人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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お盆シーズンは次回の投稿が大分空いてしまいますのでご了承ください



第十六章

 

周りからバレないように手持ちのスキマップ駆使し、守矢神社前までやってきた。

登録されている転送先の中ではここが一番「マヨヒガ」に近いみたいだったので来てみたものの、最初にここへ来た時は暗くてろくに視覚情報がなかった為だろうか?まるで始めて来たような新鮮な気持ちにさせられる。

そして、先に進むにあたって早くも問題が発生することとなった。

 

進む道の先に、1つの大岩が行く手を阻んでいた。そういえば以前、これに顔をぶつけた記憶が微かにある。

背が小さくなったせいか、それは見上げなければてっぺんが見えない程には大きく、そして頑強。壊すには相当な破壊力を要求されることだろう。

細い木と同様、これも結界のようなものが発生しており横からは通り抜けることは出来ない仕組みになっている。一体誰がこんなはた迷惑な代物を置いたというのか?

 

 

このままではマヨヒガへ行くことが出来ない。

スキマップは当然行ったことのない場所へは行けないし、かといって壊すというのも現実的とは言えない。

何故ならこれと同じような仕組みだった細い木には、あらゆる人形の攻撃が一切通用しなかったからだ。試すだけ人形達の労力の無駄であろう。

もしかしたらこれにも、専用のアイテムが必要なのかもしれない。だが今は持ち合わせてはいないので、何か別の方法で向こう側に行く必要がある。

 

すると腰の封印の糸が1つ、小さく揺れてこちらに呼びか掛けていることに気が付く。

これは……どうやらはたて人形が僕を呼んでいるみたいだ。何か考えがあると言うのだろうか?

 

僕は早速、はたて人形の入った封印の糸を掲げ、呼び出す。

出てきたはたて人形は携帯電話に予め打っていた文字をこちらに見せてくる。

 

『アタシの翼ならキミを向こうまで運べる』

 

「あ、確かに」

 

『でも今のままじゃ運ぶのマジつらたんなんよね~』

 

『むげっちゃん曰く、キミの持ってるタブレットってやつがあればアタシ達人形を更に強くできるみたいじゃん?だからチョイ試しに使ってみてよ』

 

「分かった。ちょっと待っててね」

 

そういえば、まだはたて人形の詳しいステータスを見ていなかった。

ポケットからタブレットを取り出した僕は早速、はたて人形のステータスやスキル、アビリティをチェックしどういった特徴があるのかを確かめた。

 

 

はたて人形。属性は「風」単体。

持っているアビリティは「威嚇射撃(いかくしゃげき)」と「望遠(ぼうえん)」。

スタータスはというと……まだノーマルスタイルだからか俊敏が僅かにあることくらいしか特徴がないようだ。まぁそれはノーマルスタイル人形の殆どが該当するので問題ない。

注目すべきはスタイルチェンジでどう化けるだ。はたて人形は既にスタイルチェンジが可能なレベルに達していた為、今からでもチェンジ先を確認することが出来る。早速見てみよう。

 

 

1つ目は「パワースタイル」。属性は「風」に加えて「無」の複合属性。アビリティも「威嚇射撃」が「一斉射撃(いっせいしゃげき)」というものに変わる。

 

どうやらはたて人形のパワースタイルは攻守ともにバランスの整ったステータスになるらしく、集弾と散弾どちらもいける万能型となるようだ。

天狗の人形にしては俊敏の値が並程度なのは気になるが、他とは違った幅広い戦い方が出来そうでこちらの興味を引く。

 

 

2つ目は「アシストスタイル」。属性は「風」に加えて「幻」の複合属性。アビリティは「望遠」が「早目(はやめ)」となる。

 

散防と俊敏が高く、補助のスキルを中心に立ち回るその名の通りの型のようだ。人形バトルにおいては一役買ってくれそうで中々悪くない。

しかし、「幻」の属性がむげつ人形と被っていることが気になる。

 

 

最後に「エクストラスタイル」だが、属性は「風」に加えて「歪」が複合されるようだ。

アビリティもガラリと変わって「威嚇射撃」が「身軽(みがる)」、「望遠」が「テンションアップ」となる。

 

ステータスはパワースタイルの集弾を散弾に殆ど分け与えたようなバランスで、アシストとはまた違うトリッキーな印象を受けた。

これまた他にはない戦い方が出来そうで大変魅力がある。

 

見たところ、どれも悪くない選択肢で非常に悩ましい。

人形バトルの戦術面で考えていると日が暮れそうなので、ここはそれ以外でのサポート面でひとまずスタイル先を考えることにする。

まず、今のはたて人形の役割を考えると小さな人間を1人運べるような運搬力が必要だ。運搬力……それは即ち筋力であり、恐らくステータスの数値でいう「集弾」の高さがそれに匹敵しているのではと思われる。

その根拠として、以前人形達が荷物を持つ手伝いをしてくれた際にしんみょうまる人形だけは他と比べて明らかに運搬能力が高かった。「打ち出の小槌」のアビリティによる集弾の倍増が、それを実現させたのだろう。洞窟の湖を渡ろうと奮闘したこがさ人形も、自分の身長よりも大きいそれなりに重い荷物を何とか持てていた。

それにもう1つ、あれは河童のアジトでメディスンと対峙した時のことだ。メディスンのこころ人形にこちらのユキ人形が羽交い絞めにされ、一気に追い込まれたことがあった。

必死に逃げるよう指示する僕に、メディスンは言った。「その人形のステータスじゃ、この拘束は決して解けない」と。そして、それは宣言通りだった。

つまりそれはユキ人形とこころ人形の集弾ステータスの差……いわゆる筋力の差が大きくあったということだ。そうなると、必然的にチェンジする先は……

 

「(「パワースタイル」、ということになるか)」

 

3つの中で1番集弾のステータスが高く全体的にバランスの良い「パワースタイル」が、最も相応しい選択だと言えるだろう。

 

「はたて、今からスタイルチェンジを始めるよ。ちょっと体に違和感があるかもしれないから予め備えておいてね」

 

『おけまる~~~んじゃヨロ~~~(*^_^*)』

 

何だか心なしかテンションが高いはたて人形に向け、僕はタブレットの項目にある「パワースタイル」をタップした。

英語表記の「スタイルチェンジ」の吹出しが画面に表記されると共に、はたて人形の体から光を放たれる。

 

しばらくその様子を見守っていると10秒と立たぬうちに光は収まっていき、そこにはいつもと変わらないはたて人形が身体の異変を確かめていた。

だがいまいち変化が分からないはたて人形は両手を握ってみたり翼で軽く飛び回ったりと世話しない様子で動く回る。新しい力を手にすることにワクワクするのはまぁ分かるが、ここまで敏感なのは珍しい気がする。

 

はたて人形は一通りの動作を済ませた後、やがて確信へと変わったのかこちらに笑みを浮かべ、軽く頷いた。どうやらスタイルチェンジの結果には満足してくれたらしい。

 

「よし、それじゃあ早速僕を岩の向こうまで連れて行ってくれない?」

 

『おっしゃ!まかセロリ~!!(*^▽^*)』

 

 

「―――お、お、おおおぉぉーーーーッ!!?」

 

 

はたて人形が僕の背中の裾部分を掴んだ瞬間、一気に上へと体が浮上していく。想像以上のスピードに思わず声が出てしまった。

気が付けば既に視界には青い空が一面に広がっており、聞こえてくる翼の羽ばたきと同じタイミングで体も揺らされている。

三月精に運んでもらった時よりも力強い安定感があることから、スタイルチェンジによって求めていた人1人運べるくらいの飛行能力を得ていることがよく分かってひとまずは安心だ。

 

しかしこの様子なら、そのまま目的地へと直接飛んで行ってしまった方が早く目的地へ到着出来るだろう。

そう思った僕は早速、上空からマヨヒガのある場所を直接探し出す。大岩を超えた先の中腹辺りに存在するらしいのだが……

 

「?何だかあそこ、怪しいな」

 

山の中に、霧の掛かった地域が見える。

分かりやすくいかにもな雰囲気を醸し出しているあの場所こそ、マヨヒガなのではないだろうか?それにあそこにあるのは……うん、行ってみる価値は充分にあるようだ。

 

「はたて、ひとまずあの場所まで飛ばして!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~~ヒマだなぁ~~~もうみはりはあきたよぉ」

 

「だよね~……なんかおもしろいこと起きないかな」

 

「でも“あの妖怪”からのめーれーだったし~?さすがにさからえないよねぇ」

 

「この先には誰も通すな~とかいってたけど、あそこで一体何やってんだろ?」

 

「しらな~い。っていうかキョ―ミな~い」

 

「だよね~……あ、鳥が1羽とんでる」

 

「ずいぶんおっきいなぁ。天狗ともちがうっぽいし」

 

「……あれ?なんか、凄い勢いでこっち来てない?」

 

 

「 ちょちょちょっとーーー!!? はたてストップストップ!! 止まってえええぇぇぇーーー!!? 」

 

 

「「 ギィヤアアアァァーーーーーーーーッ!!!?? 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身の出したスピードに急ブレーキを掛けたはたて人形は、川に飛び込む一歩手前でようやく静止した。

その際、発生した風の衝撃によって近くにいた妖精2匹を吹き飛ばしてしまったようだ。しかも、あれは恰好からして人形解放戦線であったので申し訳なさが半端ない。……まさかあそこまで急降下していくとは思っていなかった。

ゆっくりと僕を地面に降ろしたはたて人形は、早速携帯電話でのやり取りをする。

 

『ごめーーーん!!!!うまく力を制御できんかったーーーーー!!!!(T_T)』

 

「ううん、いいよ。気にしないで」

 

スタイルチェンジをして早々、力を上手く使いこなすのは至難の技であろう。

はたて人形を責める謂れなどない……むしろそれを配慮しなかった人形遣いにこそ責任がある。

 

『ブッ飛ばしちゃった奴ら、人形解放戦線だよね?うまく着地出来てれば聞き込みが出来たかもしれないのに……ホントゴメン』

 

さっきまでの元気はどこへやら、肩を落としてすっかり落ち込んでしまったはたて人形。役に立つと言った手前、責任を感じているのだろう。

真面目なのはいいことだが、あんまり気を張っていると精神衛生上よろしくはない……が、そんなの人に言えた身ではないから言及するのは止めておく。

 

「それに情報を引き出すチャンスはまだあるんだ。ほら、あそこ」

 

指を指した先には、人形を回復させる施設である休憩所が1件立っている。実は上空から見下ろした際、既にあることを確認していたのだ。

あそこに行けばこの辺の地理に詳しい人も泊っている可能性もある筈。マヨヒガについての情報を諦めるにはまだまだ早い。

 

だが今の僕は仮にも人形解放戦線に所属している一端の妖精。

余計なことさえしなければバレる心配は殆どないだろうが、用心しておくに越したことはないだろう。

 

あ、ついでに甘味処で回復アイテム買わないとな。

 

 

 

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