圭介の日常回と独白回です。いつもの感じとは少しばかり感じが違うと思います。そして今日は短めです。
前回の翌日で、まだパスパレとの合同ライブが終わっていない時間軸でのお話になります。
(P.S.お気に入り50件、ありがとうございます……!ゆっくりな更新ではありますが、気長にお付き合いください)
「お疲れ様で〜す」
「お、お疲れ様。今日もきたね。沙綾より早起きとは気合十分だね、うちを継ぐかい?」
「またまたご冗談を。今日もよろしくお願いしますね」
時刻は朝の4時。やまぶきベーカリーでのアルバイト。
このバイトを始めてから早くも1ヶ月くらいが経とうとしていた。Galaxyで主催ライブをするまで残り2週間程度。ぶっちゃけそっちの準備も忙しい(忙しすぎる)のだが、それでもバイトをサボる理由にはならない。パン作り楽しいしね。奥深くて。
パスパレに無理やりスケジュール確保させられたために1週間後にライブあるけど!まあそっちは芸能事務所の方が死ぬ気でなんとかしてくれるらしいしなんとかなるでしょう。多分。……なるよね?ならないの?え?え?
Galaxyのライブをセッティングした際に用事が入っていたメンバーもたまたまその用事がおじゃんになった。本当にたまたまライブができるようになった。なってしまった。
この前の番組であったことを静かに1人で追想しつつ、着々とパン作りの準備を進めていく。25kgの強力粉の袋を厨房に運び、バターと酵母、砂糖と塩、スキムミルク、そして様々な具材の準備。決してライブという現実から逃避しているわけではない。
生地作りは機械だから、そこまで熟練の技が必要じゃないって思っていたけれど、水を入れる量がその日の湿度によって異なっていたり、最終調整は生地の触り心地で決めたりすることから、俺にはまだまだ1人で出来そうにない。
ところで、なんでこんなに朝早くから出勤しているか、だって?パン作りがやりたいからに決まってるだろ?
自分でパンを作れるってめっちゃかっこよくない?とも思うし、せっかくパン屋でバイトをしているわけだから手に職をつけたいというか何というか。そういう思いもある。
後は、まあ。沙綾に無理をさせないためってのもあるけどね。パン作りできれば沙綾の代わりになるだろうし。あいつは無理しすぎるからな。
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「亘史さん、俺、パン作り極めたいんですけど、手伝うことってできますかね?」
「お、圭介パン作りするの?朝早くて大変だぞ〜?」
「僕としてはウェルカムだけど、沙綾の言う通り早朝からの仕込みだから、起きるのが大変だと思うけど大丈夫かな?」
「あ〜、まあ4時くらいからなら大丈夫です。最近その時間にはいつも起きているので」
「じゃあ、週2回くらいでいいかな?最初はお試しで、それで続くようだったら毎日とかになるかもしれないけど」
「わかりました、よろしくお願いします」
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という経緯でパン作りをしているわけである。パン作りを始めたのは2週間前のこと。
流石に2週間もバイトをすると基本の接客には一通り慣れてきたし。何か他に自分でできることはないかなあと思っていたところだったし、自分でパンが焼けるようになればいざというときの食料確保もできそうだしというところでパンの焼き方を教わっているわけだ。
「こんな感じの生地の質感がいい感じなんだよ。触ってごらん?硬すぎもせず、柔らかすぎもしない。いい感じにまとまっているのがわかるかい?」
「本当ですね。手につかない程度にまとめるって感じですか?」
「簡単にいうとそうなるね。慣れてくると一度触ればどの程度の水分量か、多いのか少ないのかってのがわかってくるよ」
「やっぱり慣れってすごいですね」
「そりゃ、毎日やってればきっと圭介くんもわかるようになるよ」
「そうなれたらいいですけどね」
バイトを始めて1ヶ月で亘史さんとはとても仲良しになった。
沙綾からも
「最近圭介、お父さんとめちゃくちゃ仲いいよね?何かあったの?」
と聞かれる始末である。沙綾にはテキトーに男の秘密とでも返したら殴られた。そんなに痛くなかったけれど、解せぬ。
「圭介なんか知らない」
と言われてぷいっとどこかに行っちまったし。なんだったんだろうな、あれ。よくわからないわ。
やまぶきベーカリーは人気店だけあって、亘史さんの腕も確かなものだと感じる。
たくさん学べることもあるだろう。
そう思っていると、パン作りに割く時間も次第に増えていった。
で、今にいたる。今はほぼ毎日早起きしてパン焼いて、学校に行き、ライブの準備とバンド練習をしながら、週に1回Galaxyでバイトをして、週に2回やまぶきベーカリーでバイト。そしてバイトが終わったら練習。週に1回は全体練習という感じのスケジュールで生活している。こうやって書き起こしてみるとめっちゃやばくね?スケジュール帳も結構びっしり予定が埋まっているのをみると、自分の忙しさを再度痛感することになる。
しかし、パン作りは毎日やらないといけない。
「そうそう、圭介くん。パン作りがうまくなりたいならね、毎日フランスパンを1回は焼いてみなさい。うちで焼くのでもいいし、自分の家にオーブンがあればオーブンで焼くのでもいい。必ず毎日焼くこと。それが上達への近道だそうだよ」
と亘史さんに言われてから、俺は毎日フランスパンを焼いている。フランスパンを焼くためだけに自分の家にオーブンとリスドオルを買う始末。あ、ちなみにリスドオルってのはフランスパン粉とも呼ばれる準強力粉のことだ。ホットケーキを作っても美味しいし、ピザの生地をそれで作っても美味しい。結構万能。小麦の匂いと言うよりフスマの匂いがする小麦粉は、これまで俺が使ってきた小麦粉の匂いとは異なっていて、初めて使ったときはびっくりしたっけな。
生地の加水具合と、発酵具合、寝かせ方、時間、そしてクープの入れ方と焼成方法。焼成時間と温度。1つ1つ意識して焼いていかないと、味は美味しいけれど……残念なフランスパンになってしまう。基本のパンであればあるほど難しい。
クープが浅すぎるとクープ以外の部分でパンが裂けてしまい、不格好なパンになってしまうし、焼成温度が低すぎてもいけない。焼成時に霧吹きを行わないとクープはうまく裂けないし、クープを入れる時に生地をしっかりと寝かせて冷やしておかないと生地がクープナイフに張り付いてうまくいかない。発酵時間があまりにも長いとパンがすっぱくなってしまうし、発酵容器を間違えるとパンのコシがなくなってしまう。
加水が少ないフランスパンの生地はまだ扱いやすいけど、高加水の生地はとても扱いにくい。
パン作り1つといえど奥が深い世界だなあと思うばかりだよほんとに。
これ趣味の1つにできるよ。生活の一環にすればパン買う必要なくなるのでは?それって家計の節約になるのでは?
ちなみに毎日フランスパンを焼いているとどうしても自分では消費しきれない。ので、余ったパンは学校に持っていって、昼休みに香澄とかおたえに消費させる。あいつら喜んで食うからな。時々沙綾も食べては、「む、美味しくなってる」と難しい顔をして何やら考え込んでいるらしい。食いながら考えるってそんな器用なことよくできるよな尊敬尊敬。後はポピパ以外にも北斗とか、冬樹とかに食べさせている感じ。あいつら、感想言ってくれるから意外と助かるんだよな。
とまあ、そろそろ俺の日常の独白は終わりにしよう。俺のパン職人への道、乞うご期待!………なんちって。
ライブまで、あと1週間。練習は普段通り。あとは微調整をするだけ。
かなり大きな箱になるとは思うが、主催ライブにも向けた最高のライブにしたい。
「チンっ!」
かなりの時間物思いにふけっていたのか、いつの間にかフランスパンが焼けていた。霧吹きはした記憶があるから、10分程度は考え事をしていた。
俺は色づいたフランスパンをオーブンから取り出し、「天使のささやき」を聴きながら、来るライブに思いを寄せた。
―ライブまで、あと、1週間
パン作りは面白いですよ。酵母菌は可愛いので(?)。
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