人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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今年最後の投稿です。
いつもながら早めですが、皆様良いお年を!



外伝10

 

復讐の機会を伺っていた人形、せいじゃの卑劣な罠に掛かった私は仲間であるけいきちゃんの命を人質として握られた。

その際、結界を解くよう命じられた私は身体のいたるところを痛めつけられ、今世紀最大のピンチを迎えている。だが、このままいいようにされていては犬死もいいところ……バレないよう死角からの攻撃を準備することで、反撃のチャンスを伺っていた。

幸い、隙を見せてくれたお陰で奴の遥か頭上に一つの岩石を生成することには成功している。後は放つタイミングを計るだけだが……

 

 

「 死ねぇッッ!!! 」

 

 

「……!」

 

 

これは、明らかな隙!やるなら今しかない!

 

大きく力を溜めているせいじゃに向け、生成していた岩石の浮上維持を解き落下させる。これさえ当たれば、後は奴の足元に転がっている輝針剣を拾って一太刀浴びせるだけ……!

 

「………それにしても、随分なめられたもんだ」

 

「……?」

 

「気付いてないとでも思ってたのかぁ?」

 

様子を伺いながら飛び出す準備をしている私をまるで嘲笑うかのように、せいじゃは溜めた大弾幕の標準を真上に変更して勢いよく放った。

落下していた岩石はせいじゃの弾幕に命中し、亀裂の入った岩石は大きく音を立て崩れ去っていく……その衝撃で砂煙とバラバラとなった岩の破片が舞い、視界は一気に悪くなってしまった。

 

「ヒャハハ!粉々に砕けやがった……相当魔力に余裕がないらしいなぁ?」

 

「な、なぜ………!?」

 

「表情でバレバレなんだよぉ姫さん?こちとら毎日生きるか死ぬかの地獄を味わってきたんだ。視えるんだよ……そういった僅かな変化がなぁ」

 

「ぐッ――!?か、は………」

 

「不意を突くってのはなぁ……こういうことなのさ。覚えとけや三下」

 

腹に弾幕を食らった私は、その場で倒れ込んでしまう。

視界が悪い中の完全な不意打ちであった為、いつも以上にダメージを負ってしまった……最早、立ち上がる余力も残っていない。

 

「ケケケ、それに比べこっちはいい演技してたろ?こっちが感付いていることにまるで気が付かなかった……テメェみたいな甘ちゃんがオレを騙すなんざ10年早ぇんだよ!」

 

返す言葉もない……奴には私の考えが全てお見通しだったらしい。

やはり、慣れてないことを実践するのはリスクが高かった……騙すことにおいては、相手が完全に一枚上手だったようだ。

 

 

 

 

 

 

「………んあ?」

 

 

 

 

 

 

「さぁて、約束を破ってしまった悪い子には罰を与えないとなぁ?」

 

「……ッ!や、やめて!けいきちゃんだけは……けいきちゃんだけは見逃して下さいッ!!どうかッ!」

 

「往生際が悪いぞカスがッ!!最初に忠告したよなぁ?抵抗したらこいつの命はねぇってよぉ!」

 

機嫌を損ねたせいじゃが、けいきちゃんの首筋目掛けて毒を流し込もうとしている……もう駄目だ。

最後の賭けだった攻撃もかわされてしまい、もう打つ手は何も残されていない。

 

「可哀そうになぁ?お前が抵抗さえしなければ、こいつも苦しまずに済んだものを……」

 

「――ま、待ってくださいッ!人質をなくすのは、復讐を目論んでるあなたにとって何にもメリットはない筈!やるなら私だけに……!」

 

「安心しろ。こいつが死んだら次はテメェが人質になる番さ……計画に何の支障もないね」

 

「………くっ、うぅ……っ……」

 

「(鏡様……けいきちゃんを守れなくて、ごめんなさい。私1人では力不足でした……)」

 

 

「ギャハハハハハ!!いいねぇその泣きっ面!そうだ、そうやって自分の愚かしさを悔やんで絶望してろッ!!ブヒャヒャヒャヒャヒャッッ!!!」

 

 

ゆっくりと、せいじゃの爪がけいきちゃんに近付く。

物理的にも精神的にもやられてしまった私は、まるで走馬灯のように映るその光景をただ黙っていていることしか出来ない。

 

私のせいだ……私さえ抵抗しなければ、けいきちゃんが犠牲になることなかった筈なのに。

あぁ、涙が止まらない……視界がぼやける……何が“鏡様の頼れる相棒”だ。こんなにあっさりやられて……本当に、情けない。

 

 

自責の念に捕らわれ続け、視界情報を失っていた私の耳元に鈍い刺突音が聞こえてきた。

きっとせいじゃの爪が刺さった音だろう……これでもう、けいきちゃんは助からない。私のせいで……

 

「………―――は?」

 

……だが、何かがおかしい。仮に今、毒を流し込まれているのだとしたらだ。どうして時が止まったかの様に誰も苦しむようなこともなく、こんなにも静かなのだ?

そして何故、加害者である筈のせいじゃがそんな間の抜けた声を出す?

 

感じた違和感を確かめるべく、私は涙を拭いて目の前のせいじゃに目を向ける。するとそこには、驚きの光景が広がっていた。

 

 

「………い」

 

「 いっっっっったあああああぁぁぁぁーーーーーーーーッッ!!!??こ、こいついつの間に目ぇ覚まして……ッ!!? 」

 

 

「あぁうううぅぅーーーッ!!!ふがふがーーーーー!!!」

 

 

「 ぐおおぉぉ痛ええええぇぇーーーーー!!!?? く、くそがッ!!離せッ!離しやがれってんだこのガキッ!!! 」

 

 

なんと、人質にされていたけいきちゃんが目を覚ましてせいじゃに噛みついている!

痛みに耐えかねたせいじゃは毒を流し込んでいる場合ではなくなったようで、けいきちゃんを振り解くのに必死になっているようだ。

 

……悪癖だったけいきちゃんの噛みつき癖に救われるなんて思ってもみなかったが、これはまたとない好機!

寧ろここで攻めなかったら、もうチャンスなんて二度と訪れないだろう。……こんなところで横になっている場合じゃない!

 

「………はぁ、はぁ……ッ」

 

気力でどうにか立ち上がり、揺れ揺れで不安定で危うい視界を何とか凝らし、自分に出来そうなことを探ってみる。

もう私の体内には魔力が残っておらず、スキルの行使は不可能……あの時、どうやら通常よりも多くの魔力を消費したらしい。

そうなると、私に出来ることは1つしかない。

 

「 離せ……っつってんだろうがッッ!!! 」

 

「ふぎゃ!!」

 

私は最後の力をふり絞ってせいじゃの元に走る。

全身に走る激痛を歯を食いしばって耐え、“やれかぶれ”な一撃をお見舞いする。

 

「ぐッ――!!?……ク、ハハ、ヒャハハハハハッ!!」

 

「……!(う、受け止められた!?)」

 

「そんなボロボロの体じゃまともな攻撃できねぇだろうが!ましてや小槌の力のないお前なんて……――な!?」

 

「形勢、逆転ですね……!!」

 

突撃する際に手にした「打ち出の小槌」が光り出し、倍化した最後の抵抗でせいじゃを大きく吹き飛ばす。

私の頭の硬さが、功を奏した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

「けいきちゃん!無事ですか!?どこか怪我は?奴に変なことをされませんでしたか?」

 

「あぁう♪」

 

「……大丈夫そうですね。よ、良かった……これからは常に私達の傍にいて下さい。いいですか?」

 

「だぁ!!」

 

「フフ、いい子ですね。……怖い目に遭わせて、本当にごめんなさい」

 

私はけいきちゃんを抱きしめた。

けいきちゃんがこんな目に遭ってしまったのも、すべては私のせいだ。だからせめて、謝罪の気持ちだけでも伝わって欲しい。

それが今の私に出来る、精一杯の贖罪だ。

 

……念の為、吹き飛ばした正邪の方を見てみたがどこにもいない。人質を失い不利だと悟ったのか、既にこの場から逃げたようだ。

またいつか、卑怯な手でこちらの命を狙ってくるかもしれない。このことは、きちんと仲間の皆にも伝えておかなければ。

 

「さぁ、皆の元に帰りましょう。きっと心配してるでしょうから………?」

 

けいきちゃんの手を握り、一階へ向かおうとした瞬間だった。

通路の方から、大量の人形達の人影がこちらへ向かってくるのが見える。

 

もしかして、皆が心配して迎えに来てくれたのだろうか?

そうであってくれと願った私は大きく手を振り、向こうにこちらの存在を懸命に伝える。

 

 

 

だがしかし、帰って来たのは1発の弾幕……そんな淡い期待はあっさりと、秒で裏切られた。

こちらに向かっていたのは、この紅魔館地下1階に住み着いた野生の人形達。吸血鬼、メイド、魔女、小悪魔の姿をした人形達が鬼の形相でこちらを見据えており、気付けば私とけいきちゃんは四方を取り囲まれていた。

 

「我らの住処を荒らす不届き者達よ、今すぐここを出て行け。さもないとタダでは済まさん」

 

「ま、待ってください!私がここで戦っていたのは理由が……――ッ!?ぐ………ああぁ……ッッ!!」

 

突然、私の胸の奥に激しい痛みが襲い掛かり、思わず膝をついてしまう。誰かに攻撃された訳じゃない。

 

これは……私の体の限界、というやつだろうか?まぁ、魔力のない状態で……あんな無茶をしたのだ。ガタが来てしまっても、何ら不思議では、ない………

 

 

「ッ!?まぁま!!まぁま!!」

 

 

「……何があったのかは知らんが、害をなす者は排除させて貰う。かかれッ!!」

 

 

段々と意識が遠のいていく……一斉に突撃してくる野生の人形達……避けれそうなくらいには動きはゆっくりだが、私の体は言うことを聞いてくれない。

 

 

「……うううううううううう~~~~~」

 

 

このまま、私は死んでしまうだろうか……?鏡様の成す人形が害と見なされず共存出来る世界を、この目で見れないまま野垂れ死ぬのか?

 

 

「ああああああああ~~~~~……ッッ!!」

 

 

……最後に、鏡様に……名一杯………撫でられ、たいな……

 

 

「よく頑張った」って、褒めて……

 

 

 

「  ぴィィああああああああアアアぁぁぁーーーーーーーーーーーッッッ !!!  」

 

 

 

青白い稲光が眩しく辺りを照らし、近づく者に鉄槌を食らわしていく……ハハ、とうとう幻覚でも視え始めてしまったのでしょうか……?

 

うん、きっとそうだ。こんなに近くにいるのに、私は平気だし……これは夢か何かなのだろう。

 

 

最後に見る景色としては、いささか都合がよい気もするが……あぁ、もう何も見えない。音も、聞こえない。

 

 

さようなら、みんな……

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

その後、駆け付けた董子様一向に助けられた私は、実質のバトル引退を告げられる。

 

そして同時に助けられていたけいきちゃんの変化を見て、あの時の光景は夢でも幻でもなかったことを知った。

 

 

 

 

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