人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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レミリアってこういう掛け声が好きそう

シロナさんみたいなの



第五十八章

 

紅魔館の主、レミリアが勝負を仕掛けてきた!

 

 

 

「 刹那より切り刻め さくや! 」

 

 

対戦相手であるレミリアが最初の人形を繰り出す。

初手は彼女の従者である「十六夜 咲夜」の姿をした人形…成程、レミリアの手持ち人形のコンセプトは紅魔館のメンバーということか。

さくや人形は腕を組みながら、静かにこちらを見据えている。クールな佇まいだ。

 

鏡介はスカウターでさくや人形を見てみる。

 

 

『名前:さくや  種族:人間  説明:完全で瀟洒な悪魔の従者』

 

 

情報が出てきた。

 

何度か見た人物ではあるので内容に特別驚きはしないが、小さくても本人にそっくりなので見ていて少し気まずい。

…だが、これは人形バトル。今はそんなことを気にしている場合ではない。

 

 

「…行け! しんみょうまる!」

 

 

こちらも先鋒の人形を繰り出す。

鏡介の掲げた封印の糸が銀色の光を放ち、輝きを増していく。

 

やがて光が収まると、バトルフィールドには既にしんみょうまる人形が立っていた。

 

 

「ほう、同じ「鋼」タイプの人形か」

 

 

レミリアの口角が僅かに上がる。

 

…あれは一体何に対しての笑いなのか?どうも気になるが、ここは焦らず慎重に行かないと。

 

 

「こちらから行くぞ! 抜打! 」

 

 

先にレミリアの方から、人形への攻撃の指示が下される。

さくや人形は懐から無数のナイフを両手に持ち、それをしんみょうまる人形に向けて勢いよく投げて来た。

 

 

「こっちも 抜打 だ!」

 

 

負けじとこちらも同様の技でさくや人形の攻撃を迎え撃つ。

しんみょうまる人形は針の形をした剣気を周りに出すと、それを一斉に放った。

 

 

さくや人形のナイフ、しんみょうまる人形の針。二つの弾幕がぶつかり合う。

 

ぶつかり合う中でナイフと針は互いに消滅していく。しかし…

 

「…押し負けてる!?」

 

さくや人形のナイフ攻撃の相殺に対し、こちらの針の方が明らかに消耗が激しい。

 

攻撃をしているしんみょうまる人形の苦しそうな顔と、さくや人形の余裕の表情が、その力の差を物語っていた。

 

「…しんみょうまる! 鉄壁之構(てっぺきのかまえ)!」

 

このままではマズイと判断した鏡介は、すぐさま別の指示を出した。

指示を受けたしんみょうまる人形は、攻撃の手を止めて自身の体を鋼鉄にして防御の姿勢をとる。

 

一斉に襲い掛かるナイフ攻撃をその身一つで受け止めて、何とか軽症で済ませることに成功した。

 

 

「いい判断だ。あのままでは間違いなく直撃だったろう」

 

「…結構ギリギリでしたけどね」

 

 

まさか、同じ技でここまで差が出るとは思わなかった。

あのさくや人形…かなり鍛えられている。…いや、「アビリティ」の効果の可能性もあるか?

いくら何でも「抜打」であれは威力が高すぎる。あの技は出が早いが、威力はそれほどない。ここの野生で出会った時とは明らかに何かが違う。

 

流石「スタイルチェンジ」を果たした人形…これは一筋縄ではいかなそうだ。

 

 

「(…どうやら「抜打」のあの威力に疑問を持っているようだな。流石無敗の人形遣い、勘が鋭いな)」

 

 

鏡介の観察力に、レミリアは心の中で賞賛の言葉を贈る。

 

このさくや人形は「兵法者(へいほうしゃ)」というアビリティを持っており、威力の低い技であろうと高い火力を引き出せる。

完全で瀟洒な咲夜らしい、テクニカルなアビリティだ。

 

だが今それが分かったところで相手が有利になった訳ではない。むしろ、絶望をプレゼントしたようなものだ。

何せ、このアビリティにデメリットなど一切ないのだから。

 

「(…だが、妙だな。あの人形、しかも「ディフェンス」スタイルということはつまり…)」

 

しかしレミリアの方も鏡介の人形に対し疑問が生まれる。

人形について様々な知識を身に付けたレミリアは、あのお椀の人形が持っている「アビリティ」も把握済み…だからこそ、さっきの攻撃に違和感を感じた。

 

「(…いや、ありえない。わざわざあの強力なアビリティを捨てているとは思えない…いや、しかし……)」

 

限りなく低い、ゼロにも近いもう一つの可能性が、レミリアの判断を鈍らせる。

たった一つの行動が、このバトルフィールドに強い緊張感を生んだ。

 

「フフッ…面白いな、舞島 鏡介。今の攻撃、狙ってやったのか?だとしたら、物凄い才能だよ」

 

「…!」

 

レミリアの言葉に鏡介は驚きを示す。レミリアが先程のこちらの攻撃に違和感を覚えたらしい。

まさか、作戦がバレてしまったとでもいうのか?…いや、まだあくまで疑っているだけかもしれない。ここはしらばっくれよう。

 

「さぁ、どうでしょうね?」

 

「…ハハッ!成程成程!やはり君は面白い…これは、一筋縄ではいかなそうだなっ!」

 

こちらの返答に対し、笑いつつも闘志を燃やすレミリア。

 

それを合図に、2ターン目が始まっていく。

 

 

 

 

 

 

「今度はこちらから! しんみょうまる! 集中之構(しゅうちゅうのかまえ!)」

 

「!?」

 

指示を受けたしんみょうまる人形は、輝針剣を目の前に翳し瞑想する。

攻撃ではなく、強化を選択した鏡介に不意を突かれるも、レミリアはその隙だらけな的を決して見逃さずに攻撃に転じた。

 

「十文字(じゅうもんじ) で切り刻めっ!」

 

指示を受けたさくや人形は、両手にナイフを構えて突撃する。

 

その場を動かず、目を閉じて集中するしんみょうまる人形。敵が迫って来ようと動じず、ただひたすらその時を待つ。

 

 

「………よし!間に合った! ザ・リッパー で弾くんだ!」

 

 

しんみょうまる人形の目が見開き強化を果たしたのを確認した鏡介は、続け様に迫り来るさくや人形を迎撃する。

しんみょうまる人形はさくや人形のナイフによる二連撃を輝針剣で見事にいなし、攻撃を防いだ。

 

「ちっ…遅かったか」

 

僅かに判断が遅れたせいで敵の強化を許してしまったのを、レミリアは後悔する。

 

「(…あの場面で強化を選択したということは、やはりあの人形…可能性は高いわね。でも、この人形はここで落とさないといずれ劣勢になる…)」

 

レミリアは思考を巡らせる。

一見こちらが有利なこの対面、恐れることはない筈なのに…何かが引っ掛かる。何故、こちらの攻撃を誘ってきた?まるで何かを狙っているかのような立ち回りだ。

素直に「大地」技の攻撃を仕掛けて来ないのが不思議だ。それに、あのお椀の人形のアビリティの性質上、強化などせずとも十分な威力を出せる筈なのに?

 

「(…これはほぼ確定で、私の嫌な予感が当たってしまいそうかしら)」

 

勝ち筋を見い出せ…彼がそれを狙っているとして、どうすれば一矢報いれるだろう?今の敵の強化状況は…集弾と集防、そして命中も上がってしまっている。

自分の人形は集弾型…この状況は不利と言える。さくや人形ステータスを加味すると、反撃に一発は耐えられるだろう。…となれば、賭けに出るしかなさそうだ。

このままあちらのペースになってしまったら、状況がどんどん不利になってしまう。ここはもう大胆に攻めに転じる…!

 

 

「さくや! ダンシングソード!標的を確実に排除しろ!」

 

 

レミリアの怒号と共にさくや人形は両手にナイフを構え、それを天に掲げる。

すると小さなナイフから気が溢れて徐々に形に成していき、やがてそれは大きな剣へと姿を変えていった。

 

そして相手を切り裂くべく、さくや人形はこちらに真っすぐ突撃してくる。

 

 

「(…!来た!)」

 

 

鏡介はさくや人形の攻撃を見て身構える。

これは恐怖ではない。むしろ、この攻撃が来るのをずっと待っていたのだ。

 

 

そう。この日の為に、わざわざしんみょうまる人形の「アビリティ」を変えたのだから。

 

 

 

『アビリティ:達人の体捌き(たつじんのたいさばき)  発動。』

 

 

 

確かにその時、さくや人形の刃はしんみょうまる人形に振りかかった。

 

だかその刹那、しんみょうまる人形は攻撃を限りなく少ない動きで回避し、さくや人形の後ろを取る。

 

「…くっ!やはり、そういうことか!」

 

「そのまま投げ飛ばせ! しんみょうまる!」

 

指示を受け、笑顔で返したしんみょうまる人形はさくや人形を両手で押さえ込んだ後、力一杯に上へと投げ飛ばした。

上がった集弾のステータスの効果で抵抗が出来なかったさくや人形は、宙に放り出されてしまう。

 

「これなら外さない! 行け! ロイヤルプリズム!」

 

しんみょうまる人形の持つ輝針剣から無数の虹色のレーザーを放った。

地上にいるなら兎も角、空中ではこの攻撃を避けようがない。貰った…!

 

 

「…舐めるな!これを予想出来なかった私ではない! リフレクションミラー!」

 

 

宙に放り出されたさくや人形はレミリアの指示を受け、何とか体制を整え直した。

そして背後に鏡のようなものを生成し、しんみょうまる人形の攻撃に備える。

 

「な、何だあれは!?」

 

防御技の一種か?それにしては生成された位置がおかしい…どういった技なんだ?

 

鏡介が疑問に思っているのも束の間、さくや人形にレーザー攻撃が命中していく。

身を守る技ではなさそうに見える…では一体何だというのだ?

 

さくや人形の様子を見るに、何か我慢をしているようにも…

 

「…はっ!?ま、不味い! しんみょうまる! やせ我慢!」

 

鏡介はふと蘇ったポケ〇ン知識から、急ぎ防御の指示を下す。

 

指示を受けたしんみょうまる人形は戸惑いつつも、それに従い我慢する体制を整える。

 

すると次の瞬間、天から銀色の光線が降り注ぎ、しんみょうまる人形を容赦なく襲った。

激しい銀の光がこのバトルフィールドを激しく照らし出し、やがて何も見えなくなる。

 

 

 

 

 

 

…しばらくして、光は徐々に収まっていった。

 

様子を確認すると、しんみょうまる人形は苦しそうにしつつも何とかあの攻撃をやり過ごしたようだ。

…少しでも指示が遅れていたらやられていただろう。本当に危ないところだった。

 

「…まさか、この攻撃にも対応してくるとはな。こいつの隠し玉だったのだが」

 

「成程、通りで素直に攻撃してくれた訳です。これが狙いだったんですね」

 

こちらの反撃をあえて受け入れてのカウンター技。

「やせ我慢」があるしんみょうまる人形だから良かったものの、他の人形で受けていたら間違いなくやられていた。

 

「持たせて正解でしたよ。「生命の符」を」

 

ボロボロになったしんみょうまる人形は懐から「生命の符」を取り出し、耐久を回復した。

…とはいっても、少ししか回復は出来ていない。

 

さくや人形も強化された「ロイヤルプリズム」をまともに受け、足がふらついている。今の状況は五分五分と言えよう。

 

「(これで実質、「闘」技は封じられた。「リフレクションミラー」も、さくや人形の耐久が十分にないと意味がない……と、なると)」

 

 

「 さくや! 八幡神の加護(やはたしんのかご)! 」

 

「 しんみょうまる! 集中之構! 」

 

 

鏡介とレミリアは全く同じタイミングで強化技を指示した。

 

「…考えていることは一緒ということか」

 

「そうみたいですね」

 

さくや人形の後ろに古の神が現れ、対象者に力を与える。

 

しんみょうまる人形は目を閉じて瞑想を始める。

 

 

 

「「  ザ・リッパー!!  」」

 

 

 

そして、両者は同時に同じ攻撃技を選択する。

 

二体の人形はそれぞれの持つ刃を構え突撃し、そして一太刀交えた。剣とナイフの鬩ぎ合いが始まる。

両者一歩も譲らず、互いに押しては押されを繰り返しながら顔を近付けて相手を睨み合う。

 

やがてキリがないと判断した二体は、一旦距離を置いて次は斬り合いに発展させる。

しんみょうまる人形の輝針剣と、さくや人形のナイフの刃が激しく弾き合う金属音が、このバトルフィールドに戦いの旋律を奏でていた。

 

「頑張れ! しんみょうまる!」

 

「……」

 

鏡介は鼓舞をし、レミリアは静かに見守って戦いの行く末を見届ける。

 

 

そして弾き合う音が途切れた瞬間、一つの刃が宙に舞っていく。

それは一本のナイフであった。

 

無防備になったさくや人形にしんみょうまる人形は輝針剣を構え、横一文字に切り裂く。

 

背中を向け合う中、攻撃を受けたさくや人形はしばらく立ち尽くすが、やがて静かに倒れ込む。戦闘不能だ。

 

 

『…さくや人形、戦闘不能。しんみょうまる人形の勝ち、ね』

 

 

審判替わりに来たのだろう。いつの間にか来ていた浮遊している魔法水晶の中から、パチュリーの声が響く。

 

 

レミリアの手持ち人形、残り2体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…強い。流石だ、舞島 鏡介!これは期待以上だ!」

 

 

自分の人形が負けたにも拘らず、レミリアは嬉しそうにしていた。

負けたことよりも遥かに、強い者への出会いの喜びの方が上回っているのだろう。

 

「これでもかなり鍛えたつもりだったがな…まだまだということか。人形バトルは奥が深い…」

 

「…まだ勝負はついていませんよ」

 

「フフッ、そうだな。…しかし、その人形は厄介だ。ここで退場願おう」

 

 

「 ゆけ! 殺戮の破壊者 フランドール! 」

 

 

そう言うとレミリアはさくや人形を封印の糸に戻し、次の人形を繰り出す。

金髪のサイドテールに、赤と白の洋風の服装。そして、背中に生えている色鮮やかな宝石の羽が生えていた。

 

スカウターで見てみる。

 

 

『名前:フランドール  種族:吸血鬼  説明:気がふれている悪魔の妹』

 

 

情報が出てきた。

 

悪魔の妹…ということは、レミリアと関係がある人物なのか?

一見可愛らしい見た目だが、何だろう。あの人形から感じる殺気というか…光のげんげつ人形に似た狂暴性を感じる。

 

「さぁ、第二ラウンドだ! フランドール! オーバーレイ!」

 

レミリアが指示を出すと、フランドール人形は無数の閃光弾幕をしんみょうまる人形に放った。

 

「抜打 で迎え撃て!」

 

あの技を食らえば、耐久の減ったしんみょうまる人形はとても耐えられない。レミリアの言葉から察するに、「鋼」の存在が厄介なのだろう。

鏡介は出の早い技で、閃光弾幕を打ち落とすべくしんみょうまる人形に指示を出した。

 

閃光弾幕と針がぶつかり合うが、さくや人形と同じように徐々に押し負けている。強化したにも関わらず、だ。

フランドール人形のパワーがずば抜けているのもそうだが、やはり先程のダメージが響いてしまっているらしい。

 

「 鉄壁之構! 」

 

少しでも耐える為に、鏡介は同じように防御の指示を出す。

 

 

「ぬるい! ダークネススイーツ!」

 

 

しかし、レミリアはその行動を読んでいた。

「オーバーレイ」を耐えているしんみょうまる人形に拡散技の攻撃を無慈悲に、身動きの取れない相手に放った。

 

「…!」

 

やられた。そう思った時にはもう、しんみょうまる人形は闇の渦に捕らわれその体を蝕まれていた。

しんみょうまる人形の苦しむ悲痛な声が、バトルフィールドに絶望を与える。

 

 

そして、闇の渦から解放されたしんみょうまる人形はそのまま膝をつき倒れてしまう。

 

 

『…しんみょうまる人形、戦闘不能。フランドール人形の勝ち。まぁ、もう既に限界だったようだしね』

 

 

人形の様子を水晶越しに確認したパチュリーは、静かに判決を下した。

 

 

鏡介の手持ち人形、残り2体。

 

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