八幡?」

 

「ひゃ!?」

 

 ずっと静かだった背後から、冷水でも浴びせられたかのように感じるほどの、冷たくて低い声が響いた。

 俺はゆっくりと振り返り……

 

「話を聞いてください彩加様。あと一之瀬と神崎やほかのクラスメイトにも伝えないでくださいお願いします」

 

 頭を下げた。

 

「ちょっと八幡!そんなことしなくていいから!……でも理由が知りたいな」

 

「もちろんだ。ちょっと、人のいないところに移動するぞ」

 

 俺は()()()()()()()()を見ながら、彩加と共に移動を開始した。

 

 

***

 

 

「……行ったか」

 

「あ、綾小路君、私達、すごい秘密を知っちゃったね……」

 

「そうだな……」

 

 佐倉との探索中、洞窟から人が出てきたかと思えばAクラスの葛城と弥彦とか呼ばれる男だった。手にはリーダーのキーカードを持っていたことから、観察を続けていた。

 その時、反対側の森から音もなく二人の男子が現れた。

 俺の隣人であるBクラスの比企谷八幡と、同じくBクラスの戸塚彩加だ。

 葛城はすぐさまキーカードを隠すも、見られていないわけがない。弥彦という男もそれを察知して比企谷に突っかかっていったが、ここで比企谷がまさかの行動に出た。

 自身のキーカードを二人に見せたのだ。

 この行動には二人も驚いていたが、比企谷が何かを言ったことで和解、というより納得したのだろうか。Aクラス二人はこの場から去っていった。

 それから比企谷達に注目していたのだが……

 

『もちろんだ。ちょっと、人がいないところに移動するぞ』

 

 そう言いながらオレたちのいる茂みの方を見つめていた。

 一瞬、驚きはしたものの、二人が去っていったことから誰かまでは分かっていないとの結論に至った。

 ……視線に敏感すぎる。比企谷の能力をもう少し上方修正する必要があるな。

 

「あの、比企谷君は……何か意図があってあんなことをしたのでしょうか?」

 

「……どうだろうな」

 

 普通の生徒から見れば、比企谷の行動は裏切りの行為であり、ありえない行動に映ることだろう。リーダーを当てられた時のペナルティは50ポイントマイナスに、ボーナスポイントの取り消し。少なくとも約70ポイントは損をする計算になる。

 ……後で堀北と他クラスの視察に行こう。今回の試験の方向性を決めるのはその後でいい。

 スポット占有で稼ぐか……比企谷のようなやり方かのどちらかにはなるだろうが。

 オレを何もなかったときから警戒し続けている男が、仮にも試験である今回の件で、他クラスのために動くわけがないからな。

 

 

***

 

 

「…ってわけだ」

 

「凄い……凄いよ八幡!みんなに伝えた方がいいって!」

 

「いや、このことは秘密にして欲しい。一之瀬や神崎でも駄目だ」

 

「駄目なの?」

 

「あの二人は嫌でも目立つ。それに、俺がさっき話した方法だと、今キャンプ地にいる金田はどうする。もし少しでも怪しいとされたら、こっちが損する可能性だってある」

 

「……一人でやるんだね」

 

「俺一人の方が効率がいいからな」

 

 先程までは方向性を悩んでいたが、葛城と運良く鉢合わせし、キーカードを見ることが出来た。

 これで俺の行動にも違和感がなくなった。パターン3が最終ポイントが一番多くなるだろうし、やることは決まった。

 彩加と一緒にいるのが少し計算外ではあったが、協力者が一人は必要だ。それをBクラスから選ぶとすれば、彩加が一番良かっただろうからな。

 ……誰かを信じないことには出来ないことだし。

 

「彩加、一つ頼まれてくれないか」

 

「え?」

 

「彩加にしか頼めないことだ。俺の友達としてお願いしたい」

 

「……うん、うん!いいよ!」

 

「まずこれから俺は……」

 

 ……友達なんて言葉を使う自分に反吐が出そうだ。

 だが、彩加を、Bクラスを利用するとするならこれが一番だ。

 ……たとえ、試験後に俺が嫌われ者になったとしても、な。

 

 

***

 

 

 比企谷君と戸塚くんも帰ってきて、果実やトウモロコシといった食料を手に入れてきてくれた。

 戸塚くんを比企谷君の監視につけていたけど、今日は占有をしなかったようだ。井戸のスポットを更新して、二人は自由時間になる。

 

「彩加、ハンモックを試してみようぜ」

 

「うん、一緒に寝よう!」

 

「い、いや、一緒は……」

 

「八幡?」

 

「うぐっ……おう、一緒にな」

 

「えへへ、ありがと八幡!」

 

 ……相変わらず仲がいい二人だなぁ。戸塚くんが女の子に見えちゃうからか、恋人同士に見えなくもない。

 実際、二人を遠くで見つめている女子の中には、顔を赤くしてる子もいるぐらいだ。

 ……恋人かぁ、私ならひ……だから違うの!……違うと思うんだけどなぁ。

 

「一之瀬さん?ボーッとしてるけど、体調悪かったりする?大丈夫?」

 

 自分でも気付いていないうちにボーッとしていたようだ。千尋ちゃんが心配そうな目をして声をかけてくれる。

 

「ありがとう千尋ちゃん。ちょっとボーッとしちゃってね」

 

「一之瀬さんはクラスを引っ張る存在だから……疲れとかもあると思う。休めるときには休んでね?」

 

「うん、ありがとう」

 

 白波千尋ちゃん。入学式の日から話すようになった女の子で、友達。そして私に告白してくれた子だ。

 女の子同士っていうのもあったけど、まさか千尋ちゃんから告白されるなんて思ってもいなくて、綾小路君を偽彼氏に仕立て上げて誤魔化そうとしてた。

 結果的には綾小路君に諭されて向き合うことが出来たけど……やっぱり少しだけ気まずい感じはあった。

 それが比企谷君の部屋に集まるようになってから、比企谷君と戸塚くんと千尋ちゃんと、三人と一緒に過ごすようになり、とても楽しい毎日を送った。

 そんな今でも、千尋ちゃんは私のことを好きと言ってくれるけれど、それはどういう気持ちなんだろう……。

 

「ねぇ千尋ちゃん」

 

「一之瀬さん?」

 

「好きってさ、どんな気持ちなのかな?」

 

 告白してきた相手にこんなことを聞くなんて、私もデリカシーがないなって思うけど、それよりも知りたい。

 人を好きになる、恋をするって、どんなことなんだろうって。

 

「……うーん、やっぱり、他の誰かに取られたくないって気持ちが一番かな」

 

「取られたくない……」

 

「他の誰かとばかり遊んでたりすると嫉妬するし、誰かと付き合ってるなんて考えただけでもつらくなる。……そんな感じかな?」

 

「(ここで遠回りに私がそう思ってるんだよアピールだ!届けこの気持ち、伝われこの想い!!)」

 

 ……比企谷君が坂柳さんと楽しそうに手を繋いで歩いている……イライラするね……はっ!

 

「い、いや!これはBクラスのためであって!断じて私がイライラするとかそんなんじゃなくって……そう、魔の手から守る為に……」

 

「い、一之瀬さん?ど、どうしたの…?」

 

「え!?い、いやぁ~……なんでもないよ」

 

「なんでもないわけないじゃん!!もしかして一之瀬さん……好きな人が、いるの?」

 

「いないから!あ、千尋ちゃんや麻子ちゃん、夢ちゃんなら友達として好きだけど……好きな異性はいないから!」

 

「えへへ……好きって…好きって…」

 

「おおーい、千尋ちゃーん?」

 

 駄目だ、千尋ちゃんの反応がなくなっちゃった。なんか照れちゃってる?

 ……好きだなんて、そんなの、迷惑に決まってる。それに私は曲がりなりにもこのクラスを引っ張る者としての立場がある。

 私は……。

 

 

***

 

 

 二日目は終始、ベースキャンプ地周辺から外への地形の把握と食糧確保、キャンプ地の改造に努めた。

 俺は午前中に探索を終えた後、彩加とハンモックでのんびりと昼寝したり、わちゃわちゃしたりして過ごした。

 柴田からは『カップルにしか見えない』と言われ、白波からは何度もサムズアップが送られてきた。

 当然彩加は柴田に男の子だと言い張り、ついには『証拠……見る?』という言葉に顔を赤くしたので少しだけシメてやった。彩加には怒られたが、後悔はない。

 白波からのサムズアップには毎回いい笑顔でサムズアップを返したのだが、毎回顔を背けてそそくさとどこかに行ってしまうことに疑問を覚えた。

 ……眼鏡程度じゃ笑い方の気持ち悪さは抑えられなかったということだろうか。白波は割と俺に対しては辛辣なのでまだマシだが、これが彩加だったら自殺してるかもしれない。

 ……一之瀬は微妙だ。まず一之瀬の口から気持ち悪いなんて聞くことないし……あ、佐倉さんをストーカーしていたおっさんには言ってたな。

 あのおっさん退職処分を受けたらしいが、佐倉さんは大丈夫なんだろうか?まあ、綾小路がアフターフォローするだろう。そういうところは何故か気が利く男だ。

 

 スポット更新の際、俺を中心にクラスメイト達が囲ってくるが、金田は自分からスポットの遠くへ離れる。

 ……まだ仕掛けてこないらしい。仕掛けるとしたら夜だろうが……さて、どうしたものかね。

 

 

***

 

 

 無人島サバイバル三日目。

 少しずつ生活に慣れ始めたのだろうか。皆自分の役割をこなし、お互いに困ったときは手助けしたりとBクラスだからこその強みが出始めていた。

 今日は白波と探索に出ることに。どうやら一之瀬は、彩加か白波を俺につけることで監視しているのだろう。やだ、一之瀬束縛系だ!彼氏は苦労するだろうな……。

 

「比企谷君、昨日は戸塚君とイチャイチャ出来てたね!」

 

「おう。最初は緊張するしどうなもんだと思ってたが、ハンモック最高だな。こればかりは一之瀬に感謝の念が絶えねぇよ」

 

「私も一之瀬さんと……」

 

「そういや白波って、一之瀬のこと名前で呼ばないのな」

 

 一之瀬は白波のことを千尋ちゃんと名前で呼んでいるのに対し、白波は入学時から今でも苗字だ。俺ですら戸塚を彩加と呼んでいるのだから呼べばいいのに。

 

「一之瀬さんを名前呼び!?そ、そんなの……恐れ多いかなって」

 

 これはもはや崇拝の域だな。一緒に過ごすことが多いおかげで今まで普通の友達関係でいられているが、同級生に対してそれはおかしくないか?

 あ、でも俺も葛城のこと教官って呼んでるわ……でも教官のことを好きってわけじゃねーしな…。

 

「恐れ多い?お前、一之瀬のこと本当に好きなのか?」

 

「何を言ってるの!?好きだよ!大好き!!」

 

「なら行動で示せばいいんじゃねえの。名前呼びくらいしていかないと意識されないだろ」

 

「それは経験者としての意見?」

 

「……俺は彩加にそう呼んで欲しいって言われたからな」

 

「ず、ずるい!」

 

 ずるいってなんだよ、彩加が言ってきたんだからしょうがないだろ……羨ましいと思われるだろうけどさ。

 一之瀬は部屋ではおかんでも、ひとたびクラスで集まればクラスのリーダーにジョブチェンジする。加えて、プライベートと分けるのがそこまで得意じゃないからか、深くは関わらないようにしているところを感じる。

 それは俺たちもそうだ。それに、俺は一之瀬帆波に何かしらの後ろめたい出来事が過去にあったということくらいは感じ取れているし、気づいている。

 ただ、人の過去なんて詮索するものでもないし、一之瀬自身が話す気がなければ俺たちが追及しても今の関係をいたずらに壊すだけだ。

 ……たとえそれが偽物であったとしても、今の環境を壊す気にはなれなかった。……()()()()()

 

 白波と探索していると、最初のスタート地点に戻ってきてしまった。

 そこで見たのは、リタイアしているCクラスの生徒数名の姿だった。

 

「あれって、リタイアしてるんだよね?」

 

「ああ。そうだが……」

 

 情報が足りないな。何故Cクラスがリタイアしているのかの説明が出来ない。無人島生活が嫌になったことでなら分からなくもないが……。

 

「白波、少しDクラスの拠点によってもいいか?」

 

「いいけど……何する気なの?」

 

「俺が行動を起こすと何か裏がある前提なの?」

 

「前科持ちが何言ってるの」

 

「初日のことだろ、悪かったっての。さっき見たCクラスのリタイアについて、知っていることがあったら情報共有したいと思ってな」

 

「……一之瀬さんに迷惑かけないならいいよ」

 

「むしろ俺たちが情報を持って帰れば一之瀬は喜んでくれるんじゃないのか?」

 

「一之瀬さんが喜んでくれる……分かった、行こう、今すぐ行こう!」

 

 チョロいな。そんなにチョロいといつか悪い男に騙されちまうぞ白波……八幡心配になってくるよ。

 神崎に教えてもらった情報頼りに、なんとなくの方向に歩みを進める。

 しばらくすると、川を挟んでテントが張られている場所に辿り着いた。

 

「あれ?君たちは……」

 

 最初に俺たちの姿に気が付いたのは、金髪のイケメン君だった。コイツは確か、平田洋介。Dクラスをまとめている男で、実際のリーダー格の男だ。

 

「Bクラスの比企谷八幡と、白波千尋だ。少しCクラスについての情報共有がしたくて来たんだが……入れてくれるか?」

 

「Cクラスか……分かった、ついてきてくれるかな」

 

「おう」

 

 平田に許可をもらい、スポット内に侵入する俺と白波。

 Dクラスの生徒も俺たちに気が付いたのか、口を開こうとするも平田が先導しているだけあって、誰も文句は言ってこなかった。

 問題としては……

 

「あれ?8股君だ」「後ろの女の子って彼女?」「8股メンバーの一人でしょ。一緒にいるってことは仲がいいんだよ」「なんであいつだけモテるんだよ!眼鏡か!?やっぱり眼鏡だからか!?」「おい、櫛田ちゃんを隠すんだ!いつ狙われるか分からないぞ!」「鈴音は!?鈴音は無事か!?」「佐倉は俺が守る!」「Bクラス……何しに来たんだ?」

 

 最後の奴以外まともなのがいねえな……ちらりと後ろを見れば、顔を赤くして俯いてついてくる白波の姿が。

 これはあれか?『どうして比企谷君と噂になるの!一之瀬さんとでいいのに!!……でもここで怒ったら一之瀬さんのイメージにも関わるから、Dクラスから離れたら後ろから蹴ってやろう』みたいな感じか?

 彩加が前に怒ったときも無言だったから、怒られるのは確実かな……くそ、噂好きな奴らめ。

 

「ここの中で話そう。話すのは僕と堀北さんと綾小路君でいいかな?」

 

「十分すぎるぐらいだ。ありがとな」

 

「僕たちだって情報の共有はしたかったんだ。同盟相手とはいい関係を築いていきたいからね」

 

 平田は笑顔でそう言ってくる。こいつやっぱリア充の中のリア充だな。サッカーでは柴田と競い合えるほどの技術があるらしいから、運動神経もいい。学業の成績もよければ人当たりもいい……きっと、こいつは櫛田と同じパターンなんだろうな。

 テントの中は誰もおらず、俺と白波は奥に通される。

 その後、中に入ってきた堀北と綾小路に平田の三人と話し合いを始めた。

 

「要件は何かしらカエル君。一度そちらのキャンプ地には視察に行ったのだけど、うまく工夫されていてさすがはBクラスだと思ったわ。あなたは足を引っ張っていそうだけど」

 

「ところどころ毒混ぜるのやめてくれない?まあ、あれはBクラスだからできることだ。学年で一番のチームワークを持つクラスだからな」

 

「比企谷がそう言うと、違和感しか感じないぞ」

 

「綾小路まで辛辣なのね……それには同意するが、一応Bクラスなんでな。自分のクラスの自慢くらいしていいだろ」

 

「比企谷君?」

 

 少しばかりお喋りが過ぎたせいか、はたまた要件にすぐ入らなかったからか、白波が地味に俺の足を踏んずけている。

 こいつは力ないから痛くはないんだが、精神的に痛い……。

 

「ここに来る前、俺と白波はスタート地点に辿り着いてな。その時Cクラスの生徒が数名リタイアしていたから、お前らは何か知ってるかと思って聞きに来たんだ」

 

「僕はクラスメイトから聞いただけで詳しくは知らないんだよね。二人はどうだい?」

 

「綾小路君」

 

「はいはい……オレと堀北はCクラスに呼ばれて様子を見に行ったんだが、龍園が豪遊していてな。試験のポイントを全て使い切ってクラス皆で遊んでいた。龍園は今回の試験にやる気がない的なことも言っていたから、今回の試験を捨てたのかもしれないな」

 

「なるほどな……」

 

 0ポイントか。確かにそれならうちで保護されている金田の点呼不在時のマイナスポイントの影響はないし、加えて勝手にリタイアされても痛くも痒くもないってことか。

 ならあとは……

 

「なぁ、うちにはCクラスの金田って奴が追い出されて身を寄せてるんだが、お前らのところにも誰か来ているか?」

 

「ええ。伊吹さんがいるわ。顔に傷を負っていたから、喧嘩別れをしたんじゃないかということに落ち着いているわね。もちろん、キーカードでの更新時には近づけないようにしているし、自分から近づこうともしない。トップが無能だからか、苦労しているのよ」

 

「うちの金田もそうだ。最初なんて迷惑かけたくないと出ていきたがってたが、一之瀬達が止めたからな。いろいろ手伝ってくれるし、スポット更新時には自ら離れていく」

 

「Bクラスでもそうなんだね。龍園君は何を考えているんだろう……」

 

 平田の疑問も、堀北の無能発言も、間違ってはいない。

 マニュアルの裏まで考えればそうではないが、表面上だけを見れば龍園は試験を放棄している状態であり、他クラスからすれば愚かとまで思えるだろう。

 ……龍園は()()()()()を取ったのか。あとはAクラスがどうなってるか次第で決まるな。

 

「そうか、ありがとな。情報共有に感謝するよ。お互い慣れない生活だが、あと五日頑張ろうぜ。あ、それともしよければ貿易でもしないか?」

 

「貿易?」

 

「ああ。俺たちが魚が採れて、果実が採れないときにお前らが魚は採れないが果実は採れた、みたいな状況の時にお互いに物々交換出来たらいいなと思ったんだ」

 

「なるほどね……貿易のことに関しては、皆で話し合ってみることにするよ」

 

「おう。じゃあな綾小路、堀北」

 

「ああ」

 

「せいぜい干乾びないように気を付けなさい」

 

「最後までカエル扱いかよ……」

 

 白波と二人でテントを出て、占有スペースから早めに出る。

 やることはやったし、情報も得られた。悪くない時間だったな。

 

「比企谷君」

 

「なんだ?」

 

「……Dクラスを信用するの?」

 

「少なくともさっきの情報に嘘はないだろう。仮にも同盟相手だし、一之瀬は協力関係にあると思ってる。そんな一之瀬に近い白波や俺に対して嘘吐けたら凄いと思うぞ」

 

「そうだね……でももし一之瀬さんを裏切ったら……Dクラスは……うふふっ」

 

 白波さん?怖いですよ?いつもの一之瀬さん大好きオーラはどこに行ったの?こいつは一之瀬が関わると色々と箍が外れそうだから、ある意味彩加よりも危険な爆弾かもしれない……怒らせないようにしよう。

 白波と共にベースキャンプ地に戻りながら考える。

 教官が二人だけで占有を行っていた理由、弥彦の隠しきれていない口角の上がり、葛城の手にあったキーカード、Cクラスの生徒のリタイア、龍園の豪遊、0ポイント、Bクラスには金田、Dクラスには伊吹……8割方は確定した。あとはAクラスの拠点次第だ。

 橋本か神室と接触できればいいんだが……俺には監視があるし、向こうも手が出しにくいだろうし……彩加との探索時になんとかAクラスと接触するしかないな。

 それも、坂柳派じゃないと駄目だろう。

 

「あ、二人ともおかえりなさい。どうだった?」

 

 ふと声をかけられたので辺りを見渡せば、Bクラスのキャンプ地だった。

 ……集中しすぎたか。

 

「比企谷君は珍しくまともだったよ」

 

「八幡、頑張ったね」

 

「待って、なんか俺まともじゃないみたいに言われてるけど俺ほどまともな奴もいないだろ。彩加も頑張ったなんて言わなくていい。これが俺だから」

 

「「本当に?」」

 

 息ぴったりだな……思っている以上に俺はまともだと思われていないらしい。悲しい事実だな……。

 あ、一之瀬と神崎に報告しに行かないと。

 

「白波、報告に行くぞ。彩加、これが収穫してきた果実な」

 

「ごめん、私のも頼めるかな?」

 

「わかった!何かあったんだね?他の人も呼んで整理しとくから行ってきて」

 

「助かる」

 

 彩加に荷物を任せ、一之瀬と神崎を探す。

 二人とも少し話していたのか、皆から離れた滝の近くにいた。

 

「一之瀬さん、少しいいかな?」

 

「ん?どうしたの千尋ちゃん?比企谷君が何かやらかしたの?」

 

 白波も話し始めたし、俺も神崎に伝えておこう。

 ……一之瀬も俺が何かやらかすこと前提なのな。否定できないのが悲しいところだ。

 

「何かあったのか?」

 

「ああ。白波と探索中にスタート地点に出てしまった時にな。Cクラスの生徒がリタイアをしているところを見た」

 

「なるほど、お前らもなんだな。探索に出かけた他のペアからも報告が来ている。龍園は本気で試験を放棄する気みたいだな」

 

「綾小路によれば、龍園はポイントを使い切っているらしい。加えて、今回の試験にやる気がない的な発言もしていたんだとよ。何考えてるんだろうな」

 

「うちのクラスでは金田を保護している。その際の点呼で引かれるポイントを嫌ったんだろう」

 

「あ、それとなんだがDクラスにもCクラスの生徒が拾われていたぞ。女子生徒だったが頬に腫れがあったらしくてな」

 

「Dもか……だが金田はスポット更新時に近づいてこなければむしろ遠くに行く。スパイの可能性は低いだろうな」

 

「Cはどれくらいリタイアしたのか……」

 

「明日、一之瀬とCクラスの拠点に向かってみる予定だ」

 

「俺もついて行っていいか?」

 

「……そうだな、比企谷の洞察力があれば心強い。一之瀬も監視が出来て嬉しいだろうしな」

 

 どうやら神崎の中では一之瀬は俺の監視がしたいということになっているらしい。一之瀬さん、あまり監視監視言いすぎると変な噂されちゃうから気を付けてね?

 Dクラスに貿易の提案もしたことを報告し、少し寝ようかとハンモックを見る。

 

「あ、八幡、こっちだよ!」

 

 ……俺が天使と安眠したのは言うまでもないだろう。

 点呼の時間に間に合ったのは奇跡だったかもしれない。たまたま目が覚めて彩加を起こせたからな。

 マイナス食らわないで良かった。もし食らえばまた()()()()()()()()()。それだけは避けたいしな。

 

 

***

 

 

 無人島サバイバル四日目。

 朝から魚を釣る班に配属され、案の定彩加と同じだった。

 ポイントで手に入れられる釣り竿は1ポイントの餌釣り用と2ポイントのルアー用の二つがある。個人的にはルアーを使いこなす釣り人かっけぇみたいなところがあるのだが、やったことがあるのは餌釣りだけだ。

 今回購入されていたのも餌釣り用なので、大して苦労しないで海に投げ入れる。

 一方、隣では彩加が苦戦していた。

 

「僕、釣り初めてなんだよね……八幡はやったことあるの?」

 

「小さい頃にな。中学の時は一人で浮き沈みするウキを眺めてるだけだったからな……」

 

「あはは……うーん、うまくつけれないな…」

 

「最初はつけてみせようか?次から彩加がつければいいし…初めてなら分からないだろ」

 

「そうだね、お願いできるかな八幡?」

 

「天使のお願いなら当然だぞ」

 

「僕は天使じゃないよー」

 

 他愛もない話をしながら彩加の釣り竿に餌を付け、釣りを開始する。

 海が目に見えて綺麗なことから、自然環境がいいんだと思われる。井戸も管理されているのを感じたし、トウモロコシの件もそうだ。

 学校側は放任しているようにみえて、ヒントや手助けをところどころやってくれている。それに気付けるかどうかも試験の一環なのだろうか。

 今までもクラスメイト達がかなりの成果を上げていたが、俺と彩加も少しずつ当たりを引いていく。

 懸命に竿を引く彩加の姿はとても可愛らしいと思いました。まる。

 しばらく釣りを続け、15匹ほどの成果を得られたとき、交代の班がやってきたので釣り竿を渡し、魚を持ち運ぶ班と共にキャンプの元へ行く。

 日によっては一日二食にしているが、三食の日もある。これまでの習慣を失くすことがこれから生活に影響を与えかねないからかもしれないが、その分食料を消費する。

 ……今のところ消費ポイントは80ぐらいだろうか。

 昼は魚を焼いて食べ、彩加と別れて一之瀬と神崎の二人に合流する。

 

「あ、比企谷君。お昼は済ませた?」

 

「魚釣って焼いて食べてきたぞ」

 

「比企谷は器用だからな。料理班の女子が二人の成果を興奮して話してくれた」

 

「彩加と一緒だからだろ。魚が天使に惹かれたんだよ」

 

「息をするように天使天使言うようになったな……」

 

 若干引かれた気がするが、今まで通りだし別にいいだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 さっそくCクラスの拠点を見に行くというので、二人について行く。

 

 辿り着いたのは遊ぶには良さげな浜辺だった。

 既に閑散としていて、見渡せば学校側が用意したテントや購入したであろうものと数人の生徒しかいない。その数人の生徒もリタイアするのは時間の問題だろう。

 

「いやーびっくりだよね、ほんと。彼は普通じゃないと思ってたけどここまでなんて」

 

 一之瀬が声を出したので前を見れば、綾小路がCクラスの様子を窺っていた。隣には佐倉さんもいる。

 この二人仲いいな。

 

「おまえも偵察か?綾小路」

 

「いや、食料を探していたら、偶然辿り着いただけだ」

 

 少しすると、最後まで遊んでいたCクラスの生徒も、リタイアする気なのか浜辺から去り、森の方へと消えていった。

 五人でCクラスが使っていた浜辺を見て回る。

 だが、本当に何もなく、ビーチボールが一つだけ残されていたり、ビーチチェアーとパラソルが寂し気に残されているだけだった。

 いや、これくらいの後片付けはしてくれよ……。

 

「神崎くんの言った通り、リタイア作戦みたいだね」

 

 一之瀬と神崎、綾小路は話し合いをしているので、蚊帳の外である俺と佐倉さんでパラソルをなおしたりと片づけをして、テントの傍に置いていく。

 リタイア作戦……多分俺の考えているリタイア作戦と、一之瀬や神崎が考えているリタイア作戦は根本が違う。

 相手の立場になってどんな嫌がらせをしようかと考えれば、何を考えているのか大体分かる。そして、目的が見えれば行動が見える。

 

 ……少なくとも試験がない時から仕掛けてくるような男が、今回の試験で何もしないわけがない。

 あまり舐めるなよ龍園……。

 

「あ、あの、プールの時はありがとうございました。綾小路君から私のために合同でやる提案をしてくれたと聞いたので……」

 

 手を止めていたからか、はたまた無言でいたからか……佐倉さんにお礼を言われた。

 アイツマジでそんなこと言ってたのな…余計なことだっての。

 

「別に、お礼を言われるようなことじゃねーよ。あれは俺が楽をしたくて提案しただけだ。佐倉さんのためじゃない」

 

「楽って……Bクラスの方が人数多いままだったから、出番が増えたんじゃない?」

 

「あ……」

 

 ……確かにそうだ。やべ、ちょっと頭がこんがらがってきた。慣れない環境なのに頭使いすぎたか。やっぱこの学校の試験めんどくさいな。やはり引きこもりは最強だったか。

 

「それが捻デレ、ですか?」

 

「あれ?それどこ情報?」

 

 捻デレて……それ星之宮先生が編み出した造語だろ。一体だれがこの子にそんな言葉を……

 

「綾小路君です」

 

「……綾小路君?ちょっといいかな」

 

「おい、比企谷?なんか怖いぞ?」

 

 俺が知らず知らずのうちに笑みを浮かべていたからかは知らないが、綾小路が一歩後ずさる。

 そんな事お構いなしに綾小路に肩を組ませ、無理矢理三人から離していく。

 

「ねえ、堀北にもそうだったけどさ、俺の変な渾名とか造語とか広めるのやめよう?堀北はもう諦めるにしても、あんな大人しめの子に言われるとショックなんだよ。分かれ」

 

「それについては申し訳ないとしか言えないが……元はと言えば、前に一之瀬が嬉々としてお前のことを話してくれたことがあってな。その様子から言っていいものだと思ってた」

 

 一之瀬かよ。誰が綾小路に話したのかと思っていたが……綾小路と付き合いがあるのは、一之瀬と神崎、俺ぐらいなもんだしな。

 

「……そうか」

 

「一之瀬には何も言わないのか?」

 

「いや、ベースキャンプに戻ってから言い聞かせておくわ。長くなりそうだし」

 

「(比企谷は思ったよりも人望がある。それに、他クラスとも交流中か。これもメモしておこう)」

 

 二人で戻ってくると、辺りの片づけを終えた三人が集まっていた。

 

「ポイントを使い切る作戦、褒められたことじゃないけど、結構凄いよね」

 

「考えついても実行しないようなことだ。この試験はプラスを積み重ねるための試験だ。それを放棄した時点で龍園は負けている」

 

 俺としては、龍園のやり方が褒められたことじゃないとは一概には言えないと思っている。

 今回の試験のテーマは『自由』。自由に豪遊し、自由に試験に挑む姿勢は問題行動とは言えない。俺たちの頭に『この試験はプラスを積み重ねるもの。節約していくら残せるかが勝負』という固定概念があることが前提ならば、龍園のやり方は無能と言われても仕方がない。

 だが『自由』だ。自由という言葉のみとルールを把握することで、ポイントの手に入れ方は何通りも存在してくる。

 ……綾小路は気づいてそうだけどな。

 

「やっぱり誰がリーダーかを当てるなんて、無茶苦茶難易度が高いよね。無理無理」

 

「大人しく見送り、手堅く試験を送るのが良さそうだな」

 

「うんうん。私たちには地道な戦略が一番だよね」

 

 一之瀬と神崎の言うことも正しい。それも一つのポイントを残す方法だ。

 ……まあ、俺はその『()()()』には入っていないがな。

 

 ふと、ここで綾小路がこんなことを聞いてくる。

 

「ちょっと小耳に挟んだが、Aクラスは葛城と坂柳のグループで対立しているのか?」

 

「仲が悪いって話は事実だね、結構激しくやりあってるみたい。それがどうかしたの?」

 

「いや、堀北に時間があれば探って来いって命令を受けてきただけだ。Aクラスを切り崩すチャンスはそこにあるとかどうとか。激しくやりあってると言っても、流石に試験中は手を組んでるよな?」

 

「組んでるって言うか、今回坂柳さんは試験を休んでいるからね。葛城くん一人で頑張ってるみたいだよ?だから全部意見は葛城くんがまとめてるんじゃないかなぁ。だよね?」

 

「葛城は頭のキレる男だ、坂柳が不在なら、その下の人間が反抗出来る相手じゃない。仲間割れをするような真似はしないだろう。するメリットもないからな」

 

 いや、メリットは存在する。ただ、坂柳派が表立って葛城の失態の原因になるのを避けているだけで、橋本や神室なんかは暗躍してそうだ。橋本とか暗躍って言葉が超似合ってるし。

 

「そうだね、それで間違いなさそう。というか……私達より二人のことについて詳しい人がいるからその人に聞いた方がいいかもね」

 

「誰だ?」

 

 さて、少しずつ存在を消して……

 

「こらっ、比企谷君!勝手に逃げないの!」

 

「いや、どうせ説明しろとか言うんだろ?無理、面倒」

 

「なら戸塚くんに、試験中比企谷君と関わらないようにさせるよ?」

 

「かしこまりました。お話させていただきます」

 

「相変わらずの変わり身の早さだな……」

 

 彩加を盾に強要するとは……一之瀬さん悪い子ね!

 ……って、話すと言っても話しすぎると一之瀬と神崎に気づかれそうだしな。微妙なところだ。当たり障りのないことを言っておくか。

 

「坂柳はドSもドS、可愛い幼女みたいな面しときながら、中身は化け物だ。葛城は話が分かるいい奴で、真面目だな。これらのことからも分かるが、攻撃大好き坂柳と、守備特化の葛城。革新派と保守派みたいな?そんな感じで対立しているな」

 

「あはは、間違ってはいないけど坂柳さんに聞かれたらどうなるんだろうね……」

 

「俺の首が飛ぶ、もしくは奴隷化されるな」

 

「……坂柳か。堀北に匹敵する怖さだな」

 

「堀北?待て待て奴はそんな優しい存在じゃない。先天性心疾患を患っているから杖を使っているが、見た目に騙されたら駄目だ。堀北が近所の犬ぐらいの怖さだとすれば、坂柳は興奮状態のライオンぐらいの怖さだ。お前も俺がプールで土下座したの見てただろ?そして笑顔で熱いプールサイドで正座しておくように言ってくるんだ……」

 

「……堀北はせいぜい、寮の部屋で正座を要求するぐらいだからな。苦労してるんだな比企谷」

 

「その一端はお前にもあるんだけどな」

 

 ついつい愚痴も混ぜてしまい、綾小路も理解してくれた様子だ。この調子で対坂柳有栖グループを作りたいな。

 だが佐倉さんは驚いたように目を見開き、一之瀬と神崎は小声で何かを話していた。

 

比企谷君、本当に坂柳さんと仲が良すぎない?葛城くんの話ほんのちょっぴりだったよ?

 

本人も気づかないところで坂柳のことを気に入っているんだろう。電話もしていたんだろう?

 

むっ……

 

 聞こえちゃったよ。八幡ラノベの主人公でもなんでもないから聞き取れちゃったよ。

 どうやら俺の話から、二人は坂柳のことを気に入りすぎだと危惧しているらしい。Aクラスの中心人物だし警戒するのは当然だけどさ……つーかよくよく思い出せば俺の話した内容、ほとんどが坂柳についてじゃねーか。それだけ心の愚痴を誰かに聞いてもらいたい気持ちが強かったんだろう。

 その点、綾小路は堀北という似たような頭の上がらない相手がいるからか話が弾む。この無人島サバイバルが終わったら食事にでも誘おう。元々タダだから奢ったりするわけではないけども。

 

「ま、そんな感じだ。個人的に葛城にAクラスをまとめていってほしいが、今の対立状態で俺たちも差を付けられているからな。足並み揃えられたら500とか差が付きそうで怖い」

 

「なるほどな。後で堀北に伝えておこう。ったく、自分で調べろと思うが、人使いが荒いからな……おっと、今のは聞かなかったことにしてくれ。あとで怒られるのはしんどい」

 

 よし、試験終わったらすぐさま告げ口してやろう。佐倉さんに余計なことを言った罰だ。

 

「あはは、秘密にしておくよ。でも堀北さんの着眼点はさすがだね。もしAクラスの二人が対立してバチバチやりあってたら、自滅してもおかしくないもんね。まあ、今の段階で何かができるわけじゃないんだけど」

 

 神崎は腕時計の時間の確認をしていた。そろそろ帰るべきか。

 

「一之瀬、そろそろ戻った方がいい。スポット更新の時間だ」

 

「そっか、そうだね」

 

「オレたちもそろそろ食料を探しに戻るよ。手ぶらだと怒られそうだ」

 

「それじゃあ、お互い怪我には気をつけて頑張ろうね。くれぐれも無茶はしないように!あ、これは比企谷君もだからね!」

 

「俺もかよ……じゃあな綾小路、佐倉さん」

 

「ああ」

 

「はい」

 

 綾小路達と別れ、俺たちもベースキャンプ地へと帰り始める。

 ……これで綾小路もある程度方針は決めただろう。堀北と一緒にいるところをよく見ていたが、多分堀北を隠れ蓑にしている。さっきの会話も、おそらく堀北の指示ではない。

 堀北とは以前話をしたが、クラスのことで精いっぱいといった感じだった。よくてCクラスをみるぐらいだろうか。AやBはまだ見ていなかったはず。Bとは同盟結んでもいるし。

 今回の試験、橋本や神室は葛城派に警戒されている。

 特に橋本。あんなチャラチャラした奴疑われて当然だしな。だが優秀であることには間違いない。能力がどれくらいかは定かではないが、坂柳が側近として置いているだけで、その有能さは窺える。

 ……明日、Aクラスの拠点に行かないとな。

 

 

***

 

 

 無人島サバイバル五日目。

 相変わらず朝早くに目が覚め、隣で眠る彩加……は?

 

「んにゅ……」

 

「ど、どうして一之瀬がここに……」

 

 昨日の夜は確かに彩加だったはず。ま、まさかこれは夢!?

 

「んん……おはよう比企谷君、昨日は凄かったよ」

 

「……は?」

 

 顔を赤くしながら死刑宣告をしてくる一之瀬。

 え、は?何、何したの昨日の俺!?凄かったって……何が!?

 もしや理性が耐えきれずに意識のない状態で一之瀬を……終わった。これで俺は白波にギロチンを落とされて追放されるな。って、死んでないのかよ。ゾンビなの?

 

「まさか、比企谷君に抱き着き癖があるなんて。男の人に抱きしめられたのは初めてだったよ」

 

「……お、おう」

 

 な、なるほど。俺は昨日一之瀬に抱き着いて眠っていたと……ふぅ、良かった。どうやら最悪の事態は免れたようだ。

 ……じゃないな、普通にアウト判定ですね。記憶ないけど。

 なんで分かるかって?……背後から凄まじい視線を感じるからだよ。痛い痛い、振り向きたくない。

 

「それより、なんでお前いんの?俺の天使はどこに行ったの?」

 

「戸塚くん?昨日は違うハンモックで寝るって言ってたよ?でも比企谷君に監視なしはよくないから、私が代わりに来ました!」

 

「つまり……俺が寝た後に彩加と一之瀬が入れ替わったと」

 

「そういうことになるね。いやー、ハンモックでの睡眠も初めてだったけど、抱き着かれるとはね……な、なんか恥ずかしくなってきちゃった……///」

 

 一之瀬が顔を赤くし、背けると同時にいっそう強くなる殺気。俺今日闇討ちされないよね?朝には頭と体がおさらばしてたりしないよね?

 

「そ、そうか……なんか悪い」

 

「い、いや、私だって勝手に入り込んだから……迷惑だったでしょ?」

 

 ここで正直に言うなら抱き着いているときの記憶が欲しいまであるが……絶対、引かれるからな。それに羞恥心で死にそうだしやっぱ駄目だな。ある程度で誤魔化そう。

 

「いや、寝心地は最高だったぞ。気持ちよかった」

 

 快適だったからな。彩加が近くにいるときと同じくらい安眠できたし。

 ……ってこれだと一之瀬と寝れて良かった的なニュアンスになっちまうな。

 

「き、気持ちよかった!?そ、そっか……///」

 

 やっぱミスったか?また顔を赤くして下向いてしまったよこの子。そして更に圧が上がる殺気。

 ……覚悟を決めて動くか。

 

「顔洗ってくるわ」

 

「あーうん、私は後から行くね」

 

 あー……一縷の望みをかけていたんだが、一之瀬はついてこないのか。ま、まあ一緒に寝た異性と顔合わせ続けるのもなんか気まずいしな。一之瀬は耐性もないし。

 ……念のために着替え持っていくか。

 

 危惧していたことそのままに、滝の近くで顔を洗っていると後ろから川に落とされた。

 マジかよ……やるかもとは思ってたけどマジでコイツやりやがったよ。構えててよかった。

 

「……あの、白波さん?殺す気かな?」

 

「……」

 

「いや、あれは俺が何かしたってわけじゃないし……怒られるのは筋違いではないですかね?」

 

「……」

 

「……はい、ごめんなさい」

 

 全身びしょ濡れの状態で女の子に土下座している男がいた。

 俺だった。

 白波の無言の圧に耐えられず、ついに土下座してしまった。土下座の頻度多くない?俺の土下座やっす!

 

「……一之瀬さんを唆したのは誰だと思う?」

 

「柴田だと思います」

 

「……チョットオハナシシテクルネ」

 

 白波はヤンデレみたいな目をして一つのハンモックへと向かっていった。

 ……すまん、柴田。俺の身代わりになってくれ。

 その後、『どこから情報が!?』という声と悲鳴が上がっていたが、お前マジで一枚噛んでたのか……俺の勘も馬鹿にできないな。

 

 

***

 

 

 今日は探索班だ。ペアは彩加。

 当初は白波の予定だったのだが、朝のことをこっそりと神崎に報告したところ、呆れた目を向けられながらも変えてくれた。俺は悪くないんだがな……。

 彩加は俺がこれから何をするかをある程度知っている。全部は知らない。それでもAクラスの拠点へ行くことに問題はない。

 一之瀬達も行ってみたらしいが、どんな感じだったかまでは聞けていない。リーダーとして忙しい二人に聞くより、自分の目で見た方が早い気もするからってのもあるけどな。

 こっち側だろうと思われる道に進んでいくと、開けた道に出た。この島はところどころ開けた場所があるが、多分わざとそう作られている。豪華客船での旋回時にヒントとして見やすくしているのもあると考えている。

 Aクラスの生徒……見張りがいるな。どうやら洞窟に暗幕を張り、外にトイレを置いているらしい。トイレ用のテントを置いているから、外でもいいと判断したか。

 彩加と遠回りに洞窟辺りを歩きつつ、地形を把握したり、少しだけあった果実を収穫したりしていると、見張りが交代した。

 おっ、弥彦君だ。行ってみる価値はあるな。

 

 俺たちは歩いて弥彦に近づいていく。

 最初は近づいてくる他クラスの生徒に警戒をしていた弥彦だが、俺だとわかると警戒を弱めた。

 

「なんだ、比企谷じゃないか。どうしたんだ?」

 

「いや、Aクラスがどう生活してるか気になってな。暗幕を張る……他クラスはAクラスが何を購入したのかが分からない。いい作戦だな」

 

「だろ!葛城さんが提案したんだ。やはりAクラスのリーダーは葛城さん以外にあり得ねえよ!」

 

「それな」

 

「……弥彦、客人を呼んでいいと許可した覚えはないぞ」

 

 弥彦と盛り上がっていたところで、洞窟から葛城が姿を現した。

 

「悪い、俺たちが押しかけたんだ。弥彦に罪はないから許してやってくれ」

 

「そうか。弥彦、誤解して悪かったな。だが比企谷、安易に近づいていいものじゃない。お前たちが井戸と滝、Dクラスが川を抑えているように、Aクラスもこの洞窟を抑えている。その暗黙のルールに踏み込めば……」

 

 葛城が目で促した先には、Aクラスの生徒たちが。

 木の棒で武装し、周囲の警戒を行っていたらしい。

 

「戦争が起こるぞ」

 

 ……俺たちは周囲でうろちょろしていたのにな。どうやら坂柳派もいるみたいである。

 葛城の警告に参ったとばかりに俺は両手を上げる。敵わないと思わせておかないと後々面倒だしな。

 

「悪い、そんなつもりはなかったんだ。彩加、帰ろうぜ。邪魔したな」

 

「待て」

 

 葛城が止めたかと思えば、弥彦が近づいて耳打ちしてくる。

 

「キーカードの件だが、お互いに指名し合うことにしよう。いいか?」

 

「ああ、わかった」

 

 そう返すと弥彦は離れていき、武装集団も周囲の警戒に戻っていく。

 葛城も洞窟内に入っていき、俺たちも本来の目的である食料探索に戻っていく。

 途中、武装集団の一人と出会うも、スルーしようと横を通り過ぎる。

 そのすれ違いざま、

 

「……深夜二時、Bクラスの拠点近くの小屋で待つ」

 

 そんな言葉を聞いて。

 ……橋本か神室か、もしくは鬼頭の可能性もあるが、接触したいのだろう。葛城派を如何に弱らせるか、それが目的なんだからな。

 Aクラスのキャンプ地から離れ、果実を探しながら彩加にあるお願いをする。

 

「彩加、今日の夜なんだが──────」

 

 これで、Cクラスにも逃げられる可能性はないだろう。

 ……あと10ポイント、か。それに葛城……弥彦からも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが……ちょっと残念だ。葛城ならもしかすればと、思ったんだがな……この程度なら坂柳に対する防波堤にすらならないだろう。

 悪いな……葛城、弥彦。

 

 俺は六日目に起こす行動を考えながら、この島の地形を考えながら、彩加と食料採取を続けるのだった。

 




一之瀬のヒロイン力は異常。
自然と筆が進みこうなった。元はこうするつもりなかったのにね……。
八幡が考えていたパターンは5つあるのですが、次の話の最後にでも公開した方がいいですかね?分からなくても問題はないですけど……パターン3以外、そんな描写書いてないしね。

次は章の最終話が早いか、一之瀬の誕生日記念の話が早いか。どっちかになると思われます。

ではまた次の話で~。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告