合宿も終わり、間も無く2学期が始まろうとしていた。そろそろ新しい機材が欲しいと思わなくもないのだが……。
「金がねえ……。金欠だ……」
根本的な問題に直面していた。
*
「で、俺らに助けを求めた、と」
「そう言うこと。お前らバイトとかしてんの?」
「なんだ、金の無心じゃないんやな」
「冬樹は俺をどんな目で普段見てるんだ?……もし金の無心をしたらどうするつもりだったんだ?」
「ん〜?正直機材一つ分くらいだったらケイが海外いたときの誕生日プレゼント分で買ってやらんくもないとは思ってたな。ただ、ケイの持ってるギターとかあんまり高いやつじゃなくて、エフェクターぐらいにはなるとは思うけどなあ……」
「お、優しいな。しぐれにもそのくらい優しくしてやればいいのに」
「ち、ちゃうねん!あいつは、その、なんと言うか……」
ほ〜ん(察し)、そう言うことね
「そう言うことか。まあ、俺は冬樹に任せるが、解散だけは勘弁な」
北斗も同時に察したようだ。ま、俺も正直なところ冬樹に任せるつもりだ。どうせ解散はせんやろ(盛大なフラグ)。
「で、話を戻すと、お前ら何かバイトとかしてんの?北斗は自前でギター買ってんだろ?」
「ま〜、Suhrのギター買えるとなったら、小遣いだけじゃ無理やな」
「ちなみに小遣いは2人はいくら?」
「俺は月5000」
「自分も同じくらいや」
「Oh……」
俺は実質一人暮らしなので、両親からの仕送りは月5万円。正直恵まれているが、参考書と食費、その他生活必需品の購入で月に貯められる金額は多くても1万円程度だ。あと模試受けたり塾の講習とか行ったりすると余計に金かかるしな。
「う〜ん、バイトしよう。金貯めよう」
「ちなみにやけど、自分はバイトしてるで」
「俺もバイトはしてるな」
「確かやけど、チナツもしぐれもバイトしてるはず」
「なんだよ、お前ら……みんなバイトしてるだなんて……。ちなみにどこでバイトしてるんだ?」
「俺は近所の書店だな。結構本、好きだからさ」
「自分は掛け持ちや!江戸川楽器店っちゅ〜楽器屋さんと、ライブハウス!」
「いかにもバンドやってますってやつの選びそうなバイト先だな」
「ちなみにグリグリのひなさんとおたえもいるで」
「めっちゃ豪華だな」
「んで、しぐれが確かファストフード店だったっけな。パスパレの彩さんとあとハロハピの花音さんがいるあの……」
「パスパレ……?それ誰だ?」
「さすがにケイ、芸能人知らなすぎじゃない?バンド組んでるアイドルだよ。うちの学校にいるらしいよ」
「はえ〜、にしても、アイドルがバイトなんてな。自由なんだな、そこの事務所」
「あとは、チナツが確か羽沢珈琲店やったっけな」
「え、千夏のやつあそこでバイトしてるの?」
「ああ、なんか最初に行った時に気に入ったらしい。そしたら成り行きで、って。ほら、つぐみちゃんも羽丘だし」
「みんなバイトしてただなんて……。バイト先探さなきゃじゃん、どうしよう」
「こればっかりは自分で頑張るしかないな」
「せや!うち紹介したろか?バイト代結構安いけど小遣い稼ぎ程度にはなるで」
「冬樹マジか!?助かるぞ。……ただ、なんというかもう一つくらいやっときたいというかなんというか」
「ん〜、せやな。掛け持ちもできるくらいのゆるさやし、仕事もない時はないからなあ」
「まあ、もう一つは自分で頑張って探してみるわ。ありがとな」
__
いざ1週間経ってみても、バイト先は一向に見つからない。これでも頑張って探してはいるんだからな。これはほんと。
「う〜ん……、腹減ったな」
Circleでのバンドの定期練習後。俺は一人で家路についていた。家の方向一人だけ違うしまあしょうがないね。
「ん〜、やまぶきベーカリーでも寄っていくか〜。今日はあそこのパンの気分」
俺は密かに夕飯を決めると、家に向けて歩みを進めた。
「……これじゃん。あった、バイト先」
やまぶきベーカリーに到着するや否や、ビビビっと頭の中に何かが降りてきた。
―やまぶきベーカリーで雇ってもらえば、よくね?
「たのもー!!」
「わ!びっくりした〜、誰かと思ったら圭介じゃん」
俺はパンを選びながら沙綾と交渉してみることにする。
「ああ、悪い悪い。なあ沙綾、ここでバイトってできるか?」
「……え?いきなりどうしたの?」
にしてもどのパンも相変わらずうまそうだな。ここでバイトしたらパンも焼けるようになるのか?それって控えめにいって俺得では?
「いや〜、最近機材を新しく買おうとも金がなくてな。バイトでもしようかと思ってたんだわ。せっかくならここ、結構近いしいいかなって思ったんだよな」
「なるほど……。私だけじゃ判断できないけど、お父さんに後で聞いてみるね」
「助かるわ。すまんな。んじゃ、今日はこれでお願いするわ」
「いつもありがと!」
俺はメロンパンとクリームパン、そしてバケットを買って家に帰る。
これだけ買って550円。バケットでかいし勝ちだね。これだけで3食はいける。
「う〜ん、もしもやまぶきベーカリーがダメだった時のためにいくつか他にも探しておくか〜」
沙綾のお父さんが家族経営の中にバイトを入れたくないって人って可能性も十分に考えられるわけだ。
「せっかくならライブハウスとかでバイトしてみたいよな。作業も覚えられるし、もしかしたらPAとかにも詳しくなれるかもしれねえし。それは俺得ってもんよ」
「な〜にひとりでぶつくさ言っとんや?」
「うお、冬樹。いや、バイトのあては増やしておくに越したことはねえじゃん?ライブハウスでバイトでもいいかなあって思い始めてきたんよ」
「あ〜、ライブハウスね〜……。おたえにでも相談してみたらどうや?あの子、ライブハウス掛け持ちしてるし、SPACEあった時はそこでバイトしてたらしいし、結構ツテあるかもしれないやん?」
「へ〜、あいつって結構バンドマンしてんだな。ありがとな、冬樹」
とりあえず今日のところは帰って作戦会議でもしますか。何の作戦を立てるのかは正直なところ自分でもよくわかってねえけどな!
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「おたえ〜、ライブハウスでいいバイト先ねえか?」
「おはよ〜、ケイ。ライブハウスのバイト先?うちは人手足りてるし、冬樹のところも大丈夫そうだし……。あ、そうだ」
「お、何か閃いたか?」
「お腹減ってたんだった!」
「何やねん。結局思い当たるバイト先はねえってことでいいか?」
「ごめんね、紹介してあげられたらよかったんだけど……」
「いや、別にいい。悪かったな、ありがとよ」
と、いうやりとりをおたえと学校でしたのは今日の午前中。商店街を買い物がてら散歩でほっつき歩いてると、いつもの八百屋の隣にライブハウスがあることに気がついた。
「あれ、おやっさん、こんなところにライブハウスなんてあったっけ?」
「……お、圭介じゃねえか。買い物か?」
「ちょうどいいやますき。ちょっと質問なんだけどよ、こんなところにライブハウスってあったっけか?」
「あ〜……そこうちだわ。親父がオーナーやってんだ。地下倉庫を改造してライブハウスにしたらしいぞ」
「ほ〜……。ちょっくら中見に行ってもいいか?」
「親父に聞いてみな。大丈夫だろ?親父」
おやっさんの方を見ると、おやっさんもこちらを見返しながらうなずいた。ということは、中に入っても問題はないということなのだろう。
「ありがとな、ますき。愛してるぜ」
「お〜」
もしかしたらバイト先が見つかるかもしれないという淡い期待を抱きながら、俺は分厚く重い扉を開けた。
「すみません、ここってバイト募集してますか?」
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「ということで、バイトを見つけたわ。ありがとな、北斗に冬樹」
バイトを探し始めてから1週間後。無事にバイト先を見つけることができたことを2人に報告した。
「ええってええって、頑張り〜」
「ところで圭介、お前のバイト先ってどこなんだ?」
「あ〜、Galaxyってライブハウスと、やまぶきベーカリー」
「え!?自分やまぶきベーカリーでバイトすると?ほんまに?負けてもらお」
「勝手に負けるなんてできねえだろうが。考えろアホ。しぐれに沙綾からちくってもらうぞ」
「それは堪忍や」
「やまぶきベーカリー、バイト募集してたんだな」
「沙綾が一肌脱いだっぽい」
これは俺も驚いたのだが、すぐに「採用」の返事が沙綾からLAINで来た。俺がライブハウスのバイトになったのとほとんど同時だ。なんかお父さんを頑張って説得したらしい。「一肌脱いだんだからね」って言われた時に「なんかそれエロいな」って返信したら怒られた。解せぬ。
「で、バイトはいつからなんや?」
「とりあえずやまぶきベーカリーは今日からだな。親父さんとどれくらいシフト入るかの確認とか、そんな感じからスタートらしい」
「ほ〜、ま、お互いがんばろうぜ」
「正直言って不安しかねえけどな。放課後のことで緊張しすぎて1日が一瞬で過ぎ去っていったわ」
だって沙綾の親父さんだよ?怖くない?え、優しいって?確かにそうだけどさ……ほら、いろいろあるじゃん、ね、いろいろ(遠い目)
どんなこと言われるのかな〜って考えてたら、いつの間にか敵地の前についていた。
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「いらっしゃい。……あら、圭介くん?」
「こんにちは、今日からお世話になります、西秋 圭介です」
「そんなに改まらなくてもいいのよ〜、ちょっと待っててね、今主人を呼んでくるから」
出迎えが沙綾のお母さんで本当に助かった。少し和んだ。
これからバイト先になる(かもしれない)パン屋さんは、お客として来るのとは少しばかり違った感じで見えていた。
バイトって探すの大変ですよね。
リアルが忙しくなってて更新が遅くなってます。申し訳ないです。
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