人間と人形の幻想演舞 作:天衣
※注意
この外伝は、私が書いている小説「人間と人形の幻想演舞」の人形視点ストーリーです。
その為、人形が普通にしゃべります。そのことを注意した上でご覧下さい。
今回は舞島に助けられたある人形の話です。
暗い水底の中に沈んでいく……電撃のような衝撃が走り、意識が遠のいていく……随分と派手にやられた。
あいつら……一体どこまで非道なのだ?醜さの塊のような、あの欲望に満ちた目はもはやこの世の生き物などではない。
あぁ、奴らが憎い……殺してやりたい。仲間がやられたことをそのまま奴らにしてやりたい。
……だが、もう碌に体も動かせない。自分の中の魔力が尽きかけているのが分かる。
この恨みを晴らせない悔しさから、唇を強く噛み締める。
「……?」
――ふと、ぼやけた水面の光に1つの影が現れた。
それはゆっくりとこちらに近付き、私を誘うように手を差し伸べる。
生きたい。まだ、死にたくない。
そう強く願っていた私は、相手が誰なのかも知らずにその手を取ってしまった。
***
「 ―――ッ!! 」
目が覚めると、私は誰かの腕の中にいる。しまった、油断していた。
急いでこの拘束から逃れようと体を動かすと、全身に痛みが走る。……駄目だ、逃げられない。
迂闊だった。まさか敵の罠だったなんて……しかし待て?仮にもあいつらならば、こんなことはせずにあの妙なマジックアイテムを使う筈だ。
少し冷静になってみると、抱いている本人の静かな寝息が聞こえてくる。
そして抱き締めている誰かは怪我を負っている私を痛めないよう、それでいて私の身体が冷えない力加減で優しく抱きしめているみたいだ。
温かい……しばらくこうしていたいという気持ちが芽生える程の心地良さが、起きたばかりの私に再び眠気を誘った。
いや、寝ては駄目だ。
あいつらが私を追って来る可能性もある。個人的な事情に、この人を巻き込む訳にはいかない。
そう意気込んだはいいが、この拘束を一体どうやって抜け出そう?強引ではあるが、技を使うか?
だが、それでは死にかけていた私を介抱してくれた恩を、仇で返すことに……そう思ったところで、我に返る。
そもそもの話、この人が味方だという保証だってないではないか。何を躊躇する必要があるというのだ?
人間なんて、所詮は私利私欲の為に他者を傷付ける身勝手な連中……私達の住処を襲ったあいつらがいい例ではないか。
故にこの人を信用する謂れなど、どこにもありはしない。
いくら拘束されているとはいえ、技の1つくらいならギリギリ放てる。私は風を身に纏い、弾幕を放つ準備に取り掛かった。
「 駄目~~!! 」
「ひゃッ!?」
突然の第三者からの声に、思わず攻撃を中断してしまう。
声の聞こえた距離から、かなり近いところにいるようだ……一体誰が?
「駄目だよぉ……わたし達、まだそんな関係じゃあ……えへへ」
辺りをよく見てみると、私を抱いている腕にしがみ付くように、他の人形が眠っていた。
髪は金髪で服装が全体的に黒いその人形は、どうやら夢の中にいるようで、幸せそうに眠っている。
どうやら、今のはただの寝言だったらしい。
……この平和ボケしている状況から、助けてくれた人があいつらの仲間だという線は完全に消えた。
こんなに人形が懐いているような人が、非道なことを行うとは到底思えない。危うく私は、あいつらと変わらなくなるところだった。
「まいくぅ~ん、しゅきしゅきぃ……」
「!?」
金髪の黒い人形は腕をよじ登っていくと、主人であろう人の顔元にまで迫り、信じられない行動を取る。
人間と人形がそのような関係性を持つことなど、有り得るのだろうか……?私はあまりの刺激の強さに耐えられず、目を閉じてしまった。
「んん……」
行為に勤しんでいる人の腕の力がほんの一瞬、緩んだのが分かった。
この好機を逃すべきではないと判断し、私は何とか身体を動かし腕の中からの脱出に成功。自由の身となることが出来た。
拘束から逃れた途端、夜風が身を凍えさせる。河が近いのもあり、結構冷たい……人形でありながら鳥でもあるこの身には少々堪える。
あの腕の中の温かみがまた恋しくなってしまったが、後悔はしていない。これでいいのだ。
すぐさまこの場を立ち去ろうとしたが、ふと思い留まる。せめて、助けてくれた人の顔くらいは覚えておこう。
私は懐から携帯を取り出し、写真を1枚撮った。
「(……可愛い顔してんじゃん)」
写真で露になった男とも女とも捉えられる中性的な顔立ちに、思わず素直な感想を抱く。
こんな一見頼りなさそうな人間が、川に沈んでいた私を助けてくれたのか……全く無茶をしたものだ。
人形の仲間達との写真は今までたくさん撮ってきたが、人間の写真はこれが初めてだった。
まさか私の写真フォルダに人間が入ることになろうとは、微塵も思わなかった。私の嫌いだった、あの人間が。
……っと、いけない。あんまり見ているとまた変な感情を抱いてしまう。私は急いで携帯を閉じ、背中の翼で飛んでみようと試みる。
「――ッ」
動かしたら少々痛みが走るが、何とかいけそうだ。山の中腹くらいならば、小刻みで何とか到達出来るだろう。
「天狗の里」にさえ戻れば、生き残った仲間がいるかもしれない。
***
ヒッキー @TarunonakaOchituku
なるほどぉそのようなことがあったのですなぁ
ひめ @notHotate
もうまぢしぬかとおもった~(>_<)
ヒッキー @TarunonakaOchituku
して、その人間とやらはどのような人物で?画像キボンヌ
ひめ @notHotate
画像を添付しました
ヒッキー @TarunonakaOchituku
むむっ、こやつ新聞で見ましたぞ。確か最近になって異変解決をしている外来人だったような
ひめ @notHotate
ガチ!?オニやばぁ
ヒッキー @TarunonakaOchituku
それにしても中々イケてる顔をしていますな
恐らく男子でしょうが仮に女子の格好をしたとしたら全く区別出来ないでしょうぞwww
ひめ @notHotate
それな。いきゃめん~ってカンジ
ヒッキー @TarunonakaOchituku
時にひめ殿?聞きたいことがあるのでござるが
ヒッキー @TarunonakaOchituku
この前会った際、携帯の待ち受け画面が確かこれだったでござるが……もしやお気に入りですかな?
ひめ @notHotate
は?んな訳ないじゃんナニいってんの?アタシが人間なんか気にするわけないし!!!!
あんなひょろガリ君なんて全ッッッ然タイプじゃないし!!!!!!ホントムリなんですケドッッッ!!!!!!!!(# ゚Д゚)
ヒッキー @TarunonakaOchituku
動揺が隠せてませんぞwwwww誤魔化しが下手ですなwwwww
返信する前も大分固まってましたぞ?wwwww
ひめ が退室しました
「 ホントマジカム着火インフェルノォォォォォオオウッッッ!!!! 」
携帯を勢いよく閉じ、思わず怒号を発しながら携帯のやり取りに終止符を打つ。
因みに“ヒッキー”とは私と同じ“人形”であり、同名同種族の知り合いである。私とは違い、滅多に外には出ない引きこもりだが、命辛々天狗の里に駆け込んだ際には世話になった。
私よりも頭が良くて頼りになるが、その分下手な誤魔化しが効かない面倒臭さも兼ね備えている……それがヒッキーだ。正直、苦手なタイプ。
ヒッキーとはこのような状況になるまで、一切関わってこなかった。気の合う私のダチ達は皆、あいつらにやられてしまっている。絶対に許さない。
情報通でもあるヒッキーの協力もあって、あいつらがこの妖怪の山のどこかに身を潜めていることは何とか判明したのだが……簡単には尻尾を掴ませてはくれない。
やはり、人形の2人体制では探索に限界がある。この広大な妖怪の山を細かく調べるというのは、人形の身で行えるような簡単なことではないようだ。
されっぱなしというは、私は一番嫌いである。……しかし、私のやっていることはハッキリ言って無謀だ。例え運よく見つけられたところで、勝てる見込みもない。
かつてこれほどまでに、力が欲しいと思ったこともないだろう。
……“
新聞で名前だけは知っていたが、まさかあの時の人間がそうだったとは。
この前助け出した「ユキ」という名の人形の持ち主……他の人形達も彼を慕っているように感じ、それが何だか羨ましかった。
私は“人形遣い”というものに碌なイメージを持たなかったが、どうやらそれは偏見だったらしい。人形遣いの元にいくというのも、案外悪くなのかもしれない。
というのも、「人形遣いには人形の力を引き出す能力がある」と、ヒッキーは言っていた。私個人の力に限界を感じている今、そうせざるを得ないというのもある。
しかし、問題はきっかけだ。
私自身が人形遣いから必要とされなければ意味がない。……どうしよう。
「(癪だけど、ヒッキーに相談してみるか)」
私は溜息を吐きながらも、先程連絡を絶った友人に対し渋々文字を打つのだった。