お待ちいただいていたかた、いらっしゃったなら申し訳ありません(言い訳)
夏休み最終日、どこかのお嬢様に、圭介たちは振り回されてしまうようです。
夏休みも今日で最終日になった。
「たまには何もなく喫茶店でもいってゆっくりしたいところだな。北斗とか、その辺でも誘って羽沢珈琲店にでも行ってみるか?」
断じてつぐみちゃんが目当てなわけではない。……本当だぞ?
俺らは宿題はすでにあのポンコツピンク(ひまり)が参考書を取りに行った日には終わってたし、夏休み明けのテストの準備もまあまあ。さらには、バンドの方も順調ってことでやることがない。いや、やることというよりもやるべきことがない。バイトをしていて金も結構溜まってきてるし、ちょっとは優雅な時間を過ごしたいじゃん?ということで
〜〜
圭介:「おい、お前ら」
冬樹:「なんや」
圭介:「暇か?」
北斗:「一応は」
圭介:「羽沢珈琲店でゆっくりしたい」
冬樹:「いきなりやな。別に俺はいいけども」
北斗:「何時にする?」
圭介:「今は14時だから、16時とかでどうだ?」
北斗:「了解」
冬樹:「おっけ〜」
〜〜
と、残る2人も釣れたのでちゃっちゃと準備をしますか。
「あ〜、見つけたわ〜!」
なんか遠くから声がした気がするけどこっちは今日癒しを求めてるんだ。夏休み最後くらい癒しを求めたってよかろう。
「も〜、どうして無視するの?」
「なんだ、こころか、気づかなかった。すまんな」
「大丈夫よ!それよりも圭介!船に乗るわよ!」
「お嬢さん、今、なんて?」
「だから、船よ!船に乗るの!」
こいつはこいつで何言ってんだ?
「というか、なんでお前がうちにきてるねん、おかしいやろ」
「西秋様、準備はできております、どうぞこちらへ」
いや、行くって言った記憶、俺の中にはないんだけど。どういうこと?ねえねえねえ。
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と、理解が追いつかないまま気がついたら黒服の人に取り押さえられていました。あらやだ怖い。
「で、どういうことだ?いきなり船に乗るって」
「急に船に乗りたくなったの!せっかくだったらみんなで乗ったほうが楽しいわ!」
「ほ〜ん、わからん。ところで、みんなって……ハロハピの奴らもいるのか?」
「ええ、もちろん!」
「それならハロハピの奴らだけで楽しめるだろうが!」
「この前ライブに出させてくれたでしょう?せっかくだからそのお礼よ!」
「で、俺今日北斗と冬樹とこの後約束があったんだが?」
「大丈夫よ!みんな一緒に船に乗るわ!」
乗るわって、お嬢さん確定事項なんですね。
というかこの車内めっちゃ広いな?どんだけ弦巻家金持ちやねん。
夏休み最終日くらいはゆっくり優雅に過ごそうと思っていた時期も私にはありましたよ、ええ。そんな希望、目の前にいるお嬢様に打ち砕かれたけどな!
___
「で、ここは?目の前のでっかい船は?なに?」
「え〜っと……すごいね」
「やっば〜!めっちゃでっかい!やばい!あたし、ワクワクしてきちゃった!」
「豪華客船やないかい!」
「にしてもでっかいな……俺、こんな船乗るの初めてかもしれん」
「ところで北斗に冬樹、すまんな。約束を反故にしちまって」
「ああ、気にしなくていい。俺のところにははぐみが迎えにきたからな」
「自分のところは花音さんやったな。なんか困ってて大変そうだったけど」
「あ〜、みんな被害者の会のメンバーなんですね」
「あたしのところには薫さんが来てくれたの!夢のような時間だった!」
「約1名は被害者じゃなくてお楽しみだったわけだな」
「待たせたわね!この船は私の船よ!」
「スマイル号ですか……」
「あはは……、Werewolfのみなさん、巻き込んでしまってすみません……」
「ここまできたらもう、せっかくだから楽しむことにするよ……」
「さあ、乗り込むわよ〜!!」
「「おーー!!」」
「美咲、いつもこのテンションの奴ら相手にしてるの?お疲れだな」
「あはは……。同情するなら変わって欲しいくらいだよ」
「それは断固拒否したいところだな」
「早く乗り込まないと置いていくわよ〜」
「今行くからもうちょい待ってろ」
夏休み最終日は、優雅は優雅だけど、常識を超えた優雅さで過ごすことになりそうです。
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「それにしても、船に乗りたいとか言ってるからクルージングかと思ったけど、まさかまさか豪華客船だったとはな」
「うん、中も本当にすごいね。レストランにカジノ、免税店に展望台、しかも劇場にバーまである。しかも中央のピアノめっちゃ高いし」
「さすが財閥って感じの財力で殴られた感がすごい」
出港から1時間。俺らは一通り船の中を見て周り、最初に乗り込んできた中央のエントランスに戻ってきた。感想はとにかくエッグい以外の何者でもない。多分これ、お金出して乗ったらウン百万する周遊旅行になるよ?
あと、船の中を歩いてて思ったけど、俺らの服装の場違い感半端じゃない。だって羽沢珈琲店行こうとしてたんだよ?こんな豪華客船の船内をパーカーで歩くもんじゃなくね?普通は!もっとさ、ジャケットとかそういうもの着るべきでしょうが!
「お、こころとはぐみに、そして美咲か。他の2人は?」
「それが、どこに行ったかわかんないんだよね」
「そうか。って、なんでいきなり電気が消えるんだよ」
「いきなり消えたねんな!?また幽霊パターン!?」
「ケチコクビビリすぎ!そんなん出ないって」
「すぐ点くから、大丈夫だよ。ほら」
美咲さすが。これは常識人枠。
「……は?」
「豪華客船『スマイル号』へようこそ!素敵な夜だね、かわいいお嬢さんたち、かっこいい坊ちゃんたち」
「うわっ、あれ誰?」
「うーん、私の知り合いではないわね!」
(いや、バリバリ薫さんだろ)
(あれは……)
(どう見ても)
(薫先輩……)
(薫さん、かっこいい!!!!!死んでもいいわ!!!!)
「ふふ、私の名は怪盗ハロハッピー。今宵、私の欲しいものをいただきにきたのさ」
「と〜っても素敵だわ!怪盗さん、ハロハピに入らない?」
「いや、何言ってんの?」
思わず声に出してしまった。こんな状況でバンドに勧誘とか正気か?あ、もともとそういう子でしたね。そういや(諦め)。
「私の欲しいものは最後に教えてあげよう。突然だが、この麗しいお姫様を攫わせてもらうよ」
「ひゃっ!?」
「怪盗さん!花音に何をするの?」
「何もするつもりはない。ただ、君たちには私と戯れてもらうだけだよ」
「いいかい、君たちが私を捕まえることができれば、このお姫様は君たちに返そう。まずはカジノで待つ!さらばっ!」
「いや、移動早くね?あの人身体能力高過ぎでしょ!」
「ケイちゃん、そこ真面目にツッコミ入れなくていいところじゃないかな……?」
こうでもしないとやっていけないでしょうが……。
「花音が攫われちゃったわ!追いかけるわよ!」
「なんで夏休み最終日に船の上で追っかけっこが始まるんですかねぇ」
「これも3バカの介護だと思って……諦めよう?」
「はあ、そういうことなら、思う存分楽しんでやるわ!」
せっかくここまできたら楽しまなきゃ損だしな。やるだけやってやるぜ。
「まずはカジノ、って言ってたわよね!行ってみましょう!」
『うん!(おう!)』
___
「カジノに着いたわ!」
「これ、合法?違法じゃないの?」
「夢がなさすぎるだろ圭介……」
「このカジノは、私でも遊べるように全部偽物のコインなの!」
「ほー、実質無料のカジノってわけか。完璧だな」
「さて、みんなで怪盗さんを呼んでみましょう?」
「えぇ……」
「ほら、圭介も、みんな一緒に!」
『怪盗さん、花音(さん)を返しなさい!』
まあ、ここはお嬢様の機嫌を損なうわけにはいかないからな。ノってやるのがいいってこった。カジノまで全力ダッシュしてきて体力が怪しいけどな!
「待たせたね。早速だけど、勝負と行こうか」
「何で勝負するの?ソフトボール?」
「はぐみ、さすがにカジノでそれはないと思うぞ」
すかさず北斗がツッコミを入れる。確かにここまできてソフトボールはない。
「せっかくのカジノだ。ルーレットで勝負しよう」
「あんまり複雑なルールにしないでおくれよ」
「大丈夫、赤か黒のどちらかを選んで、ボールが落ちた方が勝ちだ」
「どっちか選べばいいんだね!勝利の炎の色は赤だから、赤にする!」
「簡単に決めすぎじゃない?大丈夫なのそれで」
「まあ、遊びやしええやろ。自分はそういう思い切りの良さ、好きやで」
「じゃあ、私は黒だね。ディーラーさん、お願いするよ」
ディーラーから放たれたボールは、黒の2番に吸い込まれていった。
「残念だけど、この勝負、私の勝ちだね。まだお姫様は返せないよ。次は……そうだね、儚い物が手に入る場所で待とう。さらば!」
いや、儚い場所ってどこだよ。しかも逃げ足早すぎるだろ。
「薫さま……あたしを連れ去って……」
なんか約1名妄想の世界に入っていってるしさ、なんなんだこれ……。
「ギフトショップね!急ぐわ!」
「あの説明でギフトショップってよくわかったね……」
「彼女らは彼女らの感性で感じ取っているのかもな」
「あはは……。先にいかれちゃったよ、追いつこうか」
「そうだな……」
___
「迷わずこれたようだね?」
(どっかの誰かさんのおかげでなあ!)
間違いなく俺らだけだったら迷ってたぞ、これ。自明だろ、あんなのでわかる方がおかしいっての。
「ここでの勝負は?」
「そうだね。では、ここで私が気に入りそうなものを選んできてくれるかい?私が気に入ったら、花音を返そう」
「どんなものが好きなの?」
「それは……儚いものだよ」
(((((((いや、全然わからん))))))
「あの〜、さすがにヒントが少なすぎてわからないので、もっといいヒントくださいませんか怪盗さん」
「そうだな……かのシェイクスピアはこう言っている……。『ひとつの顔は神が与えてくださった。もうひとつの顔は自分で造るのだ』とね」
(ほんとにそんなことシェイクスピアが言ったのかよ)
「でもまあ、答えはわかったな。あれだろ?」
「ああ、せやろなあ」
「じゃ、あたしらが適当にいい感じのアレを見繕うのでいいか」
「え、今のヒントで人狼のみんなはわかったの?」
「ああ、このヒントがあればわかる。とりあえず美咲はそこの2人を見ててくれ」
「あっ、ちょっと!」
俺らはライブでいつもつけている“アレ”を探して、ギフトショップを駆け巡るのだった。
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次回、後編。
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