人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第三十二章

 

 

 

【謎の集団出現!その名も“人形解放戦線”】

 

突如、謎の集団が突如人里へ現れた。その正体はメンバー6人による少数集団。

“人形の解放”を人里に住む人々に訴えてたが、相手にされず。人形の危険性は里の者達にも認知されていたものの、「封印の糸」の開発により実用性の方を評価された模様。

 

リーダーと思われる1人を見た博麗の巫女が即刻里から追い出した。放置すれば人間に危害を加える可能性が考えらえたのだろうか?

 

 

 

 

 

【人形解放戦線、人里に出没】

 

前の騒動から早数日、人形解放戦線が再度人里に出現。「人形達が苦しんでいる」と供述するもまた相手にされず。

今は人間達が人形と生活を共にし始めた時期でもあり、それらを手放すことに賛同出来ない者が多いのが原因か。

聞く耳を持たない者達に怒りが爆発しそうなリーダーを目撃した阿礼乙女の指示により、またも里から追い出されたようだ。

 

それもその筈。リーダーだった者の正体は「メディスン・メランコリー」。

彼女が人間に対して強い憎しみを抱いた妖怪であることは阿礼乙女もよく知っている。かつて「幻想郷縁起」の取材を行った際も、地獄の裁判長の有難いお説教がなければどうなっていたか。

 

 

 

 

 

【人形解放戦線、また人里に】

 

また数日後に人形解放戦線が人里へ出没し、今すぐに「封印の糸」を使用を止めるように訴えた。

素性が一部にバレているメディスン・メランコリーが言うには、あのマジックアイテムは不完全で人形に悪い影響を与えているとのこと。

しかし、現状「封印の糸」がなければ人形を制御出来ない状況であり、彼女の懸命な呼び掛けには誰も耳を傾けなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

この記事は春頃……つまり“人形異変”が起こって間もなく書かれたものである。

 

その中身は自分が想像していた物とは違っており、人形解放戦線の比較的地道な活動内容が記載されていた。

目を通している限り、この頃は特に悪事を働いていた訳ではないようだ。むしろ、活動内容としては良いことをしているようにも見える。

リーダーであるメディスン・メランコリー自らが出向いているのを見るに、それが彼女の意思でもあったのだろう。

 

“「封印の糸」が人形に悪影響を与えている”……か。成程、それで製造元の「河童のアジト」を襲撃したのか。

もしこの話が本当ならば、今すぐにでも使用を止めるべきなのだろうが……現状は出来ない。その理由は、正に「封印の糸」の存在だ。

このアイテムで制御しない限り、人形は“野生”と扱われてしまう。野生の人形は誰のものでもない為、もし他の人に「封印の糸」を使われたら簡単に強盗が可能となる。

それを対策するには、同じ「封印の糸」でこちらの所有とするしか今のところ方法はない。何とも皮肉なものだ。

 

 

 

 

 

 

次々と新聞の記事を読み漁ってみるが、どれも同じような内容が続く。

 

もうこれ以上有益な情報は引き出せそうにないだろうか。まぁ人形解放戦線の過去を知れただけでも収穫だろう。

そう思いながら最後と決めた新聞の記載に目を通すと、思わず体が硬直する。

 

 

「人形解放戦線、人里を襲撃……!?」

 

 

最初のものから約2か月後の新聞に、衝撃的な事件が記載されていた。

その内容は「今まで地道に呼びかけ続けてきた人形解放戦線が、人形を率いて人里を襲った」というもの。

確かに今まで呼びかけに一切応じてくれなかった憤りがあったとは思う。だが、それを加味してもこの暴動はあまりに唐突すぎる……不自然だ。一体、人形解放戦線に何が……?

 

内容に目を通すべく新聞を両手で開き、読むことに集中する。

人里への襲撃を始め、他にも「人形の持つ金品目的の大量虐殺」、「裏での希少な人形達の密漁」等々……様々な悪事を働いていると書かれているではないか。

わざわざ人々に“解放”を訴えたのも、全てはこの為だったとでも言うのか?そうだとすれば、人形解放戦線が非道であることは否定出来ない。

 

文はこれを渡す際、ハッキリ言っていた。自分の新聞は“真実”しか書かないと。

あの言葉に嘘はないように思う。だからこそ、突きつけられた非情な現実も“真実”なのだろう。

 

 

やはり、人形解放戦線は倒すべき“悪”なのか?

 

 

それを確かめる為にも、まずは捕虜となっているであろう三月精から話を聞いておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

三月精と面会すべく、天狗の里の詰め所に出向いたはいいものの、何やら穏やかな雰囲気ではない。

どうやらまたしても何かがあったらしいので、現在仲間の証言を伺っている射命丸 文に話を聞いていた。

 

「何があったんですか?」

 

「あぁ、舞島さん。それがですね……捕まえた三月精の内の2匹が、忽然と姿を消したみたいなのです」

 

「――!」

 

連行していた烏天狗の証言によると、目を離したほんの一瞬の間に2人がいなくなったらしい。加えて、あの僅か数秒であの場から逃げられる筈はないとのこと。

瞬間移動?もしくは時を止めたのか?正直、この世界ではそんな非常識な力がいくつも存在している。しかし、今回それを行ったのは悪魔で“妖精”だ。そんな強大な力を持っているようにはとても思えないが……?

 

「“サニーミルク”。彼女がいない限り、姿が透明になることなどあり得ません。あの時、三月精は確かに別々だった筈……一体何が?」

 

金髪の赤い妖精のサニーミルクという妖精はあの時、2人と仲違いをして一緒ではなかった。現に、今も捕まっている状態である。

そして逃げた2人の能力はそれぞれ「音を消す能力」と「気配を探る能力」であり、この世界の住民は基本的に能力は1つだけしか持たない。

そう考えると、別の第三者、もしくは何かしらの道具を使用した可能性が高いか?

 

「………あ」

 

河童のアジトが襲っていたメンバーの中に、三月精も一緒にいたという文の証言を思い出す。

 

能力の他にも姿を消す手段……そうだ。間違ない。

アジト奪還の際も、河童達が全員使用していたあの道具ならば、この奇妙な現象も辻褄が合う。

 

「“光学迷彩”ですよ。きっとそれを使ったんだ」

 

「光学迷彩を?そんな代物をあの三月精が持っていたと?……必要ないでしょうに」

 

通りで素直に捕まったと思ったが、見事に裏を掻かれてしまったようだ。

透明になれる手段を持つ者にとって“光学迷彩”は絶対に必要ないもの。それをあの妖精達が理解していたのかはともかく、不味いな。

 

これでは人形解放戦線についての話を聞くことが出来ない。今のところはまだ詰所に残っているのは、仲違いしたサニーミルクのみ。

今の状態で情報を聞き出せる望みは薄いが、こうなってしまっては仕方がない。予定とは違うが、サニーミルクと話をしてみよう。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

大方、サニーミルクと話をし終わった。結果は……

 

 

 

「 あんたと話すことなんてないッ!! 」

 

 

「どうせあたしは劣化版……」

 

 

「人生オワタ\(^o^)/いや、妖精だから妖生?まどっちでもいいやアハハ!」

 

 

 

と、大体こんな感じだった。

 

感情がおかしくなっているのか、怒ったり悲しんだりと不安定な状態となっており、まともな話など一切出来やしない。

あの様子ではしばらく立ち直れないと見た。少なくとも、敵の立場にある僕ではどうにも出来ないだろう。いくら妖精とはいえ、あれは少々可愛そうである。

……まぁ、こうなってしまった原因は間違いなく僕なのだが。

 

 

僅かに引き出せた情報もあるにはある。それは、僕が人形解放戦線から狙われているということ。

どうやら河童のアジトの一件で目を付けられたらしく、見つけ次第襲うよう命令されているらしい。今後、遭遇することがあれば気を付けておいた方がいいだろう。

 

 

「………やっぱり、やるしかなさそうだな」

 

 

小声で内なる決心を固め、詰め所を後にした。

今のこの状況……上手く利用すればことを有利に進められるだろう。ただ、それ相応の覚悟も必要となる。

 

目指すべき場所も、ある程度は定まった。全ては人形の為……きっとものにして見せる。

 

 

 

 

 

外に出てみると、活気のある天狗の里の情景が目に映った。騒動が収まったことで、道具が戻って来た者達は忙しそうに働き始めている。

ある者はペンを動かし、ある者は大剣と盾といった武具を持って里の見張りをすることで、それぞれ役割を果たし合っていた。

しかし、何やら武器を持っている白髪の天狗は黒い翼を持つ天狗に顎で使われているみたいだ。上司と部下の関係性なのだろうか?上司のキツイ言葉に対し、白髪の天狗は黙って頭を下げている……少し、嫌なものを見ている気分になった。

 

「辛気臭いお顔をしていますねぇ。こんな光景は当たり前ですよ、舞島さん」

 

「――うわッ!!?」

 

突然、至近距離で宙に逆さまの状態で顔を合わせてきた射命丸 文に驚く。その登場の仕方は予想外だった。

文は正面に向き直ると器用に地面への着地を決めた。その際、いつも片足で立つのは天狗特有の癖みたいなものだろうか。

 

「今回の騒動は、警護に当たっていた白狼天狗の不始末と言えます。まぁ、透明になられては見つけられないのも仕方がないのでしょうがね」

 

「……何だか理不尽な気がします」

 

「我々天狗は縦社会です。下の者の扱いなんて、こんなものなんですよ」

 

「………」

 

「さてさて!こうして道具も戻ってきたことですし、改めて取材の方をさせて頂きますよ!」

 

暗い話題から一変、切り替えるように営業スマイルで話し掛ける文。

そう言えば、ここに来たそもそもの目的はその取材の約束を果たす為であった。出来ることなら忘れていて欲しかったのだが。

 

 

「さぁさぁ!ここで話すのもなんですから、あちらの方d」

 

「やぁ、射命丸。随分と元気そうじゃないか」

 

 

意気揚々と僕を取材しようとしていた文の肩に、誰かが後ろからポンと手を乗せる。

その人物がいつの間に文の背後を取っていたのかという驚きよりも、その声を聞いた彼女の青ざめた顔の方に思わず目がいってしまった。

顔を見なくとも誰なのか分かっているらしく、向き直ることはしない。いや、出来ないのだろう。

 

「い、飯綱丸様……?めめ、珍しいですねぇ?」

 

「あぁ、久しぶりに出向いてみようと思ってね。……だが、まさかこのような事態になっていたとは」

 

「妖精相手に出し抜かれる……これは天狗にとって一生の恥だな?」

 

「ハハハ……いやぁ、本当に」

 

青い髪、青い頭巾、青いワンピースに黒いマントを羽織った文の上司に当たるであろう飯綱丸と呼ばれた人物は、手に持った三脚を自身の右肩に乗せて威圧している。

どこか余裕を感じさせる雰囲気を持っていたあの射命丸 文が嘘のようにビビっている様子から、これから何が起こるのかを予期しているのかもしれない。

 

そして次の瞬間、肩に乗せていた三脚は弧を描きながら勢いよく射命丸 文の背中を捉え、致命の一撃を与える。

その様はまるでゴルフでもしているかのような綺麗なフォームであり、さながら文はそのボール。そのまま天へと飛んでいってしまった文は特徴的な断末魔と共に段々見えなくなってしまい、遂にはお星様となってしまう。

妖怪の身で受けてあれだけの威力……人間の僕が受けたら跡形も残らないだろうな。

 

「君が舞島 鏡介だね?里を救ってくれたと聞く。感謝するよ」

 

「おっと、自己紹介がまだだったね。私は“飯綱丸 龍(いいずなまる めぐむ)”。まぁ、中間管理職のような立ち位置にいる者だ」

 

「あ、はい……ど、どうも」

 

礼儀正しい挨拶をされ、流れるように握手を交わす。

さっきの威圧的な態度と暴力的な一面から急に律儀になったりと、何かと読めない人物で少々困惑する。

……あの様子だと、文の取材はしばらく延期だろう。

 

「ここは何もないところだが、せっかく来たんだ。休憩も兼ねて、ゆっくりしていくといい。それでは、さらばだ」

 

そう言うと龍(めぐむ)はその場で翼を広げ、風のように去っていった。

文が来るのが珍しいと言っていたことから、普段は別の場所にいるのだろう。この里に全ての天狗がいるという訳ではないらしい。

これが所謂、“階級制度”というやつなのだろうか?天狗の社会は現代のそれにすごく似ている。

 

 

ここに来てから少し妖怪という存在に憧れていたが、もしなれても天狗にだけはなりなくないと強く思うのだった。

 

 

 

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