そのバンド、シャイにつき。   作:acidaq

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後編です。続き。
早速ですが本文をどうぞ。


#24 怪盗が欲しかったもの?そんなのきっと宝物だよ

しばしの時間が経った後。

「ぜ〜んぜんいい感じの奴がみつからん」

「あ!わかったわ!怪盗さん、これでしょう!」

遠くからこころの声が聞こえてくる。どうやら答えに辿り着いたようだ。

「まあ、これは最初からあいつらのゲームだからな、あいつらが楽しんでくれれば何よりってわけだ」

「そうだな。そんなことより」

「早く戻らないと、また置いていかれちゃうかも……」

戻ってみると、こころが手にしていたものはどこかの民族のものかと思われる、存在感があまりにも強いお面だった。

(いや、シリキ・○トゥンドゥじゃあるまいしさ、そのお面存在感ありすぎでは?)

今、ディ○ニーのアトラクションの中にいるあのお面のやつバカにしたから、今日の夜俺はエレベーター乗れんわ。多分呪われた。

「う〜ん、悪くないチョイスではあるが、勝負は次までお預けってことにしておこう。次はシアターで待つ!」

「次は、シアター……」

「劇場、か」

「おし、そしたらどんどん行ってみようや!」

「このお面、儚いわよねえ?」

「う〜ん、それは儚いに入る……のか?」

「私は……わからないや」

「人によって美意識は違うからな。こころ、はぐみ、早くいかないと怪盗に花音さんを連れ去られちまうぞ!」

「それは大変だわ!早く行きましょう!」

_

「ねぇ冬樹!見て見て!すっごい広い劇場だよ!」

「せやなあしぐれ。こんな豪華客船所有してるなんて、何度も思うけど、弦巻家、半端ない富豪やな」

シアターに到着。あまりに広くて驚くレベルで広い。はぐみなんか1万人くらいはいるんじゃない?とか言ってるし。さすがにそれはないだろうが、少なくとも1000人は入りそうな劇場だ。半端ねえ。

「お嬢さんたち、待ってたよ。これが最後の試練だ」

「とうとう追い詰めたわよ!さあ、花音を返してもらうわ!」

「そう焦らないで、お嬢さん。最後の勝負は、そうだな、愛の告白をしてもらおうか」

「愛の、告白?」

「そこの綺麗な黒髪のお嬢さん?お姫様に、愛の言葉をつぶやいてごらん?」

「わ、私?」

「お、美咲が花音さんに告白するのか、がんばれ」

「美咲ちゃん、頑張って?」

「どうしてあたしなの……」

「だって、私はまだ君と勝負をしていないではないか……。私と遊んでくれたまえ」

「はぁ……わかったよ」

美咲が渋々ステージ上へと上がっていく。なんか花音さん状況が飲み込めてないような気がするけど、大丈夫かな?

「本当は断固お断りしたいところだけど……やるしかないかぁ……」

「設定は、君はお姫様に愛を伝える王子ということにしよう。それでは、始めてくれたまえ」

「え、えと……。麗しい、お姫様。あ、あなたが……好き、です」

「そんなものかい?もっと愛を伝えてごらん?」

「う……えーと……一目あったその日から……心を奪われ……」

(さすがに棒すぎるなぁ……)

「まだまだ気持ちが伝わらないよ?もっと真剣に」

「あなたを常に想ってます……とにかく、好きです。……いきなり告白なんて言われたってわかんないし!」

「はぐみ、演技はわかんないけどダメダメだと思う」

「心に響かなかったわね。これじゃあ勝負は負けかしら?」

「そんなことないよ、美咲ちゃんはすごく頑張ったよ!」

「花音さんが良ければもうそれでいいや」

「告白というのはもっとスマートにやらなければいけないよ。そうだな、例えば……『麗しのお姫様よ、私があなたのことをどれほど思っているかご存知ですか?寝ても覚めてもあなたのことばかり考えてしまうのです。私の心を奪って離さない罪深きお方……愛しています』」

う〜ん、めっちゃキザ。キザすぎてなんかもうやばいな。隣のしぐれとかいうやつ死んでるんじゃねえの?

「薫さま……尊い……死んでも、いいわ?」

「いいだろう、怪盗よ、俺と勝負だ」

キザ度合いだったら、絶対負けないぞ(投げやり)。

「ほう、紳士様から愛の告白か。設定は……」

「設定は、闇夜に過ぎ去ろうとする怪盗にずっと憧れていた少年が想いを告げる、でどうだ?」

「そ、それでいいが……」

「ああ、月夜に現れし怪盗さま、今宵は何を取っていくのでしょうか?瞳よりも大きなダイヤモンドでしょうか?あなたは、あなたさまは大切なものを盗んで行ってしまいました。それは、私の心、です。どうか、心のみならず、私を奪って、どこかへと連れ去ってしまっていただけませんか?あなたを想わなかったことはありません。僕を、今宵のお宝として、奪っていってくれませんか?愛しています」

「っっっっっ!!勝負は、お預けにさせてもらおう!」

「あ、逃げた。これは俺の勝ちってことでいいか?」

「あいっ変わらずニッシーはキザだねぇ。その言葉、本当に好きな人に言ってあげればいいのに」

「さあね。怪盗は取り逃しちまった。どうせ最後はデッキだろう。追うぞ」

「意外とケイ、乗ってきてないか?」

「ほっとけ」

あれだけキザなセリフ吐かれちゃ、いつも舞踏会でキザなセリフを吐いてる奴として、負けてはいられねえだろうが。プライドってやつだ。

先をいくこころとはぐみに置いていかれないようにしながら、俺らはデッキを目指した。

__

「さて、デッキに着いたわけか。怪盗さんよ、とうとう本当に追い詰めたぞ」

「そうだね、では、ここでひとつクイズを出そう」

「クイズ?」

「ああ、私が本当に欲しかったものは、なんだと思う?」

「わかったわ!怪盗さん、あなたが欲しかったものは、『みんなと楽しく過ごす時間』よ!」

いや、こころさん早くないですか?こんな早く正解を導き出すなんてエスパーですか?なんなんですか?

「まぁ……確かにずっと一緒にいるこいつらだったらすぐに答えられそうな気がするがな」

「自分も北斗と同意見や。多分、俺らの中の誰かが怪盗になって同じような質問をしても、俺らは答えられるだろうな」

「そういうものか」

「うん、そういうものだよ、ケイちゃん」

なんかこっちで話してる間に花音さんが解放された戻ってきたようだ。

「それでは良い旅を!またどこかで会えることを楽しみにしているよ」

ボンッ!

「煙玉っ!?」

「いや、ここまで凝った演出するのかよ。やばいな」

「チョ〜楽しかったぁ〜!!」

「怪盗、捕まえられなかったわ……」

「まあ、花音さんも戻ってきたことだし、いいってことにしておこう」

「それより、お前ら中行かないか?さすがに疲れたし腹へった」

「そうよ!レストランで夕食にしましょう!」

「豪華客船のレストラン!何が出てくるんだ!?楽しみや!」

「いつもケチケチしてるから楽しみなんでしょ?」

しぐれが意地の悪い笑みを浮かべながら冬樹に問いかける。

「あぁ、私もお腹が空いてしまってね」

「薫さん、今までどこに行ってたの!?」

「私かい?私はずっと君たちと一緒にいたが」

(なんでこの子達気づかないのよ……?)

「そんなことより、ご飯よ!レストランまで競争ね!」

「2人とも、待ってよ〜」

「なんであいつらあんなに元気なんだ?体力おばけだったわ忘れてた。にしてもやばすぎ」

「ケイちゃんもぶっちゃけ今アレくらいだったら走れるでしょ?」

「いや、気分じゃないから無理だな」

「なんやそれ!」

「ところで薫さん、なんで怪盗なんかやったんだ?」

「あぁ、実は、船に乗る前にこころの付き人の黒服さんから、船の余興に、ってことでな。怪盗をできるのは、多分私しかいなかっただろうし……」

「まあ、確かに。こころたちを楽しませることができる怪盗って言ったら、薫さんくらいしかいないか」

「あれ、あいつら、戻ってきたぞ」

「本当か?北斗。何か忘れ物でもしたのか?」

「大変だわ!ミッシェルへのお土産を買ってないわ!」

「あの仮面でいいんじゃない?今度ライブでつけてDJしてもらおうよ」

「えぇ〜」

美咲は心底いやな顔をしている。そりゃそうだろうな。あの仮面は。

花音さんは多分期待してるな。顔を見りゃわかるっての。

「美咲、がんばれ。次のライブ、楽しみにしてるな?」

俺は美咲の肩を叩き、満面の笑みでサムズアップする。

「圭介までっ!」

顔を赤くしてレストランの方に走って行った美咲を追って、俺らもレストランの方へと向かった。

__

夕食に舌鼓を打った俺らは、その後港に戻るまでクルージングを最大限楽しんだ。

船首でタイタニックみたいなことをしてみたり、カジノでポーカーやルーレット、ダーツ、そしてビリヤードやスロットを軒並み楽しみ、記念ということでギフトショップで色違いのスカーフを買った。今度ライブで巻いてみようかしら。もちろんMasquerade kissの方で。

シルク製のスカーフだから上品な光沢が出てて、WerewolfっていうよりもMasquerade kissの方がイメージに合うしな。

しばらく遊んでいると、船がそろそろ着岸するとのアナウンスが入った。

「2学期だね」

「本当に。あっという間の夏休みだった」

「最後に船の上で追いかけっこするなんて聞いてなかったけどな」

「それでも、まあまあ楽しんでたでしょ」

「俺はそうだな。しぐれはどうだった?」

「あたしも、まぁ楽しめたかな」

「明日からの学校も、バンド活動も、大変になるだろうけど、また頑張ろうか」

「そうだな」

5人で見つめる方向は、夜の帳のおりた空を背に、光輝く港の風景だった。

 

 




ハロハピに拉致された夏休み最終日は終了しました。
圭介の巻き込まれはまだまだ続きます。
???「あ、るるる〜んとすること思いついちゃった!」
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