人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第五十三章

紅魔館の地下一階にある大図書館にて、パチュリーと話をしてきた鏡介。

本来はそのまま帰るところだったが、何やらここの当主に歓迎されている様子なので今から会いに行くこととなった。

自分が入って来た方とは別方向にある扉からレミリアが待っている部屋に向かうように言われたので、早速そこに向かう。

 

扉を開けると、紅色の廊下が姿を見せた。相変わらず目に悪い色合いをしている。

よく見ると妖精メイド達が封印の糸を手に持ち、こちらが来るのを待っていた。成程、まずは小手調べという訳だろうか。望むところだ。

 

 

 

人形遣いである妖精メイド達との人形バトル。

苦戦することは基本なかった。寧ろ、こがさ人形の経験値となってくれて有難いくらいだ。

軽く10戦はこなしたが、大した損傷もなく突破。この戦いでこがさ人形も晴れて「スタイルチェンジ」が可能となった。

 

こがさ人形のスタイルチェンジ先は「アシスト」、「スピード」の2つ。

アシストスタイルはステータスが尖ったものにはならないようで、全体的にバランスが良く隙がない。タイプは「水」「風」タイプと、今と変わりはない。

スピードスタイルは散弾、俊敏が大きく上がるというユキ人形と似たようなステータスになるようだ。タイプも「水」、「光」に変更される。

 

そしてもう一つ、「エクストラ」。これは散弾主体から集弾主体に変わるようで、低めだった集弾のステータスが大きく上がる。タイプは「水」と「音(おと)」。

中々面白いが、今覚えている技は散弾の技ばかり。スタイルチェンジしたとして、こがさ人形は思うようにその力を発揮出来るのだろうか…?

…いや、待て。「エクストラ」のアビリティをよく見てみたら、前に一度永遠亭前で目にした「冶金術」であった。「アシスト」、「スピード」スタイルではこのアビリティは別のものへと変わってしまうが、「エクストラ」では残るらしい。

「冶金術」のアビリティの効果は、『鋼鉄技を無効化し、集弾を上げる』というもの。散弾主体であった今のこがさ人形には相性が悪いと言わざるを得なかった。

こがさ人形の見せた鍛冶の技は見事である。そしてあれは「冶金術」のアビリティがあったからこそのものだ…それを容易に崩してしまっていいのだろうか。

いっそのこと「エクストラ」スタイルにして、集弾アタッカーとして一からやり直す方が、こがさ人形の為なのではないか?

 

…よし決めた。こがさ人形のスタイルチェンジ先は、「エクストラ」にしよう。鏡介はタブレットの項目をタッチし、こがさ人形をスタイルチェンジさせる。

 

スタイルチェンジが終わると、鏡介はこがさ人形を封印の糸から出す。

封印の糸は水の塊となり、地面に着弾し水飛沫が舞い散った。そしてそこには、目を瞑ったこがさ人形が静かに佇む。

 

「おぉ、綺麗だね!」

 

鏡介はこがさ人形の登場演出に両手で拍手を送る。こがさ人形は照れ臭さそうにしつつも、喜んでくれているようだ。

そして何か違和感に気付いたこがさ人形は、自身から湧いてくる不思議な力に少し戸惑っていた。…やっぱり、そうなるよな。

 

「こがさ、やっぱり僕は鍛冶をしている時のお前が一番輝いていると思うんだよ。…最初はその力を上手く使いこなせないかもしれないけど、僕が絶対ものにして見せる。だから、一緒に頑張ろうな」

 

「…!」

 

こがさ人形は自分の言葉に驚き、そして同時に頬を赤らめる。

自分の好きなことを尊重してくれたことが何より嬉しかったこがさ人形は、その言葉に力強く頷いた。

 

スタイルチェンジをしても集弾技は覚えなかったので、しばらくは攻撃技に乏しくなってしまうだろうが、そこは戦略で補うのが一流の人形遣いというものだ。

 

 

「あれが噂の人形遣い…流石ね」

 

「人形と心を一つにしているわ。何て尊いの…無理…///」

 

「あぁ、見て!あの人形の満面の笑みを…あれで飯3杯はいけるわあたし」

 

 

遠くから見ている人形バトルに敗北した妖精メイド達は、鏡介とこがさ人形の友情パワーの波に溺れていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い廊下エリアを抜け、鏡介は次と扉の前に立つ。

今度は一体何が待ち受けているのだろう…最初は気乗りはしていなかったものの、ちょっとだけワクワクし始めている自分がいる。

 

鏡介は深呼吸すると、目の前の扉をゆっくりと開けていく。そして、一歩を踏み出した次の瞬間、

 

 

「え…!?」

 

 

何かが起動する気配を感じ、地面を見てみるとそこには魔法陣が描かれていた。

そして、謎の光が鏡介を襲う。

 

 

 

「うわあああぁぁぁーーーーっ!?」

 

 

 

光に当てられた鏡介に強烈な眩暈がやってくる。意識が遠のき、やがて倒れてしまった。

 

 

 

 

…まだ目が眩んでいる。一体何が起こったんだ?

まさか、こんなところに罠が仕掛けられていたなんて…もうないだろうと油断していたな。

こちらはレミリアの策略に、まんまと引っ掛かてしまった訳だ。…それにしても、何だこの空間は?さっきよりも広いし、やたらと家具やらが大きいな…今度は何をさせられるというのだろう?

 

 

『フフフッ…聞こえるかしら、舞島 鏡介?』

 

「!?」

 

『その様子だと、上手く起動してくれたみたいね。…ほー、結構可愛いじゃない。中は男のくせに』

 

「ぐっ…!?か、可愛いって言わないで下さい…」

 

 

どこからか、レミリアの声が聞こえてきた。

何やら水晶が宙に浮いていて、そこから観察したり話をしたりしているようだ。これは魔法の力で動いているのだろうか?

 

 

『可愛いわよ?自分の姿を鏡で見てみなさいよ。ほれっ』

 

「な、何を言って……!」

 

 

レミリアが話をしている通信魔法の水晶がこちらに近づき、鏡介の今の姿をハッキリと映し出す。

そしてそれを見た鏡介は絶句する。開いた口が塞がらないくらいには、衝撃的なものであった。

 

 

「な、な、何ですかこれ…まるで僕…」

 

『「人形みたい」…かな?えぇ、その通り。君は今、「人形」になっているのよ。パチェの開発した魔法によってね』

 

 

「…えぇーーーーーーーーーっ!?」

 

 

何ということだろう。水晶には見覚えのある愛くるしい少女の人形がいるではないか。これは確か…「ルーミア」の人形?

これが今の僕だというのか…?

 

え?何で?どういうことなの?女々しい僕に対しての嫌がらせですか?

 

頭が混乱する。頭痛がして蹲ると、水晶に映っている「るーみあ人形」も同じ仕草をしている。…見間違いであって欲しいかったが、どうやらこれは現実。

自分は今、人間ではなく「人形」となってしまった。いくら異世界でも、これはやりすぎなのではないだろうか?今流行りの「異世界転生」ってやつだよこれ。

おまけに性転換もしてしまったし…恥ずかしくて死んでしまいたい。

 

『安心なさい。試練が終わったら元に戻してあげるから』

 

「うぅ…何でこんな目に…」

 

嘆いている鏡介を尻目に、咳払いをしレミリアは話を始める。

 

『さて、そろそろ本題に入ろうか。次に君にやって貰うのは、「人形達の舞踏会」。実際に人形となることで人形達の気持ちを知り交流して、仲良くなる。これが課題よ』

 

「…人形達との…交流?」

 

『そう!人形と実際に喋れるなんて、滅多に体験出来ないでしょう?楽しそうだろう、そうだろう!?』

 

「えっと、はいそうですね…!?」

 

ぐいぐいと迫ってくる水晶に押し込まれそうにないながらも、鏡介(るーみあ人形)は返事をする。

こちらは一度「夢の世界」で経験済みなんですけどね…何て今言ったらさぞ悲しむだろうから言わないが、そういうことか。

確かに人形達と話をしたことで、こちらは前よりも一段と連携を組めるようになった。実際に効果はある。…しかし何で「舞踏会」なんだ?踊るということか?そんなの一度も経験がないんだが、大丈夫だろうか。

 

 

『まぁ、実際にやってみた方が説明するよりも早い。さぁ、舞島よ!まずは「一」の扉を進むがいい!』

 

「は、はい…!分かりました!」

 

 

ノリノリのレミリアの期待を裏切らない為にも鏡介(るーみあ人形)は言われるがままに、いつの間にかそこにあった大きく「一」と書かれている扉へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を抜けると、そこはまるで別空間。どうやら開けた森の中のようだ。これも何かしらの魔法の一種だろうか?

レミリアの言っていたことを分析するなら、ここに野生の人形がいるのだろう。

 

空を見上げると、何やら文字が浮かんできた。「課題:人形達と遊ぼう」とある。

…成程。こうやってその場所に対するお題が出てくる訳ね。

 

 

「あ!るーみあだー!いっしょに「せんたいヒーローごっこ」やろうぜー!だいちゃんもいっしょに!」

 

「わ、わたしもやるの…?あれやるの恥ずかしいよぅ」

 

 

すると早速現れた。あれは確か、「チルノ」と「大妖精」の人形だ。前に「人形解放戦線」と名乗っていたメンバー達でもある。

だが、これは人形。本人ではないのだし、気にすることもないだろう。

何やら、「戦隊ヒーローごっこ」なるものを一緒にやりたいらしい。だいようせい人形は顔を赤らめ恥ずかしそうにしているが、まぁ聞く限り健全な子供らしい遊びだと思う。

だが、いきなり言われても何をすればいいのか全く分からない。ちょっと聞いてみるか。

 

「えっと、その「戦隊ヒーローごっこ」ってどうやるの…?」

 

「なんだーわすれちゃったのか?あたいとちがってバカだなーるーみあは!」

 

「ぐっ…あ、あははーそうなんだよーどうやるか忘れちゃったんだー」

 

妖精であるチルノ…の姿をした人形に軽く馬鹿にされ、鏡介(るーみあ人形)は怒りがこみ上げたが必死に抑えて馬鹿なフリをする。

そう、これは仲良くなる為の交流…これしきで怒っていてはこの課題に合格出来ない。そうだ、自分は今ルーミアなんだ…恐らくこの二人とは友達である妖怪だ。それを忘れるな。

 

 

「しょーがないなー。チョーテンサイでサイキョーなあたいがまたおしえてやる!まずはこうポーズをとってだな…」

 

「うんうん」

 

 

ちるの人形が今からやる戦隊ごっこのやり方を数分かけてレクチャーしてくれた。

ついでに聞いた話によると現在3人しかいない為、絶賛メンバー募集中らしい。

 

 

そして学んだことだが、妖精はとにかく「あやす」ことで上手くやり取りが出来る。子供を相手にするのと同じで、コツはこちらが「馬鹿」になること。

相手の機嫌を取り、「母」のような気持ちで接するのだ。幸い自分は今、人形とはいえ「女」。もうこうなったらやってやろうじゃないか。

 

 

「よし!じゃーさっそくはじめるぞ!我らっ!」

 

「…よ、妖魔戦隊っ…」

 

 

 

「「「 ソウナノカー! 」」」

 

 

 

鏡介(るーみあ人形)、ちるの人形、だいようせい人形の三体はそれぞれ決めポーズを取り、声高々に宣言する。

相変わらずだいようせい人形は恥ずかしそうにポーズをとりプルプルと震えている。…友達の為とはいえ、何だか可哀そうだ。

 

 

こうして約数十分の間、悪役のいないヒーローごっこをやり続け意気投合した。何だか子供の頃に戻ったような懐かしい気分だ。

そして最後には握手をし、友情を育む。…これで仲良くなったであろうか?

 

 

『…うん、いいでしょう。合格!次は「二」の扉よ!』

 

 

どこからかレミリアの声が響いてきた。どうやらこれで良かったらしい。

そして目の前に、「二」と大きく描かれた扉が現れる。

 

「もうかえっちゃうのか…?」

 

「うん、ぼ…私もう行かなきゃ。すっごく楽しかったよ!」

 

「そうですか…」

 

ちるの人形とだいようせい人形が寂しそうにこちらを見つめる。

本当に短い間だったけど、何だかこちらも名残惜しい気分になってしまった。

 

「またやろうね。いつになるかは分からないけど」

 

「…あ、あたりまえだー!おまえがいちおうリーダーなんだからなー!ぜったいだぞー!」

 

「ち、ちるのちゃん…」

 

ちるの人形は泣き顔で返事をする。

…正直これが最後になるかもしれないから絶対とは言えないのだが…あまり辛気臭くしてもアレなので取り敢えず笑顔で手を振っておく。

ちるの人形も少しは安心したようで、笑顔で手を振り返してくれる。

 

 

それを見て安心した鏡介(るーみあ人形)は振り返り、「二」の扉へと進んでいくのであった。

 




…大丈夫、だよね?
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