やはり俺の実力至上主義な青春ラブコメはまちがっている。   作:シェイド

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お久しぶりです。

「どうしてこんなにも放置したの!」
「ようやく続きですか?」
「今年中に終わるんですか?」

……等言いたい事ある方もいるかもしれないので、少しお話します。
ぶっちゃけてしまえば、よう実と俺ガイル舐めてました。特によう実。何?何あれ、どんどん展開変わっていって人間関係変わってくるやん?人増えるやん?俺ガイルの比じゃないやん?
これだから主人公が強すぎるやつは…なんて思いましたけれど、ようやく書く決意が出来ました。週一でほぼノンストップで行きたいですね。
もしかしたら今年度中などという言い訳を使うかもしれませんが、どうか許していただきたい(他の人のssや読書が楽しすぎるのが悪い、俺は悪くない)

続けて…感想&評価をくれた方々ありがとうございます。
お気に入り登録も気づけば2000に到達してました。よう実二期のおかげではありますが、嬉しく思います。
かなり前のことではありますが、確か日間ランキング載ってましたね?
日間ランキング載るの最初の方以来だと思うのですが……10位とか7位とか其処ら辺にいたはずなので普通に嬉しかったです。ありがとうございます。
評価も上がって読まれる回数もかなり増えて、いやもう下手なものは書けない雰囲気を感じております……まあ自分のやりたいようにしか書けないんですが。

報告になりますが、これまでの箇所の整理も一応終えました。番外編もそれぞれの位置に移動させました。
また、誤字脱字や矛盾した展開等になっていればご指摘お願いします。

最後になりますが、この話のタイトル見て「責任!?どゆこと!?八幡何したの!」って一瞬でも勘違いした奴は私と同類です。何度か見間違えて自分で書いているのに期待してしまいました(笑)


なずな「眼鏡、とってよ」 八幡「嫌です」

「ん…」

 

 眩い光を手で防ぐようにしつつ、カーテン越しに空を見れば、陽が高いところまで上がってきていた。

 

「そう言えば二度寝したんだったか…だる」

 

 身体が重たく感じなくもないが、普段できないことをしてしまった背徳感から気分が上がってる気がする。

 今日はいつも通りに一之瀬達と朝食を食べた後、彩加はテニス、一之瀬や白波は女子組でプールに行くということでそれを見送った。

 一之瀬に問題集をやれと言われたものの、当然監視がない中でやろうという気にはならず、中学までは当たり前だった二度寝を久々にやったというわけだ。

 とはいえ、流石に寝すぎた。今月の無料品を買っていないことを思いだし、ケヤキモールに向かうためにのそのそと布団から出る。

 

 簡単な軽装に着替え、携帯だけを持って部屋を出る。

 久しぶりに一人での買い物だからか、少しだけ気分が高揚しているのを感じる。綾小路も出入りすることになってからというもの、本当に一人だけの時間がないのだ。

 彩加と白波は部活があるし、一之瀬は生徒会に入った。それに加えて3人とも交友関係が広いので一学期のように毎日部屋に来ることはなくなった。

 だが、隣室の綾小路。コイツが来るようになってからはどうだ。いや俺がそんな提案をしたというのもあるんだが……

 

 友人と面と向かって言えるような奴が本当にいないのか、大体昼と夜は一緒に食べている。それも夏休みの間毎日だ。空いた時間は勉強を教えてもらったり、身体の鍛え方を見てもらっていたりすることもあるが、ほとんどはゲームに明け暮れている。

 テイル〇オ〇シリーズやモン〇ターハ〇ターを協力してやることも多いのだが、最近はポ〇モン、それも過去シリーズをやることが多い気がする。いや、気がするどころのレベルじゃねえな。ここのところ毎日やっていた。

 

 同時に最初から始め、殿堂入りするまでのタイムアタック。ボッチの俺には過去に出来なかった通信交換で図鑑を埋めて行ったり、ガチのフルバトルをしたりと、まあ簡潔に言えばめっちゃ休みの日を満喫しているのだが、俺も綾小路も遊ぶ相手がお互いくらいしかいないためか、ずっと一緒に居るのだ。

 

 その結果、一人の時間なんぞどこへ行ったとばかりな状態だった。綾小路が帰ったと思えば、今度は一之瀬達が押しかけてきて勝手に飯作り出す始末である。あれかな、本当に俺の部屋は共同生活用に変わってたりするのかしら?

 

 とまあ、ボッチらしくない生活を送っていたのだが、今日はどうしたことか本当に一人である。おかげで優雅で楽しい生活を送れてる。やはりボッチは最高だぜ!

 

 一番優先すべきはマッカンの補充だが、マッカンを買うには学校に行かなくてはならず、どうせ星之宮先生とエンカウントするため面倒なことは帰りに回し、先に無料商品を買おうと、ケヤキモールに着いたのだが……

 

「人で溢れかえってやがるな……」

 

 まるで人がゴミのようだ!とまでは言わないが、恐らく上から眺めたならば、ついそう言ってしまっても仕方がないくらいに人が集まっていた。

 

 あー、前に彩加が言ってた占い師か。確か夏休みの間だけいるんだったか?それでこんなに人がいるのか。

 

 ともあれ、俺の目的は変わらない。人混みを避けるように階段を使って、日用品や食材が売られている階に到着する。

 まだ食材も日用品も買ってないんだよな。野菜を買って帰れば、勝手に部屋に来る誰かが調理に使ってくれるだろうし、無難に人参、玉葱辺りを……いや、ここは大根とかごぼうを買っていった方がいいだろうか。普段買わないような食品の方が被ることもなく、食材を無駄にしなくて済むだろうしな。

 でもそれ、チャットで送っておけば問題ないんじゃね?

 

「―――あんた、料理とかするんだ」

 

 俺が一人で無料食品を見つめながら唸っていたところで、誰かが隣に来て話しかけてきた。

 一瞬櫛田を疑ったが、そこにいたのは伊吹だった。ちょっと隣にいきなり現れる人多くありませんかね?

 

「一応な。自炊しないとすぐポイント減るだろ」

 

「ふーん。でもあんた、ポイントかなり持ってんじゃないの?Aクラスに上がったから尚更ね」

 

「どうだろうな」

 

 相変わらずの無表情な伊吹だったが、嫌な予感がしたので無料食品を買わずに店を出る。

 当然の如く、俺の後に伊吹もついてきていた。

 どうしたのだろうか。龍園あたりの指示か?いや、アイツは俺に興味を示すようになっただけで基本的にはモブの一人としか見てないはずだ。

 うーむ、分からん。

 

「……なんか用か?」

 

「忘れたの?あたしが暇なときにご飯奢るって話」

 

「……あったなそんなの。で、昼飯奢れってか?」

 

「そういうこと」

 

「どこで食べる」

 

「あれ?意外に素直じゃん」

 

 伊吹の反応から見るに、俺が渋ると思っていたのだろう。

 残念だったな。俺は既に諦めるのが早ければ早いほど無駄に時間を取られることもなく、労力も消費しないことをAクラスで学んだんだよ。

 特に一之瀬。俺が数学に取り組むことを拒否すればするほど、その手回しは範囲が広がり逃げ道を潰される。結局させられるなら自らやった方が速く終えられるのをちゃんと学んだぜ!

 おい、今ようやく気付いたかとか思った奴表出ろ。マッカンの刑に処してやる。

 

「いや、ドヤ顔うざ。じゃあついてきて」

 

 伊吹にゴミを見るような視線を向けられた後、元から決めていたのか焼肉店に連れていかれた。

 女子、それもJKともなれば、フレンチ(笑)~やらパスタ(笑)~やらを好むものとばかり思っていたが、伊吹はそうでもないらしい。コイツ前にボッチって認めてた気がするし、クラスに友達いないんだろうな。

 

 ドンマイ!俺は彩加という唯一無二の友達がいるからな、多分。

 ……つかここ、食べ放題とかじゃない高級焼き肉店じゃねえか。肉はもちろん、野菜もドリンクも単品でしか頼めない上に高いのだ。個室が点在してる作りからか、あまり隣の客の声を拾うことは出来なくなっている。

 

 あ?なんで詳しいかって?あの悪魔に連れて来られたに決まってんだろ。

「暇ですか、暇ですね。ならちょっと付き合ってください」と言われて連れ込まれ、肉を焼き献上することになった上に散々弄られ、ポイントを出させられる羽目になったあの憎き事件を俺は忘れない。

 あの日は彩加とのデートの予定だったのにキャンセルせざるを得なくなったのだ。

 俺の絶対に許さないノートに名前書かれすぎて、もはや殿堂入りした悪魔だが、バカンスの試験で奴は俺を脅せなくなった。あの時の俺よくやった!

 

「ねえ、早く入りなよ」

 

「お、おう」

 

「何?キモいんだけど」

 

 伊吹の罵倒も中々の威力だな……櫛田の次くらいか?

 ちなみに一位は言わずもがなヤツである。

 席に着いたところでタッチパネルからどんどん注文していく伊吹。

 ちょっとー?遠慮してくれてもいいんじゃない?高いやつばかり注文してやがる。

 伊吹が頼んだ後に俺もせっかく来たからと注文を終えたところで、伊吹が話しかけてきた。

 

「人の奢りで頼む昼食はいいね」

 

「お前それ俺の前で言うの?そんなんだからボッチなんだぞ」

 

「あたしは別に一人でいいからそうしてるだけ。あんたみたいに仲良しごっこのクラスとは違うから」

 

「そーかよ。俺も別に好きでやってるわけじゃ……」

 

「そう?あんた、かなりBクラスに馴染んだんじゃない?」

 

「馴染んだ?」

 

「前はかなり一匹狼みたいに過ごしていたから、龍園の標的にされたわけだけど。今じゃ誰かしらが隣にいるでしょ?」

 

「……そうかもな」

 

 確かに、部屋に一之瀬や彩加、白波が来るのはもはや当たり前の光景だし、最近だと綾小路だってそうだ。

 綾小路に関しては協定があるからいいにしてもだ。

 やはり俺は、俺が自覚している以上に……。

 

 ……仲良しごっこ、ねぇ……。

 

 

***

 

 

「ねえ、さっきの見た…?」

 

「うん。間違いなく比企谷くんだったね」

 

「その隣にいた青髪の人って、Cクラスの伊吹さん?」

 

「うん、もしかしてあの二人……って、帆波ちゃん!?」

 

「……何かな」

 

「う、ううん別に!」

 

「ちょっと待ってみようよ。何か理由があるのかもしれないよ?」

 

「……そうだね。今日は部屋で尋問かな……」

 

「(一之瀬さん……!ハードモード……!前の黒戸塚君同様に黒いオーラが出てる……!比企谷君ドンマイ…後で感想聞こうっと)」

 

 

***

 

 

「あー美味しかった。また奢ってもらおうかな」

 

「ほんと勘弁してくれ。ここまで高い食事を頻繁にしていたら一之瀬に勘づかれる」

 

「へえ。一之瀬にポイントまで把握されてるんだ。束縛彼女って噂は本当だったみたいね」

 

「束縛彼女って何だよ。まず一之瀬が彼女ってところから間違ってるぞ」

 

「龍園のやつが言ってたのを聞いただけなんだけど」

 

「龍園かぁ…」

 

「…何?龍園だったらなんかあるの?」

 

「いや、アイツもそういうこと興味あるんだなと思ってな」

 

「ただニヤニヤしたいだけでしょ。いっつも気持ち悪い笑み浮かべてるし」

 

 伊吹の愚痴を聞き流しながら、俺はCクラスの暴君の姿を想像するのだった。

 将来、面倒なことにならなければと思いながら。

 

 

***

 

 

「こんにちはっ、比企谷君!」

 

「…おっす。じゃあ俺はこれで」

 

「……は?ねえ、話を聞いてくれるんだよね?部屋に入れてもらっていいかな?いいよね?」

 

「はぁ…はいよ」

 

「お邪魔しまーす♪」

 

 伊吹に奢らされた次の日。

 部屋に櫛田を招くこととなった。

 朝からいつもの面々が訪れご飯を食べた後、彩加を途中まで送ってから寮まで戻ってきたところで、たまたま櫛田とばったり出会ったのが運の尽き。

 船上で本音をぶつけていいと確かに言ったのは俺だ。だが、部屋にまで押しかけてくるのは違うのではないだろうか。

 まあ、既に部屋に入って寛がれてる時点でもう無駄な抵抗なんだけどね。

 

「ふーん、案外綺麗にしてるんだ。仲良し組のおかげかな」

 

「仲良し組?」

 

「知らないの?お前らBクラスの一之瀬を筆頭とするグループは仲良し組って言われてんだよ。一部の女子が言い出したことだけどね」

 

 全く知らない情報が飛び込んできたな。どうやら俺を含めた、一之瀬、神崎、柴田、彩加、小橋、網倉、白波は仲良し組と言われてるらしい。普段から一緒に居ることが多いからだとか。

 そんな仲良く見え…ますね、そりゃそうだ。女子はいつも百合百合してるし、柴田は足踏まれるし、彩加にドキドキさせられるし、神崎は冷静にツッコミを入れるし…バランスいいな、そう考えてみれば。

 

「で?」

 

「は?何」

 

「いや、わざわざ押しかけてきたってことはあれだろ、愚痴かなんかあるんだろ」

 

「むしゃくしゃしてるから殴っていい?あ、いや蹴っていい?」

 

「暴力は嫌なので愚痴だけにしてくださいお願いします」

 

 使えないな、とか独りでにぼやく櫛田だが…え、怖すぎない?なんで速攻で暴力振るう選択肢浮かんでるの?ストレス発散に俺殴りに来たとか怖すぎるんだけど…。

 俺が秘かに震えていると、櫛田が一方的に語り出した。曰く男子の目線がいやらしいだの、気持ち悪いだの、塵だの死ねばいいだの。まあ出てくる出てくる。どんだけ貯めてたんだコイツ。

 

 堀北のことだけじゃなかったのも驚きだが、一方的に語られるそれに相槌を打ち続ける。

 こういう時は何か言って欲しいわけじゃないって小町に習ったからな!千葉の兄は出来る兄なのだ。大体は妹の教育なのも千葉特有の現象である。

 

「大体、堀北なんかにあんな策が打てるわけがない!誰かが後ろにいるってなんで分からないんだろ。だから皆Dクラス……」

 

 お前もDクラスだけどな、という言葉は飲み込みつつも、櫛田の愚痴に相槌を打つ作業を続ける。

 櫛田は気づいているんだな。全クラスから見ても気づいてそうな奴少なそうなのに。その後ろにいる奴が誰かは分かってないようだが。

 

 …コイツは運動も勉強も一番に慣れないと諦め、それでも強い承認欲求により誰よりも信頼される人間になることを決め、それで欲求を満たしてきた。それは間違いではないだろうし、櫛田なりの結論と言うやつなのだろう。

 だが、俺には勿体ないと感じている部分もある。何気にコイツの蹴りや拳を稀に食らっているが、女子とは思えない凶暴さがある。勉強に関してもテストで悪い成績をとってるわけじゃない。堀北の裏に誰かいることに気付ける推察力。

 もしかしてだが、櫛田は……

 

「なあ」

 

「だから堀北の奴は嫌いなんだよ!!…何?ある程度吐けて少し気分良くなったから聞いてあげるよ」

 

「ここ俺の部屋なんすけど…あ、なんでもないです」

 

 上から目線の言葉に反抗しようとしたが、ガンつけられて日和ってしまった。ダサいな俺…。

 

「で、何?」

 

「櫛田。……お前、自分で自分をセーブしてないか?」

 

「は?」

 

「あーいや、俺の勘違いかもしれないんだが、お前、今の成績よりポテンシャル的には上なんじゃねーの?勉強や運動で一番になれないから、信用されることで一番になる…そう言ってたよな」

 

「うん、そうだよ。私が一番になれるのはそこしかないから」

 

「その考え方だ。過去に負けたことで、お前はもう勝てないんだと諦めてしまってる。それがお前の力をセーブすることに繋がってないか?テストの成績的にも、運動神経的にも、もっと上な気がするんだよ、お前は」

 

「いきなりそんなこと言ってきて何?キモいんだけど」

 

「おーい、お前のために言ってるんだぞ」

 

「アンタに言われたところで何にもならない。…今日はもう帰る」

 

「へいへい」

 

「またストレス溜まったら殴りに来るから」

 

「いや殴らせねえよ!?」

 

「……チッ」

 

「おい、今舌打ちした?」

 

「…舌打ち?ないない、そんなことしないよ!じゃあもう帰るね!バイバイヒッキー君!」

 

 舌打ちからの豹変ぶりに一瞬呆気に取られてる間に、櫛田は部屋から出て行った。

 俺の言葉は届いただろうか?まあ届かなければ……アイツとは、そのうち会えなくなるだろうな。

 

 ……それよりもヒッキーって何?まさか俺のことなのか!?

 

 

***

 

 

 夏休みも後2日となった今日。

 堀北会長から呼び出しの連絡を受け、俺は生徒会室に向かっていた。

 昨日までは色々あったもんだ。葛城と綾小路に遭遇して、葛城の妹の誕生日プレゼントを送るのに協力したり、一之瀬に怒られたり、椎名と一日中図書館に篭ったり、一之瀬に正座させられたり、綾小路からの厳しすぎるトレーニングを死ぬ気でこなしたり、一之瀬に伊吹との関係を問い詰められたり、柴田と平田と遊んだりと、まあまあ忙しい日々を送っていた。

 当然のように、朝か夜は一之瀬と白波と彩加と一緒に食べていたしな。

 半分以上一之瀬が関与していることは放っておくとして。

 

 ……ここに入学する前は、1人が当たり前だったんだがな。

 気づけば毎日部屋から出ては、誰かしらと会い行動を共にしている。

 

 それを悪いことと言う人は少ないだろう。むしろ良いことだと言われそうだ。

 コミュニケーション能力も随分と向上したように思える。前は会話をするたびに噛んでいたが、今では噛むことはごく稀になっている程に。

 

 …俺はどうしていくべきなのだろうか。以前答えは出ないままである。

 

 考え事をしていたせいか、気づけば生徒会室に前まで来ていた。

 ノックをし、中に入る。

 

「失礼します、比企谷です」

 

 中には堀北会長と……南雲副会長の2人がいた。橘先輩は今日はいない様子である。

 

「来たか。今日はお前に会ってほしい奴がいて呼び出した。南雲」

 

 堀北会長の隣にいた南雲がこちらを向く。

 ここまで至近距離では見たことがなかったが、近づくと本当にイケメンだなチクショウ!

 最近綾小路に鍛えられているおかげで分かるが、かなり身体も鍛えられているらしい。サラリとした手入れされているであろう金髪を揺らしながら、俺を見つめている。

 

「副会長の南雲雅だ。初めましてだな?比企谷副会長」

 

「そうですね。俺は一方的に南雲先輩のことを知っていましたけど」

 

「俺のこと知っててくれてたんだな」

 

「むしろ知らない方がおかしいと思いますよ。今の2年Aクラスは入学時Bクラスだった。それが今では覆せない点数差をつけている。南雲先輩がリーダーとして引き上げたって話は有名ですし、次期生徒会長って意味でも知らない生徒の方が珍しいでしょ」

 

「ああ、だろうな」

 

 そんなことは分かっているとばかりに肯定する南雲先輩。ほんとなんでだろうね、イケメンってどんな仕草しても似合うの。世の中世知辛いよな。

 

「俺はコイツの能力を見込んで生徒会に勧誘した。南雲、お前が生徒会長になってからも役に立つはずだ」

 

「へぇ、堀北先輩が言う程ですか。なあ、比企谷」

 

 何を思ったのか、南雲先輩は俺に近づいてきた。

 お互いの息遣いが伝わるくらい至近距離になったところで、南雲が俺の耳元に口を近づける。

 

「堀北先輩の俺への牽制がお前ってわけだな。桐山じゃあ俺には勝てないから一年生のお前というわけだ。俺は生徒会長になり次第、この学校を今以上に実力主義に変えていくつもりだ。真の実力至上主義の学校とでも言えば良いか?まあ、どこまで出来るかは分からないが…少なくとも俺にとって都合のいい環境になるわけだ。そんな中でもお前は俺に勝てるのか?」

 

「さぁ、どうでしょうね。俺ごときに南雲先輩に勝つなんてできっこないですよ」

 

「…俺を楽しませてくれよ?堀北先輩が卒業したらしばらく退屈だろうからな」

 

 そう言って、南雲先輩は俺から離れていく。

 その顔は俺への興味を失っているように見えた。いや、恐らく堀北先輩が選んだ人間という一点以外、興味なんてないだろう。

 当たり前と言えば当たり前だがな。

 俺はハナから、南雲どうこうしようとは考えていないのだから。

 

 

***

 

 

 生徒会での顔合わせを終え、帰路につく。

 南雲雅に関しては一学期から情報として知っていた。入学時にBクラスだったクラスをAまで引っ張り上げ、現在のBクラス…入学時にはAクラスだったクラスに500近くのクラスポイント差をつけている。

 今では二学年全体を掌握し、ほぼ自由に動かせる支配力とそのカリスマ性から次期生徒会長は確実であり、同学年に敵はないと誰もが口にする、堀北学に次ぐ東育10年に一度の天才。

 

 …女関係も激しいともっぱらの噂だ。

 

 南雲の今日の言葉に嘘はないだろう。「真の実力至上主義の学校」…それが行き着く先がどこなのか、未だに分からない以上これまでよりも綾小路に稽古をつけて貰うしかない。

 …変わったな俺。こんな努力する人間じゃなかったはずなんだが。

 

「―――おや?珍しい奴がいるな」

 

 この学校にきて、良かったのかは分からない。

 されど、俺は俺でしかなく、その変化した後も俺であることは変わらないのだ。

 ならば、今を精一杯生きるしかない。

 その結果、どのような結果―――たとえ、退学になってしまったとしても。

 もしお兄ちゃん、約束守らなかったらごめんな、小町。

 

「本当に面白い目をしているんだな、君は」

 

「…鬼龍院先輩、ですよね?」

 

「私の名前を知っているとはな。生徒会副会長、比企谷八幡」

 

 考え方をしていたところに割り込んできたのは、2年Bクラスの鬼龍院風花先輩。

 長髪の銀髪に身長も俺と同じくらいある。初めてこうやって対峙すると分かったが…なるほど、2年最強とはよく言ったものである。

 情報収集の中では2年にも高円寺みたいな奴がいる程度の認識だったのだが、少々考えを改める必要があるらしい。

 

「…副会長といっても、お飾りですがね」

 

「私にとってはそうでもない。堀北学が認めた生徒であるという証だ。それも元はAクラスではなく、クラスリーダーでもないような一般生徒が、いきなり副会長になりもすれば興味も湧くというものだろう」

 

「そうですかね?こんな目の腐ったやつなんて大したことないですよ。堀北会長が買い被りすぎてるだけですし」

 

「はっはっは!目が腐っていると自分で言うのか!予想通り面白い奴のようだな」

 

 予想通り?あれ、八幡目をつけられてた感じ?

 

「買い被りかどうかはこれから次第だな。だが、風の噂で聞いたところによれば、今の1年Aクラスの躍進ぶりは君の裏工作によるものじゃなかったかな?」

 

「…別に、そんなんじゃありませんよ」

 

「ビンゴか、やっぱりだ。反応してくれて助かるよ」

 

 はっはっは!と楽しそうに笑う鬼龍院先輩だが、俺は全く楽しくない…というよりも、焦燥感を感じていた。

 まんまと嵌められた。というかたったあれだけ一瞬詰まっただけで確定させられるとか…この人がクラスのことを考える人だったら俺がこれから何かをするたびに潰されていたかもしれないな。

 2学期は体育祭があり、3学期には全学年合同の特別試験があるとも聞く。

 これからは上級生についての情報を集めなければならないな。

 

「俺はただ、俺に火の粉が降りかからないように行動しただけなんで」

 

「捻くれているな、君は。おっと、呼び止めてすまなかったな。お詫びと言ってはなんだが連絡先交換でもしないか?」

 

「え?」

 

「君は面白い。暇な時にでも君という人間を改めて探求したいと思ってな」

 

「探求するほどの人間でもないですがね…」

 

「それは君じゃなくて私が決めることだ」

 

 うーむ、想像以上の自由人だ。高円寺と同程度なのは本当だったみたいである。

 …この人と繋がりを持っていた方がいいかもしれないな。高円寺と同じように気まぐれだろうが、付き合いがあるだけでも学べるものもあるだろうし。

 

「いいですよ」

 

「決まりだ。暇だったら連絡してきてくれ。時間を取ろう」

 

「…うっす」

 

「いや、君から連絡してくることはなさそうだな。私からするとしよう。……逃げるなよ?」

 

「ひゃい!」

 

 何故だ、どうして初対面で『面倒だし勉強してたことにして断ろう作戦』がバレたんだ…。

 

 

***

 

 

 ふぅ、まさに嵐とも言うべき人だっだな。

 最後の方とか迫力というかなんというか、気圧されてしまった。

 2年生も1年生と同じように、キャラが濃い人が多いのだろうか。

 

「…あ!君!」

 

「はい…?」

 

 鬼龍院先輩から解放され、帰路についていたところですれ違った人に声をかけられた。

 どっかで見たことあるような…ロングヘアーに茶髪…でいいのか?に花型の髪留めをつけている、おそらく先輩と思われる人物。

 

「はじめまして、だよね?私は朝比奈なずな。生徒会副会長の雅と同じ2年Aクラス所属だよ」

 

「はぁ、はじめまして」

 

「君、新しく生徒会副会長になった比企谷八幡君、だよね?ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

 

 朝比奈先輩に促されるままに、俺はあまり人目につかない寮の裏手に連れて行かれた。

 立ち止まり、振り返った朝比奈先輩はこちらを伺うようにチラチラと何度も見てきていた。

 こ、これはまさか告白!?ふぅ、落ち着け俺。そんなことがあるわけがないだろう、初対面だってさっき朝比奈先輩も言ってたし。

 でも一目惚れも可能性もあるんじゃないか?普段ならまだしも、今は眼鏡状態だ。あ、本当に…?

 無言が続き、俺の思考がぐちゃぐちゃになってきたところで朝比奈先輩が口を開いた。

 

「堀北先輩にスカウトされたって話は本当なの?」

 

「…どこでそれを?」

 

「朝、雅が言ってたんだよね。今日新しい生徒副会長に会ってくるってさ。堀北先輩が連れてきたから面白いやつに違いないってさ」

 

「はぁ」

 

「で、たまたま見かけたから声かけたってわけ」

 

 …ん?ならどうしてこんな場所に連れ出したんだ?

 

「雅はどうだった?」

 

「別にどうも。同じ副会長でも新参者の俺と先輩では格が違いますし、何より俺に興味を無くしている様子でしたよ」

 

「ふーん…ね、比企谷君」

 

「何ですか?」

 

「眼鏡、とってよ」

 

「嫌です」

 

「一度ちゃんと目を直接見たくてさ。お願い!」

 

「駄目です」

 

「そこをなんとか!」

 

 な、何だこのやりとり。なんでこうなった…?

 ついに直接行動へと移しはじめた朝比奈先輩を抑えつつ、何だこの状況と頭を抱える。

 ただ、一つだけ分かったことがある。

 

 朝比奈先輩は2年生で珍しい南雲に染められていない生徒だということだ。

 俺は2年生を個人的に知っているわけではない。まあ今日3人知り合ったには知り合ったが。

 鬼龍院先輩は別物として、基本的に2年生はAクラスがほぼ確定しているようなものなのだ。Bクラス以下はほとんどチャンスがないと言っていい程に、クラスポイントの開きがある。

 そこに南雲ルールという学年を支配している南雲だから出来るような、法のようなものを敷いているのだ。

 

 南雲の意に合わせれば合わせるほど、良い思いをすることができるこのルールだけは、俺でも知っていた。

 

 そのせいか、2年生は皆南雲の操り人形といっても過言ではない状態だ。

 俺が個人的に2年生を知ろうとしなかったのもそのためである。

 

「もー!見せるくらいいいじゃん!」

 

「や、初対面の人に見せるものでもないので」

 

「他の人とは違う目をしてるなーってただの興味本位なわけ!ってわけでとりゃあ!」

 

「危なっ!今の避けなかったら顔に当たってるんですけど!?」

 

「眼鏡をとれば終わる話だよ」

 

「サラッと危険なこと無視したなこの人」

 

 朝比奈先輩にはそれがない。

 …俺に声をかけた本当の目的も大体はわかってる。ただ、この人から情報が渡るかもしれないからはぐらかしてるだけで。

 

「とれた!」

 

「あ、しまった」

 

 何度かの攻防の末、結局取り上げられてしまった。

 ジロジロの上目遣いになりながらも瞳を覗き込むように見てくる朝比奈先輩。

 心なしか、頬が熱くなってる気がした。

 

「初めて見る目だよー。なんだろう…死んだ魚の目?」

 

「うるさいですよ。あと、ち、近いです」

 

「うえっ!?あ、えっと…ごめんね?」

 

「いや、俺の方こそすみません」

 

「いやいや、私のせいで…!」

 

「いやいやいや…」

 

「「ぶっ、はははっ」」

 

 お互いに笑い合い、眼鏡を返してもらう。

 見た目陽キャすぎてある意味敵かと思ってたが、そんなことはなかった。

 昔の俺なら即告白してくれるぐらいには喋れてる気がするな。振られるだろうけど。

 

 しかし、俺は気づかなかったのだ。

 この現場を、一之瀬が見ていたことに…。




これで夏休み編は終了です。
リハビリも兼ねてますのでところどころおかしいですがご容赦を!
特に2年生!初めて書いたんです許して!指摘して!

短編集みたいな感じになりましたが、ボッチ(笑)が多くの人と関わる話になりました。
総武なら数人しか理解者はいないかもしれませんが、東育なら『コイツ面白そう』という理由で好かれそうです。今なら眼鏡で目の誤魔化しも出来ますので……。
むしろ目の誤魔化しをしていない方が人が寄ってきそうなまである。

一之瀬に関しては裏性格として足してます。最近pixivでヤンデレ漫画やヤンデレ少女を描かれている方の作品を見て回っていて……個人的な趣味なので苦手な方はごめんなさいね。

自己満足作品にそんなもの求めるのはおかしいのでは、などと言われそうですが、やっぱり感想と評価をもらえると嬉しいので、良ければ下の方にスクロールしていただいてポチポチしてくださると、もれなく更新速度が上昇しますので、よろしければお願いいたします。
しばらくは週一程で更新が続くと思われますが(願望)、自分なりのペースで完結させられるよう、頑張りたい所存です。
また次のお話でお会いしましょう。

八幡「なあ、そういやよう実二期見て思ったんだが」
澪「…何?」
八幡「お前だけエンディングの時の恰好なんか圧倒的にエロくだはッ!?」
澪「死ね」
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