凪と毎日ほわわんな日々を   作:ピアチェーレ

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凪とノエルだけの楽しい時間(黒曜)

とある日曜日の午後。

たいていノエルは黒曜ランドで生活しているが、パソコン仕事をするために、凪たちと出会う前から住んでいる高層マンションの一室に帰ることもある。

しかし今週の週末、ノエルは任務のためイタリアに飛んでいた。

はずなのだが、突然ふらりと黒曜ランドに現れたノエルは、両手にがさがさと大量のビニール袋をさげて登場した。

三人の視線が集まる中、持っていた袋をテーブルの上にドン、と乗せると

「第一回利き麦チョコ大会~!」

突然大きな声でそう宣言した

ぱちぱち・・・と凪だけがキラキラした顔で拍手を送る。

「帰ってきてたんだ・・・」

千種がぼそっとつぶやいた。

週末いないときは月曜日の夕方、学校帰りに来ることが多かったため、今回もそうかと思っていたのだが。

「本当は明日の朝日本に着く予定だったんだけど、早めに終わったから」

さらっと一言で説明すると、いそいそと持ってきたビニール袋から麦チョコを取り出し始めた。

ノエル曰く、利き麦チョコ大会とは、ノエルが買ってきた五種類の麦チョコを当てるというものらしい。

ちなみにその五種類は、黒曜スーパー、コンビニ、ドラッグストア、並盛商店街の駄菓子屋さん、ディスカウントストアに売られていた麦チョコだ。

念のためアイマスクをさせ、それぞれ小皿に移した麦チョコをスプーンで食べさせることになった。

トップバッターは犬。

犬と千種は遠慮したが、全員参加だそう。

こわごわ開けた犬の口に、千種が麦チョコを乗せたスプーンを押し込む。

ゆっくり咀嚼し、やがて飲み込むと

「甘いびょん・・・」

うん、チョコだからね・・・。

ノエルは心の中で思った。

残り四種類のチョコも、「甘いびょん」「これも甘いびょん」「さっきと同じ味だびゃん」「やっと終わったびゃん」と最後に至っては味の感想ですらなく、犬にとっては地獄の時間だったようだ。

口直しに台所に向かった犬の代わりに、次の千種に食べさせるのを凪にやってもらう。

そっと優しく口に運んだ凪。

千種は犬と同様ゆっくり麦チョコをかみ砕くと、吟味した。

「・・・」

が、無言。

考えているのかあきらめたのか全く分からないため、五つ目の麦チョコを千種が飲み込んだところで、「はい、次は凪~!」とノエルは強制的に終わらせた。

ノエルがまず一つ目の麦チョコを凪の口へ運ぶと

「ドラッグストア」

「えっ」

「ここの麦チョコは、コーティングされた麦チョコがほかの麦チョコより甘いのが特徴なの」

ごくんと飲み込んでそう分析する凪。

当たってる。

がノエルは「なるほど・・・。じゃあ次は二つ目ね」と答え合わせはせず、二つ目の麦チョコを食べさせる。

「コンビニ。パフが一番さくさくしてるの」

「駄菓子屋さん。麦チョコの一粒一粒が大きくて食べやすい」

ここまで全問正解。

あとは黒曜スーパーとディスカウントストア。

ノエルは四つ目に選んだ麦チョコをスプーンに乗せ、口へ運んだ。

「あ・・・」

それまでびしばしと当ててきた凪が驚いたような声を上げた。

ここにきて不正解か!?

「これ・・・」

台所から戻ってきた犬、見守っていた千種と三人で固唾をのんで凪の言葉を待つと

「黒曜スーパーでよく買う一番好きな麦チョコ。一袋88円」

「・・・合ってる」

千種がつぶやいた。

レシートを確認すると、値段も当たっている。

「さすが麦チョコ系女子!」

ノエルが独特な賞賛をおくると、凪はうれしそうに笑って

「黒曜と並盛のスーパー、コンビニ、ドラッグストアとか、麦チョコが置いてある店舗すべての麦チョコを食べたことあって、味も全部覚えてるの」

最後の最後に爆弾をぶち込んできた。

犬と千種が唖然とする中、

「くっ、これならネットでしか買えない麦チョコも用意しておくべきだった・・・!」

ノエルは一人悔しがっていた。

以上により、利き麦チョコ大会は凪の圧勝だったので、第二回は開催しないこととなった(しかし、凪が希望したら開催する)。




ちなみに、優勝者の凪には、残りの五種類の麦チョコがプレゼントされた。

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