人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第二十九章

「…成程ね。人形異変については私も気になっていたのよ。」

 

アリス邸にお邪魔している鏡介は、お茶を頂きながら色々話をしながら情報収集をしていた。

ついでに人形達もお菓子を頂いている。それで聞いた話によると、彼女はこの異変には関係ない。

まぁ、そう都合よく異変の主犯が見つかったら苦労はしないか。

 

「でも、私も今のところ人形についてあんまり理解出来てないわ。分かってるのは、人形は私じゃない誰かの「魔力」で動いているってことくらいね」

 

「「魔力」…ですか。成程」

 

流石、魔法使いだ。「魔力」の流れというものが分かるのだろう。僅かであるが、新しい情報が入手出来た。

 

「この子達から直接聞き出せれば早いのだけど…しゃべれる生き物じゃないみたいだからね」

 

「ハハッ、確かにそうですね」

 

鏡介は人形達に目を向けた。

ユキ人形は洋菓子を頬張っていて、しんみょうまる人形は和菓子をお行儀よく食べている。実に可愛らしい。

 

「…フフッ、舞島さん嬉しそうね。人形が気に入っているのかしら?」

 

「え!?その…アハハ…そうですね。この子達にはいつも元気を貰ってますよ」

 

人形達を見て自然に笑顔になっている様子を見られてしまった。恥ずかしい。

 

「アリスさんも人形を作っているんですよね?さっきからお仕事をしているこの子達がそうなんですか?」

 

周りには忙しそうにリビングで動き続けている金髪のおしゃれな人形達がいた。

異変の人形とは違い、アリスが糸で操っていることから別の存在であることが分かる。

これを全部一人でやってのけているアリスさんは本当にすごい。まるで大掛かりな人形劇を間近で見ているかのようだ。

 

「そうね。「魔力」を使って一斉に動かしているのよ。おかげで人手には困らないわ。魔理沙にはこういうの無理でしょうね」

 

話の中でさりげなく魔理沙を貶す。最近物を盗まれたらしいのでご立腹なのだろう。

 

「魔法使いって結構この世界にはいるんですか?」

 

「私の知っている限りだと、そこまでいないわ。私と魔理沙、後はパチュリーくらいね」

 

意外と少ないらしい。ポピュラーな種族だと思っていたが、お陰で人物は絞ることが出来る。

 

「…そうね。一応パチュリーもこの件に関係がないとは言い切れないから、尋ねてみる価値はあると思うわ。地図は持ってるかしら?」

 

「あ、はい。持ってます」

 

鞄から地図を出して差し出すと、アリスは湖があるところを指差した。

 

「ここの「霧の湖(きりのみずうみ)」の畔に、彼女がいる「紅魔館(こうまかん)」はあるわ。赤くて大きな屋敷よ。ルートは…」

 

アリスは紅魔館までのルートを分かりやすく説明してくれた。すごく助かる。

 

「…分かりました。じゃあ今度はそこに向かってみます。ご協力ありがとうございました」

 

「どういたしまして。あそこは悪魔が住む館よ。せいぜい気を付けなさい」

 

お礼を言っていると、地図が気になったのかユキ人形が地図の上に乗り凝視し初めた。

 

「コラコラ、お行儀が悪いぞユキ……?」

 

ユキ人形を持ち上げてあることに気が付く。

 

「そう言えば、アリスさんってユキと特徴が似てますね…。もしかして元の人物と知り合いだったり?」

 

金髪なのもそうだが、何よりもあの金色の瞳がすごく似ている。

思わず姉妹と錯覚するほどに。

 

「いえ、残念ながら知らないわ。…でも、そうね。確かに似てはいるかも」

 

どうやら知り合いではないらしい。我ながら変な質問をしてしまった。

何となくそう思ってしまったが、何故だろう?不思議だ。

 

「まぁ、こういった特徴は幻想郷では珍しくないわ。例えば八雲の式、毘沙門天の弟子の妖怪、あと魔理沙とかね」

 

アリスは例として他の金髪で金色の瞳の人物を挙げる。

 

「そうでしたか。…何かすみません変なこと聞いちゃって」

 

「気にしないで」

 

紅茶を飲んでアリスは口元を隠す。何かを悟られまいとするように。

そして飲み終わった後、小さくため息を吐いた。

 

「あ、そろそろ行かなくちゃ。お茶、ご馳走様でした。人形達まで回復をさせてもらって本当に助かります」

 

外に光を待たせていることをふと思い出した鏡介はお暇する準備を進める。

 

「そう。もうちょっとお話を聞きたかったけど、仕方ないわね。道中気を付けて」

 

「はい、ありがとうございました」

 

鏡介は見送られ、アリス邸を後にした。

 

「あの子、結構勘が鋭いわね。…人間だった頃を思い出しちゃった」

 

アリスは鏡介を見送りながらそう呟いた。

 

 

 

その後鏡介はしばらく進んでいき、森の出口に向かっていると、

 

「!何か来る…」

 

何かが近づいてくる気配がした。また妖精だろうか?それとも人形?

これでもう何度目だろう。そろそろ勘弁してほしい。

 

そしてその何かが姿を現した。それは、

 

「…え?確か、光ちゃんの人形になった…げんげつ?どうしてこんなところに?」

 

突然現れたげんげつ人形に戸惑う。

恐らく別個体ではない。こんな怖い人形一度見たら忘れないから。

 

「…うわっ!?」

 

すると突然げんげつ人形はものすごいスピードで近づき鏡介の服の襟元を掴む。

そして、ものすごいスピードで引っ張られていった。

 

「わーーーっ!!?ちょっと何なのーーー!?」

 

げんげつ人形の引っ張る力に逆らえず、鏡介はそのまま森の中を駆け抜けていく。

ジェットコースターに乗ってるかのようなスピードで障害物をすれすれで避けながら。

 

 

数分後、げんげつ人形はやっと止まってくれた。一体何だというのか。

げんげつ人形が見つめている先を見てみると、妖精達が何やら集まってそこにあるものを見物している。

 

「…!?光ちゃん!?外で待ってたんじゃなかったの!?」

 

そこには瘴気に当てられ倒れている光の姿があった。

 

「ごめん!ちょっと通して!…光ちゃんしっかり!」

 

妖精達をかき分けて鏡介は光の下へ駆け寄る。

 

「うぅ……やった……ゲットした…わ」

 

良かった。まだ意識はある。今から急いで外に向かわなければ…!

 

「お騒がせしましたぁーーーー!!」

 

鏡介は光をおんぶして、森の出口に走っていくのであった。

 

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