人間と人形の幻想演舞 作:天衣
鏡介と霊夢による人形バトル。
最初の人形同士の決着はまさかの引き分け。お互いに戦闘不能となった為、後は残り一体の人形でのバトルとなる。
鏡介は戦っていたしんみょうまる人形に駆け寄り、心配そうに様子を窺う。あちこちに傷を負っており、ボロボロだ。
あの時、「アビリティ」というものは発動しなければ相手の人形を倒すことは出来なかっただろう。本当によく頑張ってくれた。後はゆっくり休んで欲しい。
「…少し慢心していたかしらね。やられた」
そう言って霊夢はあや人形を宝石に戻す。
その表情からは、悔しさや怒りが伝わってくる。
「ったく、仮にもあいつの人形ならもうちょっと踏ん張りなさいよね。使えないわ」
霊夢は戦っていたあや人形に対して罵倒を口にする。
「…そんないい方しなくてもいいじゃないですか」
頑張って戦った人形に対しての霊夢の言い方に鏡介は不快感を覚えた。
思わず口が動いてしまう。
「別にいいでしょ?こいつはたかが人形。感情のない道具よ」
「…それは違いますよ!この子達にだって心はありますっ!僕達と変わらない!」
霊夢の度重なる人形の侮辱に、らしくない大声で反対する。
人形を愛してやまない鏡介にとって今の言葉は我慢が出来なかった。
「あんた、人形に随分と愛着が湧いているみたいだけど、こいつらはこの異変で発生したものよ。いずれ異変が解決されたらいなくなるの。
そこのところ、分かってるのかしら?」
「…っ!」
「…その顔は分かってなかったわね。必要以上に肩入れすると後々がつらくなるだけよ。だから私はこいつらを「異変解決の為の道具」だって言ってるの」
そうか。考えたこともなかった。
この人形は今回の人形異変によって生まれた存在。人形異変を解決するというのは、同時にこの人形達とのお別れを意味するということだ。
もしかしたら、自分がやっているのは残酷なことなのかもしれない。…でも、それでもこの子達を戦いの道具と思うなんて自分には出来ない。
短い間の命だからこそ、精一杯その子を愛してあげるのが持ち主の定めではないだろうか。
「…それでも僕は、この子達を愛します。絶対に…!」
それを聞いた霊夢はため息をつく。この忠告は彼女なりの気遣いだったのだろう。
「そう。じゃあその覚悟、私が打ち砕いてあげるわ! れいむっ!」
宝石が光り、霊夢そっくりの人形が姿を現した。スカウターで見てみる。
『名前:霊夢 種族:人間 説明:妖怪には容赦しない』
情報が出てきた。どうやら霊夢も自分と同じ、「人間」らしい。
この世界の人間は一体どうなっているのか…。とても自分と同じだとは思えない。
…それは兎も角、この一戦で勝敗が決まる。手強そうだが、こちらも負けられない。
しんみょうまる人形を宝石に戻し、準備する。
「さぁ、あんたも次の人形を出しなさいっ!舞島!」
「えぇ!僕の最初の人形です! ユキ!君に決めた!」
熱くなって思わずアニ〇ケみたいなノリでユキ人形を宝石から出す。
「…次の試合、ユキ人形 対 れいむ様人形! これが最後の戦いとなりますっ!」
光は審判として今の状況を二人に再確認する。
自分の役割を遂行するという意志が強い。頼もしい限りだ。
光としては、憧れの霊夢の方を応援したいであろうが、この勝負には鏡介だけではなく光の今後の命運も掛かっている。
どちらにも勝って欲しいし、負けて欲しくないという複雑な心境であることは想像に難かった。
それにも関わらず…いや、だからこそ、こうして光は公平に振舞っているのかもしれない。本人のみぞが知ることではあるが。
「では……」
合図と共に、場に緊張が走る。光は手を挙げながら二人の様子を確認。
霊夢は先程の敗戦で顔つきが変わっている。次は絶対に油断しないという意志を感じた。
人形の方もお祓い棒を振り回しながらいつでも来いと言わんばかりだ。
鏡介はユキ人形と見つめ合った後、軽く頷く。
互いに信頼し合っている様子が見て取れた。そして真っすぐ対戦相手を見据る。
光は二人とも準備は出来ていると判断し、
「 始めぇっ!! 」
挙げている手を勢いよく降ろし、開始の合図を告げる。
「先手必勝! れいむ! 神降ろし!」
指示を受けたれいむ人形はお祓い棒を上にかざす。すると天から光が降り注ぎ、れいむ人形は光り輝く。
「回避を上昇させてもらったわ。これで攻撃を受ける確率を減らす!」
「なっ…!」
「(…今の技を使って回避を狙って上げるなんて。流石、霊夢様の十八番「巫女の勘」ね…)」
博麗の巫女、博麗 霊夢の強さ。
純粋なバトルセンスも勿論あるが、中でも恐ろしいのがこの勘の鋭さである。
彼女は開口一番で運に左右される技を迷わず使い、見事狙ったステータスを引き当てた。常人ではとても真似出来る芸当ではない。
一気に状況は劣勢になる。
「…こちらだって負けませんよ! ユキ! 火遊び!」
ユキ人形の放った炎はれいむ人形の方へと飛んでいく。さて、どう来る…!?
「 森羅結界! 」
指示を受けたれいむ人形は自分の周りを結界で覆う。そして当たると、炎が一瞬で打ち消されてしまった。
防御技も完備しているらしい。
「…そちらも随分と慎重ですね?回避率を上げたのに」
「あれはあくまで保険よ。いざという時のね」
過信はしない、ということか。
しかし、これでは正面から攻撃しても当てられない。
何か対策をしなければ。…あの防御技、仮にあの技のオマージュだったとしたら…。そう思い、ユキ人形に指示を出す。
「ユキ! もう一度 火遊び だ!」
ユキ人形は手から炎を放つ。予想が当たっていれば、この後の霊夢の行動であの技の性質を判断出来る。
「…れいむ! 陰の気力! 弾幕を打ち落としなさい!」
指示を受けたれいむ人形は赤いお札の弾幕を放った。
見事な命中率で、一発一発が炎に当たって爆発。その衝撃で砂煙が舞い起こる。
「(やっぱり今度は使わなかった!連続で使えないのは確定!…そしてこの視界の悪さ、使える!)」
作戦を思いついた鏡介はユキ人形に内密で指示を出す。
ちょっとずるいかもだけど開幕あんなことされたお返し、ということで。指示を受けたユキ人形は頷くと、れいむ人形の視界に入らないよう移動する。
しばらくして舞っていた砂煙は収まり、視界は元通りになっていく。
「…!人形がいないわね。どこに…」
霊夢はユキ人形を見失い、辺りを見回す。人形もキョロキョロと見回して探すがどこにもいない。
「…今だ! ユキ! 火遊び!」
ユキ人形は手から炎を出し、それを放つ。
「ッ!?上か!」
ユキ人形が上空から真っ逆さまに落ちながらこちらに急接近していることに気付く霊夢。
「森羅結界!」
れいむ人形は結界を張り、炎を打ち消す。
しかし、同時に接近していたユキ人形はれいむ人形が結界を発動し無防備になった瞬間を逃さずガッチリとしがみ付いた。
「何!?」
「よし、いいぞ!」
作戦は成功。何とか捕らえることに成功した。
これならば回避が上がっていようと技を当てることが出来る。
「れいむ!引き剝がしなさい!」
れいむ人形は前が見えない状態の中、お祓い棒で叩いてユキ人形を離そうとする。
攻撃を食らっているユキ人形は必死に耐えながら次の指示を待っていた。
「これなら避けれないよ!ユキ! テルミット!」
指示を受けたユキ人形は目を瞑りながられいむ人形の体に手を当てる。
すると手の先からバチバチと激しく音を立て閃光を放ち、火花が散る。
「ーーーーッ!!!??」
とてつもない痛みが走ったれいむ人形は、暴れ回る。
攻撃に集中していたユキ人形はその勢いに負けて吹き飛ばされてしまった。
思っていたよりもおっかない技だった新技「テルミット」。あれって溶接…だったよな?
火傷ってレベルではない。下手すれば命落とすぞ。
何はともあれ、これでれいむ人形に状態異常をかけることが出来た。
これは大きなアドバンテージ。思わず小さくガッツポーズをする。
「…やるわね。まさか直接的に当ててくるとは思わなかった。だけど、これも想定内!」
「え!?」
状態異常にされるのを予期していた?
まさか、あの人形は状態異常になるとステータスが上がるタイプか?だとしたらやってしまったぞ。
そう思っていると、れいむ人形は何やら懐から札を取り出しかざす。
するとかざした札は消滅し、れいむ人形の負った火傷跡が癒されていく。
「「治癒の符」を持たせて正解だったわ。そして、これがこいつのアビリティ!」
『アビリティ:「倹約家(けんやくか)」 発動。』
「わっ!?」
スカウターが突然情報を流す。ビックリした。相手が発動した時も出てくるのか。
れいむ人形の方を見てみると、先程使った治癒の符というアイテムがれいむ人形の手元に戻ってきている。
どうやら、人形には「アビリティ」という個別の特殊能力があるみたいだ。ポケ〇ンで例えるならば…「特性」か?
そうだ。今までどうしてこれを忘れていたのだろうか。
今まで発動することがなかったし、しょうがない部分もあるだろうが。
これは結構重要な要素だし、それを知っているかいないかは勝敗を分けるといっても過言ではない。
スカウターの機能の一つとして魔理沙に追加をしてもらいたい。結構マジで。
その為にも、この勝負に勝たなきゃ。
パソコンが逝ってしまい、投稿が遅れました。申し訳ございません。
次回以降は通常のペースになると思います!