人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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スタイルチェンジ先ってすっごく迷うよね
そして一番楽しい時間だと思う…思わない?




第四十三章

藤原 妹紅に迷いの竹林を案内して貰い、入り口に到着した二人を待っていたのは、

 

「よう、二人共。調査は順調か?」

 

普通の西洋魔法使い、霧雨 魔理沙だった。

ちょうど会いたいと思っていたところに、何と幸運なことか。

 

「魔理沙さん。ここで待っていたんですか?」

 

「阿求から永遠亭に向かったって聞いてな。…そろそろお前にこれを渡そうと思って」

 

そう言うと魔理沙は懐からの平べったい長方形の機械を取り出した。

スタウターと比べると比較的に現代的な見た目で、こちらの世界の一般的な携帯である「スマホ」によく似ていた。

だが、何故この世界にこの機械があるのだろう?幻想郷というのは、「忘れ去られたものが流れ着く」場所だと聞く。

まさか、古いバージョンがもう人々に忘れられ、流れ着いてしまったとでもいうのか?そうだとしたら、何と悲しい事実だろう。

 

「こいつは「タブレット」。人形の能力を引き出したりするやつなんだ。お前の人形も、そろそろ頃合いだと思ってさ。ほれっ」

 

「っととっ…!」

 

魔理沙が投げた機械を危なげにキャッチする。

デリケートな機械なのだろうから、もうちょっと繊細に扱って欲しいものだが…今それを言うのはよそう。

 

「…これってもしかして「スタイルチェンジ」の?」

 

「何だ、知っているのか?ちぇ、驚かせてやろうと思ったのに」

 

「つい最近知ったもので…あはは」

 

「…まぁいいか。それじゃまずは、その機会の画面に映ってるのを見ろ。3つ項目があるだろう。」

 

魔理沙はつまらなさそうにしながらも、機械の説明を始めた。

言われた通りに画面を見てみると、「能力の強化」、「アビリティの変更」、「スタイルチェンジ」の3つの項目があるのが分かった。

やはりこれが妹紅の言っていた河童の機械で間違いなさそうだ。

 

「まず一番上の「能力の強化」。これは今までその人形が戦ってきて溜まったポイントを使って能力を上げることが出来る。試しにお前の「ユキ」を見てみろよ。項目を押せば人形の選択画面になるから」

 

「分かりました。えっと…あ、この「200」って書いているのがそれですか?」

 

「あぁ、そうだな。何だ結構溜まっているじゃないか。うん、戦ってきた証拠だな!関心関心っ!」

 

思い返してみれば、確かにユキ人形は一番バトルに使用している。最初のパートナーだけあって、思い入れが強い。気付けば自然と頼っている。

だが逆に言うと、他のしんみょうまる人形やこがさ人形が戦えていないということ。二体のポイントが、その結果を物語っていた。

ポイントというものが存在するのならば、これからはユキ人形ばかりに頼るのは得策ではない。これからはバランスよく戦わせる必要があるみたいだ。

 

「ほへぇ何この機械すごいわねー。画面に触るだけで操作出来るの?」

 

光が横から物珍しそうにタブレットを眺めている。やはり幻想郷の住民にとって、この技術は相当珍しいものらしい。

この世界の文明レベルを考えると、当然といえば当然だろう。何せ、まだ一般的に電気すら通っていないのだから。異世界らしい独自のエネルギーはあるのかもしれないが。

 

だが、凄いのはこの技術をあっさり自分のものにしている河童という種族だ。一体どんな妖怪なのであろうか。

 

「試しにポイントを割り振ってみろよ。それだけあれば、上限まで強化出来るぞ」

 

「はい、えっと…」

 

ユキ人形の項目から、どのステータスを伸ばすかを考える。ユキ人形の長所といえば、その高い散弾。そして俊敏さだろう。

下手にバランスよく割り振るよりは、長所を限界まで伸ばす方がいいのではないだろうか。そう思い至った鏡介は「散弾」と「俊敏」のボタンを操作し、それを限界値まで伸ばした。

 

「あ、そうそう。一度ポイントを振るともう振り直しは出来ないから」

 

「え」

 

魔理沙が思い出したかのように「人形の強化」のデメリットを伝えるが、その頃にはもう割り振りを決定してしまっていた。

 

「魔理沙さん…そういうことはですね…」

 

鏡介の呆れ顔に対し、魔理沙は「やっちまったぜ」と言わんばかりに、自身の頭を軽く叩いて舌を小さく出した。

反省しているのかが疑問に残るリアクションに苛立ちを感じざるを得ないが、事前に聞かなかったこちらにも少なからず非があったと思うことにしよう。

残りのしんみょうまる人形、こがさ人形のポイントの割り振りは慎重に検討しないといけない。

 

「それじゃあ今度は「アビリティの変更」だな!これはその名の通り、人形が持っているアビリティを別のやつにするものだ」

 

「別のアビリティ?それってどんなものにも変更出来るの?」

 

「いや、「その人形が備えている2つのアビリティの内から」、だな。大体の人形はアビリティを2つ持っているんだぜ。見てみろよ」

 

「…成程(そう言えば、ポケ〇ンもそうだったっけ)」

 

元となっているであろうゲームに当てはめ、納得がいった鏡介はユキ人形のアビリティをチェックする。

ユキ人形のアビリティは「火炎の衣(かえんのころも)」、「ポジティブ」の2つだった。実は手持ちの人形の中で唯一、アビリティが判明していなかったユキ人形だがようやくこれで確認できた。

このユキ人形が持っているのは「ポジティブ」の方らしい。効果は「相手に能力を下げられた時、散弾を上げる」というもの。今まで発動しなかった訳だ。

 

魔理沙の話から推察するに「アビリティの変更」は、この「ポジティブ」をもう一つの「火炎の衣」に変更できる機能ということだろう。

ちなみに「火炎の衣」は説明から察するに、防御型のアビリティだ。ユキ人形の特徴から考えるに、今の「ポジティブ」のアビリティの方が相性がいいように思える。変更の必要性は感じない。

 

「…ちなみにこの「アビリティの変更」も替えは効かないの?」

 

「いや、それに関してはポイントさえあればいつでも変更可能だ」

 

「そこは替えられる…ふむ」

 

「…おっと、これは言った方がいいか。突然だが、先に3つ目の「スタイルチェンジ」について説明しよう」

 

「…?」

 

「アビリティの変更」の説明をしていて何かを思ったのか、魔理沙は先に次の「スタイルチェンジ」機能の説明に入る。

 

「人形が多くの経験を得て初めて使える機能…それが、「スタイルチェンジ」だ。このスタイルチェンジなんだが、人形によって本当に様々なものになる」

 

「妹紅さんから一応、それは聞いてるよ。4つのスタイルと「エクストラ」っていう全共通のスタイルがあるんだよね?」

 

「うん、そうだな。「パワー」、「ディフェンス」、「スピード」、「アシスト」の中から2つ、それに加えて「エクストラ」。この3つから選ぶことになるぜ。それで、どうして先にこっちの説明をしたかなんだが…スタイルチェンジをすると、同時にアビリティも新しいものになることがあるからだ」

 

「…成程、そういうことか」

 

このアビリティの変化も、元となっているであろうゲームにあった特徴の一つだ。それをプレイしたことのある鏡介にとって、この仕様はしっくりくるものであった。

だがその横で話を聞いている光は、この複雑な仕様を必死に理解しようと頭に手を添えていた。確かにこれを一から理解するのは難しいと言える。

 

「つまり、「今の段階で覚えているアビリティがスタイルチェンジで全部変わってしまう可能性があるから、今すぐに替えるのは得策ではない」、ということ?」

 

「そういうことだな。まぁ、ポイントが余っているんだったらそこまで敏感になることじゃないさ(「人形の強化」にも同じことが言えるんだが…まぁいいか)」

 

「む、難しい…よく分かるわね舞島さん…」

 

さらっと重大なことを流した魔理沙。実は、その割り振ったポイントを元に戻せるアイテムは存在する。しかし、訳あって魔理沙はそのアイテムを所持していない。

人里に売っているのだが、その売っている店に問題がある。

 

「さてと、これで一通り説明したな。まぁ「習うより慣れろ」だっ!スタイルチェンジ、早速やってみたらどうだ?」

 

「そうだね。どれどれ…」

 

魔理沙の薦め通りに、まずはユキ人形のスタイルチェンジを実行してみることにした。タブレットの「スタイルチェンジ」の項目を選択し、事項可能な人形を確認する。

やはり、自分の手持ちの中でスタイルチェンジが出来るのはユキ人形のみ。他の人形達も早く出来るよう、育ててあげないといけない。そう思いながらスタイルチェンジ可能なユキ人形を選択し、どのスタイルにするかを考え始める。

ユキ人形がなれるスタイルは、「スピード」、「パワー」のようだ。ユキ人形の特徴に合っているスタイルといえる。

タイプを確認すると、「スピード」は元と同じ「炎」単体。「パワー」は「炎」に加え、新たに「水」も追加される。中々面白いタイプだ。そして最後の「エクストラ」。これがかなり異質だ。タイプは「水」を主体とし、

それに加え「歪(いびつ)」というものが加わる。そして極めつけは今まで散弾アタッカーだったのが一変,この「エクストラ」では集弾アタッカーになるのだ。正直、これも興味がある。

 

スタイルを一通り見たらどれも魅力的であったが故に、鏡介はすっかりどのスタイルにするか迷ってしまう。

タイプの関係で言えば、「水」はこがさ人形が既に持っているのだから、ユキ人形を「水」にしたら被りになる。そうなると、「炎」単体の「スピード」がいいのだろうか。

いやしかし、他の人形達のスタイルチェンジでタイプ関係がガラッと変わってしまう可能性も…?そうなると今決めるのは早計か?だが、自分の中の初スタイルチェンジをしてみたいという気持ちが抑えられない。

 

「私のげんちゃんも出来るのかな!?すたいるちぇんじ?っていうの!どういう感じになるのか気になるなぁ…ねぇ私にも頂戴よ!」

 

「もしかしたら出来るかもしれんが…生憎これ以上予備のタブレットはないんだ。悪いな光」

 

「えぇ~ズル~い!私もしたいよ~!」

 

横で光が駄々をこねている中、鏡介はユキ人形のスタイルチェンジ先を考える。

集弾アタッカーになる「エクストラ」だが…今まで散弾で戦ってきたユキ人形は正直、かなり頼りになった。それを急に集弾型にすると、返って違和感を感じて折角の長所を潰してしまう気がする。

そうなると、やはりユキ人形はこのスタイルが良さそうだ。

 

 

「…決めた。ユキのスタイルチェンジ先は、「スピード」スタイルだ!」

 

 

スタイルを決めた鏡介は、その項目に指を添える。そして、スタイルを決定したと同時にタブレットの画面にスタイルチェンジの派手な吹出しが現れる。

 

それは実際に携帯でゲームをやっているかのような、すっかり見慣れてしまった人間の目に悪そうな、そんな光景であった。

昔よくやった古いゲーム機のことが、ふと記憶から蘇る。今ではすっかり見ないが、きっと幻想郷のどこかに流れ着いていることだろう。

 

やがてスタイルチェンジが終わった。意外とあっさりはしているが、これでユキ人形は強くなったらしい。…見た目とか変わってしまってないことを祈る。

 

「本当にそれでいいか?スタイルチェンジは正真正銘、本当に替えが効かないぞ」

 

「うん。…まぁ、強化したステータス的にもこれが一番適任だろうしね?」

 

「…わ、悪かったって!」

 

鏡介は少々らしくない嫌味を零した。気楽に話している魔理沙だからこそのちょっとした冗談だ。

どうも友達感覚になると、辛口になりがちな節がある。主な被害者は大森だ。

 

「よし、これでスタイルチェンジは完了だ!早速その人形でバトルしてみないか?」

 

「いいじゃん!私も見たい!スタイルチェンジした舞島さんの人形!」

 

初のスタイルチェンジを終えた鏡介に、魔理沙は腕試しがてら人形バトルを申し込む。光もどうやらその提案には賛成のようだ。

こちらとしてもどのくらい強くなったのかを知るいい機会だ。願ってもない話である。

 

「いいよ!受けて立つ!」

 

「よし!じゃあ早速っ…! ぱちゅりー!」

 

答えを聞いた魔理沙は、その場に自分の人形を出す。紫色のロングヘアーに長めのワンピースの少女が姿を現した。

そして、「パチュリー」という名には聞き覚えがある。アリスが言っていた紅魔館に住む魔女。どうやら、彼女がそうらしい。

ぱちゅりー人形はバトルに駆り出されたにも拘わらず、手に持っている本を読むのに夢中のようだった。あまり気乗りしないのだろうか?

 

「こいつは最近は入った新入りでな。集弾にはめっぽう弱いが、散弾には鉄壁の防御力を誇る。まぁちょっと面倒臭がりなのが偶に傷だが…」

 

「(散弾…輝夜さんの人形と同じタイプか。しっかりユキ人形に対策をとってる。だけど!)」

 

 

「行け! ユキ!」

 

 

鏡介はユキ人形の入っている封印の糸を掲げる。

すると、炎が宝石の中から現れて地面に着弾。炎が燃え上がり、小さな黒い影が映るとそこから金色の瞳が輝く。

そして炎の衣が消え去ると、そこにはユキ人形が佇んでいた。

 

「ほう、中々凝った登場じゃないか!今度私の人形にもやらせてみようかな」

 

「すっごーい!」

 

「……お、おぉ…すっごくカッコいい…最高だよユキ!」

 

ユキ人形の粋な登場の仕方に、思わず息を呑んだ。姿はそのままなのに、どこか大人びたような感じがする。

だが、こちらの絶賛の声に対して元気よくVサインを送っているその姿は、紛れもない自分の知っている元気一杯な明るいユキ人形だ。

どうやらスタイルチェンジでは姿が変化したり、性格が変わってしまったりはしないようだ。ひとまず安心。

 

早速鏡介はユキ人形のステータスの変化をスカウターで確認する。

元々全体的に高水準だったのが更に上がっており、強くなっているのが分かった。特に「散弾」、「俊敏」が高く、他より桁が一つ多いという異常な数値を叩き出している。現時点ではトップの強さだ。

そして、もう一つ気になることがある。アビリティがどうなったかだ。鏡介はタブレットから「アビリティの変更」でその内容を確認すると…ばっちり変わっていた。「用量厳守(ようりょうげんしゅ)」と「突貫(とっかん)」に。

「用量厳守」は「毒タイプの技を無効化し、耐久を回復する」という効果で、「突貫」は「技の威力が上がるが、追加効果がなくなる」というものらしい。前とはまるで違う。

 

今の「用量厳守」は、状況が限定的すぎる気がする。とすれば、使い勝手が良さそうな「突貫」だろう。鏡介はポイントを使い、アビリティの変更を行った。

 

「…お待たせ。じゃあ行くよ! ユキ! フラッシュオーバー!」

 

鏡介が指示を出すと、ユキ人形は大きな火球を数弾頭上に作り出し、それを一斉に発射する。

弾速も早くなっているようで、その勢いはこれまでの炎や弾幕とは比較にならない程であった。

 

「なっ…!?は、早い!? ぱちゅりーよけ」

 

この弾速の速さは魔理沙を予想外だったようで、人形への指示が間に合わずそのまま火球がぱちゅりー人形に直撃する。

 

「…!だ、だがさっきも言った通りこいつは散弾に…!?」

 

「……嘘でしょ?」

 

散防に定評があったぱちゅりー人形は、ユキ人形の攻撃一発で黒焦げになり目を回していた。戦闘不能である。

魔理沙と光は、その圧倒的な威力に言葉を失う。スタイルチェンジして新しく覚えた技、「フラッシュオーバー」。まさかここまでとは…

 

 

「……す、」

 

 

「すごいよ ユキ!強くなったなお前っ!このこのっ!」

 

 

その成長ぶりに、思わず鏡介はユキ人形を抱きかかえて褒めながらほっぺをこする。その言葉が嬉しいのか、ユキ人形も満面の笑みでほっぺをこすり返す。

 

「いや参った。まさか一撃とはね…ま、こいつにもいい刺激になったろ。しばらくは不機嫌になるだろうけど。…スタイル先は決まったな」

 

魔理沙は負けをポジティブに捉え、今後の育成方針を呟きながらぱちゅりー人形を元に戻す。

鏡介の人形の力を前に、魔理沙の闘争心は燃え上がった。封印の糸を強く握りしめ、「次は負けない」という思いを抱く。

 

「(す、すごいわスタイルチェンジ!早く私もやりたいわ…!)」

 

その光景を見た光は、自分の人形も逸早くスタイルチェンジを果たしたいと思うのであった。

 




さぁ、ここからが本当の地獄だ…(色々とややこしくなる)
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