人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第二十章

人形を作った造形神(イドラデウス)がいるとされている霊長園墳墓内部。

そこで僕は土で出来た造形物の集団、埴輪兵団に囲まれてしまう。

 

無限に続く人形バトルを乗り越えた先に埴輪兵団のリーダー、“杖刀偶 摩弓(じょうとうぐう まゆみ)”が立ち塞がった。

 

「次はその人形か。……ふむ」

 

「?」

 

こがさ人形を出したのを見た摩弓は少し考え込んだ。

悩む…ということは、「水」に対して彼女の人形は相性が悪いのだろうか。

だが、こちらは埴輪兵団との連戦でかなり消耗している。勝てるだろうか…?

 

「…そんな手負いではまともに戦えまい。医療隊!その者を治療してやれ」

 

「!?」

 

自分の人形を見た真弓は予想外の行動に出た。

敵である筈のこがさ人形をナース姿の埴輪達がその場で救急して消耗した耐久を回復させる。

様々な医術を受けたこがさ人形は体力、魔力共に万全の状態となった。

 

「ど、どうして?僕は敵なんですよ?」

 

「袿姫(けいき)様は私に侵入者の実力を図るよう命令された。人形がそんな状態では命令を遂行出来ない」

 

袿姫?それが例の造形神の名前か。

自分を倒しに来た相手に対して随分と余裕のある待遇だと少し驚いたが、これはまたとないチャンスが来た。

 

つまりここでその実力を示せば、造形神である袿姫という人物に会えるのではないだろうか?

 

「私に負けるようでは、袿姫様には到底敵わぬ。だから早々にお前を倒し、侵入を諦めて貰おう」

 

こちらの人形が万全になったのを確認した摩弓は改めてこちらに警告する。

どうやら簡単に負けてやる気はないらしい。…望むところだ。

 

 

 

 

 

 

「 では行きますよ!こがさ! 土砂降り(どしゃぶり) で自分を強化して! 」

 

 

指示を受けたこがさ人形は持っている傘を閉じ、頭上に発生した雨雲から降り注ぐ恵みを一心に受ける。「水」属性のこがさ人形にとって水、特に雨水は正に力の源。この効果によりこがさ人形の集弾、集防が上昇する。

その代わりに俊敏が下がってしまうデメリットがあるものの、相手の出方を伺う戦法がメインのこがさ人形にとってはあまり気になるものにならない。

相手の技を見てすぐに分かった。あのまゆみ人形の攻撃スタイルは集弾であることを…このバフは彼女にとって嫌なものである筈だ。

 

「……」

 

しかし摩弓はこがさ人形の技を見ても特に表情を崩すことなく、それを見守っている。

どういうことだ?攻撃が通りにくなることはバトルにおいてとても不利になるというのに、どうして何もしてこない?

 

「…なら!こがさ 幽霊アンサンブル!」

 

今のところ相手が何を考えているのかが分からない。普段ならばこちらがその行動をするつもりだったが、仕方ない。

そっちが来ないのなら、こちらから仕掛けていこう。指示を受けたこがさ人形は金床を地面に生成し、懐から取り出したハンマーで力一杯打ち付けた。

その際に鳴る金属音が音符の弾幕となって、相手に向かって飛んでいく。

 

「幽霊アンサンブル」は攻撃技であると同時に、相手の集弾を下げる効果がある。

あちらとしては、絶対に食らいたくはない技だ。さぁどう来る?

 

「…右にかわして バリアオプション!突っ込め!」

 

指示通り、最小限の動きで弾幕をかわしたまゆみ人形は自身の周りに埴輪の身代わりを展開させ、こがさ人形に接近する。

相手の行動パターンとしてはほぼ予想通りだ。ならばこちらはそれに対応するまで。

 

僕はこがさ人形にアイコンタクトを送り、迎撃態勢を整えさせる。

 

「 十文字(じゅうもんじ)!! 」

 

まゆみ人形による杖刀の2段切りが襲い掛かる。だが集防が上がっているこがさ人形にはそこまで痛手にはならない。そう思っていた。

だが想像よりも相手の火力は凄まじく、真向に斬撃を受けたこがさ人形は大きく吹く飛ばされてしまう。

 

「ま、負けるな!反撃の リバーススプラッシュ だ!」

 

こがさ人形は吹き飛ばされながらも何とか両手で踏みとどまり、地面から湧き出た巨大な水柱を相手に向かって放出することに成功させる。

これはバフが掛かっていなかったら危なかったかもしれない。あの人形…スピードもそうだがパワーも相当ある。

 

相手の攻撃の後に発生したことにより、より威力の増したリバーススプラッシュがまゆみ人形へと襲い掛かった。

しかし相手は先にそれを見越してか、事前に「バリアオプション」を展開している。結局はダメージを負わせることが一切出来ないのが悔しいところ。

…流石に手強い。兵団の長を務めるだけはある実力だ。

 

「 水に向かって スパークジャベリン! 」

 

「!?」

 

だが相手はこちらの想像を超えた策でこの技に対抗した。

電気を帯びた槍を手元に生成したまゆみ人形は水柱に向かてそれを投げつける。

水は電気を通しやすい。その特性を利用した応用…彼女は最初からこれを狙っていたとでも言うのか?

 

雷の槍が貫通した水柱は電気を帯びた敵味方も関係のない無差別な攻撃と化し、近くにいるこがさ人形も危険な状況となってしまった。

その場から今すぐ離れたいところだが、今のこがさ人形は俊敏さを失っている。当然避けられるはずもなく、おまけに「土砂降り」で水を被っているせいで余計に電気を通りやすい。

全身が痺れて苦しむこがさ人形に対し、バリアオプションで難を逃れているまゆみ人形。格好の隙を晒した相手に、構える。

 

「 追撃の スパークジャベリン で止めだ!! 」

 

Eこがさ人形は「雷」が4倍で通ってしまう。…最もダメージを与えられる最善の攻撃だ。

 

雷の槍がこがさ人形の胸元を貫き、そこから何万ものボルトが全身に伝わってくる。前が見えない程の凄まじい光の点滅が繰されると同時に、こがさ人形の悲痛な声が墳墓内部で響き渡る。

反撃も抵抗も何も出来ず、こがさ人形が戦闘不能になるのを見ていることしか出来ない…完全にしてやられてしまった瞬間であった。

 

やがて攻撃を終えたまゆみ人形は静かに槍を抜き、自分の持ち主の元へと軽やかに跳躍する。

こがさ人形は…言うまでもなく戦闘不能。読みが甘かった…まさか、「雷」技があるなんて。

 

「さぁ、次だ」

 

「…ッ」

 

悔しさから自然と自身の唇を噛み締める。

今まで自分がしてきたようなことを逆にされてしまうと、こんなにも動揺するものなのか。

戦闘不能となったこがさ人形を封印の糸に戻し、謝罪の念を心の中で伝える。僕がもっとしっかりしていれば、絶対に上手く戦えていた。

 

だが、自ずとあの人形の属性が絞れたような気がする。「雷」を持つということは、それに相反する「大地」属性という可能性は少なくとも考えにくい。

そして「一閃」、「十文字」といった刀物を使う攻撃手段。恐らく、あの人形は「鋼鉄」属性ではないか?

 

そこまで威力がない技であるあの「十文字」の火力の高さも引っ掛かる…アビリティは技の火力を上げるタイプのやつだろうか。

詳細はまだハッキリしないが、あれを直に食らうのは今後避けた方が良さそうだ。

 

 

「次はお前だ! しんみょうまる!」

 

 

こがさ人形のバトルで得た相手の情報…決して無駄にはしない。

 

 

 

 

 

 

しんみょうまる人形を出した理由は主に2つ。

 

1つは「鋼鉄」属性に対して有利に立ち回れ、且つ相手の「雷」技を無効化出来ること。

相手の弱点を突くことは人形バトルの基本だ。「鋼鉄」に「大地」は効果抜群を取ることが出来る。

更に「雷」は「大地」に効果がない。よって先程の「スパークジャベリン」をしんみょうまる人形に出すことが出来なくなり、技範囲を狭められる。

 

そしてもう1つは、最後のユキ人形へと繋げる為だ。相手がもし「鋼鉄」ならば、「炎」であるユキ人形でも弱点は突ける。

だが相手にまだ隠し玉が存在しているという可能性も捨てきれない。こちらのエースを出すのにはまだ情報が足りないのだ。

まゆみ人形が仮に「大地」属性の技を持っていたとしたら、耐久のないユキ人形は一撃でやられてしまう。しかし元になった真弓の「埴輪」という要素を考えると、持っていても何ら不思議ではない。

いや、むしろ絶対に持っているという確信がある。人形というのは元になった人物に習った属性、技を持つ特性があるのだから。

 

そういう意味では、あの人形が「雷」技を持っていたことは正に予想外だった。

それも自分が水を使った技を使うのを読んでのあの行動…一切の無駄がない完璧な指示と言える。

 

「…どうやら色々と思考を巡らせているようだ。顔を見ればハッキリ分かる…だが無駄なこと。君に私の人形は倒せない」

 

「!」

 

「君の戦闘スタイルは先程のバトルで凡そ分かった。中々の腕だが、まだまだ動きに無駄が多い」

 

「先程の応用も君の兵団達との戦い方をトレースし、得たものだ。君はそれに対応出来なかった」

 

「最早この勝負、結果が見えている。降参したまえ」

 

「…――ッ」

 

勝ち筋を見い出している自分に対し、摩弓は無慈悲な言葉を投げかける。

様々な人形遣いとバトルをしてきた中で、こんなことを言われたのは初めてであった。

 

圧倒的な強者が放つ台詞に威圧され、思わず飲まれそうになる。

幹部でこれならば、それよりも上の立場である造形神(イドラデウス)はどれほどの実力だと言うのか?…少なくとも、自分など相手にもならない領域なのだろう。

 

確かに彼女の言う通り、このまま戦っても勝てる見込みがない。何せ相手の人形を1体も倒せてはいない状況だ。

少し慢心していたもかもしれない…これまでが順調すぎたのだろう。勝手に自分は人形バトルのセンスがあると思い込み、自覚はなくともどこか心の中で天狗になっていた。

情けない話だ。相手の力量も碌に測れないなんて…

 

 

…だが、しかし。

 

霊夢の時も、レミリアの時も、僕はギリギリだった。追い詰められ、必死に考えて考えて、何とか勝ちに繋いできた。

そしてそれを実現させてくれたのは、他でもない人形達。この子達はまだ、少しも勝負を諦めてなんかいない…僕を信じてくれている。

 

「確かに、このまま戦っても勝てないかもしれないですね」

 

「でも、諦めませんよ。僕の仲間達はまだ戦おうとしている。どんなに格上の相手であろうとね。なのに僕が弱気になってちゃ、この子達に申し訳ないでしょう?」

 

「…理解出来んな。つまり君は人形達の為に戦うと?」

 

「えぇ。それが僕の人形遣いとしての在り方です」

 

しばしの間、墳墓に静寂が訪れる。取り囲んでいる埴輪達もこの時は野次を飛ばすことはなく、時が止まったかのように動かない。

不味い…少し寒いことを言ってしまっただろうか?でも本当にそう思って言ったから別に後悔はしてないぞ…?

 

あぁ、でもしんみょうまるはこっち見て嬉しそうに笑ってる。ありがとうな。

 

「人間というのは面白い。超えることの出来ない壁を前にしても、怯むことなく挑み続けるその心意気。…造形である私達にはないものだ」

 

「…そ、そうです?」

 

静寂の中、最初に口を開いたのは摩弓だった。

どうやら摩弓にとっても先程の言葉は心打たれるものがあったらしい。ちょっと救われた気持ちになる。

 

 

「面白い。ならば超えて見せよ。最強の戦士であるこの私をっ!」

 

「…ッ!」

 

 

怒号のような大声でそう叫んだ摩弓の気迫は凄まじく、鬼にでもなってしまいそうな恐ろしい形相であった。

まるで物語の最後を締めるラスボスの風格…埴輪兵達もその姿を見て強縮してしまっているではないか。

 

 

「 さぁ、来るがいい!勇気ある人間よ!! 」

 

 

摩弓の持っている杖刀の力強い地面への突きが、次の勝負が始まる合図となった。

 

…意外とそういうノリが好きだったりするのか?埴輪兵団長殿。

 

 

 

 

 

 

「 先手必勝!しんみょうまる 抜打 だ!! 」

 

 

しんみょうまる人形が放つ無数の針の弾幕がまゆみ人形に向かって飛んでいく。

相手は防御手段として「バリアオプション」を持っているが、あの技は使う度に自身の体力を削っている。そう何度も使えるような便利技ではない。

よって「バリアオプション」を使うとしても、食らうとしても、攻め立てることにより確実にまゆみ人形の耐久を減らすことは可能となる。だが、相手もそれを想定していない筈がない。簡単にはいかないだろう。

だが今は少しでも相手の技の情報が欲しい。今度はどう返す?

 

「 臨戦 !相手の攻撃をいなせっ! 」

 

相手の取った行動は、ステータスを上昇させる技。

杖刀を抜き両手持ちで刃を横に構えたまゆみ人形は集中力を高め、迎撃態勢を取ると飛んで来る針弾幕を次々とその杖刀で打ち落とした。

 

「 霊石乱舞(れいせきらんぶ)! 」

 

お返しと言わんばかりに、今度はまゆみ人形の方から石礫の弾幕を放つ。

やはり、「大地」の技を持っていた。予想は当たりだったらしい。

 

「鋼鉄」の入っているしんみょうまる人形に「大地」は効果抜群…威力が上がっているのもあって、まともに食らう訳にはいかない。

ここは先程見せた相手の人形のテクニック…早速奪わせて貰おう。

 

「 集中之構 で弾幕を打ち落とすんだ! 」

 

指示を受けたしんみょうまる人形は手に持っている輝針剣を両手持ちし、縦に構える。

「集中之構」は集弾、命中を同時に上昇させる技。相手の先程見せた「臨戦」も、性質上は同じようなものに感じた。

アビリティの「打ち出の小槌」を持つ今のしんみょうまる人形ならば、きっと行ける筈だ。

 

複数飛んで来た石礫を、しんみょうまる人形はその輝針剣で両断していくことで攻撃をやり過ごす。成功だ。

「霊石乱舞」の威力自体はさほどなかったことから、属性が一致していない可能性がある。となれば、やはり「大地」属性は持ってはいないという仮説は正しいかもしれない。

 

「なんと、今度はこっちが真似をされるとは!…だが、まだ終わりではないぞ」

 

気が付けば正面にいた筈のまゆみ人形の姿が消えている。

手ごたえのない攻撃とは思っていたが、今のは囮の牽制攻撃だったらしい。こちらが気を取られている内に、既に別の攻撃の指示が出されていたのだ。

 

だけど、こういう時は大抵どこにいるか決まっている。

 

 

「上だ! しんみょうまる バックステップで回避!」

 

 

指示を受けたしんみょうまる人形は頭上から刃が突き刺さろうとしていることに気付き、後ろに大きく一歩下がる。

その僅か1秒もない程の間にまゆみ人形が勢いよく刃を地面へと突き刺し、無事難を逃れた。

 

「よく分かったな。これで終わらせるつもりでいたが、思いの他やるではないか」

 

突き刺した際の大きな揺れ、ヒビ、そしてクレーターが技の威力の高さを物語っている。食らっていたら間違いなく戦闘不能だったであろう。

自分も過去にこの戦法を実行した経験がここで生きた。この隙は見逃さない。

 

「 ロイヤルプリズム! 」

 

地面に突き刺さった杖刀を抜く時間を利用し、しんみょうまる人形は剣先から虹色の光線をまゆみ人形に放つ。

攻撃タイミングとしてはバッチリだ。相手からしたら避けようのない状況…!

 

もし「バリアオプション」を選択したとしても、今ならまだまだこちらが攻め立てるられる。形勢がこちらに傾きかけた。

 

「ハンマー投げ で攻撃を弾きつつ、反撃!」

 

「(な、何!?)」

 

だが摩弓はこの不利な状況にも冷静に、そして大胆に対応してくる。

棘付きの鉄球を手元に生成し、それを力一杯自分ごと横に回転させる事で発生する“遠心力”で「ロイヤルプリズム」の軌道をずらす。

そしてその勢いをそのまましんみょうまる人形に向けて手を放すことで棘付鉄球を真っすぐに飛ばした。これを受け止めるには威力が高すぎるし、生半可な攻撃では相殺出来ないだろう。

 

「スクリューロック で迎撃だ!」

 

出し惜しみをしている場合じゃない。ここは最近覚えた新技の1つ、「スクリューロック」の出番だ。

この技はどんなに頑丈なものにでもダメージを与えることの出来る特性を持ち、相手の上がっている能力を無視出来るのが主なメリット。

これで頑丈な鉄塊を砕き、反撃をやり返す事も可能だろう。

 

指示を受けたしんみょうまる人形は大きな尖った岩の塊を生成し、それを高速で回転させ、ドリルのように飛ばす。

鉄塊と岩が激しくぶつかり合い、橙色の火花があちこちに飛び散る。威力自体はほぼ互角…だが、こちらの技の性質上、徐々に鉄球に綻びが生じてこちらが優勢となり、やがて鉄球は岩に貫通させられる。

 

「…成程。良い技の選択だ」

 

「バリアオプション! 相手に接近しろ!」

 

摩弓は遂に「バリアオプション」の選択をとる。

地面から埴輪のダミーを生成し、迫り来る岩がそれに吸い込まれていくことで直撃を免れた。

 

これで2回目だ。あの技を繰り出せるのは精々、後1回。それが限度だろう。徐々にまゆみ人形にも疲れが見え始めているのが分かる。

いいぞ。確実に追い詰めてはいる。このまましんみょうまる人形で倒せれば万々歳であるが…油断はしない。

 

「ロイヤルプリズム!近づかせるな!」

 

接近してくるまゆみ人形に向かい、しんみょうまる人形は再び虹色の光線を剣先から飛ばす。

「集中之構」で威力と精密さが上がっているこの技を、消耗している状態でかわすことは難しい筈だ。

 

「バリアオプション で構わず接近!」

 

「な…!?」

 

いとも簡単に、その言葉は放たれた。

更に「バリアオプション」を張ることでダミーを作り、攻撃をやり過ごす。

 

これで3回目…最早まゆみ人形の耐久は限界に近い。

この摩弓の選択…まさかここで勝負を決めてくるつもりなのか?急に力押しな戦法で仕掛けてきているような…理由は不明だが、これは大きい。

 

大きいが、相手に接近を許してしまう結果となったのは事実。

もう通常の攻撃技が間に合うような間合いではなくなってしまった。

 

 

「 そこだ!! 十文字ッ!! 」

 

 

摩弓は最後の一撃を放つかの如く怒号で人形に指示を出し、それを受けたまゆみ人形は杖刀による二段切りを繰り出そうと構える。

 

駄目だ。ここで防御に回ったらやられる…!

 

 

しかし、それに対して対応出来る技をこちらはまだ1つ持っている。

玄武の沢でしんみょうまる人形が僕を庇った時、偶発的に身に着けたあの技が…!

 

 

「 不動心(ふどうしん) で受け止めろ! 」

 

 

指示を受けたしんみょうまる人形は頷き、頭にかぶっているお椀を肥大化させてそれを盾代わりに攻撃を受け止めた。

耳鳴りがする程の金属音が、激しく墳墓内に反響する。

 

「な、何だと!?」

 

相手の人形の攻撃は見事防ぐことに成功。

流石の摩弓もこればっかりは驚いたようだ。だが、この技はこれで終わりではない。

 

「 いっけぇっ!!! 」

 

盾代わりに受け止めたお椀を手に持ち、力を蓄えたしんみょうまる人形は勢いよく一歩前進する。

そう、この技は防御と攻撃を同時に繰り出す技で、カウンターのような使い方が可能。しんみょうまる人形の“守り”の力を“攻め”に転換させる特殊な技だ。

 

「(不味い…!) ――で――――っ!!」

 

攻撃が当たったその時、摩弓の声もかき消される程の衝撃が訪れた。

まゆみ人形はお椀の盾によるバッシュをもろに食らい、そのまま大きく吹き飛ばされる。周りにいる埴輪兵達を次々に巻き込みながら、やがてその先の壁へと叩きつけられてしまう。

 

 

「(やったか!?)」

 

 

相手の耐久はもう風前の灯火だった。あれは流石に直撃している。やった…勝てたんだ。

 

 

確かに当たったという手応えから勝ちを確信し、胸に手を当てて安堵するのだった。

 

 

 

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