私、本物の田中さんに会いたかった。一方でドッペルゲンガーに興味があった。
試したの。あの通りがホンモノなのか。
その為には機会を、回数を増やす必要があった。そうよ、みんなを利用したの。
私ね、その人たちのこと嫌いじゃなかったよ。ただ居たら居たでウザイ。特別な人には自分だけを特別に見てもらいたい。当然でしょ。
気づかれずに消せるチャンスがあるなら私は使うよ。きっとね、どの子も同じ。
だから嘘を言って気をひくし、嘘を隠して罠に嵌める。みーんな、そうなんだよ。私だけじゃない。私だけじゃなかったの。
その通りで会えるのがドッペルゲンガーなら、会えてしまうのは自分のに決まってる。危ない道よ。
余所者のみんなはそんなこと知らないけど。
私はね、そこに別の噂話を追加しただけ。
桜ヶ原っていう町のどこどこにある通りにあの田中さんのドッペルゲンガーが出る。
それだけ言えばいいんだよ。獲物はぞろぞろとやって来た。
リアルホラーは苦手だからって成り行きを傍観する人もいたな。そういう人はいつまでも見ていればいい。結果的に正しいのはそっちの人になった。
私? 私は、ね。
行ったよ。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も。実は何度も行った。
しつこいくらいに。それはもうしつこいくらいに。
会いたい会いたい、もうそればっか。他の人との付き合いも蔑ろにした。私の中にはこんなに汚い執着心があったのかと気づき始めた。
でもいいじゃない! 大好きな田中さんに会う為なんだから!
私は自分の間違えを都合よく肯定するようになった。他の人が傷ついてることを無視して、自分の欲が一番の私になっちゃった。
変かな。変でしょ。酔っぱらってなんかいないよ。
もう私は純粋なファンじゃなくなってしまった。ああ最初の憧れはあの大好きだっていう純粋な想いは何処へ行っちゃったの。これじゃあストーカーじゃない。
頭が冷えたのは誰かからのメールだった。その時、私はまだ一度もどちらの田中さんにだって会えていなかった。噂はたくさん流れていて、「別人」がいるのは確かだけど証拠がない。そういう状況が続いていた中でのメールだった。
それは、私にだけ宛てたものじゃなかった。このドッペルゲンガーの話に関係した人たちに向けて拡散された警告だったの。特に、女性へ向けての。
簡単に言うね。
私が言ったあの通りに行った女性が強姦された。レイプよ。だから言ったでしょ。あの通りは隠れる場所が多いの。何かあっても気づかれにくい。
何かが起こってしまった。誰にも気づかれずに、助けてもらえずに。
その犯人は、「田中さんそっくりの顔」をしていた、らしいの。
で、ね。それが起こった日時は。
動画の生放送、生配信の時。