人間と人形の幻想演舞 作:天衣
魔法の森の中を進んでいく鏡介。
彼は人の身でありながら森から溢れている瘴気の中を物ともしない。あくまで仮定だが、あの時受けた毒がまさかこんなところで役に立つとは。
しかし、この森を歩く中で何匹もの妖精に絡まれた。主に人形バトル関係で。自分が思っていたより多くいた。
今はこうして道案内をして貰うまでに仲良くなったが、もう人形共々限界だ。
「ほら、あそこあそこ」
「アリスが住んでるとこ~」
案内して貰っている妖精達の指差す方向には立派な家が聳え立っていた。
この森の雰囲気に合った洋風の建物で、いかにも魔女が住んでいそうで幻想的だ。ここに「アリス」という人物が住んでいるらしい。
話によると「アリス」という人物は魔理沙と同じ魔法使いで、人形について詳しい人物とのこと。
今回の異変について何か情報を得られる可能性が高いということで、こうして赴いて来た。
「ありがとう、すごく助かっちゃった」
道案内をしてもらった妖精達にお礼を言う。
「うん、またあそぼーねー!」
「今度人形バトルのコツおしえてよねっ!」
「次はまけないぞー!」
「にんぎょーかいほーせんせんに興味あったら入ってねー!」
妖精達の激励の言葉に笑顔で手を振って答える。
今度来ることがあればちゃんと付き合ってあげよう。約束したし。…約一名妙なこと言ってた気がするが気のせいか?
そして妖精達はバラバラにどこかへ行ってしまった。
「…よし、じゃあ早速行ってみよう」
見送り終わった鏡介は洋風の屋敷へと足を運ぶ。
近くで見ると、このような森の中の建物であるにも関わらず壁に植物など一切生えたりしておらず綺麗な状態だった。
手入れが行き届いて、誰かが住んでいるということがそれだけで分かる。それもかなりの綺麗好きだろう。会うのに少し緊張してきた。
「コホン……御免下さい」
恐る恐る、木製のドアにノックを二回鳴らした。
インターホンは見たところなさそうなのでノック方式で住んでいる人を呼んでみたが…来てくれるかな?
というか、そもそもいなかったらどうしよう。その辺は考えてなかった。
「はいはい、今出るわ」
ドアの向こうから女の人の声が僅かに聞こえ、足音が徐々に近づいてきた。
音を聞いている限り、木製のフローリングの下を靴で歩いているように聞こえる。
そう言えば、こちらの外国では家の中で靴は脱がないらしい。まさか本当だったとは。
どうやら建物だけではなく、住んでいる人の風習も洋風なようだ。
自分のところでは家の中は靴を脱ぐ風習である為、これにはすごく違和感がある。
霊夢の家では靴は脱いだし、住んでる人によってこういった違いがあるのは少々ややこしい。
足音が止まると、目の前の木製ドアが開く。そしてドアの向こうから金髪で金色の瞳の女の人が姿を現した。
ある程度予想した通り、顔立ちや服装は洋風だった。しかし、まるで人形のようにその綺麗で現実離れした容姿に思わず時が止まったかのようにしばらく見とれてしまう。
「あら、人間が来るなんて珍しいわ。…迷ってしまったのかしら?」
「え…?あえーっと…」
意識が疎かになっていた為、話しかけられてハッとなる。見とれていたなんてとても言えない。
「えっと、は、初めまして。僕は舞島 鏡介と言って、今起こっている人形異変の調査をしている者で…迷って来た訳ではないです…」
とりあえず軽く自己紹介をする。
顔が熱い。鼓動も早くなっている。綺麗な女性を前に緊張してしまっているようだ。
「これはご丁寧にどうも。私はアリス・マーガトロイドよ。それで、私に何か御用かしら?」
妖精達の情報通り、ここに住んでいる人は「アリス」で合っていた。ひとまずは安心。
「今日はその…アリスさんに用があってですね、はい。…霖之助さんに配達を頼まれて」
「霖之助さんから?…そうだわ、例の物を修理に出していたのよ!わざわざ届けてくれたのね、ありがとう」
「い、いえ…それほどでもっ…」
用件を聞いたアリスは嬉しそうに笑みを浮かべる。
鏡介はそれを直視するのは色々ヤバいと判断し目を逸らしながら返答する。
「…こちらになります」
鞄から渡されたものを取り出し、アリスに差し出す。
「…うん、間違いないわ。ご苦労様。ここまで来るの大変だったでしょう?上がっていきなさいな。お茶を出すわ」
「えっ!?いや、うーん…」
アリスからお茶に誘われ動揺する。
この人から聞きたいことがあるからありがたい申し出ではあるのだが、女性の家に上がるのは人生経験上初めてだ。緊張するなというのが無理な話である。
霊夢の家にも上がってはいるが、あの時は状況が状況だったしノーカンだ。
「えっと、少しだけなら…。待たせている人いますので…」
「分かったわ。じゃあ、どうぞ上がっていって」
アリスに案内され、鏡介はアリスの家にお邪魔する。
一方その頃、魔法の森にて
「ねぇあの人間なにやってるんだろ?」
「さぁ?キノコでもさがしてるんじゃない?色黒の魔法使いみたいに」
妖精達は草むらで何かをしている人物を見てヒソヒソと話している。
イタズラ好きである彼女らは隙あらばちょっかいを出すものだが、その人物が放っている独特のオーラにビビッて手を出せないでいる。
「……」
妖精が群がっていることも知らず、光は草むらに隠れながら集中して何かを待っている。
その目先には数珠が置いてあった。
「…かからないわね。情報によるとマジックアイテムを収集してるらしいけど…もっと高価なものじゃないとダメかしら?」
光は静か餅の妖怪から聞いた情報を下に「アリス人形」探している最中だった。
鏡介が戻るまでに済ませないといけない為、効率的にやる必要がある。
「しょうがない。舞島さんには黙ってたけど、これを使っちゃおう」
埒が明かないので光は仕掛けるアイテムを変更することにした。
手に入れたアイテムは鏡介にすべて渡したのだが、実はこっそり自分で持っていた
ものがある。不思議な感じがして綺麗であった為、独占しようと思っていたのだ。
「この結晶をここに配置してっ…と」
光は数珠の代わりに綺麗な結晶をセッティングする。
恐らくマジックアイテムだろうし、絶対希少なものだ。これで来てくれるといいのだが。
「…!何か来た…!」
早速反応あり。さて、目的の人形であろうか?
「…♪」
近づいてきたのは黒髪の妖精の人形だった。外で見たのと一緒だ。違う。
「げんちゃん、陰の気力。追い払うだけでいいよ」
小声で一緒に張っているげんげつ人形に指示を出す。
げんげつ人形は赤い弾幕を人形の足元に向かって放った。突然の攻撃で人形はビックリして逃げ出す。
「ナイスよげんちゃん!…どうしたの後ろなんか向いて?」
げんげつ人形は視線を感じる方向に睨みを効かせる。
「!?何かこっち見てない!?」
「に、にげろー!!」
「ひぃーおたすけー!!」
こっそり見ていたことに気付かれた妖精達は一斉に逃げ出す。
「…妖精に見られてたのね。何されるか分からなかったわ。ありがと、げんちゃん!」
げんげつ人形はやれやれといった表情になる。
もっとしっかりしろってことかな。…うん、ごもっとも。
今度は周りに注意しながら光は引き続き見張りを始める。
「…!来た!」
人形が近づいてくる。今度は…金髪の人形のようだ。
「…赤いカチューシャに青い服、そして周りに小さな人形連れている…ビンゴ!ありす人形だわ!!」
聞いた情報と一致した人形の出現にテンションが上がる。
ありす人形は結晶のアイテムを珍しそうに眺めている。
そしてそれを持ち帰ろうと小さな人形を操り始めて隙だらけになったところを、
「今よ!げんちゃん 幻覚弾!」
すかさず光は人形に指示を出し攻撃する。
紫の弾幕がありす人形を襲うが、周りにいる小さな人形達が身代わりとなって本体に当たらなかった。
そして攻撃されたありす人形は結晶のアイテムを持ち出し逃げ出す。
「あ!逃がさないわよっ!後、それは返しなさーい!!」
逃げ出したありす人形を光はダッシュで追いかけていった。