ホラー動画を探し隊   作:犬屋小鳥本部

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深夜●時・御来店、そして御来転

深夜のコンビニ。あの、角にあるコンビニ。

 

 

 

店の中には自分一人。店員はなぜか、何処にもいない。

店内放送は鳴り続ける。いつも通りのいつもと同じ音楽と案内を垂れ流す。

 

なのに誰もいない。

 

ポテチとジュースと雑誌を持ってレジに行っても誰もいない。

 

「すいませーん」

 

声を出しても誰もいない。店内放送だけが流される。

 

「すいませーん」

 

もう一度呼んでも、誰も来る気配はない。

諦めて帰ってしまおうか。商品をカウンターに置いたまま出入り口へと向かう。

 

 

 

誰もいない。

 

誰も来ない。

変なコンビニだ。

 

 

 

その時、突然何の前触れもなく店内放送が途切れた。電気は消えていない。流れ続けていた音だけが突然途切れた。

夜の静けさの中で機械音だけが暗く響く。うるさいと感じていた程の賑やかな放送が消え、店内は電気がつけられただけの夜の空間へと変わってしまった。

自分の胸が膨らみ、萎むのを意識してしまう。ドクドクと脈打つ心臓と、流される血液を意識してしまう。息が荒くなっているのがわかる。興奮ではなく、緊張から体が高ぶっていた。脳内ではノルアドレナリンが分泌されている。心よりも体の方が素直に顕著に反応を示す。

 

 

 

ただ、店内放送が途絶えただけなのに。

 

 

 

ただ、深夜のコンビニにいるだけなのに。

 

 

 

ただ、誰もいなくて、自分しか其処にいないだけなのに。

 

 

 

明るい店内を得体のしれない夜の闇が這いずってくる。何処からか、床を這って近づいてくる。

そんな不安を、恐怖を、言葉にできないナニカを感じ始める。

 

頭上からは微かに雑音が聴こえてくる気がする。沈黙ではない方が救われる。その静けさの中にいたくない。

 

外へ出てしまえばいい。其処から逃げてしまえばいい。

そう頭では思っているのに足が動かない。床に縛り付けられたかのように一歩も動かすことができない。

 

ぐるりと首を回す。

山積み谷積みの商品棚。その下の床と棚板の僅かな隙間。其処に目がいく。

手がやっと入り込める程度しかない僅かな暗い隙間。おそらく屈んでも奥まで見えないだろう隙間。

其処に何かがいる気がする。

誰もいないのに。

其処にはナニカがいる気がする。

其処からナニカがやってくる気がする。

 

 

 

背中から誰かが笑う声が聞こえた気がした。

 

 

 

振り返っても誰もいない。

 

 

 

「だ、誰かいますかー」

 

 

 

声をかけても誰もいない。

 

誰も。

 

いない。

 

誰も。

 

 

 

店内放送は途切れたままだ。外の道路をバイクが通り過ぎたようだった。その音は聞こえただろうか。

 

 

 

誰かの視線を感じる気がする。何処から。何処から。すぐ其処から。近い。近い。すぐ近くから見られている。誰だ。誰だ。すごく近い。

 

 

 

ふと、カウンターの奥にある扉に目がいった。僅かに開いた扉。電気のつけられていない暗い部屋。其処から聴こえてしまった。

 

 

 

 

 

 

タスケテ

 

 

 

 

 

 

背中から誰かが笑う声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

足に何かが絡まった。五本指なのか、わからない何かが絡まった。

自分は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいないコンビニだった。

何かがいたコンビニだった。

 

 

 

ある時間、店内放送がぶつりと途切れた時、聴こえてはいけないナニカが這い寄ってくる。

 

その静けさの中で、誰かを引き摺る音だけ残したコンビニは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

××××××××××××××××××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな深夜●時のあのコンビニの話。




只今時刻は丑三つ時。
草木も眠る、バケモノ共の起きる時間。












アソボゥヨオ
オナカスイタオナカスイタオナカスイタオナカスイタオナカスイタオナカスイタ
キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
カーゴメカゴメ



ピンポーン



誰かが御来店なさったようだ。
こんな時間に身の程をわきまえない誰かが御来店なさったようだ。






サイタサイタマッカナオハナガマッカッカ
ツマンナァイ
アソンデねえアソンデねえねえアソンデ
ミーチャッタ
オヤスミナサイ



誰かが御来店なさったようだ。何故貴方は彼の地へいらっしゃった。何故貴方はこのやうな時間においでになられた。



ピンポーン



扉の開く音がする。
来店を告げる呼び鈴の音がする。



ピンポーン



只今時刻は●時をお知らせします。
バケモノ共はぽっかりと腹を空かせて獲物を待ちわびる。そんな時間。

常識の通らない非常識が通じる現実とはかけ離れた時間。

貴方の知らない、貴方のいるべきではない時間。






オイシイネエ





ミィツケタ












ゴチソウサマ












あのコンビニには、もう、誰もいなくなった。いなくなってしまった。
時刻はまもなく、「あの」●時を告げようとしていた。






何処からか地面を引き摺る音が聴こえて
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