人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第三十二章

鏡介と光の二人は、五の道のあるところに来ていた。

 

「ここの先が「霧の湖(きりのみずうみ)」なんだけど…」

 

「これじゃ進めないわね」

 

アリスに教えてもらった道のりを頼りに進んでいたが、いきなり障害が発生した。

細く長い木が道を防いでいて先に行くことが出来ないのだ。

一見、木と木の間を抜けられそうではあるのだが…抜けようとすると謎の壁が邪魔して弾かれてしまう。「結界」というやつだろうか。

 

ポケ〇ンにも似たようなものがあって何で木の間を抜けられないのかと思ったものだが、成程。この木自身が壁を作っていたんだ。

 

「…よし、出てきてみんなっ!」

 

鏡介は手持ちの人形を全部出した。それぞれユキ、しんみょうまる、こがさ人形が宝石から飛び出す。

 

「え?何やってるの舞島さん」

 

光は鏡介の行動に対し疑問を浮かべる。

 

「この子達の技でこの木をどかせられないかと思ってね。今から試そうとしてる。」

 

「あぁ、そう言うことね。…でも人形の力でどうにか出来るものかしら?」

 

こういった障害物の撤去は、ポケ〇ンでは技を使わせて突破するのが定石だ。

とりあえず現段階の人形達でこの木をどうにか出来るか試してみよう。

 

「こがさ! あの木に向かって小夜嵐!」

 

指示を受けたこがさ人形は傘をクルクルと回して小さな竜巻を作り出し、

それを木に放つ。スカウターで確認したところ、これが一番植物に対して効きそうだった。

 

竜巻は木の方へ曲線状に向かって飛んでいき、やがてぶつかった。

しかし、数枚の木の葉が落ちただけで木はビクともしていない。

 

「…じゃあしんみょうまる! 木に向かって ザ・リッパー!」

 

指示を受けたしんみょうまる人形は輝針剣を光らせ、突撃する。

もしかしたらこれで一刀両断してしまうかもしれない。居合切りみたいに。

 

しんみょうまる人形が果敢に切りかかって輝針剣が木に当たる瞬間、硬いものが当たった時の鈍い音が響き渡る。

そしてしんみょうまる人形に当たった衝撃が手元から伝わり、思わず輝針剣を落としてしまう。そして涙目でこちらを向いた。相当痛かったらしい。

 

「ご、ごめん無茶させてっ!下がっていいよ」

 

鏡介はしんみょうまる人形に駆け寄り抱き抱える。ちょっとかわいそうなことをしてしまった。

 

「…よし、じゃあ最後はユキ。お前だ!」

 

「!」

 

ユキ人形は元気よく頷く。炎タイプであるこの人形ならばあるいは可能性が十分ある。

植物は良く燃える為、有効な筈だ。

 

「火遊び!」

 

指示を受けたユキ人形は手から炎を出し、それを放つ。

炎は木にぶつかったが、一切燃えることもなかった。明らかにおかしい。

 

「次だ! ファイアウォール!」

 

ユキ人形は両手をかざして炎の壁を作り出し、それを木に向かって放つ。

しかし結果は同じだった。木は燃えることはなく、そこに佇んでいる。

 

「…駄目か。やっぱりただの木じゃないんだな」

 

「みたいだね…。とりあえず、一旦人里に戻ろう?」

 

「うん、そうだね」

 

 

進めそうにないと判断した二人は、ひとまず人里へ足を運んだ。

 

そして二人は阿求亭に赴き、近状の報告をした。

 

「…成程、人形は「魔力」で動いていると。そして、そのことから魔法を扱えるものが怪しい。そういうことですね?」

 

報告を聞いた阿求は情報を簡単にまとめてから再確認する。

 

「はい。恐らく、ですが」

 

「…だそうですよ?魔理沙さん?」

 

「おいおい、私を疑うのか?確かに「魔法使い」だけどさ」

 

隣で聞いていた魔理沙に阿求は話題を振る。「魔法使い」である彼女を一応疑っているのだろう。

普段の行いが悪い為、疑われてしまうのは自然なことであった。

しかし本気で関係者とは思っていないような聞き方であるのでこれはほんの冗談であるのは容易に分かる。

 

「…言っとくけど、私は関係ないからな?私は異変を解決する側であって、起こす側じゃない」

 

こちらも魔理沙は今回の異変とは一切関係ないとは思っている。

現にこうやって異変解決をしようとしている人物が主犯な訳ないだろう。

 

「冗談はさておき、「魔法使い」、ですか。私が知っている限りだと、魔理沙さんの他に「アリス・マーガトロイド」と、後は「パチュリー・ノーレッジ」くらいでしょうか」

 

「他にはいたりしますか?」

 

「そうですね…「命蓮寺(みょうれんじ)」の住職の「聖 白蓮(ひじり びゃくれん)」という人物はいますね。ですが…正直今回の異変とは関係ないかと」

 

「と、言うと?」

 

「彼女が得意とする魔法は、「肉体強化」。人形を操るようなものではありません。そもそも彼女の今の立場上、このような異変を起こすメリットは一切ない筈ですからね」

 

「成程…」

 

命蓮寺というワードに聞き覚えがあるような気がする。しかし本当に微かな記憶である為、思い出すことが出来ない。

 

「そうそう、命蓮寺といえばここ最近人形用にアイテムを販売していますね。これです」

 

阿求は客人用に出されているお茶に手のひらを出してそう伝える。

 

「お茶、ですか?…あっ!」

 

そう、これは自分が毒を受けてしまった時に休憩所の待娘が飲ませてくれたものだ。

 

「このお茶には人形の状態異常を治す効果があるんです。もちろんこうやって人形以外が飲んでも普通においしいんですよ」

 

「へぇ、そうなんですか。そう言えば、僕も実はこのお茶で「毒」を回復したことあるんですよ」

 

「え?」

 

「あー…」

 

「はぁ!?」

 

鏡介の何気ない発言に一同が驚き、そして固まる。

 

「えっと、舞島さん毒を体に受けたことがあるのですか?」

 

恐る恐る、阿求は事の事実を確認する。その顔はすごく真剣であった。

 

「は、はい。ちょっと人形に嚙まれちゃって…」

 

「…人形以外にもちゃんと効果が出るのですね…驚きました」

 

「前に言ってたやつね」

 

「全く、人形には気を付けろって忠告しただろうが。その毒で死んでいてもおかしくなかったじゃねぇかよ」

 

「ハハッ…ごもっとも」

 

魔理沙の言う通りだ。運が悪ければ、あそこで自分の人生が終わっていたかもしれないと思うとゾッとする話である。

 

「…え、えっと!次の目的地なんですけど…紅魔館に行きたいと思っていてるんです。でも、変な木が邪魔をして通れないんですよ」

 

何か変な空気になったのを感じて鏡介は急遽、話題をすり替える。

 

「木?あぁ、異変と同時に現れたあの木ですか。あれは専用の道具がなければ切れませんよ。確か「香霖堂」にあった筈です」

 

「香霖堂に?…うーん、何だか間が悪いですね」

 

どうやら先程行った香霖堂にまた向かわなければならないらしい。

 

「…分かりました。じゃあとりあえず香霖堂に向かってみようと思います。では、僕達はの辺で」

 

「はい、お気を付けて」

 

そう言って鏡介と光は席を外し、阿求亭を後にした。

 




遅くなってすみません!
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