人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第二十章

ユキ人形の謎の覚醒により、げんげつ人形を捕まえることが出来た光。

一時はどうなることかと思ったが、二人で協力したおかげで何とか乗り越えることが出来た。

 

「舞島さん舞島さんっ!見てよコレ!」

 

そう言うと、光は手に持っているひし形の宝石を嬉しそうに見せた。

これにさっき捕まえたあの人形が入っている。天使のような悪魔という変わった人物、もとい人形であった。

 

「本当に捕まえたんだね…。今まで戦った中で一番強い人形だったよ…」

 

「そうね…。これも舞島さんとしんみょうまる、そしてユキのおかげよ。ありがとう!」

 

光の言う通り、ユキ人形のあの力がなければとても敵う相手ではなかっただろう。

 

何故急なパワーアップをしたのかは分からないが、そのおかげでこうしてゲット出来たのだ。

ユキ人形にちゃんと感謝をしなければ。

 

「ユキ、ありがt…」

 

鏡介が振り向くと、そこには頭から湯気を出しながら倒れているユキ人形の姿があった。

ユキ人形は倒れたままピクリとも動かない。

 

「ユ、ユキ!?大丈夫かっ!?」

 

慌てて駆け寄る。

ユキ人形はニコリと笑顔をこちらに向けていた。…良かった。意識はあるようだ。

 

「…舞島さん。ユキのステータス、元に戻ってる。あの「ヴォルケイノ」って技も今はなくなってるわ」

 

「え…?」

 

スカウターを見た光は鏡介にそう伝える。

 

「…もしかしてさっきの、結構無理なパワーアップだったのかもしれないね。それで今はオーバーヒートしてるんじゃないかしら」

 

光はユキ人形が起こした力についてそう解釈した。

確かに今の状況的には成立しているので、そう考えるのが無難であろう。

 

「…だとしたら、急いで休憩所で休ませてあげないと。一の道の休憩所が近いかな?行こう、光ちゃん」

 

「あ、うん。 戻って! ユキ!」

 

光はユキ人形を宝石に戻しながら、鏡介の後を付いて行く。

 

少し早歩きで進んでいく鏡介。ユキ人形のことが心配なのだろう。

急いでいるなら走ればいいものを、もう一人のペースに極力合わせて行動しているみたいだ。

 

「…優しいというか、不器用というか。私のこんな無茶なお願いも聞いてくれたし、本当にお人好しなのね舞島さんは。…苦労してそうだわ」

 

そう呟きながら、光も少し歩幅を広げて歩いていった。

 

 

歩くこと数分、一の道の休憩所前に到着した二人。

するとそこには見覚えのある顔が椅子で休憩をしていた。

 

「あ、浩一さん!こんにちは!」

 

元気よく相手に挨拶をする。

 

「うん?おう、鏡介じゃねぇか!しばらくぶりだな!」

 

すると気付いた相手はこちらに挨拶を返してくれた。

 

ここらで色々お世話になった新米人形使いの浩一(こういち)。

しんみょうまる人形の小槌を一緒に探してくれた親切な人だ。まだこの休憩所付近にいるとは正直思わなかったので会えて嬉しい。

 

「舞島さん、この人と知り合いなの?」

 

若干置いてけぼりな光は鏡介に問いかける。

 

「うん。この間お世話になったんだ。この子関連でね」

 

しんみょうまる人形の入っている宝石を見せる。

 

「へぇ、何回か見かけたからそうだと思ったけど、舞島さんはここでしんみょうまるをゲットをしたんだね」

 

「うん。…あっそういえば、浩一さんあれから見つけることは出来たんですか?」

 

思い出したように浩一に話題を振る。

以前からずっとしんみょうまる人形を探していると聞いてから随分経つ。もう流石に見つけていることであろう。

 

 

「…へぇ、そこの嬢ちゃん、何回か見つけられたんだな。良かったじゃ…ねぇか…っ……」

 

 

「(あっ)」

 

 

今の浩一の言葉と悔しそうな顔で察する。…何も言うまい。

 

 

「え?おじさんまだ見つけられてないの?」

 

 

光は子供特有の純粋な疑問を浩一にぶつける。

 

「…!ちょ!?」

 

それは言ってはいけない光ちゃん…!悪気はないんだろうけど、それが却って残酷だよ!

 

「ぐふっ…!!」

 

それを聞いた浩一は、精神を削られ悶え苦しむ。しかしそれを尻目に光は、

 

「うーん、確率で言うと私は30回くらいで2体見つけたから、大体15回に一回会えるはずなんだけど…おじさん探索が甘いんじゃないかしら?手伝おうか?」

 

「ぐうっ…!」

 

更なる精神攻撃を浩一に仕掛ける。もちろん悪気はない。

子供に負けて心配されるという屈辱が更に彼を追い詰めていた。胸に刺さるような感覚が浩一を襲う。

 

「…俺100回くらい人形に会ってるんだけどなぁ…。どうしてかなぁ……」

 

浩一はすっかり落ち込んでしまった。

 

「あらおじさん、何で落ち込むの?大丈夫よ、ポイントを絞って探せば会える確率は上がるわ。100回で駄目なら、1000回粘れば」

 

しかし光のターンは終了しない。…もう流石に止めないと浩一さんが持たない。

 

「はい光ちゃんそこまでっ!!休憩所で人形を休ませないとっ!! ね?」

 

「え?う、うん」

 

無意識に浩一の精神を削り続ける光に割って入り、休憩所に向かうよう催促する。

そもそも早くユキ人形達を回復させないといけないし、急がねば。

 

「…すみません浩一さん。あの、頑張って下さいね」

 

「……おう…」

 

声に覇気がなくなった浩一に申し訳ない気持ちになりながら、休憩所に足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人形の回復をお願いします」

 

受付嬢に二つの宝石を渡す。

 

「はい、ではお預かりします!しばらくお待ちください!」

 

「お願いします」

 

人形達を預けてる間、二人は待合室で腰掛ける。

 

「…光ちゃん?あんまり大人の人をからかってはいけないよ?」

 

先程の光の言動に注意喚起を促す。

一応、人生の先輩としてこの子のいけないところを指摘しなければと責任感を抱く。

 

「私はただ、あの人を助けようとアドバイスしただけよ?」

 

しかし本人は自覚なし。…うん、そうでしょうね。

 

「気持ちはわかるよ。でも、ああいう時は余計なことは言わずに相手を慰めるなりしないとダメ。いい?」

 

「…はーい」

 

不服そうにしながらも、光は返事をする。この子、言いたいことはハッキリ言ってしまうタイプなのだろう。

子供だからというのもあるかも知れないが、そんな感じがする。…僕には真似出来ないな。怖くて。

 

「…ふぅ。まぁ、わかってくれればいいよ」

 

こちらの話が終わったところで、今度は光が話を始める。

 

「ねぇねぇそれよりもさ。改めて人形捕まえるの手伝ってくれてありがとね。ホントに感謝してる」

 

話題を切り替え、こちらに対しお礼を言う。

あれはユキ人形が頑張ってくれたお陰で何とかなったところはあるが…。一体何だったのだろう。

 

だけど、とりあえずはめでたい。これで光ちゃんも晴れて人形遣いになれた。

捕まえた瞬間は、何だかこっちも嬉しくなっちゃったし。人助けをすると気持ちが良いな。

 

「気にしないで。それにしても、最初にこんな強い人形を捕まえられて良かったね」

 

「うん。これから私のパートナーになる訳だし、ちょっと挨拶しようかな?」

 

そう言いながら、光は宝石から人形を出そうとする。

 

「ちょ、ちょっと待って光ちゃん!」

 

「え?」

 

そう言いながら、鏡介は辺りを見回す。

あんなに凶暴な人形だったのだ。捕まえたとはいえ、暴れないとも限らない。

 

「…ちゃんと注意しながら、ね?」

 

「うん。危なかったら即戻すから安心して」

 

良かった。その辺は配慮してくれてるようだ。

この休憩所には特にお世話になっている。危険に晒されれば申し訳が立たない。

 

「…じゃあ行くよ。 出てきて! げんげつ!」

 

宝石をかざして人形を出す。

悪魔の人形、げんげつが出てきた。二人は身構える。

 

しかし、予想とは裏腹にげんげつ人形は大人しかった。

げんげつ人形は腕を組み、そっぽを向いている。プライドが高いのだろうか。

 

「げんげつちゃん、今日からよろしくね?」

 

光が挨拶を交わす。しかし、何も返してこない。

 

「うーん、素直じゃないなぁ。可愛い顔が台無しよ?ほら、スマイルスマイル!」

 

そう言って光はげんげつ人形のほっぺをつねる。

 

「…!!」

 

げんげつ人形は嫌がりながら、手を叩いて抵抗。後ろを向いてしまった。

 

「あんまり刺激するのは危ないよ…」

 

「フレンドリーに接したつもりだったけど、失敗みたいね…。拗ねちゃったわ」

 

光の何者にも恐れない度胸は見習いたいところだが、この人形は怒らせると辺りを破壊しかねないから心臓に悪い。

 

「何か、この子の興味を引くものはないかしら?そういうのがあれば打ち解けられそうだけど…」

 

「興味を引くものか。うーん…何だろう?」

 

悪魔が興味を引くもの。そう言われても基本穏やかじゃないものしか浮かばない。

でも、わざわざ天使の格好をしているということは意外と可愛いものが好きだったり?…駄目だ分からない。難しいぞ。

 

 

そして悩みながら試行錯誤すること数分が経ったが、結局何も分からず仕舞い。

 

「はぁ…参ったわね。私はこの子と仲良くなりたいだけなんだけどなぁ」

 

「出せるもの出したけど、何も反応しなかったね…」

 

見事なまでに全無視され途方に暮れていると、

 

「舞島さん、人形の回復が終わりましたよ!」

 

待娘から声を掛けられる。思ったよりも随分と時間が経っていたようだ。

 

「はーい。…ちょっと行ってくるね」

 

「いってらっしゃい」

 

人形を回収する為、受付の方へ足を運ぶ。

 

「お待たせしました!人形達もすっかり元気になりましたよ!」

 

受付の人は二体が入った宝石を持ってくる。すると片方の宝石が光り、ユキ人形が出てきた。

ユキ人形は出てくるや否や、水浸しになった犬の様に体を震わせる。宝石の中が居心地悪かったのだろうか。

 

「ユキ、おかえり。この中じゃ嫌だったか?じゃあ一緒に行こう」

 

「♪」

 

ユキ人形は元気よく頷く。そして頭を撫でてやると、嬉しそうな顔をする。かわいいやつめ。

人形の愛らしさに和んでいると、

 

 

「あ!ちょっとげんげつちゃん!?」

 

 

向こうから光の慌てた声が室内に響く。

 

何事かと思い振り向くと、げんげつ人形がこちらに向かい猛スピードで飛んできていた。

 

やられたユキ人形に逆恨みしているのか?だとしたら危ない!

一旦宝石にユキ人形を戻そうとしたら、

 

 

「「……え?」」

 

 

そこにはユキ人形を舐めまわすように見て興奮しているげんげつ人形の姿があった。

 




レア枠の人形は出ないときはとことん出ないよね。
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