人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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※注意


この外伝は、私が書いている小説「人間と人形の幻想演舞」の人形視点ストーリーです。その為、人形が普通にしゃべります。そのことを注意した上でご覧下さい。

今回は三部に入ってからの人形箱の様子となります。



外伝9

 

どうもこんにちは。最近ご無沙汰だったマスター・舞島 鏡介様の人形箱の自称門番、エリー人形です。

ある日、四の道にて相棒のくるみ人形と門番としての使命を全うしていたところ、鬼の形相をしていた当時のマスターに捕まえられ、以降何故か心の傷を負ったメディちゃんの世話役に任命されるという破天荒な人生を送っています。

 

「毒壺」という殻に閉じ籠った彼女を外に出す為の苦労は並大抵のものではなく、何かある度に警戒され毒をまき散すので堪ったものではない。相棒のくるみ人形がもがき苦しむ姿を見て、あの時ほど私が「鋼鉄」属性で良かったと思った日はなかった。

それでも諦めず、試行錯誤を繰り返して自分達なりに接触を図り、初めてこちらに喋り掛けてくれた時の感動は忘れもしない。最も、初めの内は紙に書いた言葉を使っての会話だったのだが。

 

しかしその生活も長くは続かず、いざ役目を終えてメディちゃんが無事心の傷から立ち直り戦線へ復帰すると、我々はすっかり空気……脇役となった。最近は人形箱を開く機会に乏しいのもあり、マスターにでさえ存在を忘れられた可能性がある。

でもいいのだ。私達のマスターの力になるという意思は、メディちゃんがしっかりと受け継いでくれる。同期のくるみ人形も、それは同じ気持ちの筈。

 

「元気かなぁ?メディちゃん……仲間と上手くやれてるかなぁ?」

 

「大丈夫よ。“選ばれし者達(レジェンズ)”はマスターと似て強くて優しい方達なんだし、心配いらないって」

 

「何だか、子が親元を離れていったような気分。ああやって立派に成長してくれたのは本当に嬉しいけど……離れていってしまうとやっぱり寂しい、よ」

 

「エリー……そうね。ずっと世話をしてきたもんね。でもきっと大丈夫、メディはああ見えて強い子だから」

 

落ち込む私の肩にそっと手を添え、慰めの言葉を掛けてくれる親友の優しさが心に染みる。

するとそれに続くかのように人形箱にいる他の人形達が次々と私の元に集まり、その悲しみを包み込むかのようにハグをしてくれた。

 

「えいか、うるみ、やちえ、さき、とうてつ……ハハ、みんなありがとう」

 

最近仲間になったこの人形達は「霊長園」にてマスターの強さ、そして優しさに心打たれた者達。

その際、メディちゃんから献身的に治療を受けたのが当時の荒んだ心に響いたのだろう。以来、メディちゃんは彼女らから“聖母”のような扱いをされている。

そんなメディちゃんの過去を皆に話したところ、揃って号泣……だからこそ、こんなにも気持ちを共有してくれているのだと思う。作り手は違えど、やはり同じ種族……“仲間”なのだ。

唯一違いがあるとすれば、体の構造だろうか?彼女らは私やくるみ人形と違って、「土」から出来ている。

その為か、体が硬く重量感がある……つまり、皆からハグをされているこの状況は嬉しいのだが非常に苦しいのです。ヤバいヤバい、これ以上は中身出ちゃうから!!

 

「 みんな~~~!!大変大変、大変ですよ~~~!!大ニュースですぅ~~~~~!!! 」

 

慌てた様子でこちらに飛んできた霊長園仲間の1人、くたか人形の大声が人形箱中に響き渡ったことで皆の関心がそちらに向けられる。

悪意のない圧死から何とか逃れられホッとするのも束の間、彼女の口から衝撃の事実が告げられた。

 

 

「 マスター・舞島様の精鋭、“選ばれし者達(レジェンズ)”のユキ様、しんみょうまる様、こがさ様!そして我らの希望の星、けいきちゃんの実質的な一時休戦によりっ! 」

 

 

「 私達が穴埋めとして手持ちに加わることが決定致しましたぁッ! 」

 

 

 

 

「「「「「「「  な、なんだってーーーーーーーー!!!??   」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

“マスター・舞島様の手持ち”……それは我々補欠要員にとって、一度は見る夢。

あの舞島様に使って頂けることはここにいる人形達にとってこれ以上ない幸福であり、大変名誉な称号である。

 

 

やっと出番が回ってきた。

 

 

そう確信した皆の心は、一目見ただけで分かる。期待に満ちた目、自身の活躍を頭の中に思い描く様……実に満たされていると言える光景だ。

えいか人形は積み石をひたすら上に上に乗せていくことで感情の高ぶりを現し、うるみ人形はこのめでたい出来事を抱いている石の赤子に涙目で優しく報告し、くたか人形は馬鹿でかい声量の鶏声を上げ、とうてつ人形はケタケタと1人笑いながらスプーンに入っている何かを啜り、やちえ人形は表情こそクールだが尻尾が正直で、さき人形は自慢の腕っぷしを早くマスターに見せつけたいのか、さっきからシャドーボクシングを入念に行っている。

かく言う私も、実戦を行える絶好のチャンスに胸を躍らせている。この私自慢の鎌を、やっとまともに生かせる時が来たのだから。

 

「……ん?みんな、ちょっと待って」

 

「どうしたのくるみ?」

 

「くたかちゃんが言っていたことをよく思い出して。聞いた限りでは、今の欠員は4名……そして、ここにいる私達は全員で8名。ということは……」

 

「!ま、まさか!?」

 

 

「 選ばれるのは、“4人”だけ……? 」  

 

 

 

             「 4人だけ…… 」

 

 

 

                「 4人だけ…… 」

 

 

 

 

 

その時、人形箱内にいる全て人形達に電流走る。

 

 

「……ふん!」

 

「がッ!?」

 

「さ、さき!?一体何を!?」

 

 

突然、さき人形は目の前にいるうるみ人形を腹パンし、ダウンさせたことで一気に注目を浴びた。

痙攣しながら泡を吹き倒れているうるみ人形だが、しっかりと石の赤子を担いだままなのはどこか硬い意志を感じさせる。

 

「フフフ、所詮この世は弱肉強食。弱い奴からいなくなるんだ」

 

「なっ!?」

 

「……アタシはな、マスターに選ばれるためなら何だってするぜ。そして」

 

 

「 「よく頑張ったね」って言って貰って、頭をナデナデして貰うんだぁーーーーー!!! 」

 

 

「わ、わたしだって選ばれたいわ!抜け駆けは許さないんだから!」

 

「面白い。その戦い、何が何でも勝たせて貰いますよ」

 

「ケケッ、イイね!そうコなくちゃ!」

 

「コケーーーッ!!私こそがマスターに相応しい人材なのです!!」

 

「負けて堪るもんですか!!」

 

くるみ人形の一言、そしてさき人形の暴走がさっきまで幸せだった筈の空間をバトルロワイヤル会場へと変化させる。

様々な色合いの弾幕が飛び交い、拳と拳のぶつかり合うカオスな状況が一瞬にして出来上がってしまった。

 

「どうしよう……くるみ?」

 

「と、とにかく無理にでも止めさせないと!こんなに暴れたら人形箱(ここ)が壊れちゃうわ!」

 

「で、でも止めるにしたって2人じゃ絶対手が足りないわ。私達、あの子達よりも圧倒的に弱いし……」

 

「……た、確かに」

 

実戦経験がゼロで只の野生人形だった私達と、元々戦闘用を想定して作られた人形達とではあまりにも実力に差がありすぎる。

今この戦場に飛び込んでしまえば、私達はあっという間に戦闘不能になる……もう、この暴動を抑えることは絶対に不可能と思われた。

 

そう諦めかけていたその時、開いていない筈の人形箱の外から僅かに光が漏れた。そして、何故か室温が上昇したように思える。

上を見上げると何やら小さな光が徐々にこちらへ落ちてきているみたいで、それはやがて無数の炎の玉であることが分かった。

 

「……!?な、なに?あのデカい火球は!?」

 

「こっちに飛んで……ギャーーーーー!!??」

 

まるで天罰であるかのように人形達を襲う火球は着弾時に爆発を起こし、巻き起こった黒煙が辺りを覆ってしまう程の威力がある……直撃を受けた者は戦闘不能となっているがやりすぎない程度に手加減はしているようだ。

何が起こっているのか分からない残りの人形達は慌てふためき、辺りを見回すがそれを静止するかの如く一本の針が首筋に向けられた。敵わないと察した相手は両手を上げ降伏を示し、一切の抵抗を止める。

積み石を積んでいたことで火球から難を逃れた者もいたが、安堵する間もなく下から噴き出した水柱に打ち上げられ撃沈。これにて、事態は凡そ片が付くこととなった。

これだけの実力者揃い……相当の手練れであることは言うまでもないだろう。そして同時にその正体が誰なのかも察しがつく。

 

黒煙が少しずつ晴れ、この事態を急速に鎮めた人物が明らかとなった。

 

 

「もう、様子を見ようと来てみればまた喧嘩して!あなた達いい加減しなさい!」

 

「け、けいきちゃん……あまりおんぶされてる状態で暴れないで下さい」

 

「(ひえ~すごく視線集めちゃってる……)」

 

 

「ど、どうして皆さんがここに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「(一体どういうこと?なんで“選ばれし者達(レジェンズ)”がこの人形箱に来てるの?)」

 

「(知らないわよ!何かあって一時的にマスターと一緒にいれないらしいけど……)」

 

怪我の治療を受け、一箇所に集められた人形達は反省の意を示せと言わんばかりに正座をさせられていた。

たまたま隣にいたくるみ人形に耳打ちをしながら今のこの状況について問うが、ここにいる誰もがそれを知らない。

 

「さて、聞いた限りじゃ私達の休戦については知っているみたいだし、早速本題に移ろうかな?」

 

「皆様、鏡様は敵地への潜入に伴い、仮の姿を取られる決断を致しました。しかし、その敵地の幹部は私達と同じ「人形」……顔が割れている者がいては正体がバレ兼ねません」

 

「リーダーのメディスンって人、どうやら封印の糸越しでもハッキリ私達が見えるみたい。下手したらこの人形箱にいてもバレるかも……って痛い痛い!!けいきちゃんほっぺ抓らないでッ!!」

 

「だぁーーー!キャッキャ♪」

 

「そこで顔の割れていないあなた達の出番って訳ね!今日はそれについてと激励の言葉を伝えにこうして初めて人形箱に来た訳なんだけど」

 

 

「 どうしてこうなったの? 」

 

 

この状況に困惑しているのは“選ばれし者達(レジェンズ)”も同じ。

そして、その答えを教えるように喧嘩の原因を作り出した人物へと一斉に目線が集まっていく。

 

「だ、だってよ!替わりと言っても定員はたった4人なんだろ!?だったら、その中でも強い奴が選ばれるに決まってるじゃないかッ!!だから」

 

「だからと言って、仲間内で揉めて良い訳じゃありません!それにもしこのことを鏡様が知ったら、さぞ悲しむでしょうね」

 

「―――ッ!!」

 

「覚えていますか?あなた達が鏡様に改心させられた時、言われた御言葉を?」

 

「……「決して争わず、何があっても仲良く」」

 

思い出したかのように呟いたさき人形の言葉に、しんみょうまる人形は静かに頷く。

教えに背いた罪悪感からか、その場で泣き出してしまうさき人形を“選ばれし者達(レジェンズ)”は寄り添い、そして優しく慰めた。

 

「鏡様は約束なさいました。我々人形が誰にも悪用されない平和な世界にしてみせると」

 

「人間である舞島さんが、他人である筈の私達の為にここまで頑張ってくれてる。だったら」

 

「少しでもその気持ちに応えてあげないとね!」

 

「う、ぐす……は、はいッ!ごめんなさあぁぁい!!うわーーーん!!」

 

あのいつも強気なさき人形がこうもあっさり……あんなに素直な彼女の姿を見たのは初めてだ。

そしてその姿を見た他の人形達も争いに便乗してしまったという愚かな行為を恥じ、共に涙を流す。流石は“選ばれし者達(レジェンズ)”……私とはまるで格が違う。

 

だがしかし、本来ならばこの騒動は人形箱の代表である私がちゃんと止めるべきだった。

もしあの時誰も来ていなかったらこの場が地獄絵図と化していたのは間違いないだろう。己の弱さが憎い。

 

「あ、そうだ。穴埋めの件だけど安心して!舞君はちゃんと皆を平等に使うつもりだから!」

 

「前から人形箱にずっと入れっぱなしだったこと、気にしているみたいだったからね」

 

「まぁそういう訳だからみんな!私達の代わりに頑張ってきて!」

 

「皆様が鏡様の御力になるよう尽力して下さるならば、私達としても嬉しい限りです」

 

選ばれし者達(レジェンズ)”から思わぬ朗報を受けた人形達は顔を向き合い、感情が高ぶることで歓声が一気に沸き上がる。

出番のない子なんて1人もいない……その言葉でどれだけ私達が救われることか。本当に良かった。

 

「いや~めでたいわねエリー!私達、ようやく出番が回ってくるのね!」

 

……そういえば、誰かさんが定員が4人しかいないと言ったことでこの騒動は始まったのだった。それを言った人物は確か?

 

「な、何?も~悪かったわよだからそんな目で見ないで!」

 

 

 

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