人間と人形の幻想演舞 作:天衣
突然ユキ人形の元に飛んできたげんげつ人形。
何をするのかと思えば、ユキ人形をじっくりねっとりと見つめ始める。
ユキ人形は突然のげんげつ人形の行動に困惑し、恐怖で動けなくなっていた。
「…♪~♪~♡」
げんげつ人形はユキ人形の金色の髪を触り感触を確かめると、満面の笑みを浮かべた。
どうやらユキ人形の髪がお気に召しているらしい。ユキ人形はその行動に嫌悪感を示すが、げんげつ人形の圧力に逆らえないでいる。
「「(えぇ…)」」
その様子を見ていた光と鏡介もこのげんげつ人形の行動に困惑。当然であろう。
何せ、今まで見ていた様子とはまるで違う。その姿は何というか…変態っぽかったのだ。引くのも仕方がないというもの。
「…舞島さん、この子私が思っていたのと違う…。性格に難ある系だわ」
「…うん。まさか、自分を負かしたユキのことを気に入ってしまうなんてね…。変わっているというか…こ、個性的?だね」
光はこのげんげつ人形を素直じゃないだけだと思っていたのだろう。
それ故に今の光景を受け入れ難いのが見てわかる。こちらも自分なりにあの性格をフォローしてみるが、気の利く言葉が見つからない。
ユキ人形の何が気に入ったのかは正確には分からないが、普通ではないことは明らかだった。
髪を触っていたようだが、それと関係が?…良い匂いでもしたのだろうか?知らないけど。
そういう風に思っていた矢先、
「!!ちょっと何して…っ!?」
光は声を上げる。何と、げんげつ人形はユキ人形の服を剥ごうとしているではないか。
ユキ人形は抵抗しているが、徐々にそのベールが脱がされていって今にも見せられない状態になっていく。
「ひ、光ちゃん急いで戻して!」
「も、戻ってげんげつ!」
光が宝石をかざすと、げんげつ人形は抵抗するが宝石の中に吸い寄せられていく。
「うわっ!?」
光の持っている宝石がブルブルと震える。「出せ!」といわんばかりの暴れっぷりだ。
しかし、このままではユキ人形が色んな意味で危ないので出さないほうがいいだろう。至極当然の判断だ。しばらくして、宝石の震えも収まる。諦めたみたいだ。
「あ、危なかったぁ…」
安心したのか、光は一息ついた。
同じ女の子として、服を脱がされていくのはこれ以上見ていられなかったのだろう。
それと同時にユキ人形も泣き顔でこちらに飛びつく。おーよしよし。怖かったね。
「…とにかく、この子にユキを会わせちゃダメみたいね。今後注意するわ」
「うん、そうしてもらえると助かるよ…。こっちも気を付けないとね」
げんげつ人形の謎の変異を見て、二人はそう心に決める。
「「…お騒がせしましたー…」」
騒動を起こしてしまい注目の的になってしまった二人は、そのまま休憩所を後にする。
そして休憩所前に佇む。中に居づらい感じになってしまったのでしょうがないが、何か恥ずかしい。
だがひとまずは光の人形を捕まえるという目的は達成したので、今後の予定を決めることにした。
「光ちゃんはこれからどうする?やっぱり旅をするの?」
人形使いになって困った人を助けたいというのであれば、そうなるかと思い尋ねてみる。
「うーん、そうね……旅はしたいな。その方が人形使いとして強くなれそうだし」
この幻想郷はまだまだ色んな場所があり、そこには未知の人形達がいるのだろう。
自分もこれからの出会いに正直ワクワクはしている。何とも子供心を擽るではないか。
生まれて初めてポケ〇ンをやったあの日を思い出す。あの頃はタイプ相性なんて考えないで好きなやつでいってたっけ。
最初はみんな小さくてかわいいんだけど、進化すると大きくなっていって…。それがいつも悲しかった。
だから僕は、進化しないのとかを必死に使っていたんだよね。あぁ、懐かしい。
…あれ?そういえばこの人形達も「進化」はするのだろうか?
それで大きくなったりしたら…それはとっても悲しい。
しかし人形は見た目が女の子だから、これはちょっと危ない考えだな。いけないいけない。
「どうしたの?」
首を横に振る鏡介を、光は不思議そうに見ていた。
股がっていたユキ人形は落ちそうになり、頭にしがみ付いている。悪いことをしてしまった。
「な、何でもないよ。ほら、先に行こう?」
考えていたことを誤魔化す鏡介は、人里方面に歩みを進める。
しばらく歩いていると、
「…舞島さんはこれからどうするの?やっぱり旅の続き?」
光の方が自分がしたのと同じ質問を振ってきた。
「そうだね…僕は人形の調査をしながら旅をしようと思ってる。でも行く当てがないから、人里に着いたらまずは阿求さんの屋敷に行くつもりだよ。魔理沙さんもいるだろうし。」
早苗から人里に向かうように勧められ、自分はここまで来た。そこで聞き込みなどもやったけどあまり有益な情報はなし。
その後どうすればいいかも分からないので、とりあえず今後どうするかを聞いておこうと思う。何事にも目的はあったほうがいい。
「そっか。……じゃあ私もその屋敷に行こうかな]
それを聞いた光は、しばらく考えた後にそう言う。
用があるのはこっちの方なのに、何故光も行く必要があるのか。
「え?別に無理して付き合わなくても…」
「…私、舞島さんに恩があるからさ。少しでもその調査ってやつの手伝いしたいの。いいでしょ?」
光は人形を捕まえる手伝いをしてくれたことにすごく感謝をしているみたいだ。
別にそこまで気にしなくていいのに…。
しかしさっきまでの光の人形バトルの戦いぶりを見ていると、初めてにしては的確に指示を出していたし状況判断も良かった。
はっきり言って自分よりも人形使いとしての才能はあるだろう。手伝ってくれるというなら心強い味方だ。
「…分かった。光ちゃんの好きにして」
ーーーしばらくして人里に到着。
帰って来て早々、阿求亭に足を運んだ。
門番の人と挨拶を交わした後、屋敷内に案内され阿求達の元へ来ると当初の目的通り今後どうすればいいかの相談をする。
それを聞いてすぐに承諾してくれた阿求は、魔理沙と共に話し合う。
「…ふむ。それで、今後どこに向かえばいいか分からないと」
「はい、そうなんですよ。つい最近この世界に来たものですから地理がなくて。もし地図などがあれば、それがある場所を教えて頂けないでしょうか?」
当然ながらこの辺のことは何も知らない。だからまずは地図が欲しいところ。
役場みたいなところがあれば、そこにあるのだろうか?
「それならば、私が地図を持っているのでお渡ししましょう。…はい、どうぞ」
阿求は引き出しから地図を出して、それをこちらに渡してくれた。
「あ、ありがとうございます!しかし、よろしいのですか?」
「えぇ。私は滅多に外は出ませんし、舞島さんが持っていた方がいいでしょう。…それに私はもう内容も把握していますからね」
それを聞いた魔理沙は、補足するかのように話し始める。
「阿求はな、『一度見たものを忘れない程度の能力』を持ってるんだ。それであの膨大な「幻想郷縁起」も作ってるって訳」
「成程、そうだったのですね。では、ありがたく頂戴します」
阿求も能力持ちの人物だったようだ。…ということは彼女の人形もいるのかな?
人里に生息しているなら捕まえておくのもいいかもしれない。
「舞島、お前の次の目的地だが…。『魔法の森』に行ってみたらどうだ?ちょうど人里から西にあるぞ」
ちょうど地図を貰ったところで魔理沙が次に行く場所を示してくれた。
確認すると、魔理沙の言った通り西方面にあるみたいだ。『香霖堂』という場所も近くにある。
「そこに「アリス」っていうやつがいるから、そいつに今回の異変について何か知っているか聞いて来て欲しい。あいつは人形に詳しいし、個人で何か調べてるかもしれないからな」
確かに人形について詳しいなら、何か知ってる可能性も高いだろう。行ってみる価値はある。
「…分かりました。「魔法の森」に行ってアリスさんという人と接触すればいいんですね?」
ひとまず次の目的が決まった。向かってみるとしよう。
しかし、それを聞いていた光は一つ疑問を浮かべる。
「…魔理沙さんって確かアリスさんと知り合いよね?会いに行かなかったの?」
どうやら魔理沙はアリスと知り合いらしい。それを知っていた光は何故そちらが聞きに行かないのかと思ったのだろう。
確かに空を飛べる魔理沙なら、会おうと思えばいつでも会えそうではある。
「あー…、ちょっと前にものを借りていったら滅茶苦茶怒られちまってな。今は会いに行きずらいんだよ」
「…相変わらずですね、あなたは」
行けない理由を聞いた阿求は魔理沙に呆れる。
…成程、そういうことか。僕はその代理な訳だ。
光の言う通り、どうやら魔理沙の手癖が悪いのは事実らしい。あんまり気を許すと何か盗まれかねない。用心しておこう。
「…そういえば、光はどうする?手伝いをしたいんなら舞島に付いて行くか?」
魔理沙は光に対しどうしたいのかを訪ねた。
「そうね。とりあえずは付いて行くつもりよ。舞島さんが良ければね」
舞島の方を見ながら、光はそう答える。旅に同行してくれるようだ。
「僕は構わないよ。」
「良かった。しばらくの間だけど宜しくね!」
承諾すると光は元気よく返事をする。こちらとしても人が多い方が旅も楽しいだろうし悪い気はしない。
「それじゃあ、魔法の森の方はお前らに任せる。頼んだぜ!」
「私の方からも西の門を通れるようにしておきます。お気を付けて」
「「 はいっ! 」」
二人に見送られ、阿求亭を後にした。
場所は移り、光と鏡介は人里の休憩所にて旅の準備を進める。
「とりあえず長旅になりそうだし、回復アイテムは必須ね。舞島さん、お金ある?」
「えっと、今の所持金は900円だね。後、げんげつが持ってたこの本を換金すればもうちょっといくかも」
げんげつを捕まえた際に落としたこの本。読めないし使い道がわからないので売ろうと思っているが…。
所詮は本だからそこまでのお金になるとは思えない。とりあえず行商人に話し掛ける。
「行商人さん、この本売りたいんですけど」
「ふむ、それなら2500円で買い取るよ」
予想とは裏腹に高価なものだったようで、結構な値段だった。もちろん売る。
半分の1250円は光ちゃんに渡した。
こちらの所持金は2150円になり、アイテムを買う余裕が結構出てきた。
これで白玉団子を3つ、封印の糸を2つ購入する。残りは250円になった。
光の方は封印の糸を3つと白玉団子を1つ購入。
げんげつ人形は強いし、回復よりも仲間を増やすアイテムを気持ち多めにしたみたいだ。
「うん、こんなものかな。じゃあ行こう、光ちゃん」
「えぇ、早く行きましょ」
二人は休憩所を後にした。
すると、早速光が話し掛けてくる。
「そういえば舞島さん、腕の傷いつの間にか治ってるね?」
「…あ、そういえば。あんなに痛かったのに跡が塞がってる…。捕まえたから受けたダメージが消えたのかな?分からないけど」
げんげつの攻撃を受けた右腕の傷が何故か直っていることに今更気付く。
思えば不思議だ。サラリと適当な解釈をしたが普通は直るはずもないすると、宝石が光りだす。中からしんみょうまる人形が出てきた。
「うん?どうしたんだ?しんみょうまる」
しんみょうまる人形は鏡介の右腕をじっと見つめている。
すると何やら裁縫セットをどこからか取り出し、何かを伝えようとしている。
「…もしかして服の破れた跡を縫ってくれるのか?」
しんみょうまる人形は頷く。この子そんなこと出来るんだな。
確かに剣の見た目が裁縫の針だし、そういうのが出来てもおかしくはないけど。
「じゃあ、お願いしてもいい?」
鏡介は修繕がしやすいようにしゃがみ込む。しんみょうまる人形は嬉しそうに頷くと近づいて準備を始めた。
布を選んだりサイズを測ったりすると、やがてしんみょうまる人形は修繕し始める。
「へぇ、この子器用なのね」
光は感心しながらしんみょうまる人形を観察する。
「うん。人形って色々出来て賢いし、何だか愛着がわいちゃうよね。アハハッ…」
鏡介は笑みが零しながらそう答えた。
ーーー修繕をすること数分。
しんみょうまるは手を止め、頷く。終わったようだ。
見てみると、跡の違和感のない見事な修繕をしてくれているではないか。
職人技といってもいいくらい見事であった。
「おぉ!すごいよしんみょうまる!ありがとう、助かったよ!」
見事な仕事をしてくれたしんみょうまる人形の頭を撫でる。
「…舞島さんってさ、人形と接している時キャラ変わるよね。何というか、親みたいだわ」
これまでの鏡介の自分の人形に対する一連の仕草を見て、光はそう結論付ける。
「え?そ、そうかな…?」
「そうだよ。まるで本当の娘みたいに可愛がってるじゃない」
娘、か。あんまり人形をそういう風には考えたことはないけどな。
「うーん、どっちかというと子供というよりかは犬とかのペットって感じかな?」
「…え」
それを聞いた光は後ずさる。
「…舞島さん、そんな趣味が?」
光はかなり引いていた。
何か盛大な勘違いを生んでしまっている。言い方が悪かったようだ。
「ち、違うよっ!?あくまでペットみたいなって感じであって実際にそう思っている訳じゃないからね!?」
少女をペットとして扱うなんて、そんなロリコンよりも質が悪い趣味は持ち合わせてはいない。
必死に否定をし、この人形との接し方についての納得がいく常識的な答えを考える。
「…そうだね。この子達は、友達…かな。友達だから、何かしてくれるとこっちも嬉しいでしょ?そんな感じだよ」
我ながらいい答えを導き出す。
まぁ実際そんな感じで接しているつもりではあるし間違ったことは言ってない。
「な、成程。…まぁ舞島さんに限ってそんな危ない趣味は持ってないわよね…。疑ってごめんなさい」
光も納得はしてくれたようだ。良かった良かった。
実際に人里で人形を異常に溺愛している人とかいたし、良くないことをしちゃう人も少なからずいるのだろう。…自分もそうならないように気を付けないとね。
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「あれ?また身長が縮んでる…どうしてー!?」
少名 針妙丸は鏡を見てそう叫んだ。
魔導書って売価2500円で良かったよな…。