人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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ーー追記ーー
形式を意識して文章を一部変えたりしてみました。
多分、今出している全話(序章~17章)そうします。ご了承ください。


第一章

「到着っと」

 

ゆっくり歩き、鳥居へとたどり着いた。

 

「ここが博麗神社…」

 

大森曰く、聖地とのことであったが…。

思っていたよりも古ぼけた神社で、人の手が長い間加えられていないのか手水舎の水は枯れ、絵馬掛所に絵馬を誰も掛けていない。

人もまばらで、観光する場所にしては寂しい。

 

後、眼鏡をかけた女子高生がベンチで横になって寝ている。

いくらあんまり人が来ないからって無防備すぎやしないか?

 

…大森が一番すごい場所だと語っていたから多少は期待していたのだが…

 

「何かイメージと違うな…」

 

あいつの言うことを信じた自分が馬鹿だった。これじゃあ暇なんてとても潰せはしない。

もう二度とあいつの観光巡りは付き合わない。そう胸に誓い、本殿に近づく。

 

「…まぁ折角来たんだし、参拝くらいはやっていこう。簡単に」

 

あまり作法を覚えてないが記念ということで、ね。

 

「あー…鳥居くぐるときも作法があるんだった。まぁいいや」

 

水は枯れている為、手水舎の作法はカット。

 

なのでとりあえず参拝。まずは一揖。そして鈴を鳴らす。力強く。

 

次は賽銭。賽銭箱の中身は空っぽだ。

ちょうど五十円があるので五十円を静かに入れる。

 

小銭を賽銭に入れると、チャリンという心地いい金属のぶつかる音がするものだが、空なので当然そんな音はしない。下に落ちる虚しい音だけが鳴る。

 

「えーっと、確か二礼二拍手一礼…だっけ?」

 

最後にうろ覚えの作法をぎこちない感じにこなす。

 

「………ふぅ。まぁ、こんなものかな? やることやったし、大森を探すか」

 

境内を歩きながら周りを見渡す。しかし大森の姿は見当たらない。

 

「…どこ行ったんだよもう」

 

そんなに広い場所ではないのだから近くにいる筈だ。

 

 

「がやがや…」

 

 

向かって左側から誰かの話し声が聞こえてきた。声がする方へ行ってみる。

 

「それわかりますぅーーー!!」

 

「ホント最高だよねぇっ!!」

 

するとそこには大森と、見知らぬ眼鏡をかけた小太りの中年男性が何やら楽しそうにしゃべっている姿が見えた。

 

「ここにいたのか」

 

「お、舞島くん遅いぞ~!」

 

「そっちが勝手に先行ったんでしょ」

 

何やらウザったいテンションで話す大森。

機嫌がよろしいのだろう。

 

「今俺はこの同士の方と東方projectについて語り合っている所さ!この人すっごい詳しくてさぁっ!!もう止まらないんだよ!!」

 

「そ、そう」

 

同じ趣味を共有出来て嬉しいのだろうか、大森は早口になっていた。

すると中年の男性もこちらに話しかけてくる。

 

「君も東方projectを知ってるのかい?」

 

「え?いや僕はあんまり…この神社に来たのも成り行きというか、こいつに付き合わされてる感じなんです」

 

まぁ、こんなところにわざわざ来るなんてその手のオタクぐらいなものだろう。

誤解をされるのも無理はない。

 

「そうなんだね!じゃあこれを機に色々知ってほしいな。

 ここはね、東方projectシリーズの主人公、博麗 霊夢(はくれい れいむ)の住む神社のモデルとなった場所なんだよ」

 

「は、はぁ…そうなんですか」

 

 

中年の男性はつらつらと東方の知識や魅力を聞いてもいないのに語っている。

うーん…あんまり興味ないんだけどなぁ。聞いている振りをしておこう。

 

 

 

 

数十分後…

 

「ーーーというわけであって東方は素晴らしいんだよ!」

 

「ソウナンデスネ」

 

やっと終わった。大森といい、この手の相手は疲れる。

 

「よし!じゃあ東方の新入りさんの君に恒例のアレをしちゃおうかな!」

 

「え」

 

「お!アレやっちゃいます?」

 

何だ。何かが始まってしまう。大森もアレとか言わないで説明してくれ。

 

「さっきも言った通り、東方には数多くのキャラがいる。そこで君の中で気に入ったキャラをこの図鑑から選んでくれ!」

 

そういって中年の男性は、カバンから厚めの東方キャラ図鑑を取り出しこちらに渡す。

うわ、めんどくさい事になった。オタク怖い。

 

「さて、新入りの舞島くんはどういう子が好みなのかな~?」

 

大森がウザいテンションで問いかける。お前いい加減にしろ。

 

「え、えっと…」

 

「(新参は大抵、紅魔勢、優曇華(うどんげ)あたりを選ぶが…舞島はこういうのに疎い。何を選ぶか全く予想が出来ないから興味深いぜっ!)」

 

大森は今まで今まで見て来た新参の傾向からは違うのを選ぶであろう鏡介に、微かな期待を寄せていた。

 

「うーん…」

 

次々にページをめくっていく。あんまりキャラの詳細を見ずに。

 

「(…ホントにキャラが多いな。百は軽く超えている。キリがないぞ…)」

 

「「ワクワク」」

 

期待のまなざしでこちらを見るオタク二人。やめて欲しい。

 

「(…もう適当でいいや。次にめくった時のキャラにしよう。)」

 

そう心の中に決め、ページをめくる。

 

「えっと…このキャラです」

 

「お!決まったのかい?どれどれ…」

 

中年の男性はページの内容を確認する。後から大森も後ろから食い入るように確認。

 

「……ほほう」

 

「……まじか」

 

二人は内容を見るや否や、神妙な顔つきになる。

どうしたというのだろう。

 

「…僕は今までいろんな東方の新入りさんを見てきたけど、数多くのキャラの中でこのキャラを選んだのは君が初めてだよ。」

 

「まさかのですねこれは…」

 

二人は自分が選んだキャラに驚いている様だった。何かまずかったかな?

 

「えっと…そうなんです?」

 

「だがなんだろう。不思議と君にあっているというか…良い感じがするよ。うまく言えないけど。こんなこともあるんだね…。

 何だかおじさん感動しちゃった…うう…(´;ω;`)」

 

「えっちょっ!?」

 

中年の男性はハンカチを取り出し涙ぐんでしまった。

まさか泣き出すとは思わず、ビックリしてしまう。

 

「あーあ、なーかしたーなーかしたー」

 

大森がからかってくる。

 

「あ、あの何かすみません…」

 

「いや、いいんだ。久々にいいものを見させてもらったよ。むしろ礼を言わせてくれ。ありがとうっ!

 君のような子に出会えて、僕は新たな可能性を見いだせたよ!」

 

「まぁそれならいいですけど……」

 

 

…オタクってよくわかんないなぁ。

 

 

 

 

それからも二人の東方オタクは、推しや魅力を語り合っている。

もうすっかり同士(こころのとも)となっていた。

 

一方、話についていけない鏡介は神社の裏山に来ていた。

 

「ふぅ……」

 

散々オタク達に付き合わされて疲れたので、休憩しようとここに来てみたが…

 

「…何もないなぁ」

 

座れる場所も女子高生が横になってて座れないし、一か八かでこの裏山で座れる場所を探す事にしたが当てが外れた。

しょうがないので、その辺の木に寄っかかる。

 

しばらくボーっとしていると、

 

「……ん?」

 

視界の先に何やら小さな生き物がいる。

 

そしてその姿を見て驚愕する。

それは鏡介にとってつい最近見たものであった。

 

「(あれは…?確か夢に出てきた…そう、やくもゆかりって人だ…!…疲れてるのかな…)」

 

見たものが信じられず目をこすってもう一度確認する。

ついでに頬もつねってみる見る。痛い。これは夢じゃない。

 

「(どうなってるんだ?あれはバスで寝ていた時の夢だったはず…。それになんか小さい…)」

 

鏡介が目の前の光景に疑問を抱いていると、

 

「!」

 

こちらに気づいたちびゆかりは草むらの奥へ逃げてしまった。

 

「あ!ちょっと!」

 

あの先は山道になっている。どうする?追いかけるか?

でももしかしたら迷子の可能性もあるし…

 

様々な思考が巡る。そして、

 

「…ッ!」 

 

ほっておけないので追いかける事にした。

 

「おーい待って!その先は危険だよっ!」

 

ちびゆかりに呼びかける。

しかし返事はなくただ追いかけてくるのをひたすら逃げ回っている。

 

「はぁ…はぁ……ま、待ってってばっ!」

 

あちらの方が歩幅が小さいはずなのに一向に追いつける気配がない。

どうなっているのだろうか。

 

 

追いかけること数分。

ちびゆかりは湖にピタリと佇んでいる。

やっと止まってくれた。

 

「はぁ…はぁ…やっと追いついた。君、どこから来たの?親御さんとはぐれちゃったの?」

 

子供を怖がらせないような優しい物言いでゆっくりと近づいていく。

するとちびゆかりはこちらを振り向き、

 

「♪」

 

ニコリと笑った。良かった安心してくれたようだ。

ほっと息をつき、改めて事情を聞こうとしたその瞬間、

 

 

鏡介 「ーーッ!?」

 

 

突然、眩い白い閃光が鏡介を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

     ようこそ。コチラ側の世界へ………

 

 

       幻想郷はすべてを受け入れる………

 

 

           それはそれは残酷なことですわ………

 

 

 




大森君の出番は、ここで終了です。


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