人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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鍛冶ってこんな感じでいいのだろうか…?



第四十一章

永遠亭の外で木こり人形を持ち出し、準備を進める鏡介の人形達。

木こり人形の斧の部分が駄目になっているのを見て、何かをしようとしているのは分かった。しかし、一体どうするつもりなのだろう。

 

鏡介達は診察室の窓の向こうから、その様子を見守る。

 

 

「…あ!何か始めたわ!」

 

 

最初に動きを見せたのはしんみょうまる人形。

自分で生成した岩を次々と地面に落としているようだ。これは「ストーンレイン」だろう。

 

生成し終えると、今度は岩を同じ大きさになるように自身の輝針剣で綺麗に切り揃えていく。

相変わらず見事な腕前で、あっという間に同じ大きさの長方形の岩を複数作成した。これは所謂、「レンガ」に近いものだろうか?

 

そして、それらを真ん中だけ開けながら正方形に組み立てていった。

 

「…?家でも作るつもり?それにしては小さいような…」

 

一段目を組み終えたところで、こがさ人形が袋を取り出した。

それをあらかじめ用意していた容器に入れると、白っぽい粉が出てくる。そしてその中に水、砂を加えると、手で混ぜた。

 

やばて灰色のどろどろした液体が完成すると、それをレンガの上に塗りたくる。どうやら外壁材を作っていたらしい。

しばらくそれを繰り返し、完成したのが釜戸のようなものだった。

 

 

次にしんみょうまる人形は、針を生成してそれを何本も地面に差す。これは最近覚えた「抜打(ぬきうち)」という技だ。

そしてこがさ人形がそれに手を添えると、針山が光を放った。

 

 

 

 

『アビリティ:冶金術(やきんじゅつ)  発動。』

 

 

「わ!?」

 

 

 

スカウターが反応した。

こがさ人形のアビリティをここで初めて垣間見ることになるとは思わなかった為、鏡介は驚いてしまう。

 

光が収まると、そこには金属で出来た作業台と道具一式が出来上がっていた。これがこがさ人形のアビリティ?

物質変換のようなものだろうか…そしてそれを好きなものに出来る能力、といったところか?

 

そう考えると、とても強力なアビリティに思える。金属…つまり「鋼」タイプ限定なのかもしれないが。

 

 

そしてその横では、しんみょうまる人形がすごいスピードで何かを作成していた。あれは…服だろうか?作業着のように見える。

こがさ人形への耐熱の為だろうか?一体どこでそんな都合のいい素材を手に入れたのか。

 

 

「まさか、あの人形は鍛冶でもしようとしているのかしら…」

 

 

一緒に見ていた永琳がそう呟く。確かにこれまでの行動を考えると説得力はある台詞だ。

小傘が斧の部分に注目していたし、そして何かをしようとする為にユキ人形としんみょうまる人形を呼び出していた。

現にしんみょうまる人形はこうして釜戸のようなものを作る原料である石、作業台と道具一式に金属を生成…そして作業着のようなものも今作っている。

 

「どうやら、本当にそうみたいですね。こがさにこんな特技があったなんて…」

 

「…マジ?舞島さんの人形って器用な子ばっかりね」

 

間違いない。ユキ人形はいることが何よりの証拠となっている。この作業にユキ人形が必要ということは、火力がいるということ。

これまで手伝いを主にやっていたが、ここからユキ人形の本領発揮ということか。

 

…それにしても即席で鍛冶をするなんて、人形は本当に凄いな。

 

 

しんみょうまる人形は忙しく動かしていた手を止める。どうやら作っていた作業着が完成したらしい。それをこがさ人形に渡した。

こがさ人形は作業着を普段服の上から着込むと、何と一寸の狂いもなくピッタリサイズだった。こがさ人形も満足の出来だったらしく、嬉しそうに手を握って握手する。

これにて、鍛冶をするための下準備は完了した。仕事を終えたしんみょうまる人形は、残った二人を木陰から見守る。

 

こがさ人形は木こり人形が持っている斧の刃の部分を器用に取り出すと、欠けている部分の真ん中に穴を開け始める。

そして目の前にあるしんみょうまる人形が作った残りの針を手に取り出し、アビリティによって小さな金属に変換すると、それを開けた穴にはめ込む。

 

こがさ人形はユキ人形の方を見つめる。それを見てユキ人形も頷く。いよいよ始めるみたいだ。

 

ユキ人形は炉の中に向かい、手から炎を出した。その状態をキープし、視線を自身の炎から離さない。

火力を一定に保ち続ける為、集中しているようだ。

 

こがさ人形はそれを見て手で軽く温度を確かめると、軽く頷く。どうやら要望通りの火力のようだ。

すかさずその中へ金属を埋め込んだ斧の刃を火傷しないよう火箸で掴み、入れていく。

炉の炎が勢いを増し、斧の刃を熱していくと最初は銀色だった刃は、やがてその色を変えてどんどん橙色に染まっていくのが分かる。

しばらく熱して、もう十分と判断したこがさ人形は一旦熱した斧の刃を取り出し、小槌を手に取ると勢いよく振るう。小槌と斧の刃がぶつかり合うと、心地よい音と共に激しく火花が散った。

 

「……」

 

人形達のその姿に、鏡介は思わず無言になり釘付けとなる。

光もまた、鏡介と同じように信じられないという表情で人形達を見て、永琳でさえも驚いた表情を隠しきれない様子だった。

この光景を見て人形の無限の可能性を感じざるを得なかったのだ。

 

「…私の人形にも、もしかしたら医者としての可能性があるのかもしれないわね…。人形の力というのを、少々侮っていたみたい。これは色々試してみる価値があるわ…フフッ…」

 

永琳は人形に対する考えを改めたようで、興味を惹かれたようだ。笑みが思わず零れてしまうほど。…その可能性とやらが、助手としてであることを祈る。

そう思いながら、鏡介は改めてこがさ人形達の方へ向き直った。

 

こがさ人形はしばらく同じような動きで、熱しては叩いて、熱しては叩いて……それを何度も繰り返す。辛抱強く、何時間も。

 

 

 

 

ーーそして日も落ちる頃。

 

ようやく叩き終わったらしく、斧の刃を用意していた水箱に付けた。水の勢いよく蒸発する音と共に、煙が舞う。

 

次の作業に火を使う必要ないので、こがさ人形はユキ人形に声を掛けて炎を出し続けるのを一旦止めさせる。

ずっと集中していて疲れたのだろう。手から炎を消したユキ人形は一息ついた後にその場に座り込んでしまった。

それをしんみょうまる人形が駆け寄り、手を差し出して笑顔で何かを言っている。「お疲れ様でした」といったところだろう。

この数時間、ひたすら炎を一定に制御し続けたのだ。疲れるのも無理はない。

 

その努力を無駄にしない為にも、こがさは集中して次の作業に取り掛かっている。真剣に金属と向き合い修復するその姿は、正に「職人」だった。

 

 

 

それからまた数時間が経ち、日はすっかり沈んで辺りが暗くなる。

こがさ人形はそこでただ一人、小さな明かりの中で黙々と斧の刃を調整していた。無駄な部分を取り除き、形を整えていく。

 

その後ろ姿をユキ人形、しんみょうまる人形、そして鏡介はただ見守る。邪魔しては悪いと思うので、なるべく静かに。

途中から鏡介はもっと近くでその雄姿を見たいと思ったので、こうして人形達と一緒にいる訳だが…小さくても職人の後ろ姿というのは何とも言えない迫力があった。

 

今夜は永遠亭に泊めて貰えることになったので、光は一足先に借りた寝室に移動している。疲れていたのか、布団に入った瞬間に即寝てしまったみたいだが。

あの子はまだ自分より子供。疲れを知らないが故に、溜まっていたのだろう。「寝る子は育つ」というし、たっぷり睡眠をとるのはいいことだ。ゆっくり休んで欲しい。

 

「…今、何時くらいなのかな。ここの時間は相変わらず、全然分からないや」

 

彼是どのくらいやっているのか気になった鏡介は、自分のスマホの時計を確認しながらそう呟く。明らかに午後の時間帯であるはずなのに、時計は午前を示している。

幻想郷は時間の流れが自分の世界とはまるで違うみたいだ。このスマホの時計は最早、何の役にも立たない。だがそれでもスマホを触ってしまうのは、最早あちらで染みついた癖と言える。

この世界の時間の図り方は、どうやらこっちの世界の一昔前の数え方になっているとのこと。光から軽く教えて貰ったが、未だによく分かっていないのが現状だ。

今度魔理沙に会ったら、時計機能をお願いしよう。…出来れば、数字で示してくれるやつで。

 

そのようなことを考えていると、こがさ人形がこちらを向いていることに気付く。

どうやらまた手伝って貰いたいらしく、手を振ってユキ人形の方を呼んでいた。休憩して元気になったユキ人形は立ち上がり、すぐにこがさ人形の方へ向かう。

ユキ人形がどうしたらいいかを聞いて、こがさ人形がそれに答えているのが何となく理解出来る。

 

説明を聞いたユキ人形は、炉に向かって両手で炎を出す。最初にやった時よりも火力の調整が必要な為、集中する。集中し過ぎて、思わず目が細まっている。

そしてこがさ人形はその中にまた斧の刃を火箸で突っ込む。こんな暗い中、ちゃんと見えているのかと心配になったが、暗闇の中でこがさ人形は今熱している斧の刃をただ一点を見つめていた。

焼き色を見極めているのだろうか?さっきよりも長く、炉の中で熱している斧の刃を見つめているように感じる。これも鍛冶の工程の一つなのだろう。

しばらくしてこがさ人形は軽く頷き、炉から斧の刃を出すとそれを速攻で水箱に入れる。浸けたり出したりを繰り返して冷め切ったのを確認すると、炉の中にまた軽く入れ直す。

 

やがてこがさ人形のグッドサインが送られる。それを見たユキ人形は手の炎を消し、親指を立てて笑顔で同じ仕草をした。そして〆は握手。

どうやらユキ人形の仕事はこれで終わりのようだ。今までの手伝いに対しての労いとして、こがさ人形なりのコミュニケーションなのだろう。

ユキ人形は元の休憩していたところへ戻っていくと、こがさ人形は斧の刃を両手で持ちながら研磨を始める。

 

「…お疲れ、ユキ。…じゃあ二人共、こがさも見られていると集中出来ないかもだし、退散しようか」

 

鏡介は二体にこっそりと話す。ユキ人形の役目が終わったのなら、後はこがさ人形だけで事が足りるだろう。

それに今のこがさ人形はすごく頼もしく見えるが、それは恐らく鍛冶に集中しているからで、普段は気が弱いというのも知っている。

ずっと誰かに見られながら作業するのはこがさ人形自体、本当は辛いかもしれない。一人の方が、返って集中出来るのではないだろうか。

後、「職人」は何となくだがそういう孤独的なイメージはある。

 

鏡介の提案に二体は頷く。こがさ人形と今まで関わって来た者同士として、想いが一致した。

 

「うん、ありがとう。じゃあ二人共、戻って」

 

鏡介は二体を封印の糸に戻す。

だが、このまま黙って帰ってしまうのも流石に悪いので、軽く応援くらいしておこう。

鏡介はなるべくゆっくりと近づいて、こがさ人形の傍に来るとしゃがみ込んで呟く。

 

「こがさ、頑張ってね。僕達はもう休むよ」

 

囁かれたこがさ人形は手を一瞬止めるが、一切向き直ることなく研磨作業に再度手を動かし始める。

聞こえてはいただろうけど今は集中しているだろうし、これ以上はよそう。

 

「…それじゃ、夜風で風邪ひかないようにね。お休み」

 

そう言うと、鏡介は立ち上がって永遠亭の玄関へと足を運んだ。そしてゆっくりと戸を閉める。

 

…よくよく考えると、人形は別に風邪をひかないのではないだろうか。変なことを言ってしまった気がする。

これではまるで頑張っている我が子を見守っている親だ。それも母の方に近い。男なのに…。

 

 

 

しかし鏡介の後悔とは裏腹に、その言葉を受けたこがさ人形の表情はどこか嬉しそうだった。

 




「冶金術」ってそんなアビリティじゃない?
こういうのはね、雰囲気が大事なんだよ。

それ出来るなら、わざわざ鍛冶しなくても直接生成してしまえばいいのでは?
こういうのはry
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