悪の味方はこの俺だ!
トレーニングは欠かさないとして、それ以外の時間、1週間のうち3日はパーカー男、2日は小銭集め、もう2日は人材探しを繰り返す日々。
パーカー男を演じていると、子分にしてくれ!同盟結びたい!なんてのが何度かやって来た。
正直【無個性】の僕から見てみれば、誰も彼もが優良強固性なのだけれど、無個性ライフを送っていた僕の特技【緑谷アイ】は、【個性】に関わる全てを通して人を見る事が出来る。
【緑谷アイ】が正しければ誰も彼もが僕を知った途端裏切りそうな連中ばかりで、根っからビビりな僕には荷が重いったらありゃしないってわけで、丁重にお断りした。
そんな日々を繰り返すして三ヶ月。
夏が終わり、秋が過ぎ、もうすぐ冬。
クラスの皆が希望した進路の為に猛勉強するなか、僕は何時ものようにボランティア活動に参加し、慈善活動という名目で活動資金を集めるため溝浚いをしていた。
平日に中学生がボランティア参加なんてボランティアに参加してる人、大人、ヒーロー、警察としょっちゅう声を掛けられるが大抵はある台詞で解決する。
『僕、無個性なんです……学校に馴染めなくて……でもこのままじゃイケないと思ったんです!』
無個性を誰もが憐むが、それでもと続ける台詞に皆が応援する。
あれほど嫌だった【無個性】……便利すぎるだろ、おいっ!!
そんな日々を繰り返しながら少しずつヒーローやヴィランの個性、活動域、行動の傾向、ついでに小銭と微々たるものではあるけれど着実に力を蓄え始めるのだけれど、意外にもプライド捨てて這いつくばって探せば結構お金は落ちてるもので、溝川、側溝、昨今増えてる演技担いでの投げ銭問題抱えた池など浚えば浚うほど出てくる出てくる。
『おっ、五百円!』
ときたま見つかる財布やらバッグやらは意外にも値打ち物が多くて、そこら辺は足が付きやすいのと捌くのが面倒だから手を付けずにボランティアのリーダーさんに渡す。
下手に手を付けるよりはお行儀良くしといた方がイメージアップに繋がって別の地区のボランティア活動に呼ばれたり、呼ばれる活動の幅も増えるし、結果資金集めも調査範囲も広がるからWin-Winというやつだ。
そんな日々を繰り返して半年、何時ものように蛍光色のベストを着て町中のゴミ拾いに励む僕の目の前にはヴィラン予備軍すっ飛ばしてヴィラン認定待ったナシな行為をしようとしている女の子がいた。
『握られた刃物…当たりどころによるのは置いといて身近な物から選んだにしては殺傷力低め…表情的に快楽的犯行かストーカー的な犯行…いや、その手が持つ異常的な執着性の対象がズレてるような……となると個性衝動による衝動的なモノかな……傷を食べる、血を飲む、発見例は少ないけど傷つけたモノを好む個性衝動の線も捨てきれない…コレは、ストロー?』
「…誰ですか、貴方?…」
『……ストローと言うことは飲む系となると、吸血、吸水はたまた吸精の可能性も……いやいや、あの手の個性衝動のほとんどは身嗜みに影響する…彼女の着こなしにはその手の痴女的要素は見られないから、おそらくは吸水か吸血のどちらか……あぁ、気にしないで良いから続けてどうぞ!』
「そんなじっと見られると萎えます……というかさっきからブツブツとキモいですっ!」
『ヤル気無くしたならよかった! この手の分野、僕達は【特出個性侵蝕症】または【幻想寄生虫症】って呼んでるんだけど、この症状に詳しい先生知ってるから紹介するよ! 』
「と、特出なんですか? 貴方の言ってること意味分からないで……寄生虫!?」
『そう! 本来スキルでしかないはずの個性が所持者に特定の衝動を発生させて趣味嗜好どころか心体構成を個性自体にとって都合の良いように書き換える……という所持者が認識誤差を引き起こし、それが元々の自分だと誤認する症状。』
「わ、私…びょ、病気なんですか?」
『たぶんね! 個性という超常的かつ身近すぎる特異性から【個性】の代償として認識されてるから明確に病として認識されてないけどね。 少なくとも先生は病論を唱えて医学の道は追放されたけど、科学者として研究は続けてて、治療に成功してるよ!』
『……結局、都市伝説病とソレを信じるエセじゃないですか…』
『そうかな?
液状の個性や人外容姿個性、果ては空想上の怪物化個性なんてのもあるけどベースは人だよ?
どこでそんな遺伝子型紛れ込んだのか?
どこに超常的力を操るキャパがあるのか?
ヒーローやヴィランの個性が使う内に変異、拡大するのは何故か?
【個性】の在り方には大なり小なり所持者のイメージが影響してる節がある。
ビンチに陥ったヒーローやヴィランが今までと違う方向性の能力を発動させることが多々あるけれど、元来の個性ではあり得なかったソレはこじつけの様な理由を正として元を辿って行けば何故か説明がつくんだ。
さっきの病気は【個性】という存在のせいで症状が悪化してるけれど、個性が無かった時代には心と体のバランスが崩れた結果として意志に関係ない反応が身体に現れるなんて症状は珍しく無かったんだ。
有害物質垂れ流された川で育った魚や動植物が奇形になったり凶暴かするように、君の場合は個性とソレへの認識や理解不足が起こした異常を周囲が対応を諦め、異常というカテゴリーに押し込むという安易な対処をしたことが原因だと思うよ。』
「……普通のカァイイになれるんですか……」
『断言はしないけど、先生の所に行けば心体のバランスは整うから欲求と衝動を正しく認識出来るようになるし、確実に今より個性との付き合い方やコントロールは上手くなると思う……普通になれず異状のまま今と変わらなかったとしても異常性の中で諦めながらも僕の怪しさすらある誘いに目を輝かせるなんて事は無くなって、正々堂々真正面から今と同じ行動取れるようになるのは間違いなしさ!』