そのバンド、シャイにつき。   作:acidaq

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大変お待たせいたしました。そもそも待っていただいている方がいるのかどうなのかという疑問は置いておきますね。
では、早速どうぞ


#11 これぞ大団円って感じだな

とうとうポピパのオーディションか。香澄以外はまあ大丈夫だろう。顔を見る限りだけどな。

問題は香澄か。多分この様子では一抹の不安を抱えているんだろう。

「ポピパ〜、頑張れ〜」

見るとグリグリメンバーも揃っていた。きっとシスk……もとい妹の様子を見にきたゆりさんにつられてだろう。

俺らは花咲川の3人だけ。しぐれと千夏はデートするらしい。

「今日はちなったんとデートするんだ〜!いいでしょ?」

「はいはい、行ってこい」

と、来るかどうか聞いたらそんな答えが返ってきたから間違いはないだろう。

2人で外出することをすぐデートって呼ぶからなあいつは。まあ、間違ってはないんだろうけど。

「なんとかなるよ。頑張れ」

「せや!大丈夫大丈夫!」

北斗と冬樹がポピパの面々にメッセージを投げかけているのを横目に見ながら、俺は自分の席に座る。

「精一杯、やってこい」

「……うん、いってくる」

きっと、大丈夫。どこか確信に近い思いを抱きながら俺は香澄たちを見送った。

___

しばしの時が流れ、オーディションが始まる。

曲はこの前のオーディションの時と同じ。違うのは香澄以外が歌い分けているところ。

それぞれにぴったり合った部分の歌詞を歌い分けてるから歌にメンバーの想いが乗っかって、全部こっちにまで届きそうだ。

「いい、ライブだな」

「……せやな」

「ああ」

俺が画面越しのポピパのライブを見て呟いた感想に、北斗も冬樹も同意の言葉を返してくれる。なんというか、一言でいうとエモい。

サビは香澄。楽器初心者だったにも関わらず、こんな短期間でここまでくるには相当な努力が必要だったろう。もちろん他のメンバーも。これだけの短期間で演奏を仕上げてきたんだ。相当努力はしてきたはず。その努力があるからこそ、ポピパが歌うこの歌は心が揺さぶられる。

(これは、受かっただろうな。ステージ上の香澄も、みんなも、キラキラしてやがる)

俺はオーナーじゃないからなんとも言えないけど、それでもきっと受かっただろうと思った。思わさせられた。

そうこうしているうちにライブは終わり、あとはオーナーが結果を伝えるのみになった。

___

「音楽は、やりたいやつがやればいい。……いいライブだった」

オーナーは天井を仰ぎながらそうに呟く。これは……

「合格」

ですよね。

「合格か〜、やったな」

「せやな、やっとポピパも、って感じやな」

「相当努力したんだろうな」

俺らは思い思いに感想を言い合う。ポピパとおんなじステージに立てるのはちょっとばかりワクワクする。

「ポピパ〜」

「ゆり、よかったね」

「……うんっ!」

グリグリの方々も喜んでいるようだ。そりゃ〜妹と同じステージに立てるんだから嬉しいだろうね。うん。

画面の中のポピパは香澄の周りに集まって泣き笑い合って、喜びを噛み締めているようだった。

なんだこれ。感情爆発してんじゃん。大丈夫か?

___

オーディションからしばらく。今日がSPACE最後の日。

何やら、いろんなところからたくさん人が集まってきたらしく、控え室がすごいことになっていた。よく見るとRoseliaの皆さんもいるじゃん。挨拶しておこう。

「氷川先輩、お疲れ様です。Roseliaも出演なされるのですか?」

「あなたたちは……。ええ、私たちも出演するわ」

「今日はよろしくお願いしますね」

「あ、リサ先輩!お疲れ様です」

「お、お疲れ〜。なになに、SPACEのオーディション、受かってたの〜?」

「つい最近ですけど、一応合格しました」

「さすがだね〜☆今日は頑張ろ!」

にしても、なんでこんなにいるんだ?めっちゃ人いるやんけ。愛されてんなあここ。

と、ドアが後ろでガチャ、と開く音がした。

「あ」

完全に目があった後、すぐにドアは閉まってしまった。

「今の誰?」

「誰やろな」

「ちょっとあこ、見てきます」

「いや、あこちゃんはそこで待ってな。俺が言ってくるわ」

「お、さすがニッシー、男だね〜」

「からかうなしぐれ。ちょっと遊んでやろうって思ってな」

一瞬目があっただけだが俺はあいつが誰か完全に分かったぞ。今のは完全に市ヶ谷だった。間違いない。間違えたら今日のステージでアドリブで一発芸する。嘘。俺が死ぬ。

「どうしたんだ〜有咲〜?」

ドアを開けていつもは市ヶ谷と呼んでいるところを有咲と呼んでみた。

「あ、え、あ、有咲……?」

「あ、動揺してる動揺してる。ポピパお疲れ〜、何してんだこんなところで」

「ありさがね〜、中の様子を見てくれたんだ〜」

「そしたら、人いっぱいいたって。有咲ちゃんが」

「あ〜……確かに人いっぱいいるな。早いとこ入っとけ。今ならまだ入れるぞ」

「有咲……?大丈夫?」

「だっ、大丈夫だっつーの」

「本当に大丈夫か?顔赤いぞ?どれどれ……」

「やっ、やめろおおおおおおおおおお!!!」

「さすがにおでこに手を当てようとするのはからかいすぎたかな?」

「ぷっ、あっははははははははは!!やっぱり有咲面白い!」

あいつ……さてはチョロいな?

「圭介、さっきの誰か分かったのか?」

「ああ、市ヶ谷だよ」

「あれ〜?さっき圭介名前で呼んでなかった?」

「あれはあいつをからかうためだって」

「でも、ケイくん有咲だけ市ヶ谷って呼んでるよね〜」

「言われてみれば確かに」

「それはやな、ケイが有咲ちゃんのことを名前で呼ぶのが恥ずかしいからや」

「へ〜、意外と圭介ってウブなところあるんだね?」

「沙綾、こいつのいった嘘に騙されるな。ただ名前で呼ぶタイミングがないだけだ。ほら、俺はドイツ語圏に生きてた人間だからさ」

「何その話聞いてないんだけど」

「あ〜、そっか、留学先の話してなかったんだっけ?」

「ケイちゃん、みんな、そろそろ時間だよ」

「あれ、有咲戻ってきてる」

「悪いかよ」

「入るぞ有咲」

「お、おう……」

なんか俺が有咲って呼ぶとしおらしくなる気がするんだけどなんで?なんか悪いことした?

___

「今日で最後だ。でも、やることはいつもと同じだ。やり切ってきな」

『はいっ!』

ここでの、最後のライブ。俺らの原点での、最後のライブ。

そのライブ前の、オーナーの挨拶。こりゃ〜やる気でるわ。

「お前ら。円陣」

『おう』

本番前。俺らはトップバッター。多分ここでやらせてもらった歴は、今日演るバンドの中で一番長い。だから俺らは自ら志願した。

「いいか、今日で最後だ。いつも通り」

「全力で」

「音を」

「楽しもう」

「がんばろうね」

俺、北斗、冬樹、しぐれ、千夏の順でいつも通りの円陣を組み、スイッチをいれる。

「よっしゃ、いくぞ!」

『おう!』

最後のステージが幕をあげた。

 

「こんにちは!Werewolfです。今日はSPACE最後の日ということで、まずはこの曲を。『thx』」

この日のために、全てを込めて作った曲。俺らみんなで、全ての感謝をここSPACEとオーナーとに捧げた歌。

このまま俺らは4曲をぶっ通しでやり、次のバンドへバトンタッチ。

最後に盗み見たオーナーの顔は、「お前ら……」って感じのいつも通りの顔で、だけど拍手を送ってくれていた。

「いや〜、やり切ったね〜☆」

「うん、合格点だと思うよ」

「せやな。たまには打ち上げせんか?」

「いいねケチコク!たまにはいいこというじゃん!賛成賛成!」

「ん〜。今日はなしだな。次のライブの予定を詰めなきゃいかん。次のライブが終わったら打ち上げな」

「え〜、今日はニッシーがケチな番だ〜」

「ほらほら、早く着替えて客席いくよ。他のバンド見るんでしょ?」

「そうだった!ちなったん、いこ?」

女子2人を追っ払った後に、そっと北斗が訊ねてきた。

「で、次のライブの準備って、なんだ?」

「ああ、それはな……」

___

「Poppin’ Partyです!バンドをはじめて3ヶ月!」

「え?」

「……え?」

ライブはあれから進み、ついに最後のポピパの番。

ところでこのとやまかすみ16さいは喋らせると事故しか起こさないのか?なんでバンドメンバーに突っ込まれてんだ?まあお察しだけど。

もう何度目になるかわからないが、よく楽器をはじめて3ヶ月程度でここまで来れたな。素直に尊敬してる。最初はランダムスター持ってキラキラ星の単音弾きしかできなかった人間が本当に……。

「それでは聞いてください。夢見るsunflower」

リードギターの旋律から始まるこの曲は、今の夏の青空を思い浮かばせるような元気で、だけどどこか遠くを想起させる曲だった。

「ありがとうございました。Poppin’ Partyでした!」

「あ〜、終わっちまったか」

ポピパの曲を聞きながら、俺はこれまでのSPACEでやったライブを思い出していた。はじめてはきっとあの時。ここから俺らはスタートした。俺と、冬樹と、北斗。そしてしぐれと千夏。全員が全員揃って、楽器に興味をもち、いつの間にか結成されていたバンド。一時活動休止を発表する直前のライブもここでやった。今思い返せば全て過去のことであることに、俺はどこか寂しさを覚える。

「なくならないよ、ここは」

「……オーナー」

「あたしがくたばるわけじゃないんだから。ここはお前らの「ここ」に残る。そうだろ?」

「……はい」

「なら、大丈夫さ。……お疲れ」

俺は心を押さえ、そしてここを忘れまいと決意した。そうすれば、大丈夫。

ステージ上では、ポピパの笑顔が大輪の花を咲かせていた。

___

(Poppin’ side 幕間)

「ねえねえ有咲〜、なんでケイくんに名前呼ばれた時逃げてたの〜?」

「分かった!ケイのこと、好きなんだ!」

「バッ、お前、そんなわけねえじゃん」

「え〜、ほんとかな〜?」

「なんていうか、その……急に名前で呼ばれて恥ずかしかったっていうか……ちょっとびっくりしたっていうか……別に名前を呼んで欲しいってわけでもねえけど、なんていうか……」

『有咲(ちゃん)、かわいい……』

有咲が圭介のことを名前呼びできるようになるのは。まだまだ先のことのようである。

 




実は誤投稿してました。すみません()

次回はそんなにお待たせしないと思います。
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