「今度はここに行ってみたい・・・」
そう言って凪は自分のスマホの画面を見せてくれた。
それは、屋上でお昼ご飯を食べた後、のんびり過ごしていたときだった。
ひょいとのぞき込むと、映し出されていたページは、有名なドーナツのチェーン店だった。
「いいね!一緒に行こう」
凪はにっこり笑ってうれしそうにうなずいた。
土曜日のお昼過ぎ、凪と一緒にバスに乗って、ドーナツのチェーン店にやってきた。
トレーとトングを持ってどれにしようか悩む凪に
「食べたいもの全部買おう!」
ノエルが隣でぐっとガッツポーズをした。
食べたいドーナツを選びながら、食べきれそうな数に絞った結果、
凪は、
ストロベリーリング
シュガーレイズド
ドーナツポップ16個入り
キャラメルアーモンドマフィン
ノエルは、
ダブルチョコレート
ポン・デ・ストロベリー
チョコファッション
エンゼルクリーム
を食べることにした。
凪は全て甘い系をせめているが、ノエルも甘いパンの方が好みなので、全て甘いものになった。
飲み物は凪はりんごジュース、ノエルはブレンドコーヒーに決めた。
凪が大人だなあと思いながら、レジの前に並ぶと
「パスタやアイスもあるんだ・・・」
レジの奥のメニューが見え、思わずそうつぶやく。
値段もかなり安く、おいしそうだ。
「次回食べようね」
つぶやいた声がノエルにも届いていたようで、そっと耳打ちされる。
凪は口元に笑みを浮かべてゆっくりうなずいた。
会計を済ませ、ドーナツとドリンクが乗ったトレーをもって、二人掛けのテーブル席に座り
「おいしく食べられるところまででいいからね。苦しくなったら言って。残りは私が食べるからね」
ノエルは優しく言うと、手を合わせた。
凪がうなずき、手を合わせる。
『いただきます!』
「幸せ・・・」
口いっぱいにドーナツをほおばりながら凪は笑顔で言った。
それを見ながらノエルもおいしそうにドーナツを口へ運ぶ。
雑誌に載ってたカフェの話、来月公開される恋愛映画の話、好きなアーティストの新曲の話、明日最終回のドラマの話など、話に花を咲かせた。
「ごめんなさい、ノエル。私もう無理みたい・・・」
二つドーナツを食べ、マフィンを半分ほど食べながら、凪は苦しそうに言った。
「分かった!残りは私が食べるね!」
凪の持っているマフィンを受け取ろうとすると
「ううん、ここまでは自分で食べる・・・!」
自分が食べた分は責任をもって食べたいらしい、さすがしっかりしてるなあとノエルは思った。
「凪・・・」
最後の一つのドーナツを食べながら、ノエルが悲しそうに凪を見た。
ノエルが食べたドーナツは凪の分も含め、五個だ。
さすがにきつかったのか。
どうしよう、トイレで戻した方がいいか、それとも胃薬を買ってきた方が・・・。
凪がそう考えていると、ノエルが口を開いた。
「お隣の人が食べてるチュロス、すごくおいしそう」
「え」
ノエルの視線の先をちらっと見ると、確かに、隣に座っている女性がチュロスをおいしそうに食べている。
「追加で買ってきてもいいかな?」
ノエルは食べ過ぎて苦しそうだったのではなく、他のドーナツも食べたかったらしい。
申し訳なさそうにこちらを見るノエルに、凪は笑って、
「いいよ」
「わーい!」
ノエルはうれしそうに持っていたドーナツを食べ終えると、トレーを持ってドーナツがあるカウンターへ向かった。
「え・・・」
追加のドーナツを買いに行ったノエルが戻ってきたと思ったら、持っていたトレーには様々な種類のパンがどっさり乗っていた。
そしてなぜか飲み物まで持っている。
「最初買うとき、こっち飲んでみたいと思ってて。これは凪の分ね」
テーブルの上にトレーを置き、凪の分のりんごジュースをすっと彼女の前に置き、自分の方にはキャラメルラテを置いた。
凪はありがとう、と言いながら、ノエルが追加で買ってきたものを見る。
チュロス、ポンデリング、オールドファッション、ブルーベリーチーズマフィン、ハムグラタン。
「ほんとはチュロスだけ買おうとしたんだけど、他のドーナツ見てたら食べたくなって」
えへ、とかわいらしく笑って
「おかず系もいいかなってハムグラタン選んじゃった」
そっかぁ・・・と凪は目を丸くしたままうなずいた。
ノエルは最初の一個を食べる時と同じペースでおいしそうに食べていく。
りんごジュースを飲みながら、凪はたくさん食べるノエルをかっこいいなと思った。