人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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※注意


この外伝は、私が書いている小説「人間と人形の幻想演舞」の人形視点ストーリーです。
その為、人形が普通にしゃべります。そのことを注意した上でご覧下さい。

今回は、五の道で雨を降らせていたこがさ人形のお話です。



外伝4

今日も気ままに、特に目的もなくフラフラと飛んでいた。

空は雲一つない晴れ。正直、あまり好きな天候ではない。わきちは雨の方が好きだ。

 

こんなにも晴れていたら、今差している傘もただの飾りでしかない。うーん、どうしよう?

 

 

…そうだ。私が雨を降らせればいいじゃないか。

 

 

そう思って、この周辺一帯を雨にした。

 

 

 

ここは五の道にある広場の草むら。こがさ人形は雨の中そこで一人、遊んでいた。

元々そこには他の人形も生息していたのだが、雨が降ると一斉に周辺の木々に隠れてしまったようだ。

 

「あ、水溜まりだ!えいっ!」

 

雨によって出来た浅くて小さな池を、小さな人形は思いっきり両足で踏みつける。

水飛沫が飛び散る様を、彼女は無邪気に楽しんでいた。何故なら、それが好きだから。この「ちゃぷっ」って音が、いつ聞いても気持ちいいのだ。

 

だが、お陰で服はびちょ濡れ。他の人が見たら笑われちゃうだろう。

「傘を差しているのに何でそんなに濡れているのか」と。仰る通りで。

こがさ人形は少し、自分の軽率な行動に後悔した。

 

こんな子供っぽい性格だが、お洒落はしてみたい。だって女の子だし。

濡れても平気な可愛い服があればいいのだが…何故か一張羅な自分が憎い。

 

「…ね、ねぇ!一緒に遊ばない?ほら、案外濡れるのも悪くないよ?」

 

先程のことを誤魔化すように、こがさ人形は勇気を振り絞って木に隠れている人形に話し掛ける。

 

「冗談じゃないわよ!あんなの浴び続けたら倒れちゃうわよっ!」

 

「あんた、何のつもり?私達のテリトリーに突然攻撃なんて!」

 

しかし、帰って来たのは罵倒の数々。当然だった。

この雨は本来、攻撃技の一種。耐性がなければ他の人形がダメージを負うものだからだ。

 

「…??」

 

だがこがさ人形は、それを全く理解出来ていない。

 

いつもそうだった。自分で雨を降らせては周りに迷惑を掛けていることにこがさ人形は気が付かない。

それが原因で、人形の友達がいつまでたっても出来ないでいた。

 

「…!やばっ人間よ!きっと人形遣いに違いないわ!」

 

こちらに人が近づいていることに気が付いた野生の人形達は、そそくさと身を隠す。

こがさ人形も一応周りに合わせ、空を飛んで逃れる。

 

そして上から「人形遣い」という者を見物してみた。

どうやらこちらと同じように、傘を差しているようだ。それも、あまり見ないタイプの。

 

「…凄い。感じるわ…あの傘…」

 

こがさ人形は人形遣いが差している傘に見とれる。

すごく丁寧に使われている。長い間、愛用されてきたことがこがさ人形には分かった。

彼女にとって、それはとても好ましく映った。どうしてそう思うのかは分からない。だが、何故か心が温かいのだ。

 

気が付くと、こがさ人形は既に傘にしがみ付いていた。

 

 

 

ーーーそして、こがさが鏡介の人形となったのは、その後すぐのことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、貴方あの人の事、好き?」

 

こがさ人形は封印の糸の中で傘に話し掛ける。

一見すると奇妙な行動だが、彼女には物の言葉が聞こえるという特殊な能力が備わっていた。何故なのかは彼女自身も知らない。

 

そしてこの能力も、こがさ人形が周りから「気味が悪い」と避けられる原因の一つだった。

 

「うーん、そうねぇ…好きと言えばそうかも。だって、大事に使ってくれるから」

 

「…そっか。うん、分かるなその気持ち。何となくだけど」

 

傘の言葉に耳を傾け、こがさ人形は頷く。

「大事にされると嬉しい」というのは、彼女にとってはすごく共感できる感情であった。

 

「…でも、うちの主はお人好しが過ぎるのよ。聞いてくれる?」

 

「?」

 

「この人、傘を忘れてしまった見知らぬ子に迷わず私を貸すのよ?それも数られない回数!貴方も体験したでしょう?もう慣れはしたけど、もうちょっと色々警戒して欲しいわね!」

 

「ハハッ!確かにそうだね。正直、ビックリしたよ」

 

「まだあるわよ。あれはまだこっち側に来る前の頃だったかしら…」

 

傘は今までのこの人についてのエピソードを次々と話し始める。

今まで話し相手がいなかったが故に溜まっていたのだろう。歯止めが利かなくなり、こがさ人形は彼是数十分もの間ひたすら苦労話を聞かされる。

 

そして彼がこの幻想郷に来るまでの経緯、それからの冒険のことなども教えて貰った。

それで分かったのが、この人間が「超」が付くほどのお人好しで優しい人物だということだ。

 

「…とまぁ、そんなこんなで苦労してるのよ。ホント、嫌になっちゃうわ」

 

ようやく話が終わった。口ではそう言ってるが、本当にそう思っているようには聞こえない…というのは本人には言わないでおこう。

傘が言うには、この人とはもう彼是5年くらいの付き合いらしい。直接話したりすることはなくても、そこには確かに信頼や友情が芽生えていた。

 

「はー、何か全部話したらスッキリした!ありがとう、付き合ってくれて。…でも、良かったの?付いて来て?」

 

「うん。私ずっと一人で寂しかったから、貴方ともっと一緒にいたいの」

 

舞島 鏡介に「一緒に来ないか」と言われた時は正直迷ったけど、同時に嬉しくもあった。

何故ならこの傘とその持ち主が離れてしまうことなく、一緒にいられるのだから。

一度貰った時はそういったことを考えていなかったが、ちゃんと持ち主の手にあるべきだ。引き離すなんてとんでもない。

 

「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。…でも、同じ人形の友達もちゃんと作った方がいいわよ」

 

「うぅ…で、出来るかな?私に」

 

「きっと出来るわ。ユキちゃんとしんみょうまるちゃん、とてもいい子だもの。貴方なら出来る。勇気を出して!」

 

「…う、うん、やってみる。ありがとう傘さん!」

 

人形達は封印の糸の中で姿は見えずとも、近くにいればコミュニケーションはとることが出来る。

こがさ人形は同じ鏡介の人形であるユキ、しんみょうまるに挨拶を試みた。

 

落ち着け。まずは深呼吸………ふぅ、よし。まずは…

 

 

「えーっと、は、初めまして!こがさって言います!オッドアイがチャームポイントだよ!好きな天気は雨で、えっと…そう!後、趣味で鍛冶とかやってます!これからよろしくね!」

 

 

軽く自己紹介。そして好きなものや趣味を言って…

 

 

「へぇーそうなんだ!わたしもあめ、すきだよ!」

 

「ふふっ!わたしたち、きがあうね!」

 

 

気が合い、三人は意気投合する。そして…

 

 

「「「 わーいわーい!うふふーあははー♪ 」」」

 

 

皆幸せ夢気分!周りはお花畑!ハッピーエンド!

 

「…よし、完璧!これで行こう」

 

いきなり行くのは恐いのか、こがさ人形は事前に会話シュミレーションを始める。それも一人で三人を演じながら。

今までずっとボッチであった弊害なのか、こがさ人形はどこかコミュニケーション能力が不足していた。

 

「あ、でも鍛冶はちょっと引かれるかな…女の子らしくないし…。うん、これは言わないでおこう」

 

「…」

 

「…あれ?思い返してみれば私、女の子らしい趣味何一つない…後そんな都合よくいったら苦労しないわ…」

 

こがさ人形は自分の妄想を思い返し、我に返る。

 

「…あのー」

 

「どうしよう…急に自信無くなって来た…やっぱり私に友達なんて…」

 

 

「 あのーーーっ! 」

 

 

「 …!!!?? 」

 

 

後ろ向きな気持ちになっていたこがさ人形の背後に突然、誰かの声が響き渡った。

ビックリし過ぎたこがさ人形は、まるでコントのように転がりながらその驚きようを表現する。

 

「(…わきち驚いたっ…!)」

 

「だ、大丈夫ですか!?…もうユキさん?突然そんなに大声出したら駄目ですよ」

 

「ごめんごめん、しんちゃん!どうも聞こえてないみたいだったからさ」

 

意識がぼやけている中、二人の声がした。

一人はおしとやかで、もう一人は元気で活発な感じの声だ。

 

「えっと、最近舞君の人形になった子だよね?初めまして!私はユキよ」

 

「…はっ!?ははははは初めましてっ!小生はこがさと言うしがない名前でありますっ!はいっ!」

 

即座に体勢を戻し、こがさ人形は挨拶をぎこちなく返す。

頭が混乱していたのか、言うつもりのなかった謎の語録が出てしまった。恥ずかしくて顔が真っ赤になる。

言いたいことが全く言えない。やはり現実は非常だ。これではとても友達になんて…

 

「こがささん、ですね。私はしんみょうまると申します。以後、お見知りおきを」

 

「は、はひぃ!よよ、よろしくでしゅ!」

 

舌を噛んでしまった。体の震えが止まらない。何てかっこ悪い…自分が嫌いになってしまう。

 

「あははっ!こがっち面白いね!」

 

見たことか。笑われてしまった…ん?

 

「こ、こがっち…?」

 

こがさ人形はユキ人形が言った「こがっち」という聞き慣れないワードに疑問を持った。

今までそのように呼ばれたことは一度もない。

 

「うん、こがさちゃんだから「こがっち」!どうかな?」

 

「…あ」

 

こがさ人形は初めての経験に、嬉しさの余り言葉を失う。

これは所謂、憧れていた「あだ名」というもの。友達の証と言える。こがさ人形にとって、これ程嬉しいことはなかった。

 

「ありがとう…ありがとう…ユキさん…嬉しい、です…う、うわぁーーーーん!!」

 

「え!?ちょ、ちょっと何も泣くことないじゃない!?」

 

「あらあら、ユキさんも罪な人ですね」

 

こうしてこがさ人形に、初めての友達が出来た。

 

 

「…そ、そうだ!記念に私こがさが祝いの雨を」

 

 

「「 それはやめて(下さい) 」」

 

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