やはり俺の実力至上主義な青春ラブコメはまちがっている。   作:シェイド

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前までの更新速度に比べたらマシになったかな……。
これも感想と評価のおかげですね、ありがとうございます!
自己満足小説とはいえ、好きなものを共有、認めてくれる人がいるのは嬉しいことです。

ついでですが、この作品HACHIMAN化などはないと改めて言っておきます。たまにそのような意見を頂きますが、正直原作俺ガイル見直してこいと言いたい。あんな行動できる人間いないだろって言いたくなりますね……会話、行間を読んで、その時の心情、行動……そりゃ他作品に乗り込んだらヒロイン取られても仕方ないところあると思います。
ハーレムすぎるのは個人的にはどうかなぁとは思いますけどね。

さて、話を戻しますが、前回同様「そこっ!?」ってところを攻めていきます。あまりこの二人が絡んでる小説ってないんで自分が見てみたかったってだけです。
勝手に伊吹は、サキサキから家庭力とお姉ちゃん属性を外して身長とある部分を小さくしたヤツと思ってるんで、もしかしたら解釈違いがあるかもしれませんが、どうかご容赦を。


澪「あんたって馬鹿?」 八幡「かもな」

 休息日というものは、その名の通り休むために設けられた日のことを指している。

 休むと言っても、その形態は人によって様々だ。友人と食事や買い物を楽しむ者もいれば、一人で読書をしたり、ゲームをしたりすることが一番という者もいる。

 

 俺の場合は、一人で惰眠を貪ることだろうか。休みの日にしか許されない、二度寝や昼起きの幸福感は何物にも変え難いものがあると思う。

 たとえ部屋から出た途端、ゴミを見るような目を向けてくる妹がいたとしても、最高の休日に変わりはないし、今なら目覚めれば隣に天使がいるから、心地よくうたた寝をすることが出来るのだ。

 

 つまり、俺が言いたいことは……

 

「……あの、一人でゆっくりしたいんですが」

 

「駄目!比企谷君は目を離したら、すぐに変なことするでしょ!」

 

 この世話焼きで全く信用してくれない委員長から解放して欲しいということである。

 

 

***

 

 

「今日は休みなんだぞ。クラスメイト達の行動は尊重するんじゃなかったのかよ」

 

「普通ならそうだよ。でも坂柳さんや龍園くんと知り合っているのに加えて、無人島での前科があるからね。今日は私から逃れることは不可能だと思ってね」

 

「何、お前そんなに俺と居たいの?今日一日一緒に過ごす?」

 

「……え、い、いやそんなつもりじゃあ……///」

 

 おい、そこで顔を逸らすな。何?そんなに俺のこと監視するの嫌なわけ?だったら彩加にでも任せてくれれば、俺も楽しめてWinWinの関係になるから推奨させて欲しい。完全にWinWinだ。

 

 それに、この試験で俺がやるべきことはもう終わったのだ。考えるべきなのは試験後のこと。そして生徒会長に呼び出された件についてである。

 プールで話したのが初めての会話だったのだが、一言目から生徒会室に来いなんて……悪いこと何かやらかしたか?でも数学でたまに寝てるとはいえ、Dクラスに比べれば頑張ってる方だと思うのだが。

 あの坂上先生の眠たくなるような口上でもほぼ寝ずに、しかも天敵ともいえる数学に俺が取り組んでいるのだから、むしろ褒めてもらいたいものである。

 そんなこと言ったりした日には、「学校で勉強をするのは当たり前だろう。何を言っている?」とか言われて阿保を見る目を向けてくるに違いないだろうけど。

 

 向こうは俺のことを知らないだろうが、俺は堀北会長についてある程度のことは調べてある、性格や人間関係も会話からある程度推察しているしな。

 ……だからこそ、呼ばれた意味が分からないのだが。

 

「と、とにかく!私は今日一日、比企谷君を監視するから!」

 

「……別に何もしないっつーの。もし俺が今日龍園や坂柳と接触したら、料理当番一週間変わってやる。それに……一生に一度乗るか乗らないかの豪華客船だし、楽しまないと損だぞ?ほら、あれ」

 

「あれ?……あっ」

 

 俺が示した方向には、こちらの様子を窺う白波、小橋、網倉の姿があった。

 恐らく、一之瀬を遊びに誘いに来たのだろう。そうに決まっている。断じて俺と一之瀬の会話を盗み聞ぎして楽しんでたりはしていないはずだ。

 

「それに今回の試験、これまで神崎に従ってきたんだ。それは最終日もそう。龍園の案もお前と神崎が反対なら受ける必要はない。あくまで俺は俺の意見を言っただけだからな。警戒しすぎだっての」

 

「……そうだね。饒舌なところが少し怪しいけど、今日は監視なしにしようか」

 

 よし、これで久しぶりのボッチライフを送れる。しかも豪華客船でだ。比企谷八幡のボッチライフin豪華客船といったところだろう。二年半後、小町に自慢してやるかな。

 

「ただし!明日はずっと神崎くん達といること!いいね?」

 

「了解だ、委員長」

 

「よし。ごめんね、もう比企谷君との話は終わったから。どこから行く?」

 

「いやいや、無理しなくていいんだよ帆波ちゃん。比企谷君と監視の名目で一日一緒に過ごせるんだから、そっち優先しても……痛い、ほっぺ抓らないで~」

 

「いーや、そんなこと言う子にはお仕置きだよ。まったく、何もないって言ってるのに~」

 

「でもでも、前抱き合って幸せそうな表情を浮かべて―――「まずはご飯食べに行かない?うん、行こう!席無くなっちゃうかもだし!」

 

 賑やかなのはいいことだな。リア充Bクラスはやはりこうでなくてはならない。もちろん俺は除かれるけどね?

 一之瀬が出ていって少しした後、携帯が鳴りだした。相手はロリである。俺は見ない振りをすることにした。

 

 ……どんどんメッセージが送られてきているのなんて、俺は見ていない。

 

 

***

 

 

 こうして改めて豪華客船を歩き回ると、その内装の高級さに驚かされる。

 デッキにあるプールにしても、ジャグジーにしても、スパにしても、シアターにしても、レストランにしても……どれか一つですら、人生で一度行くか行かないかのレベルなのだ。

 それがこれだけ並んでいれば、海の上とは思えないほど充実した生活が送れているのだろう。実際に多くの生徒とすれ違うが、誰であれ楽し気に友人や個人で豪華客船でのクルージングを楽しんでいる。

 

 ……今朝方牛グループの試験が終了したとは思えないほどの活気で満ち溢れている。優待者は小橋だから、一之瀬や神崎は慰めたり理論武装で小橋が感じているであろう不安を取り除こうとしていた。

 さっきの様子だけを見るのなら、かなりマシな精神状態に落ち着いたんだろう。一日一之瀬達仲良し四人組で遊べば、憂鬱な気分も消え失せるはずだ。

 

 問題は誰が試験を終わらせたのかだ。猿グループは高円寺が正解して終わらせているが、生憎牛グループには知り合いがクラスメイトぐらいしか……いや、確か佐倉さんと池、須藤の二馬鹿がいたか。この三人に話を聞いてもいいが、正直なところ既に賽は投げられているし、足掻くことすらできない。こればかりは当たっていないことを祈るしかないな。

 

 入ったことのなかった海鮮料理店を見つけたので席に座り、携帯を取り出す。

 歩いている間、マナーモードにしていたためか振動が鬱陶しいほど響いていたのだが……全く音沙汰がなくなったのだ。

 こうなると坂柳の立場から取れる行動は二つ。俺が出ないのが試験に集中していると考えて連絡を取るのを諦めたか、橋本や神室、鬼頭に俺を探れと命令するか……後者だろうな、うん。

 

 やべ、結構まずい状況になっているかもしれない、などと考えつつ、カウンター席で料理を待っていると、隣に座ってきた生徒がいた。

 自然とそちらに視線を向けると……Cクラスの伊吹澪が、いつもの不愛想な顔をしてメニューに目を通していた。

 えーっと、あの、伊吹さん……?他にも席空いてますよー、何ならあのテーブル席とか。最低でも隣一席分は空けるとかしてくれたりするもんじゃないんですかね。

 

 こちらに不躾な視線に気が付いたからか、元から目的があってここに来たのかは知らないが、注文を終えると同時に一瞥をした後話しかけてくる。

 

「……何」

 

「いや、別に。ただ、なんで隣に座んのかなと」

 

「どこに座ろうが私の勝手でしょ」

 

「……」

 

 確かにそうだ。空席ばかりの店内でどこに座ろうがそれは個人の自由。

 だが、Cクラスに理由のない暴力を振るわれ、伊吹の青パンツをガン見した俺の隣に座るのは、普通に考えてもおかしくないだろうか?

 

「……はぁ、馬鹿なこと考えてるのね」

 

「ばっ!?ち、ちげぇし……」

 

「じゃあ何考えていたわけ?」

 

「そりゃあお前、明日最終日になる試験のこととか」

 

「龍園と契約を交わしたアンタが、気にするようなことが何かあるわけ?」

 

 そう言えば伊吹は嫌そうとはいえ、龍園の幹部枠みたいな位置にいるんだったか。話が回っていても特段おかしいわけではない。内容はかなり細かく、項目も10程度ある契約を龍園と結んだのは確かだが、言い方的に全てを把握しているわけではなさそうだ。

 龍園の奴、試験の優待者の法則のことしか話してないらしい。部下にすら黙っているのは独裁者らしいといえばらしいけど。

 

「そりゃ気になるだろ。他クラス、特にDがどんな動きをするのか直前まで見てみたいんだよ。龍園はDクラスをとことん追い落としたいと考えているだろうが、俺はしがないBクラスの一員でしかない。だからこそ、お前らに一学期にやられたような、突然の襲撃や攻撃を浴びるハメになるのを出来る限り事前に防ぎたいってだけだ」

 

 そう言ったところで俺の注文していたコース料理は運ばれてきたので一旦会話をやめたのだが、伊吹の方を見ると、なんとも珍妙な生物でも発見したかのような顔を向けてきていた。

 

「……なんだよ」

 

「あんたって馬鹿?」

 

「かもな」

 

 龍園と契約を不備なくとはいえ、結んだ時点でそういわれても仕方がないこともかもしれない。一番俺が警戒していることを既に龍園は察知していると思われるが、それを踏まえると俺の行動はおかしく映るはず。

 

「龍園に面と向かって契約を突きつけるとか常軌を逸してる。アルベルト……いつも龍園の身の回りの世話とかボディーガードをしてる奴が怖くないわけ?」

 

「めっちゃ怖いに決まってんだろ?」

 

「は?」

 

「怖いのは怖いが、俺は何よりも俺の利益が一番だからな。山田が怖かったから自分の身を守れませんでしたっているのはあまりにも情けなさすぎる。少しは自分で動かないと生きていけないって思ってるだけだ」

 

 そう告げると、何が面白いのか伊吹は少しだけ笑った。なんだ、そんな顔も出来るのか……これに声がなんとなく彩加に近いこととかで意識をしてしまう。

 落ち着け俺!相手は彩加じゃないんだぞ!……彩加ならいいのか、いいのか……?

 

 

***

 

 

 根暗そうな奴。それが、私が抱いた比企谷の第一印象。

 Bクラスへのちょっかいが大した効果を持たなかったと思った龍園が、ターゲットに選んだのがコイツだった。

 お人好しだらけの、仲が良いBクラスの中で輪に入ろうとしない稀有な男。一人を好むだけかもしれないけど、一之瀬達の反応を見るために最適な人材だった。

 

 嘘の手紙を書いて靴箱に入れ、監視カメラのない特別棟に呼び出して……暴行。コイツが一之瀬に泣きついてBクラス側が訴訟を起こすことを見越した上でのちょっかい。……にしてはやりすぎだったとは思うけど。

 

 けど、コイツは最初から告白なんて信じてなかった。隠れていた龍園の部下たちの存在を察知してか知らないでかは分からない。それでも、看破したのは事実。

 それに、どちらかと言えば比企谷はこの件をなかったことにしたがっていたという。龍園からすれば、何も行動を起こしてくれないのが一番利益がない。得られる情報も比企谷がそういう人間だってことだけ。

 でもBクラス自体がそのことを許せなかったらしい。呆れたお人好しぶりだけど、龍園は楽しそうに笑っていたっけ。本当に、ふざけた奴だと思う。

 

 それでも、龍園がトップに立たないとCクラスは上に上がれない。クラスの誰もが龍園のことを嫌いであるのに逆らわないのは、傍にいるアルベルトや石崎が怖いのもそうだけど、龍園に従うのが一番上にいける可能性があるってみんな思っているからだ。

 

 無人島でも暴れた龍園だけど、今回は不気味なくらい何もしていないように見せていた。

 怪しいと思って問い詰めれば、横で鮪の刺身を食べているコイツに提案された条件を呑んだからだと言う。

 

 Bクラスの中でも異質。一人を好み、ボイスレコーダーを常に持ち、龍園が最後の敵として言っているAクラスの坂柳、更には葛城とも縁がある男。

 そして、あの時私のパンツをガン見した男!

 

「……ちッ」

 

「おい、いきなりの舌打ちはやめろよ。飯がまずくなるだろ。……さっきまで笑ってたのにいきなり舌打ちってどういうことだよ……」

 

「アンタ、単独行動取っていいわけ?あの一之瀬や神崎が許さないと思うけど、アンタは特別ってわけ?」

 

「いや、普通に無許可だが」

 

「……はあ!?」

 

「うるせえ、耳元で大きい声出すな」

 

「あ、ごめん。いや、そんな勝手な行動許されるの?」

 

「許されるわけないだろ。バレたら一生一之瀬による監視生活になるだろうな」

 

「……やっぱり、アンタって馬鹿」

 

「うっせ、ほっとけよ」

 

 Bクラスでも異端な理由が更に増えた。

 だって私は敵だというのに、軽くこんなことを言ってくる。

 そしてこれが計算なのか、演技なのか、本気なのかが分からない。

 リスクリターンの計算に長けている、って龍園が言っていたけど、全然長けてないじゃない。

 

「それ、私に言っていいわけ?」

 

「だってお前ボッチだろ。ボッチに何か言っても話す相手がいないから情報は流出しない」

 

「……掲示板って知ってる?」

 

「……」

 

 確かに、私は特段仲が良い同性がいるわけでもなければ、一人でいる時の方が圧倒的に多い。ボッチと言えばボッチだろう。

 それでも情報を流す手段なんて、今は其処ら辺に転がってる。

 ……やっぱコイツ馬鹿だ。だって凄く嫌そうな顔してるし。

 

「……何が望みだ」

 

「別に何も……いや」

 

「いや?」

 

「学校で私が暇なとき、ご飯でも奢って」

 

「………」

 

「何?不満?」

 

「いえ全く。いつでも呼べ。連絡先はこれな」

 

 特に目的もないけれど、Bクラスだしポイントは持ってるはず。なら、たかるくらいがちょうどいい。

 嫌そうな顔をするもんだから端末に書き込む動作をしたら、手の平代えて連絡先を記した紙を残して出ていった。

 その様は見ていて呆れるもの。けれど、少し興味が湧いた。

 

 龍園と契約を交わす馬鹿で、交友関係が異常で、けれども本質はボッチ。こんな人間他にはいない。

 ……馬鹿がこれから先何をしでかすのか、飽きるまでは適度に呼び出して奢ってもらおうかな。

 

 

***

 

 

 伊吹に飯を奢ることが確定してしまった。何故だ。

 

 伊吹がボッチだからと少し安心していた?パンツ見た罪悪感から?

 

 違うな、俺の人間強度が下がっている証拠だ。

 

 もしあのさっきのことを伊吹がBクラスにチクれば、俺の行く先々には一之瀬を始めとしたBクラスメンバーと共に行くことになるだろう。さすがにメールや電話に干渉する程ではないにしても、思うように動けなくなるのは明白。

 

 第一、あんなに他人と会話をしようとしていることが染められてきている証拠だ。

 

 ……昨日の夜、星之宮先生に言われた言葉が思い返される。

 

 『見ない振りをして、見なかったことにして誤魔化して。それでも関係は絶てなくて。中途半端な人間になって。それは、君が求めるものなの?』

 

 ………俺が求めるのは、何だ。

 自問自答している内に完全休息日は終わりを告げ、試験最終日がやってきたのだった。

 

 

***

 

 

 試験最終日、相も変わらずAクラスは動かない。

 龍園も他クラスと協力して学校側の法則を看破する提案が蹴られてからというもの、ニヤけ面をするのみで動かない。

 Bクラスは神崎を中心にDクラスと延々と会話をしているが、三人とも優待者ではないことは確認済みであるため、他クラスを探るように視線を向けることしか出来ない。

 Dクラスも同様に、堀北を中心に神崎たちと会話をするものの、優待者が絞り切れていないような様子を見せている。……龍園は楽しそうにニヤけているが、内心めっちゃ笑っていそうだ。主に堀北が懸命に優待者の情報を漏らさないようにしていることで。

 

 五回目の試験時間が終了し、一旦部屋から出ていく。俺たちBクラスとしてはここからが本番だ。

 

「さて、念のために貯金からポイントを出して用意してみたけど…どうだろ。辰グループはどんな感じ?」

 

 二種類の携帯、優待者であることを示すものと元々一之瀬が持っているものをポケットにしまいながら、各グループの近況を聞いていく一之瀬。

 基本的に生徒が学校側から支給された携帯端末は、固定のSIMカードが入っている。これ自体を入れ替えることで携帯自体の履歴やメールなども入れ替えることが出来るのだが、携帯番号だけは元々の端末に依存するらしく、携帯入れ替え作戦で相手に優待者であることを示したとしても、通話通知で本当の持ち主がバレてしまうようになっている仕組みらしい。実際に一之瀬と浜口が入れ替えてみたところ、二台とも使えなくなったという。

 星之宮先生に確認したところ、携帯のSIMカードのロックはポイントを支払えば解除できるらしい。最後の話し合いに向け、集まれたメンバーの、Bクラスが優待者ではないグループに一台ずつ、優待者のメールが入っている偽端末を預け、最後の手段として確保した。

 

 思っていたよりも、一之瀬も神崎も頭がキレる。クラスの協力があるのもそうだが、実際に様々なパターンを考えることが出来ているのはそれだけ状況が想定でき、かつルールをしっかりと理解している証拠だろう。

 だからこそ、申し訳ないと少しだけ思う。どんなに細工をしようと、どんなに騙そうとしようと、Cクラスだけは全てを見抜いているのだから。それに、俺も全クラスの優待者を知っている。

 

「八幡、次が最後だけど頑張ろうね!作戦がうまくいくといいなぁ」

 

「そうだな。各グループの展開次第で作戦を使うか使わないかも決まるし、それぞれのグループが頑張るしかないからな。俺は神崎の指示通りに頑張るだけだけど」

 

「言質は取ったからな。妙な真似をしたら即座に一之瀬に突き出すぞ」

 

「脅し文句がそれってどうなんだよ。……彩加も頑張ってな」

 

「うん!八幡や神崎くん、安藤さんのグループは一番大変だと思うけど、僕も少しでもクラスに貢献できるように頑張ってくるから!」

 

「おう」

 

 相変わらず彩加はいい奴だ。はにかんでいる笑顔がこれまた最高なのである。試験終わったら部屋で彩加とトランプでもしようかな。

 試験終了した後の他クラスとの接触禁止の時間。その間だけが、ゆっくりできる時間だと俺は知っているのだから。

 

 

***

 

 

「残り時間も5分になってしまったな」

 

 六回目の最後の話し合い。未だに優待者は分からず、クラスの動きも変わらない。

 神崎は偽の優待者作戦を行う合図を出してきたが、俺はまだやめた方がいい合図で返す。

 だが、最後まで何も動かないまま、試験は終了してしまった。

 全員が部屋を出ていったわけではないので、チャット神崎にメッセージを送る。

 

『すまん、早くゴーサインを出すべきだった』

 

『俺も焦っていたから気にするな。Aクラスに上がるせっかくの機会だからと作戦を立てたはいいが、このグループなら見破ってくる可能性は高いだろう』

 

『……かもしれないな。とりあえずは帰って他のグループの様子を聞くか』

 

『そうだな』

 

 そうしてDクラスが出ていった後、俺たちも出ていこうと席を立つ。

 すると、何故か退出しようとしなかった龍園がニヤけつつも、俺たちBクラスと葛城達Aクラスに向かってこう言ってきたのだ。

 

「お前らにいいことを教えておいてやる。このグループの優待者はDクラスの櫛田桔梗だ」

 

「何……?」

 

「俺は優待者の法則ってのを看破したんだよ。ま、信じるか信じないかはお前ら次第だがな」

 

 それだけ言って部下を連れて部屋を出ていく龍園。

 残された俺たちは、ただその背中を見つめることしか出来なかった。

 

 ……本当にうまいやり方だ。よくもまあこんなことを考えつくものである。

 話し合いの時間、堀北をはじめとしてDクラスを泳がせておきながら、最後、Dクラスがいない時に俺たちに少しだけ情報を提示する。

 これだけの情報で裏切ることなんて出来やしない。しかし、回答時間にもしかしたらと思い、名前を書くことぐらいはこのグループ、いや、神崎と葛城はそう指示するはずだ。

 ただ堀北を煽るための材料になればいい。それくらいの軽い感覚で考えたとは思えないくらいのタイミングと仕掛け方。

 

 ……二学期が始まったら、本格的にDクラスはまずいかもな。南無南無っと。

 

 

***

 

 

 試験時間が終了したことで、それぞれの部屋に戻り、所定の時間を待つ。その間、彩加や柴田、神崎とトランプをしていると、神崎が話しかけてきた。

 

「……今回は本当に何もしないようだな」

 

 未だに俺の動きを探っていたのかは知らないが、神崎は俺が携帯を動かす様子がないことを見て少しは安心しているようだった。

 さっきまでの裏切りの連続は、多くの生徒を不安にさせただろう。もちろん当てずっぽうであったり、一之瀬の兎グループみたいな他クラスに偽の優待者情報を掴ませたところもあるだろうが、龍園が指示した裏切り成功のグループも多い。

 前回の無人島では、俺自体が動きを見せたことで結果的にBクラスが勝利したが、今回は考え方が逆だ。すなわち、俺たちBクラスがポイントを得るのではなく、他のクラスのポイントを減らす。

 一先ずは神崎の疑念を晴らすか。

 

「疑いすぎだろ。無人島の時はあれが最善だっただけで、今回の試験みたいな協力型は俺にはハードルが高すぎるんだよ」

 

「無人島のサバイバルも協力型の試験なはずだが」

 

「もちろん、手元のポイントを残そうとすればクラスで協力して節約に努めるのがオーソドックスな方法だろう。けど思い返してみろ。神崎、あの試験での行動について、真嶋先生はなんて説明した?」

 

「自由……それがどう関係する」

 

「自由。それってつまり、ポイントを使い切るのも、他クラスのリーダーを当てるのも、リタイアするのも、節約するのも自由ってことだろ。お前と一之瀬は、節約をせずに試験放棄したと思われるような行動をとった龍園は負けていると言ったが、実際、単独行動を取らなかったらあんな結果にはならなかったはずだ。BとDにはスパイを送り込み、どんな契約かは知らないが、葛城と契約を結んだうえで、坂柳派のAクラスからリーダー情報を入手。クラスメイトのほとんどが豪華客船で楽しい生活を送り、数人が無人島で工作を行うだけで一定の成果を上げようとしていた。それを封じるにはクラス全員で節約生活をしていると思わせたうえで、影の薄い俺がこっそりと動いた方がいい結果に繋がると思った。だから無断で単独行動を起こしたってわけだ。……今となっては、お前には説明するべきだったとは思うけどな」

 

 未だに俺を信じていない神崎に、前回の無人島での試験を振りかえる形で今回の試験では何もしていないことの信憑性を高める。ついでに強カードばかり出してうざい笑い声を上げる柴田に対して、苦しんでもらおうと革命を起こした。

 

「……次からは一之瀬には黙っていてもいいが、俺には教えてくれ。手伝えることがあるはずだ」

 

「そうだな。この面子になら言うべきだろうし。反省してるよ」

 

 頭がキレ、運動もこなせる神崎に運動神経お化けの柴田、存在が天使である彩加のこの面子には、今思えば言っても良かったかもしれない……いや、柴田は駄目だな。口を滑らせるところが想像できてしまうし。

 

「八幡、ちゃんと自分の行動を振りかえれて偉いね!あの無人島の時、僕は本当に苦しい思いをしたんだからね?」

 

「……お、おう。ごめんな彩加。今度からはちゃんと言うことにする」

 

「約束だよ!」

 

「おいお前ら。試験の話しながら俺をいじめるのやめろ」

 

「いじめてないだろ。ほら、5」

 

「革命したのお前なんだけど!?俺の手持ちが強いこと知って革命したんだろうが!」

 

「当然だろ。お前、笑いながら俺たちにジョーカーとか出してきたじゃねえか。ムカついたから革命した。それだけだ」

 

「確かにさっきまでの柴田はうざかったな」

 

「……そうだね」

 

「戸塚まで!終わった……」

 

 大富豪だった柴田だが、俺たち三人の結託により大貧民に落ちていった。あの彩加が苦笑いしながらもうざいことを否定しないってどれだけうざい笑い方してたのかって話である。後でボイスレコーダーからデータ写して、クラスのチャットに貼っておくとするか。

 

 ちなみに大貧民になった柴田は罰ゲームとして、帰ってから俺たち三人に飯を奢ることになった。これが彩加なら学食で山菜定食を食べるのだが、柴田なら遠慮はいらないな。前に見た1200円もするラーメンを奢ってもらうとしよう。

 

 そして、結果発表の午後11時。各グループの結果が発表された。

 神崎、柴田、彩加の三人が驚きつつも嬉しそうにしている。そりゃそうだろう。何故なら―――

 

 子(鼠)―――裏切り者の正解により結果3とする

 丑(牛)―――裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 寅(虎)―――優待者の存在が守り通されたことにより結果2とする

 卯(兎)―――裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 辰(竜)―――試験終了後グループの全員の正解により結果1とする

 巳(蛇)―――優待者の存在が守り通されたため結果2とする

 午(馬)―――裏切り者の正解により結果3とする

 未(羊)―――優待者の存在が守り通されたため結果2とする

 申(猿)―――裏切り者の正解により結果3とする

 酉(鳥)―――裏切り者の正解により結果3とする

 戌(犬)―――優待者の存在が守り通されたため結果2とする

 亥(猪)―――裏切り者の正解により結果3とする

 

 以上の結果から本試験におけるクラス及びプライベートポイントの増減は以下とする。

 cl、prという単位がポイントの後ろについてあるが、これはそれぞれのクラスポイントとプライベートポイントの略称でもあった。

 

 Aクラス……マイナス100cl プラス200万pr

 Bクラス……変動なし     プラス250万pr

 Cクラス……プラス100cl  プラス450万pr

 Dクラス……プラス50cl   プラス250万pr

 

 結果として、暫定クラスポイントはこうなった。

 

 Aクラス 934cp

 Bクラス 940cp

 Cクラス 620cp

 Dクラス 375cp

 

 よって……俺たちBクラスはAクラスに上がり、AクラスはBクラスに降格した。

 

「マジでか!おい、やったな神崎!戸塚!比企谷!」

 

「うん!僕たちAクラスに上がったんだ!」

 

 キャッキャしながら盛り上がっている二人を尻目に、俺と神崎は考察に耽る。龍園がしたこと、弥彦の行動、高円寺が正解していた等の情報を合わせると、少しずつ全貌が見えてきた。

 つーか何俺の彩加と手を握って笑い合ってるんだ柴田。そこは俺の席だぞ!

 

「ほとんど紙一重だがな。…ちょっと待ってくれ、どういった内訳なんだこれは?」

 

「……龍園の奴、本当に優待者の法則とやらを見抜いていたらしいな」

 

「ああ、だが何故俺たちやDクラスを狙わなかった。この試験の裏切りが100%成功する状況を作り出しておきながら動かないのは不自然じゃないか?」

 

「……いや、龍園ならAクラスだけを叩きに行っても不思議じゃない。前の無人島で俺たちとDクラスはかなりの成果を上げているし、Dクラスには暴力事件を不問にされた件もある。個人的な恨みで自分の手で潰そうと考えそうな奴だしな」

 

「小橋のところが当てられていないということは、俺たちは50のクラスポイントを得ていることになる。それが変動なしなら、どこかのクラスに当てられたようだな」

 

「そういや高円寺が当てている猿グループにうちの優待者はいたのか?」

 

「……ああ、白波だ。比企谷には一之瀬が口止めをしていたから伝えていなかったが……いや、待て」

 

「どうした神崎?」

 

「何かあったの?」

 

 どうやら神崎は気づいたらしい。

 この結果は単純に見ればCがAを攻撃し、うちは小橋の分のクラスポイント50が高円寺に白波が当てられた分の50で相殺。Aは150ポイントを失い、Cは150ポイントを得る。そしてDは高円寺の50ポイントを得ることになる。

 だがここで、小橋のいた牛グループへの攻撃失敗の事実が浮くことになり、どこのクラスがやったのかを考える必要が出てくる。神崎から聞いたところによる一之瀬達兎グループの結果はAクラスの裏切り失敗。優待者はDクラスに居ると一之瀬が確信を持って言っていたから、Dが50ポイントを得ているはず。

 そうなると牛グループで失敗したのはDクラスとなる。確か須藤か池のどちらかが失敗したと俺は睨んでるが、そう考えるとBとDクラスの計算は合う。

 最後にAクラスがマイナス150でCがプラス100であること。龍園がAクラスのうち二人しか狙わなかったわけがないとすれば、辻褄は合うのだが……。

 

「龍園がAクラスの人間を分けたっていうのか?」

 

「……そう考えると筋は通る。だが奴がそんなことをすると思うのか」

 

「思わない」

 

「……何が起こったんだ」

 

 そう言って神崎は計算を進めるが、やはり違和感を覚えるらしい。計算上は合ってるが、非合理的な動きをすることになるため違和感を覚える奴は覚えるだろうな。

 それでも、真実は闇の中だ。優待者が貰える50万は大金だし、先生が説明時に言っていた仮IDを使われれば見抜くことは不可能になる。

 結果的に残るのは、龍園の気味の悪さだけ。

 

 ……結果だけを見れば契約を結ぶ必要はなかったかもしれないな。それに本当に俺がBクラスをAクラスに上げて卒業したいと考えているのなら、弥彦に情報を与えない方がAクラスとの差が開くため良かったかもしれない。

 ……それでも、()()()()()()()()()()()()()がいいはずだ。

 俺の勝手な押し付けで勝手な行動。それは余計なお世話とも呼ばれるだろうし、偽善な行いだとも思う。

 

 それでも、アイツらには……()()()には、最後に笑っていて欲しい。

 

 こんなやり方しかできない自分が嫌になるが、それが俺なのだから仕方がないことだ。

 いつの日か、俺は断罪されるだろう。クラス単位の戦いの中で単独行動をとる駒など以ての外だ。すぐに切り捨てなければならない。

 だが、それは今じゃないんだろう。この先どんなことが待ち受けているかによっても変わるはずだから。

 俺たちの時間は、高校生という期間はわざわざ言うまでもなく、限られている。

 笑ってしまうくらいに狭い世界の中で、どうしようもないほど短い時間の中で、俺たちは生きている。

 ましてや実力主義の学校。卒業時のクラス順位で余計なレッテルを貼られることも考えられる。Aクラス以外で卒業するのは悲惨な将来を想起させるのには十分だ。

 今回のAクラス昇格を卒業まで維持するのは無理だろう。もちろん出来るかもしれないが、龍園がいくら暴れても反応できないBクラスでは可能性はほぼ0と思ってしまう。

 一応弥彦を使って最低限の抵抗をさせるAクラスに関しても、坂柳の一党体制になるのはすぐのことだろう。

 そして狙うのはBクラス。龍園のような王様がいるわけでもなければ、坂柳が一番の楽しみだと言う綾小路がいるわけでもない。団結力。それしかないBクラスを狙うのは必然だ。

 

 俺が何かを言うよりも、実際に体感して成長していかなければBクラスは……いや元BクラスはAクラスで卒業できない。

 それは俺も同じ。俺みたいなボッチなど蟻のように踏みつぶされるだけだ。

 力を付けなければならない。小町との約束はもちろん大事で、大切だ。けど悪い、小町……俺には退学になってでも守りたい奴らが出来てしまった。

 関係性は欺瞞で、偽善的で馴れ合いに近いかもしれない。それでも、この関係を大事にする理由が今の俺には分かってしまうのだ。

 

 大事だからこそ、失いたくない。失ったら二度と戻らないから。取り戻せないものだから。

 いつか失うことがわかっているから、どんな関係にも終わりはあるから。本当に大事だと思うのなら失わない為の努力をするべきだと。

 ただ、それは詭弁だ。

 でも今は、その詭弁を守ろうと思ってしまっている。

 

 ……ふと、こんな言葉が頭に浮かんできた。

 

 

 ―――選択の結果は誰にも分からない。出来ることは、ただ選択することだけだ。

 

 

***

 

 

 ~おまけ・EXTRAステージ~

 

 

「よ、よう、昨日は悪かったな」

 

『……』

 

「約束通りAクラスを追い抜いた。これで脅すのはやめだな」

 

『……そうですね』

 

「あーっと、ってわけで……もう切ってよろしいでしょうか」

 

『……ええ、いいですよ。切れるというのなら。電話に出ず、メッセージも返しもせず、試験に対しての工作を行っているのかと真澄さん達に調べさせれば、女の子とご飯を楽しそうに食べていたという比企谷八幡君が私との通話を切れるというのなら……』

 

「いやだって、昨日一日お前と関わったら……」

 

『関わったらなんです?』

 

「……一之瀬に監視される生活になるところだったんだよ。お前や葛城と顔見知りだから、余計なことをしそうで怪しいって言ってな。無人島の件もあってか、想像以上に束縛された生活を送ってんだよ」

 

『それは自業自得でしょう。しかしそうですか……それなら仕方ないですね』

 

「だろ?」

 

『ええ。一之瀬さんに監視される生活に比企谷君がなってしまうと、私が比企谷君で遊ぶ時間がなくなるじゃありませんか』

 

「……あの、坂柳さん?今回の件で写真や動画で脅すことはしないんだよな」

 

『もちろんです。約束は守りますよ。その代わり私の打つ手に比企谷君が全力で戦いに来てくれるという交換条件ですが』

 

「それは問題ない。どちらにせよBクラス……いやAクラスとして、下のクラスに負けるわけには行かないからな」

 

『……なら私はBクラスとして挑ませてもらいますね?初めに比企谷君の部屋に通って、比企谷君がAクラスに上がった後に無理矢理彼女にされたと言いふらして回り、一之瀬さんを始めとしてBクラスに混乱を巻き起こすところから始めましょうか』

 

「おい、それマジでやるなよ?本気じゃないよね?さっきちょっとマウント取ろうとしたのは謝るから。今のAクラスでお前に適うはずがないことぐらい悟ってるから」

 

『面白くないですね。かなりいい案だと思ったのですが』

 

「それ決行した次の日には、俺不登校になるからな。絶対だぞ」

 

『それはそれで困りますからやめることにしましょう。代わりに今度一日付き合ってくださいね』

 

「……行けたら行くわ」

 

『では必ず行けるように日程を組みましょうか。学校に帰ってからも少しの間夏休みがありますから、暇な日を合わせましょう』

 

「今のは遠回しに断ったつもりだったんだが」

 

『暇な日がないわけないと思いますが、ちなみにその理由は?』

 

「まあ、アレがアレでだな……」

 

『毎日暇ですか。生徒会に呼ばれた件以外の時間ならいつでも大丈夫みたいですね。帰ってきたら最後の報告会ついでに日程を詳しく決めましょう』

 

「……俺は無力だ」

 

『何を今更言っているので?』

 

「酷すぎる」

 




バカンス編完結!少々八幡らしくないところもあったけど、後程修正する予定ではあるんで多めに見てもらえると嬉しいです。
あと結果ね。計算はしましたが、ミスってる可能性大なので、指摘とかありましたら教えてくれると助かります。
どっちにしても体育祭編にようやく入れるぜ……。

体育祭では特にイベントは予定してません。ほのぼのまったりなBクラスの模様をお伝えする形になるかと。
……その前に夏休みと称して2年生と生徒会と絡ませる予定です。それに加えて綾小路、椎名、橋本、朝比奈先輩、鬼龍院先輩とのちょっとした出来事も書く予定。

あくまで予定ですので、もちろん書いているときにキャラクターが何を話し始めるかで変わります。

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