さて、文化祭です。当日です。
結構文字数が多くなってしまいました。
ではどうぞ。
朝の9時。文化祭の幕が開けた。
(う〜ん。やっぱり文化祭当日のこのわちゃわちゃした雰囲気はなんとなく好きになれないんだよなあ)
そんなことも言ってられねえ、俺はキッチンで頑張るぜ。野郎が店先に立っててもしょうがねえしな。絶対可愛い女の子が店先に立ってた方が集客見込めるって。
心の中ではぐだぐだ言いながらも、やるべきことはきっちりとこなすつもりだ。
午前中のキッチンは俺と北斗と冬樹。こいつらとなら全く問題ない。
「なあケイ、お前、シフト仕組んだやろ?」
「いや、全く?」
「じゃあなんでこの3人しかいないんだ?圭介」
「まあ、仕組んだと言われればそれまでだが、俺らをはじめとするバンド組は午前中しかシフトに入れねえからな、多少無理が必要なんだ」
「確かにな、んじゃ、俺らも頑張るか」
「せやな、頑張ろ」
やまぶきベーカリーのパンを確認する。それぞれ十分な数がある上、パンごとにトレーを分けていただいていた。その心配り、すげえ助かる。
俺は大きめの付箋にそれぞれのトレーに入っているパンをサッと書いて貼っておく。これだけで随分楽になるはず。今回は常連客とパン屋の娘の戸山&山吹プロデュースだしな。結果としてパンの種類も多くなってしまった。
「お、パンの種類貼ってくれたんか!ありがとな、助かるわ」
「だろ、ミスらなくなるだろうなって思ってな。さて、最終確認だ。手の空いている時は、冬樹がパン、北斗と俺がドリンク。忙しくなってきたら関係なし。早いオーダーから早く出すように心がける。OK?」
『ああ、もちろんだ』
「さすが相棒、理解が早くて助かるぜ。早速注文きたな」
さてと、徐々にエンジンかけて行きますか。
___
1Aカフェは文化祭が始まると同時に大盛況を見せていた。誰だよキッチン3人でまあいけるとか思ってたやつ。これ確実に3人の作業量じゃねえぞ。
「キッチン〜、これまだ〜?」
「注文お願〜い」
「ちょっと待ってくれ〜……」
ホールには決して届くことがない悲痛な叫び声がこだまする。
IHで料理を作るのが俺と北斗で、パンやドリンクといった加熱調理をしないで出せるものの担当が冬樹っていうシフト分けだが、それが上手く行ってたのは最初だけだった。途中から続々と来る注文に対して手の空いた奴が取り掛かるっていう図になっていた。なんでや。
あれよあれよという間に俺らのシフトは終了した。正直なところ記憶がねえ。忙しすぎた。
「やっと交代か〜……」
「え、みんなヘロヘロだけど大丈夫?」
「全く大丈夫やあらへんな。んじゃ、自分らは下がるから、あとはよろしく……」
「任せて〜」
と、全員死にかけになりながらシフト交代を済ませる。体育館でのライブまであと1時間と30分ほど。で、俺と北斗と冬樹はここにいるので、あとは俺らと一緒にいるはずのない羽丘のしぐれと千夏がどこにいるのかを見つけなければならない。
「おいお前らしぐれと千夏がどこにいるとかわかる?」
「ん?俺のところには連絡ないな」
「自分のところにも連絡はないで。グループで聞いてみればええんちゃう?」
「それもそうだな」
グループのLAINに「どこにいる?」と送信すると、すぐに既読が3と表示された。
【北斗「ん〜、圭介の隣だな」
冬樹「ん〜、自分も圭介の隣や」
しぐれ「ん〜、ちなったんと一緒に校門ついた〜」】
「んじゃ、全員もうちょいで揃うんだな。校門だから秒だな」
玄関付近にいる、とだけ伝え、俺は携帯の電源を落としてライブのことを考え始める。
(ん〜、久しぶりのライブだな〜、どんな演奏をできるか、楽しみだ)
「お〜っす、ニッシー!お待たせ〜」
「ケイちゃん、春くん、お待たせ」
「え、チナツ自分は?」
「ケチコクにはいつも待たされてるからいいかなって」
「よっしゃ、全員揃ったな。んじゃ、体育館にいくぞ」
『おう!』
俺ら、「Werewolf」の初舞台は、もうすぐだ。
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体育館に入ると俺らの2つだか3つ前にやるバンドがリハをしていた。
1時までは勝手に使っていいんだって。やるね生徒会。
「どうする?ちょっと叩かせてもらうか?しぐれ」
「ん〜?大丈夫っしょ☆音聞いてるだけでどんな子かってのはある程度わかるし」
「それ本当にわかるのか……?」
北斗が呆れているが、まあしぐれが大丈夫ってなら大丈夫なのだろう。
現在時刻は12時50分。俺らの出番は1番最後、トリだ。
で、俺らの出番は大体14時ってところだろう。俺らの前には5バンドが控えている。
「会場の下見も済んだことだし、控え室でもいくか?」
「ちょこっと早いような気もするけど、そうしておきましょ」
「さんせ〜!!……で、控え室どこ?」
「しぐれお前……。まあいいや、ついてこい」
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控え室に入ると、先ほどリハをしていたバンド以外は揃っていたが、間も無く、そのバンドも控え室に入ってきて出演全バンドが揃った。
「ええ〜!ケイくんバンドやってるの!?いってくれればよかったのに!」
「本当だ、ケイ、なんでいってくれなかったの?」
「おたえちゃん、香澄ちゃん、説明、始まるよ?」
牛込さんが戸山と花園をなんとか宥めてくれた。助かった……。
「では、注意事項を確認します。各バンドの持ち時間は15分ですが、これは準備から撤収まで含めた時間です。多少伸びても許容としますが、14時30までには全バンドが終了するようにお願いします。それから……」
戸山たちが黙ると、生徒会の担当者が注意事項の最終確認を始めた。聞いている感じは特に変更もなく、事前の注意と同じだ。
「それでは最初のバンドは準備をお願いします」
説明が終わると、最初のバンドの子たちが体育館へと向かった。どうやら、事前に渡されているタイムテーブルの10分前までに体育館に行けばいいらしい。
「衣装どうする?制服でいいかな?」
「私はそれでいいと思うけど……」
「自分もそれでいいと思うで。ケイは?どうする?」
「ん〜、全く考えてなかったけど、制服でも全く問題ないっしょ」
「んじゃ制服で行こうか」
『OK』
……で、待ち時間は何をするんだ?
「ね〜ね〜ニッシー、待ち時間みんなで模擬店回らない?」
「そんなことやっていいのかよ?」
「まあライブできれば問題ないっしょ。50分くらい見て回ってから戻ってこようや」
「私も模擬店とか出し物みたい!」
「いざとなれば怒られるの俺だし、いっか。いくぞお前ら」
待ち時間の過ごし方なんて、ハナから考えなくとも勝手に決まっていました。いつの間にか。ところでこれ本当にいいのか?
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あれから3年生の先輩がやってるお化け屋敷だったり、2年生の先輩がやってるカジノだったり、そこそこ楽しんでいたらいつの間にか50分経っていた。
「さ〜て、では、いざ出陣、ですな。ぶちかますぞ、お前ら」
「おう」
「せやな」
「任せて」
「精一杯やろう」
体育館の裏で、ポピパの演奏を聴きながら俺らは自分たちを奮い立たせる。
それにしても初めて1ヶ月の割にはよく弾けてるな、戸山。感心感心。
「ドラム、誰なのかな?」
「ん〜?……まあ、そのうちわかるんじゃねえの?」
まさかポピパラスト一曲でいきなり山吹が現れてドラムを叩き始めるなんて思ってもなかったけどな。
「……いよいよだな」
「ああ。でも、大丈夫だ」
「いくぞ」
ポピパと入れ替わりで、俺らはWerewolfとしての初めてのステージに立った。
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「皆さん、初めまして。Werewolfと言います。まずは一曲聞いてください。『idiot』」
北斗のギターリフから始まり、そこからベース、リズムギター、キーボード、そしてドラムが入って、ボーカルが入り、そしてそのままBメロへ。
これは今回のために作った曲。そもそも今回のために曲を作らないと演奏する曲がなかったんですけどね。
(北斗のギターも、冬樹のベースラインも、しぐれのいつも通りのドラムも、そして千夏のキーボードも、よく聞こえるぜ)
久々のこいつらとのライブに俺は胸を弾ませながらサビへと向かう。
会場の熱気に当てられて、走りそうになるのを抑えながらなんとかサビを歌い切る。
そしたら、それぞれのパートのソロの始まり。
実はこの曲、一番難しくしたのはこのパートソロの部分だったりする。
各個人がギリギリ弾けるフレーズを考えるのすげー楽しかった。メンバーからは鬼畜くそ野郎って罵られかけたけど。ちなみにリズムギターにソロパートはつけなかった。代わりにボーカルのシャウトがある。
「……ラ〜〜〜〜ラ〜ラ〜ラ〜〜ラ〜ラ〜」
千夏のキーボードソロの後にドラムソロが始まる。
……やっぱりこの曲えぐいわ。誰だよこんなの考えたバカ野郎。
「ありがとうございました、1曲目、いかがだったでしょうか?」
俺らがトリってわけで、フロアは大盛況だ。サイコ〜って歓声だのが聞こえてくる。うんうん、この感じがたまらねえんだ。
「初めてのライブがここでできて幸せだぜ!じゃあ2曲目、といく前に……。この中で「Maaquerade kiss」ってバンド、知ってる人いますか〜」
『は〜い!!』
おお、かなり知ってくれてるじゃねえか。嬉しい限りだ。そんなこと言わないけど。
「2曲目は、そんな素性のわからないバンドから。聞いてください。『仮面』」
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「以上、Werewolfでした!これからもバンド、できればと考えています!ありがとうございました!!」
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