人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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投稿がかなり遅れてしまい申し訳ありません!モチベ死んでました!明けましておめでとうございます!!今年もよろしくね!!!



第二十四章

 

「おはよう同士たち!今日も太陽がさんさんと輝いていて、ぜっこーのかいほー日和ね!」

 

 

早朝、人形解放戦線の副リーダーである三月精のサニーミルクによるアジトへの緊急招集。

早い時間に起こされまだまだ眠い中、ひと際大きい声が皆の眠気を吹き飛ばすかの如く狭い室内に広がった。

 

「今日あつまってもらったのは他でもないわ!私達の新しいなかまをしょーかいしようと思ってね。マイ!」

 

「え……?」

 

サニーミルクに突然名前を呼ばれ、彼女の刺された指先から自然と注目がこちらに集まってくる。

メンバーの妖精達からは「誰?」「見かけない子だ」といった様々な言葉が小さく飛び交い、不審感と興味が入り混じったような反応が向けられていた。

 

それを聞いて僕は、まだ人形解放戦線のメンバーになったことが全体に浸透していなかったことに気が付く。

あの時は三月精からの雑な面談で即メンバー入りし、リーダーのメディスン・メランコリーから唐突に仕事を与えられ言われるがままに行動したが、この組織全体への正式な挨拶は確かにしていない。周りの反応もごもっともと言える。

 

「ほらマイ、ぼさっとしてないで前に出て!」

 

正直、組織内で目立つのは避けたかったところなのだが……この状況下で断るのは流石に止めた方がいいだろう。

この世界の妖精は仲間同士の信頼が厚い。故に、ここで消極的に接するのは群れの仲間外れとして扱われ兼ねないリスクのある行動となる。

ここで情報収集をしようとしている身としては、そうなることは非常に都合が悪い。

 

呼ばれた僕は1歩1歩前へと進み、サニーミルクの隣に並ぶように立つ。集まっていた視線が前に出たことでより一点へと集中し、無意識なプレッシャーを生む。

まるで転校してきた学生が初めて挨拶する時のような緊張感が、こちらに重くのしかかってきた。

 

落ち着け、相手は妖精。緊張なんてすることない。簡単に自己紹介と挨拶して、それで終わり。

そう、いつも通りの“マイ”を演じるんだ。

 

「えと、その……マイ……です。よろ……しく」

 

だが気持ちとは裏腹に、僕の口はいうことを聞いてはくれなかった。

か細い声と背けられた顔、簡単にしてもあまりに最低限過ぎる挨拶というそれはそれは印象最悪な行動をかましてしまう。

大衆の前で何かをするのが昔から苦手な僕には、この状況はまさに地獄。人形達の前では平気だったからある程度は克服できたと思ったのだが、どうもそれは気のせいであったらしい。

これから大きなことを成そうとしている人の姿とは思えない……。

 

こんな挨拶を聞いたメンバー達の反応は当然、良いものではなくさっきからヒソヒソしながらこちらを見ている。

第一印象というのは大事だというのに……こんなことでは今後の活動に支障が出てしまう。今からでも何とか印象の挽回を……

 

「あ~、この子実はけっこーシャイなのよ。皆の前で話すの恥ずかしいみたいね!いや~私としたことが気が利かなかったわ~!」

 

「へ~そうなんだ~」

 

「そういう子もいるよね~」

 

「大ちゃんにそっくり!」

 

隣にいたサニーミルクが気を利かせ、静かになった場を少しだけ盛り上げてくれる。伊達に妖精達の代表を努めてはいないということか……何にせよありがたいフォローだった。

更にサニーミルクはこちらの肩を組み、顔を見合わせてウインクすることで何かを伝えている。そこに圧などは一切なく、もっと気楽にやっていいという心の温かさが感じられた。

 

「マイはすごいのよ!たった1人で天狗の里になぐりこんで向かってくるやつらをちぎっては投げちぎっては投げ!連れてる人形も見たことないものばっかりで、とにかく強い!私の自慢の友達なの!」

 

「「「 おぉ~~~~!! 」」」

 

サニーミルクによる僕の活躍を聞き、再びこちらに注目が集まる……内容が少々誇張されているが、今はそれについてツッコむべきではないだろう。

というか、最早それどころではないというのが正しい。

 

「マイちゃん人形みせあいっこしよ~!」

 

「そのふくかわいいね!ほしいな~!」

 

「あなたどこからきたの~?わたしは魔法の森!」

 

僕はあっという間にメンバーの妖精達に囲まれてしまい、様々な質問や要望を聞かされ人気者となってしまった。

 

 

 

 

 

 

「ふん!それ、果たしてほんとーかしらねっ!?」

 

加減を知らない無邪気な妖精達にもみくちゃにされそうになっていた最中、バンと扉の開く音が鳴り響く。それなりに大きな音であった為か、取り囲んでいたメンバーの妖精達もそちらへと注目したことで拘束が解かれる。

正直、途中から服や髪も触られ始めていて身バレするのではとヒヤヒヤしていたところだったので、助かった……。

 

「あ、あれは」

 

「ミルミだ。きっといつものやつね……」

 

「どうせまたいびりにきたんだわ」

 

「ミルミ」と呼ばれた妖精がアジトへと乱入したことで周りが一気にざわつき始める。

ミルミはここにいる妖精達とは違って青や白の髪や同色を基調とした制服といった格好はしておらず、金髪で向日葵の花付帽子に明るい青緑色のワンピースを着ているメンバー内の変わり種である。

 

「あんた、あんまりちょーし乗るんじゃないわよ!しんいりがデカい顔できるほどここは甘くないんだからね!」

 

ミルミはまるで嫌な上司のような高圧的な態度をこちらに見せてくる。

察するに、入って早々ちやほやされている僕が気に入らない……といったところだろうか。

 

「あ~ら、そのしんいりについ最近たすけられたのはどこのどいつだったかしら?」

 

「うぐ……あ、あの時はよゆーがなかったんだもん!そうするしかなかったの!あそこ猫のザコ人形しかいないからかんたんに占拠できると思ったのに……」

 

つい最近の失態をサニーミルクに突かれ、ミルミは苦し紛れの言い訳を言っている。当時のミルミ曰く、向かってくるちぇん人形達を撃退し続けていたところ九尾の人形が鬼の形相でこちらに攻撃してきたらしい。

そいつはかなりの力を持っていたようで、メンバー4人がかりでも歯が立たず手持ちが全滅。そして追い詰められた結果、あの小屋に籠城していたとのことだ。

マヨヒガを探していた際、幻覚で道を隠していたという人形と特徴が一致している。恐らく同一人物で間違いない。そういえば浩一さん、あの人形を見た途端目の色を変えて追いかけて行ったがその後どうなったのだろう?

話を聞く限りだと、その襲ってきた九尾の人形はただ人形解放戦線からちぇん人形達を守っていたようにしか聞こえない。もし捕まえられたのだとしたら、あそこにいるちぇん人形達の今後が心配になる。

 

「こ、こんかいは運がわるかっただけよ!つぎはもっと人員ふやしてせめればあんなやつ!」

 

「いやあんた、いい加減に……!」

 

「……サニー、ここは僕が」

 

当時、一緒に活動していたメンバーであるフェリシー、エディ―ス、レンリの証言によれば、今回の襲撃はここのリーダーであるメディスン・メランコリーの指令ではなくミルミ自身の独断行動。

ここ人形解放戦線の活動内容とは、人形達の自由と地位向上を目指すというもの……仮にもそんなスローガンを掲げている組織が、野生の人形の住処を荒らすような真似をするのは褒められたことではない。

最近活動が過激になってきた背景には、こういった存在がいることが1つの原因なのだろう。

 

彼女には、“教育”が必要だ。

 

 

 

「ミルミちゃん、おはよう!あらためてじこしょうかいするね!僕はマイ!」

 

「――な、何よ、なまえくらい昨日きいたから知ってるし」

 

「うん、でもあの時はまだメンバーじゃないようなものだったから!ここのルールとかもぜんぜん分からないしめーわくかけちゃうかもだけど、これからよろしくね!」

 

そう言って僕は笑顔で右手を差し伸べて握手を求めるが、ミルミはそれをはたいて振り払う。

どうやら彼女は他の妖精達のように単純にはいかないらしい。

 

「うーん、僕はただミルミちゃんとなかよくなりたいだけなんだ。僕、なにかミルミちゃんにきらわれるようなことしたかな?」

 

「ふん、しんいりが気安くはなしかけるんじゃないわよ。それにね」

 

 

「 あたしはッ! 副リーダたちの次にッ! えらいんだからねッ! 」

 

 

こちらに指差ししながらズイズイと顔を近づけ、ミルミは僕にそう忠告した。役職の違いはあれど皆友達のように接している中、彼女だけは上下関係をえらく気にしている。

成程、人間にもいろんなタイプの性格がいる様に、妖精にもこういったイレギュラーが一定数存在しているようだ。

 

「へぇ、そうなんだ!どおりでカリスマあるなぁって感じたわけだよ!」

 

「そ、そう?えへへ、まぁでちゃってるかぁオーラってやつがねぇ~」

 

少しおだててみたらミルミは嬉しそうに顔をニヤけさせ、あっという間に上機嫌となった。やはり、その辺は妖精か。

だが現状、今の僕の立場では彼女を更生させるのはどう考えても厳しい。何せメディスンの指令を無視して好き勝手するような厄介者だ……したっぱの僕の言うことなどに耳を貸す筈がない。

 

「……ねぇねぇ、いったいどうやったらミルミちゃんみたいに偉くなれるの~?」

 

「そりゃあやっぱ、“バトルの腕っぷし”よ!あたしはそうやってのし上がっていったんだからね!ま、あんなザコ達にまけるようそなんてぜぇ~んぜんなかったけど~?アッハッハッ!!」

 

憎まれ口をたたきながら武勇伝を語るミルミ。

愉悦に浸っている彼女は実に腹立たしいが、同時に解決のヒントもくれた。単純明快で助かる。

 

「ふぅん……それならさ、今からバトルしない?」

 

「はぁ?あんたまさか、あたしに挑むっての?」

 

「うん!僕もミルミちゃんみたいになりたいんだ~。ここでは人形バトルのつよいメンバーがえらいんでしょう?」

 

「まぁそうだけれども……あんた話きいてたぁ?あたしはここで1番つよいのよ?」

 

「「「 (したっぱ達の中で、な) 」」」

 

「うん、聞いてたよ。だからこそ挑みがいがあるかなって。……それとも」

 

「な、なによ」

 

 

「万一でも、まけるのがこわいとか?」

 

「―――ッ!!!な、な」

 

 

こちらの煽りを真に受け、顔が真っ赤に染めて怒りを露にするミルミ。

絵にかいたような小物だ……次にミルミが言うセリフも容易に想像できるというもの。

 

 

「上等よ!!表に出なさい、わからせてあげるわッ!!」

 

 

怒り狂ったミルミはこちらに指を指してそう言い放ち、アジトの外へと出ていく……どうやら誘いに乗ってくれたようだ。

この決闘は、僕の強さを周りに示す大きなチャンスでもある……必ずものにしよう。

 

 

さて、分からされるのがどっちか?それをハッキリ教えてあげなければ。

 

 

 

 

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