城島犬は神崎ノエルが嫌いだった。
いきなり黒曜ランドに現れて、バカ女の肩を持ったことも。
勝手にメシ作って、掃除して、居着いてるところも。
骸さんより強いことも。
きれいな髪も。
長いまつげも。
透き通るような目も。
真っ白な肌も。
長い指も。
細い手首も。
目が合うと笑いかけてくるところも。
横を通ると、ふわりといい香りがするところも。
何もかも気に入らなかった。
休日の昼過ぎ。
この時間、黒曜ランドにはいつも全員いるのに、千種はどこかに出かけていて、凪もいなかった。
そのとき犬は、初めてノエルと二人きりになった。
といってもいつもと変わらない。
話しかけたりしないし、それは相手も同じだろう。
そう思い、犬がダイニングでテレビゲームをしていると、
「ゲーム好きなんだね。何のゲームしてるの?」
後ろから声がした。
びっくりして振り向くと、いつの間にかノエルがいて、画面をのぞきこんでいた。
が、別に答える必要もないため、目の前のゲーム画面に集中する。
犬が無視しても、ノエルはそこにいた。
「わ~!強いんだね!」
「今避けるの上手だったね!」
「なるほど!そこで攻撃するんだ~」
いるだけじゃなく、すごく話しかけてきた。
しかし、褒められて悪い気はしなかった。
「これ、二人でもできるんだね」
しばらくして、ノエルがゲームの説明書を見て、感心したようにつぶやくと
「ねえねえ、私もやってみていい?」
目をきらきらさせて聞いてきた。
いつもなら無視するが、気まぐれだった。
無言でコントローラーを渡し、横にずれる。
こいつは強いし、頭もいいし、骸さんも一目置いてるし。
何でもできる。
きっとこのゲームも、さっさと勝つに決まってる。
それでも一緒にやっているのはどうしてなのか。
犬は考えてもわからなかった。
結果は、何度やっても犬の勝ちだった。
「難しいね・・・」
見てるときは、できそうだったのに。
ノエルは眉間にしわを寄せて、悔しそうにつぶやいた。
犬は、今まで見たことのないノエルの顔に驚きつつも、
へっ、こいつでもできねーことあるびょん
思いがけず弱点を知って、内心うれしかった。
それから、凪と千種が帰ってくるまで対戦は続いた。
結局ノエルは一回も勝てなかったけど、なぜか清々しい顔をしていた。
それは犬も同じだった。
「さすがだね。また教えてね」
そう言って笑うと、ノエルは夕食の準備をしにキッチンへ消えていった。
ノエルのことは好きじゃないけど、
まあ、たまにならいいか
と犬は思った。
そしていつの間にか懐柔されている犬。