人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第二十三章

鏡介と霊夢はお互い対峙している。

それを見ている審判を任された光は二人に確認をとる。

 

 

「…えーっ、それでは今回の人形バトルの説明に入りますっ!使用人形は2体!アイテムの使用はなし。途中の交代はあり。よろしいですか?」

 

「「はい(問題ないわ)!」」

 

 

今後の旅の続きを賭けた人形バトル。

何としてもこの戦いで霊夢に認められなければならない。

 

「では、これより霊夢様と舞島さんによる人形バトルを始めます!」

 

二人は身構える。ふと霊夢の目を見ると、何回か見たあの鋭い目をしている。真剣そのものだった。

あちらも負ける気は毛頭ないだろう。…だがそれはこちらも同じ。ビビっている場合ではない。いざ、勝負!

 

 

「始めっ!」

 

 

光の試合開始の合図が出される。

 

 

「行きなさい! あや!」

 

「行け! しんみょうまる!」

 

 

合図とともに二人は最初の人形を出す。

鏡介はスカウターで相手の人形を調べる。

 

 

『名前:あや  種族:鴉天狗  説明:趣味で新聞記者をやっている』

 

 

情報が出てきた。

てんぐ…かな?こちらの天狗は鼻が長くないみたいだ。

それよりも相手の人形の推測だ。天狗というのは確か…そう、風を操れると聞いたことがある。

となると、あの人形は風…つまり「ひこう」タイプに近いものだろう。黒い翼も生えているし信憑性は高い。

 

この推察が正しければ、鋼鉄タイプのしんみょうまる人形は比較的相性は良さげだろう。行けるぞ…!

 

「行くよ!しんみょうまる! ザ・リッパ-!」

 

しんみょうまる人形に指示を出す。

指示を受けたしんみょうまる人形は持っている輝針剣を輝かせ、それを構えながらあや人形に向かっていく。

 

「…あや!引き付けてかわしなさい!」

 

霊夢もあや人形に指示を出す。

あや人形は指示通りにしんみょうまる人形の攻撃を惹きつけた後、それをかわす。

 

「そこから フェザーショット!」

 

あや人形は翼から羽の形の弾幕を放った。

その弾幕はしんみょうまる人形に向かって一点集中して襲い掛かる。

 

「何のっ!しんみょうまる! 防壁強化だ!」

 

しんみょうまる人形はバリアを展開し、攻撃を防ぐ。まだまだ元気そうだ。

 

今の技は見た目で判断するに「ひこう」タイプのようなもので間違いないだろう。

この様子だと「ひこう」→「はがね」は効果がいまひとつなのはこちらも変わらないようだ。ポケ〇ン知識が生きた。

 

「ふーん、いい判断ね」

 

「…この勝負、負けられませんから!」

 

霊夢は鏡介に軽い賞賛の言葉を送る。今のは小手調べだったのだろう。

しかしタイプ相性が不利なのはあちらも知っている筈…。それに対し霊夢は余裕そうだ。何かを隠しているのか?

 

ふと嫌な予感がした。このまま攻めてはいけないような…そんな予感が。

 

「…しんみょうまる!一旦距離をとって!」

 

指示を受けたしんみょうまる人形は後ろへバックステップする。

 

「随分と慎重ね。何を恐れているのかしら?」

 

鏡介がとった行動に対し霊夢は疑問をぶつける。

 

「この状況で交代を選択しない辺り、対抗できる何かをその人形が持っているのでしょう?」

 

それを聞いた霊夢は表情一つ変えずにこう答える。

 

「…成程、思ったより頭が回るのね。ご名答。今から見せてあげるわよ。はたして防げるかしらね?」

 

やはり予想は的中していた。霊夢はあや人形に指示を出す。

 

「あや! ストライクショットよ!」

 

指示を受けたあや人形は右手を構えた。

 

「(…!一体どんな攻撃なんだ?防壁強化をつかっているし耐えられるだろうけど…念には念を入れてもう一回使わないとかな…)」

 

鏡介は警戒を強める。

そしてあや人形は勢いよく右ストレートを突き出すと、拳の形をした弾幕が放たれる。

それはものすごいスピードでこちらに飛んでくる。

 

「!?早い!?しんみょうまる! 防壁強化!」

 

しんみょうまる人形がさらにバリアを展開すると同時に拳の弾幕が着弾。

少しでも判断が遅れていたら間に合わなかった。

拳の弾幕はバリアを張っているにも関わらずひびを入れながら前進する。

やがて弾幕は打ち消すことは出来たが、しんみょうまる人形は苦しそうにしていた。

 

恐らくあの技は格闘タイプのようなものだろう。

格闘→鋼は弱点だ。これがわざわざあや人形でしんみょうまる人形と戦った理由。弱点を突く他の技を持っていたんだ。

 

とは言うものの、こちらは2段階も防壁強化を積んだのに何故こんなにもダメージを負ってしまったのだろう?

 

あや人形の集弾が高い?…だがしんみょうまる人形も集防が高い。これは説明がつかないだろう。

 

急所に攻撃が当たっていた?…いや、見た感じだとそんな風でもなかった。何となくだが。

 

もう一つの可能性としては、しんみょうまる人形のタイプは「鋼鉄」・「大地」の複合タイプ。

2つのタイプを持っているデメリットは弱点が増えることだ。例外もあるが。

そしてお互いのタイプの弱点が同じであることで発生する、「4倍弱点」。

これのダメージは計り知れないものだ。ヌ〇ーやガマ〇ルに草技をぶつけると沈むように、一撃必殺となることがほとんどだろう。

 

しんみょうまる人形が持っているタイプ、「大地」。

もしこのタイプに格闘が弱点であるならば、4倍弱点は成立するが…。

そういえば最近覚えたしんみょうまる人形の「大地」タイプの技「ストーンレイン」は、岩を相手の頭上に振らすという技であった。

あっちでも似たようなのがあったような…「岩落とし」だっけ?……あっ

 

「…!そうかっ!」

 

そう、これを見た時点で気付くべきだったのだ。

この「大地」タイプは「じめん」であると同時に「いわ」タイプでもあるということに。「いわ」タイプなら格闘が弱点なのも頷ける。間違いないだろう。

しんみょうまる人形に格闘タイプは「4倍弱点」だ。あの技だけは受けずにかわすことに専念しないといけない。

 

「その様子だと、今のこの状況のヤバさがわかったみたいね?弱点を突くことは人形バトルの基本よ」

 

「…えぇ。かなりまずいですね。ですが、まだ諦めませんよ」

 

「そう?もう一体の人形に交代してもいいんじゃないかしら?」

 

交代を提案されるが、そのような手には乗らない。

ここでユキ人形を消耗させるのは得策ではないし、霊夢が持ってるもう一体の人形は今までの経験上、あの人形であろう。

 

「そちらのもう一体の人形…恐らくあなたの人形の強さが未知数ですし、迂闊にこちらのエースを出すわけにはいきません。ここで必ずその人形を倒します」

 

防壁強化を2段階積んでいる今の状況の方が勝ち目はある。頑張ろう。

 

「へぇ、言うわね。やれるものならやってみなさいっ!」

 

霊夢は人形に指示を出す。

 

「畳みかけるわよ! あや! 韋駄天!」

 

指示を受けたあや人形は、風を纏う。

 

「こいつの速さは一級品よ。捉えられるかしら!? あや! 撹乱しなさい!」

 

あや人形はとても目で追えないスピードでしんみょうまる人形の周りを飛び回る。

 

「…!?」

 

しんみょうまる人形はあまりの速さに着いてこれず、混乱する。

 

「しんみょうまる! 惑わされるな! 目で追わずに音を聞くんだっ!」

 

指示を受けたしんみょうまる人形は、目を閉じる。

視覚ではなく聴覚を集中させ、どこにいるかを探り始める。

 

 

「ストライクショット!」

 

 

あや人形の攻撃が飛んできた。それをしんみょうまる人形は拳の弾幕を間一髪でかわす。

ちゃんと音を聞いてどこから飛んできたかを判断出来ている。えらいぞ!

 

「まだまだどんどん撃ちなさい! あや!」

 

容赦なく次々に拳の弾幕を放ってくる。

しんみょうまる人形はかわし続けるが、このままでは攻撃に転じれない。どうしかものか。

 

「…じゃあこれならどう!? あや! 穿突(せんとつ)!」

 

指示を受けたあや人形は、撹乱をやめてこちらに突進する。

 

「…! 防壁強化だ!」

 

突撃技?何にせよ、あちらから来るのなら受け止めて反撃できる…!

ここは攻め時。避けるべきではないだろう。…格闘技でないことを祈る。

 

バリアを展開するしんみょうまる人形。あや人形を受け止める体制が整う。

 

「かかったわね」

 

「え…!?」

 

霊夢から不吉な言葉が出る。

 

しんみょうまる人形が展開したバリアとあや人形が接触しようとしたその瞬間、

あや人形はバリアをすり抜けた。

 

「な、何!?」

 

「同じ手を食らうほど私と私の人形は甘くはないわよ」

 

あや人形の突撃がしんみょうまる人形に直撃する。しんみょうまる人形は軽く吹き飛ばさせる。

 

「しんみょうまる!?大丈夫かっ!?」

 

しばらくして立ち上がる。

様子を見る限り、ストライクショットと比べればダメージは少ないようだ。

あの技が格闘タイプじゃないのは確定。

だが、それでも今の攻撃は結構効いたようで、しんみょうまる人形はよろけている。

 

「あや! もう一度撹乱しながらストライクショット!」

 

霊夢が追撃を始める。

四方八方に放たれる拳の弾幕。しんみょうまる人形は懸命にかわすが先程の一撃が効いているせいか、数発被弾をしてしまっている。

やがて食らう方が多くなり、ついには限界まで追い詰められる。

 

「……くっ!」

 

「さてと、これで仕舞いよ! あや! 穿突!」

 

あや人形は突撃する。

もはやしんみょうまる人形に攻撃をかわす元気はない。このままではやられてしまう。

 

しかしその時、鏡介のスカウターが反応をする。

 

 

『アビリティ:「負けず嫌い」  発動』

 

 

「!?な、何だ!?」

 

情報が出てくると同時に、しんみょうまる人形の輝針剣が光りだす。アビリティ?というやつが発動したことで起こっているみたいだ。

ステータスを確認すると集弾が大幅に上がっている。一体何が?

 

「…しんみょうまる!?」

 

しんみょうまる人形は最後の力を振り絞り立ち上がると、剣を構えた。

そしてこちらを見つめる。…お前を信じるぞ!

 

 

「 ザ・リッパ-!! 」

 

 

斬撃と衝突音が同時に鳴り響く。

両者はピクリとも動かない。時が止まったかのように。

 

そして、しばらくするとあや人形の方が倒れる。

 

「…!や、やった!」

 

一発逆転。しんみょうまる人形が踏ん張ってくれたおかげで倒すことが出来た。まずは一体…!

 

「…同士討ちか」

 

「え?」

 

霊夢はそう呟く。そして、しんみょうまる人形も力尽き倒れてしまった。

 

審判の光は両者の状態を見て宣言する。

 

 

「…あや人形、しんみょうまる人形、共に戦闘不能っ!両者、残り人形は一体!」

 

 




「負けず嫌い」ってそんなアビリティじゃない?

こういうのはね、雰囲気が大事なんだよ。
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