人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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※注意


この外伝は、私が書いている小説「人間と人形の幻想演舞」の人形視点ストーリーです。
その為、人形が普通にしゃべります。そのことを注意した上でご覧下さい。

今回は、げんげつ人形が光に出会ってゲットをされるまでと、その後の視点になります。



外伝3

「…どこにいったのかしらあの子は」

 

げんげつ人形は一の道にてもう一人の人形を探していた。

名前はむげつ。ちょっと変わった子だが、たった一人の家族で私の可愛い妹だ。

突然、「出ていく。探すな」と書置きを置いて私の前から消えてしまった。

 

あんなに可愛がっていたのに何が気に入らなかったというのか?

ちょっとコスプレさせて私好みの玩具になって貰っただけなのに出ていくなんておかしい。

 

私は今、相当機嫌が悪い。誰でもいいからなぶり殺してやりたい気分だ。

手頃な相手はいないだろうか。…ん?

 

 

「春ですよー!」

 

 

…妖精か。中々良い金髪ロングヘアーね。

でも残念。今は愛でる気分じゃない。私に出会ってしまったことを後悔して死ぬといい。

 

「…!?な、何ですかー!?」

 

目にも止まらないスピードでげんげつ人形は妖精の人形の懐に潜り込む。そして、

 

「スーハースーハー…hshshs…イイ…」

 

「ひ、ひぃ…!?」

 

その妖精の髪を変態的に愛で始める。

気持ちの悪い感覚に襲われた妖精は身震いし、恐怖を植え付けられる。

 

「…はっ!?いけない、つい発作が」

 

我に戻るげんげつ人形。

ストレス解消で襲ったのに綺麗な金髪を見て反応してしまった。これではダメだ。別の奴にしよう。

 

「あなたじゃ私を満たせないわ。消えなさい」

 

「(え、えぇ…)」

 

げんげつ人形から解放された妖精の人形は何で襲われたのか疑問に思いつつ逃げ出げ出す。

 

「…ふぅ、殺すのはもういいか」

 

エナジーを吸引したお陰で機嫌が良くなったげんげつ人形は改めて妹を探し始める。

しかし、どれだけ探しても見つかることはなかった。

 

「…いない。匂いは残っているけど、もうここにはいないみたいね」

 

誰よりも妹を理解しているのに見つけることが出来ないなんて、姉としてこんなに屈辱的なことはない。段々とイライラしてきた。

この頃反抗期になって言うこと聞かなくなった時はまだ可愛い抵抗だと思っていたけど、よほどお仕置されたいらしい。会う時が楽しみだ。

 

 

…何やら向こうから誰かが来ている。人間が二人か。

この私に挑もうというのかしら?身の程知らずね。まぁ大方人形遣いでしょうけど。軽くひねってあげましょう。

 

 

どうやら近づいてきた人間はしばらく物陰で様子を見ている。

気配を消すのが下手でどこにいるかバレバレであった。だが、ここはあえて隙を見せて相手を引き寄せることにしよう。

 

 

「ユキ! 摩擦熱!」

 

 

攻撃が来た。軽々と避ける。まぁ分かっていたから容易だった。

さて、私に勝負を挑んだ愚か者の顔を見てあげましょう。…人間の女の子ね。

攻撃を避けられて何故か喜んでいるけど、タイプではないわ。

 

「やるわね!でも、負けないから!」

 

「…!」

 

げんげつ人形は相手が使っている人形に思わず見とれる。金髪の活発な少女だった。

 

「か…可愛い…」

 

「え?えっと、どうも…」

 

突然の言葉にユキ人形は反応に困ってしまう。

 

「と、とにかく勝負よ!」

 

「フフッ…。いいわ、遊んであげる」

 

笑みを浮かべ答えるげんげつ人形。その表情からは余裕が見られた。

もしくは別の企みがある可能性もなくはない。

 

「行くよ! それっ!」

 

ユキ人形は炎をげんげつ人形に放つ。

 

「(……何だ、あんまり大したことはないわね)」

 

攻撃を見たげんげつ人形はその動き、技の精度を見極める。そしてユキ人形の実力はそれほどないと判断した。

げんげつ人形は赤い弾幕を片手で放つ。その弾幕は炎を打ち消し、ユキ人形に向かってすごいスピードで飛んでいく。

 

「うわっ!?」

 

間一髪弾幕を避けるユキ人形。

避けた弾幕は木に当たるとそこから亀裂が走り、倒れてしまう。

 

「!?」

 

「言っておくけど、今のは一番弱い弾幕よ」

 

実力差を見せつけられたユキ人形に緊張が走った。足も若干震え始める。

 

「そ、それが何!?負けないわよ!」

 

ユキ人形はそれでも強気に振舞う。怖くないと自分に言い聞かせるように。

 

「じゃあ、今度はこっちの番ね」

 

げんげつ人形は両手を広げ、紫の弾幕を放つ。

それは最初は少数の弾幕であったが、段々と数が増えていきながら襲い掛かる。

 

女の子の指示を受け、急いで弾幕を打ち消しにいくユキ人形。

しかし弾幕と弾幕がぶつかる瞬間、互いにすり抜けてしまう。

 

「…!な、何で!?」

 

「幻覚よ、可愛い子ちゃん♪」

 

種明かしをしながら笑みを浮かべるげんげつ人形。弾幕は無慈悲にユキ人形を襲う。

 

「きゃああぁ…っ!!」

 

ユキ人形は弾幕に被弾する。

当たったのは数発だけだったのにダメージが大きかった。ユキ人形は苦しそうにしている。

 

「(あぁ、お持ち帰りしたい…。緊張して足が震えてたのに強がっちゃって。可愛い♪)」

 

あまりにも実力差がありすぎて別のことを考え始めるげんげつ人形。

先程のユキ人形の仕草に思わず胸がキュンキュンしてしまっていた。

 

「…あ」

 

それ故に透けてきた相手の弾幕を避けるのを忘れてしまう。

少しだけ弾幕に被弾してしまった。

 

「もう、油断しちゃったわ。あんまり痛くないけどね」

 

相打ちという形にはなったものの、ダメージ差は歴然。

これではまるで勝負にならない。もっと私を楽しませてはくれないだろうか。

 

そう思っていると、隣にいた人間の男が人形を出して加勢をしてくる。

 

 

…しかし、それでも戦況は大して変わらない。

多少ダメージは蓄積したものの、それ以上に相手は消耗してしまっているのだから。

 

「…はぁ。大したことないわね。正直ガッカリよ」

 

人形遣いだか何だか知らないが、そんな実力でよく私に挑んできたものだ。

私は弱い奴が嫌いだから、二度と絡んでこないで欲しい。

 

「…そうだ。直接人形遣いを殺ってあなたを直接手に入れてしまいましょう」

 

「!?な、何を言って…?」

 

いいことを思いついた。

どうやらお気に入りのこの子は封印の糸で制御されている様子だし、持ち主であるその人形使いを殺してしまえば晴れてこの子をお持ち帰り出来る。

 

我ながら天才的な発想だ。

 

げんげつ人形は不敵に微笑みながら、指先にエネルギーを込める。

 

「!や、やめっ…!」

 

ユキ人形はげんげつ人形が何をしようとしているかを理解して止めに入るが、

時すでに遅し。無慈悲にもレーザー攻撃は女の子を襲う。

 

 

しかし、男の子がいち早く反応して女の子を突き飛ばす。

そして代わりに男の子が被弾。かすり傷だが、とても痛そうにしている。

 

 

「ま、舞君っ!?舞君ーーーーっ!!」

 

「鏡様!?」

 

 

ユキ人形としんみょうまる人形は怪我を負ってしまった男の子に駆け寄った。

どうやら持ち主はこっちだったらしい。ラッキー♪ 向こうから当たりに行くなんて有難い話だ。

 

さて、次は外さない。とどめを刺す。

 

 

「……っ!?」

 

 

何か、強い力を感じた。一体どこから…?

…金髪のあの子から?さっきまで弱かったのにどうしたことか。

 

 

「貴様……よくも…」

 

 

 

「よくも、よくもよくもっ!!」

 

 

 

 

「舞君を傷付けたなっ!! うわああああァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

 

怒りの叫びと共に、ユキ人形は光り輝く。

 

そして全身に炎と金色のオーラを纏って立ち尽くし、真っすぐ相手を睨みつける。

その眼には涙があふれていた。

 

 

 

「(……やだ、素敵…)」

 

 

「本気、出しちゃうからっ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここはどこ?何故身動きが取れない?」

 

 

意識が朦朧としている。記憶もあやふやだ。

全身が熱い…何だ?どういう状況だ?

 

しっかりしろ、思い出すんだ…そう、人間の二人組が来て…金髪の私好みの子と戦っていて…それから……

 

 

「…!まさか、負けたの私は!?人間ごときに…ッ!」

 

 

屈辱だ。二人掛かりだったとはいえ、私はまんまと人間の道具にされてしまったみたいだ。

私達人形を捕獲し従わせる忌まわしい道具、「封印の糸」によって。

この私が誰かに屈しなければならないというの?冗談じゃない。誰が従うものか。

 

 

「出ておいで! げんげつ!」

 

 

外から声がした。…挨拶だって?そんなのお断りだ。

 

「ふん、誰が出てやるもんd…!?」

 

げんげつ人形の意思に関係なく、体が外に向かって吸い込まれていく。

必死に抵抗をするが、強制的に外に出されてしまう。

 

「…厄介ね…思ったより強力な封印だわ。どうにか抜け出せないかしら」

 

外に出されたげんげつ人形は思考を巡らせる。

私を捕まえた人間が何やら言っているがそんなことはどうでもいい。一刻も早くこの状況を解決しなければ。

 

「あの封印術…どうやら私達の動力である魔力が関連してそう、ぬうぇっ!?」

 

私を捕まえた女の子が突然ほっぺをつねってくる。突然のことだったので対応出来ず、変な声が出てしまった。

この人間…調子に乗って…!そんなに死にたいのかしら!?

 

その後も私を捕まえた奴らは様々な道具で私を弄んできた。

一体何の真似なのか分からないが馬鹿にされている気がしてならない。

クソッ…!これでは私が玩具ではないか。非常に不愉快だ。そういうのは妹の役割なのに。

 

「…!?あ、あれは…っ!」

 

一緒にいた男の子の傍に先程戦った人形が見えた。金髪で活発の可愛い子。

私の好みどストライク…!どうしても一つ言っておきたいことがある。その為に私は今から彼女に接触しに行く。

決してやましい気持ちはない。

 

「ちょ、ちょっと何!?あなたさっきの…?」

 

突然げんげつ人形に急接近され、ユキ人形は動揺する。

 

「…あなた、ユキっていうのね。可愛い名前…。あぁ、この金髪の触り心地といい香りといい最高…好き」

 

「ひっ!?な、何するのやめてっ!髪なんて触って何したいの!?」

 

ユキ人形はげんげつ人形の行動が全く理解出来ないでいた。

髪なんて他の人に触られたことがない。得体の知れない恐怖に襲われたユキ人形は動けなくなってしまう。

 

「…でも、その服がナンセンスね。私ならこの子に似合うファッションにしてあげられるのだけど…。そうね、じゃあまずは脱いでもらおうかしら」

 

「…え?」

 

げんげつ人形はそう呟きながらユキ人形の身包みを剝がし始める。

妹にもいつもやっていたので人前で服を脱がずことに一切の躊躇いもなかった。

 

「い、嫌ぁーーっ!!?変態変態変態っ!!!」

 

ユキ人形は泣き叫びながら必死に抵抗する。

服を脱がされては固まった体も反射的に動いたようだ。

 

「?あなた人形じゃない。別に見られるものなんて」

 

「そういう問題じゃないわよーーー!!」

 

今まで周りの人達はげんげつ人形を冷めた目で見ていたが、これはあまりにも破廉恥な

行動であった為止めに入って来た。持ち主である光は封印の糸を掲げ、元に戻そうとする。

 

「ぐっ!?お、のれぇ…!忌々しい…封印っ!邪魔を…するなぁ!」

 

出てきた時と同じ引力に逆らうげんげつ人形だが、その抵抗も虚しく戻されていった。

 

 

「うわぁーーん!舞君怖かったよぉーー!」

 

 

怖かったユキ人形は鏡介に思わず泣きつく。

 

いいところを邪魔され憤慨なげんげつ人形。怒りで暴れ回る。

 

「出せぇ!!ザッケンナコラー!!」

 

げんげつ人形はあちこちに飛び回り体当たりをする。

しかし当たってもまるで手応えがない。無駄な抵抗のようだ。暴れるのをやめて冷静になる。

 

次に魔力の流れを感知する為に集中し始める。…しかし駄目だ。

どうやら内側からあらゆる攻撃を遮断される作りのようで、これでは成す術がない。

 

「……ちっ」

 

どうやらこの封印から逃れることは出来ないみたいだ。

これを作った奴は相当人形を熟知しているみたいで、どうあがいても自力でこの封印を解くことは出来そうにない。

恐らく神の力でもない限り不可能だ。

 

本当に非常に気に入らないが、あの女の人間に従うしかない。

それもこれもユキちゃんにやられちゃったせいだ。…可愛いから許すけど。まさかあんなに強いとは思わなかった。

あの時の急激な強化は一体何なのか?彼女の中に感じたマジックアイテムの影響?それとも別の?

 

トリガーになったのはあの人間の男が怪我をした時だった。

 

…いずれにせよ、興味が沸く存在であることに変わりはない。これからも積極的にアプローチしよう。

 

 

そしてげんげつ人形は決心した。開き直ったともいう。「どうせ出られないのであれば、自分なりにこれから楽しみを見出そう」と。

 

話によると旅をするみたいだし?どうせならまだ見ぬ金髪娘達をこいつら人形遣いを利用して沢山見つけ出し愛でようではないか。

妹はまだ見つかっていないが、旅をしていればその内向こうから出てくるでしょう。「八の道」に戻ってたら少し面倒だけど。

 

しかし、言っておくが人間と慣れ合うつもりはない。

封印の糸で制御されている人形は人間と仲が良いみたいだが、私は違う。捕まったから仕方なく従っているのだ。

決して好きで一緒にいるわけではない。そこのところは勘違いするなよ…って一体誰に言ってるんだ私は。

 

「あ…この中外が見えるのね…!?うわ…何をしてるの?あの人間…」

 

宝石の中から外の景色が見てみると、一緒にいる男の子がユキ人形達の頭をナデナデしていた。人形を動物か何かだと勘違いしてない?

…まぁ、人間から見たら私達は小さくて可愛いペットなんでしょうね。あーやだやだ。

 

「…でも、ユキちゃんは幸せそう。あのお椀被った奴も。…訳分かんない」

 

理解に苦しむ。一体あれの何がいいのか。

私は金髪娘がいたらそれだけで幸せだし、他のことでああやって満たされるなんて到底

ありえないことだ。とても想像出来ない。というかお断りだ。

 

だからこの退屈な生活を少しでも満たす為にも、光とかいう人形遣いには精々色んな場所に行って貰うとしよう。

 

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