人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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今回も二人の視点でお送りします。

ここのヘカーティア人形ホント異常に出ないよね~




第四十八章

「胡蝶夢丸」により、夢の世界に来てしまった鏡介。

何とここでは人と人形が普通に言葉を交わすことが出来た。やはり、夢であるからなのだろうか。

まさか、このような機会が訪れようとは思ってもみなかった。鏡介は今まで疑問に思っていたことを人形達に尋ねてみることにしたが…

 

「そっか…自分がどこの誰の元になっているかは分からないんだね」

 

『ごめんね舞君…私どうも記憶がなくなっているみたいで。あの時どうしてあの草むらにいたのかも、分かってないの…』

 

ユキ人形は申し訳なさそうに謝る。スカウターに載っている情報通り、本人も名前しか分からないようだ。

ユキ人形との出会いは他の人形達と比べ、どこか特別であった。一目見て何か強い繋がりを感じたというか…今思えば、あれは運命だったのかもしれない。

 

『ユキさんの出自…ですか。確かに私達とはどこか違うような雰囲気を漂わせていますよね』

 

『う、うん…私もそう思う。まるで別世界から来たような…上手く言えないけど…』

 

ユキ人形と一緒に出ていたしんみょうまる人形、こがさ人形も会話に参加してくる。もしもユキ人形がどこの誰かが分かれば、この異変について何かヒントを得られると思ったが…そう上手くはいかないようだ。

この二体の人形もこの世界では当たり前のように喋ることが出来るようだ。案の定、自分達の言葉が伝わっていることに最初は驚いていたが、今は落ち着いている。

 

聞いた話によると、しんみょうまる人形の元になった人物は「少名 針妙丸(すくな しんみょうまる)」という名前で、天邪鬼である「鬼人 正邪(きじん せいじゃ)」に唆されて異変を起こした過去があるらしい。

「鬼人 正邪」…確かしんみょうまる人形の小槌を盗んでいた小鬼の人形がそんな名前をしていた。あの人形に噛まれ、生死を彷徨ったとこは今でも忘れない。

しんみょうまる人形が持っている「打ち出の小槌」は、小人の一族にしか扱えない大事な国宝であった為、見つけてくれたことは本当に感謝しているらしい。

こうして人形自身の口からお礼を言われると、少し照れ臭かった。こっちは当たり前のことをしたつもりだったのだが、何ともくすぐったい気分だ。

 

そして、しんみょうまる人形の持つ「打ち出の小槌」についてだが、これはオリジナルに比べかなり力が弱いらしく、大した願いは叶えられないらしい。

そのことをしんみょうまる人形自身が力になれないと悔やんでいるようであったが、自分なんかの為に大事な国宝の力を使って欲しくはないので気にしないように言っておいた。

 

 

次にこがさ人形だが、やはり自分の持っている傘に惹かれていたらしい。こがさ曰く、「大事に使ってくれていることに、その傘自身も感謝している」とのこと。

この人形は何と道具の言葉が分かるらしく、こがさに人形が言うには自分の傘は性別が大人の女の人らしい。まさかのカミングアウトに驚いたが、感謝してくれていると聞くと大事に使ってきた身にとっては嬉しい。

どうしてこがさ人形は鏡介に付いてきたのかを聞くと、「孤独で寂しかったから」らしい。「ずっと一人で友達がいないことが辛かったところに自分が現れて、一緒に来ないかと言われたのが嬉しかった」…と。

まさか、こがさ人形にそんなつらい過去があったとは思わなかった。…だが、よく話を聞いてみると自分で雨を降らせては周りに迷惑をかけていたらしい。自業自得なところがあるのは、正直否定出来ない…。

だが、こがさ人形はこれからは一人ではないのだし、これからもユキ人形達とは友情を育んでいって欲しいものだ。

 

ふと、何故こがさ人形は鍛冶が得意なのかが気になったので尋ねたところ、理由はオリジナルである妖怪「多々良 小傘(たたら こがさ)」の影響らしい。妖怪としては半人前であるが、鍛冶は一級品の腕を持っているとのことだった。

天性の才能を持っていた彼女の得意分野を受け継いでいるからこうしてやることが出来るのだと、こがさ人形は語った。ちなみにしんみょうまる人形の裁縫の腕もまた、こがさ人形と同じでオリジナルの得意分野らしい。

 

 

自分の人形達について疑問だった点がこれで幾分か解消され、実に有意義な時間を過ごした。人形達が普段どう思ってくれているのかも分かり、こちらとしては嬉しい限りだ。

 

 

『…!鏡様、何か来ます…それも複数!』

 

『…な、何?この嫌な感じ…こ、怖いよぅ』

 

 

しかし喜んでいるのも束の間、何かが来ることを察知したしんみょうまる人形とこがさ人形は、急いでこちらに危険を知らせた。

何者かが群れでこちらに向かってきているようだ。

 

「一体何が…?」

 

『…恐らく、私達と同じ人形だね…それもかなり強い。舞君、気を付けてっ!』

 

どうやら野生の人形達がこちらに気付き、襲い掛かってくるらしい。

しかし、人形はこちらに危害を加えなければ基本は襲って来ない筈だが…気付かぬ内に何か不味いことをしてしまったのだろうか?

 

相手は強い人形だという。いざとなったら、無理はせず逃げるようにしよう。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

鏡介が人形達と話をしていた頃、光は一体の人形に苦戦を強いられていた。

金髪のウェーブのかかったロングヘアーに黒いロングスカート、そして何より目立つのは後ろから見えている7本の紫色の尻尾のようなものの存在。

げんげつ人形がいかにも食いつきそうな綺麗な容姿であるが、生憎今は状態異常に掛かっているので迂闊に出すことは出来ない。

そしてこの人形、見た目とは裏腹に激しい攻撃を繰り出してくる。ありす人形も防御で手一杯となって、さっきからまるで手が出せない。

さっきまで戦っていたドレミー人形や変な格好をした妖精の人形とはまるで格が違い、とても強力な力を持っていた。

 

「ありす! バリアオプション!」

 

光は防御の指示を出すと、ありす人形は人形を操って自身の周りに結界を張った。

この技の欠点として、使う際に耐久を削られてしまうというのがある。使える回数に限りはあるものの、その分連続で使用可能という点は評価出来るが…このままではやられてしまう。

 

「(…この人形、強い。出来れば捕まえたいけど、いつ糸を使うか…)」

 

契約の糸の個数は3個。使う場面は慎重に決めなければならない。

どうにか相手の隙を突き、弱ったところを封印状態に持ち込みたい。

 

「…!来るっ!」

 

金髪人形は光弾をアリス人形目掛けて飛ばそうとしている。

この攻撃はげんげつ人形と同じ光タイプの技、「ライトアップ」だ。この攻撃なら、多少無理をしてでも突っ込んでも手痛いダメージにはならないか?

さっきからずっと打たれ続けてきたタイプの分からない謎の攻撃に比べたら、相性的にも遥かにマシだ。…よし、ここで攻める!

 

「ありす! かまわず突っ込んで! 足止めよ!」

 

指示を受けたありす人形は金髪人形が攻撃を仕掛けてくる中、真っすぐ突っ込んでいく。

光弾がアリス人形を襲うが、思った通り結界が働いてダメージは負っていない。そして間合いに入ったところをすかさず周りの人形達で捕まえて拘束した。

 

「よし、ナイス!そのまま 陽の気力!」

 

ありす人形の主力技である「乱反射レーザー」、「メタルニードル」いずれもこの金髪人形に対して効果が薄かった。恐らく相性の問題であろう。

だから確実にダメージを負わせる為、光は一番初期の技を選択して少しでもダメージを稼ぐ作戦に出た。

ありす人形は身動きが出来ず藻掻いている金髪人形に向けて、青い弾幕を浴びせ続ける。絵図としては最悪だが、これも捕まえる為…仕方がないというものだ。

 

「…今だ!それっ!」

 

頃合いを見て、光は金髪人形に向けて契約の糸を投げつけた。

糸は人形に絡みつき、拘束されながらダメージを負っている金髪人形は封印状態となる。

 

やがて攻撃を受け続け力尽きたのか、金髪人形の抵抗は止み動かなくなる。

 

「…やったの?はぁ…強かったなぁ。でも、これで戦力アップね」

 

相手が人形遣いであったらこうはいかなかった。心の中でそう反省しつつも、無事に捕まえられた喜びに浸る。

後はあの人形が契約の糸になって自分の手持ちに来るのを待つだけ…そう思っていた時、力尽きている金髪人形から何か黒い怨念のようなものが頭上に浮かんできた。

 

「え……っ!?ま、不味い!あのアビリティは…!」

 

光はあの攻撃に見覚えがあった。そう、永遠亭のタッグバトルで藤原 妹紅の人形がやっていたものと同じ「復讐の化身」である。

あの攻撃の威力は計り知れない。「バリアオプション」により限界まで耐久を削られたありす人形が今あの攻撃を食らえば…!

 

光がそう思っていた時にはもう、怨念はありす人形の方に迫って来ていた。金髪人形を拘束していて至近距離では避けようがない。

怨念は道ずれにするかの如く襲い掛かり、対象を蝕んでいく。そしてアリス人形は倒れ、金髪人形は元の契約の糸となり光の手元に返って来た。

 

「あ、ありす…!…駄目だ、もうこれじゃ戦わせることは出来ないわ…」

 

金髪の人形は無事にゲット出来たものの、手痛い犠牲が出てしまった。

げんげつ人形は今碌に戦えない状態だというのに、これではこれ以上の人形探索が厳しいものとなる。もうこの機を逃せば一生来れないかもしれないというのに…迂闊だった。

 

「……この子は使わないつもりでいたけど…」

 

光は自分の最後の手持ちが入っている封印の糸を見つめ、そう呟いた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

鏡介は走っていた。ただひたすら走っていた。迫ってくる狂った人形達に追われながら。

目が完全に逝っており、奇声を上げながら襲い掛かってくるその恐怖に、鏡介は気付いたら自分の人形達を戻し全力疾走していた。

 

一体何なんだあれは?これは楽しい夢ではなかったのか?こんなの、悪夢以外の何物でもないではない。「胡蝶夢丸」の効果が切れたのだろうか?

 

「…!危なっ…!」

 

鏡介は人形の放った弾幕を紙一重で避ける。殺す気で直接攻撃をしてくるなんて絶対に普通ではない。

弾幕が僅かにかすれた感覚からも、これは現実に起こっている…本当にこれは夢なのか?自分の中にある夢の定義が定まらなくなる。

 

しかし、まさか自分が人形から攻撃される羽目になるなんて…こういうことなら上位互換の「護符」をあの時買うべきであった。

数珠や護符は全部、光にあげてしまった。当時はそれで大丈夫だと思っていたが、今となっては後悔してもしきれない。こういうことも想定するべきだった。

こういう時に光がいればこの場を乗り越えることも出来そうだったが…彼女は一人で立派な人形遣いとなるべく旅に出たばかり。

こちらとしても彼女が何かを成し遂げようと努力をする姿を応援したい。だから、今ここで彼女がいてくれればなんて思うのは野暮というものだ。

 

 

そう、だから遠い目線の先にいる光と良く似た女の子も、きっと自分が微かに望んでしまったことで現れた幻なのだと…そう思っていた。

 

 

「…え!?ま、舞島さんっ!?どうしてここに!?」

 

 

声も似ていて、まるで本物…よく出来た幻だ。人形達は兎も角、光とは別で行動をしているのだ。流石にこれが現実である筈がない。

 

 

「…っていうか、何引き連れてんのーーーっ!!?」

 

 

自分の今の状況を見て、慌てふためいているようだ。そりゃこんな狂気の集団に追われているのを見たら無理もない。

危険と判断した光は、自分と同じように全力で逃げ出す。正直、そこにいたら邪魔だから一刻も早くこの幻には消えて欲しいのだが…それほど自分は彼女を無意識に頼っていたということなのだろうか。

 

「えっと、こういう時のアイテムはー…あった!」

 

光は逃げながら鞄から「護符」を取り出す。あぁ、今そのアイテムこっちが欲しい…

どうせ幻なのだしくれてもいいじゃないか。そう思わずにはいられない。…幻なんだし仮に貰っても意味ないんだろうけど。

 

「あ、やば」

 

だがどうしたことか。慌てていたのか光は「護符」を手元から離してしまいそれが宙に舞う。

まさかのアクシデントにこちらも対応出来ず…

 

「…ぶふっ!?」

 

目の前に飛んできた「護符」が引っ付いてしまった。口元が塞がれて息が苦しくなる。こんな一大事時にやってくれるなこの子は…!

走りながらも急いで引っ付いた札を取り出し、邪魔をしてくる光に対し鏡介は怒りを覚える。

 

 

 

 

 

 

…ん?触れ、た…?ちょっと待て…ということはこれ…現実?目の前にいる光は…まさか…

 

 

「この光ちゃん、現実ぅ!?どうしてこんなところに!?」

 

 

「今更!?それはこっちの台詞よーーっ!!」

 

 

驚きを隠せない。こんな形で再会してしまうとは…あまりにも登場が早すぎるのではないだろうか?

だが今はそんなことを考えている暇はない。早速だがこの札、使わせて貰う。

 

 

「悪いけど、これ使うよ光ちゃん!」

 

「あー!ずるいそれ私のなのに!」

 

「黙って奢らせた罰だよ」

 

「…まぁ仕方ないか…手伝うわよ舞島さん!」

 

 

二人はそれぞれ護符で結界を張り、狂気の人形達に立ち向かうのだった。

 

 

「あ、後出来れば命連茶、分けてくれない?」

 

「え、うん…いいけど…」

 

 

 

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