田中さん。あなた、あの時あの通りにいましたね。桜ヶ原のあの通りですよ。何でいたんですか? 何を、していたんですか?
知っていますよ。ファンの子をレイプしていたんでしょう?
何人も目撃しているんですよ。何人も被害者がいるんですよ。
田中さん。あなた、あの時何処にいました?
ほら、ドッペルゲンガーの話だよ。
私たちは知ってる。田中さんがその時生放送でホラー動画を検証していたのを。その回は結局ぼったくりの作り物だった。
「よくできてるわね、でもアタシにはわかるわ。これ、影が映っちゃってるもの。作り物よ。残念ねぇ」
そう言って締め括られた回だった。
被害者の子も解ってるの。其処に田中さんがいるはずないって。だって、その子も田中さんのファンなんだから。
だから、その場にいたのは田中さんとは別の人。
被害者になった子たちは誰と出会ったんだろう。彼女たちはあの通りで何をされたんだろう。
考える度にゾッとした。憧れて知ってるはずの顔の人、そんな人と体が繋がった瞬間。嬉しいと思った? 違うと思った? 私にはわからない。
でも私たちは望んだの。田中さんのドッペルゲンガーと会ってみたいって。それがどんな形でだろうと叶ったんだからいいじゃない。
ついでにあんなこととかこんなこととかしてもらえたんでしょ?
ラッキーじゃない。本物の田中さんとそんなことになるなんてあり得ない。
おかしいよね。レイプっていう事件が起こったことに対して危機感を持たなかったの。犯罪だよ。暴力だよ。
でもね、私たちの頭はその時おかしかったの。冷めたはずの頭は一気に発火した。それも良くない方向に。
なんて羨ましい! 私もその人に会ってみたい! 私も! 私も!!
私たちは、そのドッペルゲンガーの虜になってしまっていた。見たこともないのに!
何が原因かわかんないよ。ほら、言ったよね。興味がないファンもいた。その逆で執着しているファンが一部いただけなのかもしれない。その中に、たまたま私がいただけなのかもしれない。
恋をしていたの。それは真っ赤に塗り潰されて、誰に恋をしているのか判らなくなってしまうくらい真っ赤な恋。欲しくて欲しくて堪らなかった。それが本物じゃなくてもいいと思った。そっくりなら嘘でもいいと思った。
欲しかったの。確かな形が。それが嘘で作られていても、私たちはそれでいいと思った。欲しかったの。
おかしいよね。
私たちは気が狂っていた。
そして、冷静になった時に待っていたのはただの後悔だけだった。
望んだ時点でその行為は同意を伴ってしまったの。非同意の犯罪ではない、ただの同意が付属された行為。
その時、彼女たちは幸せだった。ただただ幸せだった。
そして不幸にも堕とされた。