人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第四十四章

「…という訳で、そのスタイル一つでも色んなタイプがある。極端なステータスになったりとかな」

 

「へぇ、中々面白いね」

 

魔理沙の人形についての話を聞きながら、鏡介達は人里を目指していた。

人形のスタイルチェンジを体験したということで、その奥深さを現在教えてくれている。これから色々と覚えないといけないことも増えてくるのだし、この話はすごく為になった。

 

「スタイルチェンジをやっていくとなると、考えることが一気に増えるぞ。ノーマルスタイルでのバトルとは次元が違う。これからは、スタイルチェンジをしている人形を相手も持っていると思った方がいいだろうな」

 

「確かに…そうだよね。気を引き締めないと」

 

スタイルチェンジによる強化は凄まじいものだった。「フラッシュオーバー」。人形をスタイルチェンジした際に習得した技の一覧に載っていた技だったが、まさかあれ程とは思わなかった。

これさえ使っていれば誰にも負けないのではないかと思えるくらいには、強力で無慈悲な威力であった。

…しかし、恐らくそれも長くは続かないだろう。慢心は敗北につながるであろうから、これからも人形達を十分に育成していく必要がある。

しんみょうまる人形、こがさ人形の二体も、一刻も早くスタイルチェンジを果たさねば。メディスン人形は…まだ戦闘が出来る状態ではないから無理はさせないでおこう。

 

「…おっと、そろそろ人里だな。門が見えてきた。さてと、それじゃ私はまたスカウターの機能追加を依頼してくるかな。もちろん異変調査の方が優先ではあるから早急とはいかないぞ」

 

「うん、分かってる。それじゃお願いね」

 

「おう!またな!」

 

これまでの帰り道で魔理沙に一通りのスカウターにつけて欲しい機能を話したところ、知り合いの河童に依頼してくれることになった。

「時計機能」、「自分の人形のアビリティ表示と詳細」。この2つが、主に追加してほしい機能である。自分の人形達がこの先色々な技を習得していく中で、それらをすべて自力で覚えられる気がしない。

最初の時計は兎も角、残り1つはどうか追加してもらいたいものだ。「アビリティ」を生かすには、事前にこちらもその能力を知っておく必要がある。今はまだ発動してからその能力がどんなものかを推察することしか出来ずにいる。

タブレットを見れば一応アビリティの詳細は見れるものの、バトル中にそれを確認する余裕はない。

 

「…魔理沙さん、行っちゃったね。これからどうするの?」

 

「うん。とりあえず、この人里で紅魔館へ行く準備を整えようか。まずは甘味処に行くから…休憩所かな?」

 

「オッケー」

 

箒で空を飛んでいく魔理沙を見送り、二人は人里へと足を運んだ。

 

 

 

そして人里の休憩所に到着すると、鏡介達は早速準備を開始する。

鏡介は迷いの竹林で得たアイテムの売却、光は行商人に商品を見せて貰っていた。

 

「これなんかどうだい?封印の糸より強力な「契約の糸(けいやくのいと)」だ!今ならたったの600円!」

 

「ふ~む…他には?」

 

「この数珠よりも多くの時間身を守れる「護符(ごふ)」っていうのもあるぜ!200円でどうだ!」

 

「あー、それは欲しいかも。私普通の人間の女の子だし…うん、これは買いね」

 

光は行商人の商品を一通り聞き、その中からどれを買うかを絞る。

 

「えっと、後これも」

 

「はいはい。これまた随分と集めましたねぇ。少々お待ちを~」

 

「お願いします」

 

鏡介は鞄に入れていたアイテムを出し尽くし、それを甘味処の待娘に鑑定させてもらう。

鑑定してもらっている間、行商人のところにいる光の元へ赴いた。

 

「どう?いいのあった?」

 

「「護符」っていうのは、こちらとしては買いたいわね。後、次点で「契約の糸」とかも。「護符」は香霖堂で買った「数珠」の上位互換で、「契約の糸」が「封印の糸」の強化版みたい」

 

「成程…「護符」は確かに光ちゃんは必要になるかもね。糸の方は…うーん。強化版、ねぇ…」

 

今まで封印の糸をポケ〇ンでいうところのモンスター〇ール…一番捕獲率の低いものだというのを忘れていた。何せ、今まで人形を「捕獲」するのではなく「仲間」にしていたからだ。

だが原作で考えると、そういったアイテムがあるのは納得出来る。「契約の糸」は恐らく、原作の「スーパー〇ール」というやつだ。今後手強い人形を捕まえるとなると、やはり必要か?

…いや、抑々この封印の糸というアイテムは、使えば即捕獲という代物ではない。あくまで「封印状態」にするだけで、その後はこちらが攻撃して倒す必要がある。

ということは、この「契約の糸」は「封印の糸」よりも「封印状態」にする確率が高い、というだけだ。…自分にはあまり必要性を感じないな。

 

鏡介は他人に取られないようにこのアイテムを使っているだけであって、決して「捕獲」目的には使わない。

「封印の糸」という人形の自由を縛っているこのアイテムは、個人的に嫌いだった。人形達と手を取り合い、仲間になることが彼なりの人形との接し方だ。

 

「そうだね、「契約の糸」は光ちゃんが買うといいよ。僕はいい」

 

「えーホント!?幾つ買ってくれる?10個くらい?」

 

「それはアイテムの売値次第かな」

 

調子のいい光を冷静に対処しつつアイテムの鑑定を待ってると、

 

 

「おい行商、売買しろ。こいつを売るから、一番性能がいい糸を8個よこせ。」

 

 

横から光と同じくらいの身長の目つきの悪い少年が割って入って来た。

男の子は金貨を行商人に渡し、アイテムの売買を交渉する。仮にも年上の人に対して傲慢で無礼な態度であった。何と感じが悪い少年だろうか。

 

「…悪いね。「誓約の糸(せいやくのいと)」は生憎売ってないんだよ」

 

「何?揃えが悪いなここの行商は…ちっ、まぁいい。だったら、「契約の糸」を5個だ」

 

「あいよっ!お釣り7000円ね」

 

行商人からのお釣りを受け取ると、そそくさと感じの悪い少年は休憩所を後にする。

この世界にもああいう人はいるらしい。行商人の人もよく怒らなかったものだ。自分だったら小一時間説教でもしてやりたいところだが。

 

「…あいつ、人形遣いになったんだ…へぇ」

 

光は先程の少年を見て驚いているようだった。彼について何か知っている風なことを呟く。

どうやらあの感じの悪い少年とは知り合いらしい。確かに年も近そうだし、この人里には「寺小屋」という学校のような施設もある。

二人が知り合いだというのは、何も不思議なことではないと言える。

 

「…さっきの子、光ちゃんの知り合い?」

 

「うん、まぁね。気にしないで、ああいう奴なのよ」

 

「あんまりお近づきにはなりたくないタイプだね…」

 

「ははっ、初めてあった人は皆、そう言うわね。まぁあいつ自身、群れるのが嫌いっぽいからねぇ。捻くれているって言うか、可愛げないというか。…でもま、久しぶりに会ったし、ちょっくら会いに行ってくるわ」

 

「え?あ、うん」

 

久々の再開に何かを思ったのか、光は先程の少年の後を追いかけて行った。

 

 

 

 

「お~い、準(じゅん)!」

 

「…?」

 

光の呼びかけに、その眼付きの悪さから繰り出される鋭い眼光を飛ばしながら少年は振り向き立ち止まる。

 

「…何だ、光か」

 

「「何だ」とは何よっ!折角、寺小屋仲間が会いに来たっていうのに」

 

「仲間になった覚えなんてないね。じゃあ俺忙しいから」

 

準と呼ばれる少年は光との再会を特に何も思っておらず、冷たい塩対応を見せると再び歩みを進めた。

 

「ちょ!?ま、待ちなさい!」

 

「…」

 

光の静止の声に耳を貸さず、準は歩き続ける。

 

「あんた、人形遣いになったの?」

 

「…あぁ」

 

質問を簡潔に答えながらも、歩みを止めることはない。興味がないのか、こちらを一切向くこともない。

 

「そういうの、全然興味なさそうに見えたけど意外ね。どうしてなったのよ?」

 

「お前には関係のないことだ」

 

準の態度は一向に変わらない。

光はどう言えば興味を示すかを、追いかける足を動かしながら考え込む。

 

「実はね…あたしもなったのよ、人形遣い!それも、とびっきり強い人形を手に入れてね!」

 

「…」

 

準の足が止まる。どうやら食いついたみたいだ。

ようやく話を聞いてくれる気になったのか、こちらを見据え口を動かす。

 

「…ほう、お前が?俄かには信じ難いが」

 

「むっ、本当よ!今から見せたげる! げんちゃん!」

 

光が封印の糸を投げると、宝石が光りげんげつ人形が出てくる。

 

「紹介するわ!私の相棒の げんちゃんよ!可愛くてとっても強いんだから!」

 

「……確かに強いな、「人形」は」

 

「そうでしょう、そうでしょう!」

 

不機嫌そうにしているげんげつ人形を見て、準はそれ相応の評価をする。

光はその言葉に鼻高々となり嬉しそうな顔を浮かべた。

 

「…だが、お前こいつを上手く扱えていないな」

 

「え…そ、そんなことない!今までだって」

 

「いや分かるさ。この人形の退屈そうにしている顔を見ればな。弱い人形遣いに使われて、この人形には同情するよ」

 

「…!」

 

準は光に対し、辛辣な言葉を浴びせる。

その言葉に光は体を奮いたて、怒りを露にする。

 

「…あったま来た!準、私と人形バトルよ!私が勝ったらさっきの言葉、撤回しなさいよねっ!」

 

「ふん、誰がやるか。事実を言ったまでだ」

 

「そう言いながら、負けるのが恐いんじゃないの?」

 

「…何だと?」

 

光の煽りに準はあっさりと乗ってしまう。こういったところは子供っぽさが残るようだ。

人形バトルをすべく、準は封印の糸を手に取り光を睨みつける。

 

 

「実力の差というものを教えてやるよ」

 

「ふん、言ってなさい!」

 

 

 

光と準は人里の広場で人形バトルをすべく、一定の距離で対峙していた。

人気のある場所での二人の対決に、通りすがりの人里の住民が物珍しさに自然と集まっていく。

 

「使用人形は一体だ。こっちも暇じゃないんでね」

 

「えぇ、それでいいわ」

 

ルールのおさらいをすると、早速二人は戦わせる人形を繰り出す。

 

 

「げんちゃん! 頼んだわよ!」

 

 

「ヘカ-ティア! バトルスタンバイ!」

 

 

げんげつ人形とヘカーティア人形が封印の糸から飛び出し、お互い対峙する。

余裕の表情を浮かべているヘカーティア人形の対し、げんげつ人形は何やら震えている。

 

「ど、どうしたのげんちゃん?」

 

「…ふん、無理もない。何せ、あの最強と名高い「地獄の女神」の人形なんだからな。恐れをなしたのさ」

 

「そ、そんな…」

 

準がげんげつ人形の震えている理由を推察する。光は今までのげんげつ人形からは考えられないリアクションに思わず困惑した。

自分が一番強いと言わんばかりのプライドの高い常に余裕を持った人形であった筈なのに、これは一体どうしたことか。

 

…だが、よく見てみると同時に手で口を抑え、何かを堪えている。そして次の瞬間、我慢出来なかったげんげつ人形は盛大に吹出し大笑いする。

 

「ちょ、ちょっとげんちゃん…!?…あー、そういうこと…」

 

げんげつ人形が笑ってしまった原因。それは、ヘカーティア人形のファッションにある。

頭には謎の3つの球体、黒い肩出しTシャツに大きく「Welcome Hell」の文字、赤、青、緑のスカート、素足という極めて奇抜過ぎるその恰好に、げんげつ人形は笑ってしまったのだろう。

…正直、こちらも少しその恰好に笑いかけていたというのは黙っておく。

 

これには余裕の表情を浮かべていたヘカーティア人形も流石に怒ったらしく、げんげつ人形に中指をたて威嚇する。

それに対しげんげつ人形は、親指を下に降ろすことで返答。お互いの目に、バチバチと火花が散った。

 

 

「げんちゃんがそんな相手に怯む訳ないよね! 流石よ! …じゃあ、そろそろ始めますかっ!」

 

「…命知らずだな。こいつを怒らせると只では済まんぞ」

 

 

二人の人形バトルが今、幕を開けた。

 




実は「準(じゅん)」というキャラは、ピクシブの方でリクエストを頂いたものだったりします。

基本そういうのは受け付けていなかったのですが、今後の展開に絡ませやすそうだったので思い切って採用してみました!彼の今後の活躍にご期待下さい!
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