人間と人形の幻想演舞 作:天衣
あと投稿が空いてしまい、申し訳ありません!
ここは博麗神社。
この幻想郷にとって最も重要な場所であり、「博麗の巫女」である「博麗 霊夢」の住む住居でもある。
霊夢は今日も縁側でのんびりとお茶を飲んでいた。
「…ふぅ」
季節は春になろうという時期。
温かい日差しとまだ少し寒い外風に包まれる中、霊夢はこの時間をじっくりと堪能する。
手元にある和菓子を一口頬張ると、その次にお茶を一杯啜った。…美味しい。そう呟き、また和菓子を手に持ち一口…そしてお茶。これをしばらく繰り返していく。
霊夢にとってこの時間は至高の一時であり、一番の幸せである。
この頃、どうやら異変の予兆は見られないようだ。平和なのはいいことだが、仕事がないのも事実。
「異変解決」を生業にしている身としては、正直複雑なところである。
だが魔理沙みたいに他にやることがある訳でもないし、あったとしてもそれをやる気もない。
そう、つまりはこれでいいのだ。「異変」も、「他にやること」も、何もない。結構ではないか。
「…まぁ、お陰で稼ぎがなくてお金が尽きかけているんだけどね。はぁ…」
だが霊夢は自分が置かれている状況を冷静に考え、現実に直面する。
最後に貰ったのは…永琳からだろうか。あの異変は大変だった。というか、聞いていた話と違う。
「月の偵察部隊」、「夢の世界の番人」、「無口な月の賢者」、「地獄の妖精と女神」、「仙霊?」と今回も濃い連中の集まり…過去一番に苦戦したかもしれない。
いざ解決しても報酬が冒したリスクに全く見合っていない。ふざけるな。
ふと一連を思い出すとイライラしてきた。
「あーあ、早く異変起きないかなぁ…」
先程の思いとは全く矛盾したことを、霊夢は寝そべりながら呟く。
そして青空を見上げ、その眩しさに手を翳しながら大きく溜息を吐いた。
「…?何アレ……」
霊夢は空から何かが降っていることに気が付く。そして、
「ふぐぅっ!?」
それは彼女の顔面に落ちてきた。
完全に無防備であった為、対応出来ずに接近を許してしまう。…こんな姿、誰にも見られなくてよかった。
当たった感触は軽く、そして柔らかい。一体何が落ちてきたというのか?
霊夢はそのまま起き上がり、その正体を確認すべく両手で顔から引き離す。
「……っ!」
霊夢は落ちてきた物の正体を見て、言葉を失う。何せそれは、
「…何よ、これ……」
自分にそっくりの、小さな人形だったのだから。
「うーん…」
「異変起きろ」と思った矢先に、如何にもな存在が落ちてきた。
姿を見る限り、これはアリスの持っている「人形」と少し似ているが…?
物珍しいのでしばらく観察していると、その「人形」はまるで自分の意思で動いているような動きを見せた。
大きく欠伸をし、その場で横になって寝そべり始める。
「…行儀悪っ!?いくら私でもあんな…いや、う~ん……天気がいいと偶にやる…かも………っ!?」
霊夢に似た人形は寝そべった体制のまま、横の置いてある茶菓子に手を伸ばそうとしていることに気が付く。
「させるかぁーーーっ!!!」
霊夢にとって、その茶菓子は明日を生きていく為の貴重な食糧だ。断じて他の者に取られたくはない。
霊夢は素早い動きで懐からお札を出し、それを人形に向かって放った。
致し方ない。可哀そうではあるが、少々痛い目にあって貰う。
「えっ!?」
しかし何ということか。お札が人形に命中する瞬間、周りに結界が展開されてその攻撃を防がれてしまう。
霊夢はこの時、人形が自分自身を模してあるだけの存在ではないことに気付かせれることになる。
結界は自分の十八番…この人形もどうやらそれを使うことが出来るみたいだ。…しかし、どのタイミングで張ったのだろう?予備動作が一切なかったように見える。
「…なら、取り上げるまでっ!」
攻撃が通用しないと判断した霊夢は、茶菓子とお茶が乗っている木製の受け皿を飛翔しながら回収する。その間、僅か一秒。
茶菓子を掴んだと思っていた人形の手元が空を切った。そのことに驚く人形は大きな影があることに気付き、自然と上空を見上げる。
「ふん、ここならあんたも手の出しようがないでしょう?いい気味ねっ!」
「…~~~!!」
勝ち誇る霊夢に、人形は頬を膨らませている。どうやら怒っているようだ。
…どうやらこの人形は「飛翔」をすることが出来ないらしい。対抗して飛んでこないのがいい証拠だ。
「まぁ、兎に角これで明日の糧を死守出来たわね…って!?」
安心していた矢先に、人形がこちらに向かって弾幕を撃ってきていた。霊夢は間一髪、攻撃をかわす。
その弾幕は赤色で一転を集中するように放たれており、霊夢の得意とする「札」や「針」の攻撃ではなかった。
…ということは、あれは自分の分身…という訳ではないのか?
霊夢は人形の弾幕攻撃を避けながら、思考を巡らせる。
あの生き物が何者であるのか…仮に異変によって生まれたものであるとして、どうして自分とそっくりな姿をしているのか。
今までにないタイプの異変と言える。主犯者は私のことを知っている人物…新たな幻想郷の侵略者という訳ではなさそうだ。
こういったものを作ることが出来る人物といえば…
「…!」
すると突然、気の抜ける音が聞こえて来た。…それは霊夢にとって聞き馴染みのあるものだったが、鳴らしたのは霊夢自身ではない。
「……キュ~…」
人形からだった。弾幕を打ち続けて疲れた、というよりかは…
「あいつ、もしかしてお腹減ってるの?」
空腹で今にも倒れてしまいそう、といったところだろう。しばらくすると人形は耐えられなくなったのか、そのまま横になり動かなくなる。
その様子を見て、霊夢は呆気にとられつつ地上に降り立つ。拍子抜けにも程があった。
「おーい」
霊夢はしゃがみ込んで倒れた人形を指で突いてみる。すると、微かに動くと同時に情けない声を上げた。…もう本当に動けない程の空腹らしい。
その様子を見て霊夢は溜息を吐き、頭を搔く。…どうやらそこまで警戒する程のものでもなかったようだ。
「さて、どうしたもんかなぁこいつ。…それにしても、見れば見る程そっくりね私に…そしてそれを私に仕向けるなんて、相手も趣味悪いわね」
この刺客を送った相手は、恐らく自分と同じ姿をした者を攻撃しないと踏んだのだろう。…まぁ実際その狙いは的中しており、ためらっている自分はいたのだが。
しかし、そうなると何故この人形は最初から空腹なのだろうか?これも作戦…?相手の油断を誘うものの可能性も…しかしこの姿を見るに、それも何か違う気がする。
考えれば考える程、この生き物の謎は深まるばかりだった。
「…まぁいっか。ほっておきましょ」
そして面倒になった霊夢は、その人形を一日中放置することにした。
翌日。
今日も霊夢は縁側でゆっくりしていた。いつもと変わらない風景を楽しみ、有意義な時間を過ごしてる。
「……あー、そうだった」
いや、変わっているところが一つあった。目の前に小さな自分とそっくりの生き物が転がっている。
昨日放置して、そのままの状態だ。どうやらあれから一歩も動いていないらしい。…死んでしまっただろうか?
そう思い観察してみると、まだ微かに動いている。だが昨日より弱っているようだ。このままだと本当に死んでしまうかもしれない。
ふと、小鳥が人形に止まった…ツンツンされている。餌だと思われているようだ。
人形はそれにピクピクと反応を示し、それにビックリした小鳥は飛び去る。
…何だか、段々と哀れに感じて来た。自分の姿をしているせいで余計にそう思う。
「はぁ、しょうがないわね。全く…」
見ていられなくなった霊夢は手元にある煎餅を一枚取り出し、人形の元へ駆け寄る。
そして人形を足で転がし、仰向けにした。
「食べる?」
「……!」
霊夢に煎餅を渡された人形はそれは嬉しそうにしていて、幸せそうに頬張っていたそうな。