人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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断章6

ここは博麗神社で開催された「東方人形劇」の舞台会場。

 

今回は観客の身として応援している幻想郷の少女達と共に二回戦を観戦している。

 

 

 

人形のことについて、分かったことは主に3つ。

 

 

「人形には人形の攻撃しか効果がない」、「本物には程遠いが、元になった人物の能力を扱える」、「人形は戦いを得て成長する」。

 

 

最初の情報はある程度予想は付いていたが、後の2つの情報は大きい。

まさか、姿だけでなく自分達の持つ能力まで模倣されているなんて思わなかった。あれは追い詰められた時の防衛反応だったのだろうか…?

さくや人形はそれを使い、迫り来る弾幕を自身の武器で迎撃、そして反撃してみせた。最初は弾幕しか使えていなかったのに、だ。

つまりさくや人形は、あの戦いの中で新しい攻撃手段を身に着けたということになる。成長したと言っていいだろう。

 

 

「ありす人形!!ここで防御の技を使い、うどんげ人形の攻撃をやり過ごしたぁ!!」

 

 

 

「いいぞアリスーー!!」

 

「うどんげぇーー負けたら許さないわよーーー!!」

 

 

てゐの司会のもと、盛り上がりを見せている第二回戦。

 

「早苗」、「アリス」、「鈴仙」の人形の戦いは、今のところこちらが見たものとはあまり変わり映えはしない。情報ゼロだ。

観客にとってはこれはただの余興だが、こちらにとっては真面目な調査に他ならない。だから、見ていて楽しいものはない。

早く人形について有力な情報を引き出したいところなのだが…まぁそう上手くはいかないらしい。

 

この二回戦の戦いで人形の使った技は、赤と青の弾幕。そしてありす人形がさっき使った防御結界。一回戦で見たものとそう変わらない。

気になることといえば、ありす人形がさなえ人形の青い弾幕に対しては先程の防御結界を使わなかったことくらいだ。

何か理由があるのかは分からないが、もしかすると自分の人形が使ったのとは性質が違ったりするのだろうか…?

 

そう考えると人形が使う技は種類が多く、そして複雑なのかもしれない。あくまでまだ仮定だが。

 

 

「…お、おおっと!!?うどんげ人形、突然白く輝きだしたぁ!!これは一体!?」

 

 

 

「何だ何だ?」

 

「大技かしら!?」

 

 

大きな動きがないかと思った矢先だった。うどんげ人形が白いオーラを纏い、瞳を紅く光らせ始めた。人形は漲ったかのように両腕を引き締め、力を解放しているように見える。戦いの中で成長したのか…?

何か技を繰り出す準備をしているのかもしれない…だが、何だろう。それにしてはアレに見覚えがあるような…それも最近。

 

「純狐ったら容赦ないわねぇ」

 

「出たッ!これはもう勝ちですねぇご主人様!!」

 

白く輝きだしたうどんげ人形は次の瞬間、目にも止まらないスピードでありす人形の背後を取る。

反応が出来なかったありす人形は辺りを見回し後ろにいることに気が付くも、すでに遅く強力な紫の弾幕攻撃を直に食らってしまった。そして張ってある結界に激しく衝突し、そのまま地面に落下する。

てゐが様子を確認したところ、どうやら一撃でやられてしまったみたいだ。

 

 

「な、何ですかアレ…!?まるでスーパーサイ〇人みたいですよー!?……アレ?でも何か見たことありますねぇ?」

 

「さ、さい〇じん?…それは兎も角、あの力…何か変よ」

 

 

持ち主である純狐の方を見てみると、何やら不敵な笑みを浮かべている。人形と同じ白いオーラを纏いながら…

 

 

……そうだ。そうだった…!この既視感の正体が分かった。

 

 

「悪いわね。この勝負、私の勝ちだ」

 

 

純狐がそう口にした時、うどんげ人形は自身の分身をさなえ人形の周りに作り出し、取り囲んでいた。さなえ人形はその光景に恐怖し、動けないでいる。

無数のうどんげ人形が指先の銃口を向けると、無慈悲な紫弾幕の嵐がさなえ人形を襲った。無数の爆発音が会場に響き渡る。

 

 

「私の人形~~~~~~~ッ!!?」

 

 

 

「ざまぁないわねん♪」

 

「ヒューー!!イッツ、ルナティックターーーイムッ!!!」

 

 

一部は盛り上がっているようだが、成程。

だから快くこのイベントに参加したのか。道理で素直だと思った。

 

 

 

静寂の中、やがて爆風は収まりバトルフィールドの様子が写される。

激しい攻撃を受けたさなえ人形はボロボロとなって倒れており、その近くには元に戻っているうどんげ人形の姿があった。

しかしうどんげ人形はさっきから辺りを何度も見回している。どうやら、今のフィールドの状況を見て困惑している様子だった。

もしや、純弧から力を与えられたことに今まで気付いていなかったのだろうか?

 

 

「………ハッ!?し、失礼!!あまりの急展開に実況を忘れておりました…!白く輝く出してから一変、圧倒的な力を見せつけたぁ!!まさかの展開ですッ!!」

 

 

「勝者、うどんげ人形ーーーッ!!!」

 

 

 

 

「な、何か知らんがスゲーーーー!!!?」

 

「穴場に賭けて正解だったわ!」

 

「おいおい、そんなの有りかよぉ!?」

 

 

放心気味だった会場の空気がてゐの司会により、一気に歓声が沸き上がった。

急な大声にビックリしたうどんげ人形は恐くなったのか、純狐の元へ逃げるように走り去っていく。

 

純狐は嬉しそうに人形を抱き抱えると、会場の方を見つめる。その視線の先は…どうやら自分のようだ。

こちらへ不敵に笑みを浮かべると、うどんげ人形の頭を撫でながら背中を向けて会場を後にしていく。…察するに今のは、「次はお前だ」といったところか?

 

 

…別に勝ち負けに拘ってはいないが、まぁ決勝戦も頑張りますか。主に人形が、だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波乱の展開で幕を閉じた、「東方人形劇」第二回戦。

純弧の持つうどんげ人形が勝利し、いよいよ勝者同士で争う決勝戦が始まろうとしている。

 

 

二回戦の戦いでこちらが得た情報は、「人形の潜在能力」。

それは、奇しくも純狐の使った「純化する程度の能力」で垣間見ることとなった。

 

「純化」とは、その生物の持つ純粋な力が引き出された状態らしい。

そして、純弧はそれを自在に操ることが可能な人物だ。うどんげ人形があのバトルで見せた強力な力…あれは間違いなくそれだろう。

つまり人形という生き物は、あそこまでの潜在能力を秘めた存在ということ…それに加え、一回戦で見た人形の学習能力の高さ。

この二つの特性から考えるに、人形の厄介さはこちらの想像を超えている。

 

もしも強力な力を持つ人形達が幻想郷で暴れ回ったとしたら…手に負えなくなってしまうのは容易に想像出来る。

そうなってしまったとして、私や魔理沙達でもどうにか出来なかったとしたら……駄目だ。どんどん悪い方向へと考えてしまう。

 

 

紫の奴はどうしてこれを放置しているのかが分からない。

まぁ、あいつの考えていることなんて誰も分かりやしないが、少なくとも幻想郷の脅威となるものは容赦しない筈の彼女が動いていないのはおかしい。

寧ろ人形という存在を早くも受け入れている…そういう風にも見えるではないか。

 

人形の脅威は、私の思い過ごしだとでも言うのか?

私は正直、人形が恐ろしい。こちらが直接攻撃して倒すことが出来ない相手なんて、今まで誰もいなかった。

今までそれが当たり前だったし、これからもそれが続くのだと思っていた。それが突然変わってしまうなんて誰が想像出来る?

 

 

 

「さぁこの「東方人形劇」、残す試合も後一試合となりました!!!果たして勝つのはどちらか!?予想の外れた方も是非、この戦いを最後まで見届けて下さいッ!!」

 

 

 

こちらが焦心に駆られている一方で、てゐの司会と観客の歓声が会場に響く。

最初は何とも思っていなかった声も、今では耳障りに感じてしまう。まるでこちらの心情など、どうでもいいと言わんばかりではないか。何とも苛立ちを感じる。

 

すると、何やら軽く触れられた感触が肩から伝わって来た。…れいむ人形だ。こちらを見つめ、心配そうにしている。

 

「苛立ちの原因はお前だ」

 

そう言おうと思ったのだが…口が静止を掛ける。何故だろう…いつもならハッキリものを言う私が一体どうしたことか。

情が沸いたとでも言うのか…?らしくない。本当にらしくない。こいつとはたった一ヶ月過ごしただけなのに。

 

人形にそっと手を添え、大丈夫だという気持ちを伝えてみる。

するとまぁ、何とも嬉しそうな顔を浮かべるではないか。だらしない顔をして…情けないったらない。これから戦うやつの姿とは思えないな。

 

 

 

「では早速ご登場願いましょう!!まずは何とも盛り上がりに欠けましたが、一切傷を負わずにここまで勝ち進んだラッキーガール!!」

 

「 博麗 霊夢 & れいむ人形ぉーーーッ!!! 」

 

 

 

司会であるてゐの軽い選手紹介の元、戦いの舞台へと足を進める。

その際、高い声援が聞こえて思わず少しだけたじろいでしまった。決勝戦だからか、先程よりも注目度が高いのだろうか?

てゐの紹介は実に気に食わないものであるが、決して間違ったことは言っていないから困る。まぁ今回は一対一の勝負だから、無傷とはいかないのではないだろうか。

 

 

 

「続きましてぇ、謎の力で他を圧倒した今大会のダークホースッ!!」

 

「 純狐 & うどんげ人形ぉーーーーッ!!! 」

 

 

 

反対側からゆっくりと、純狐が人形を抱えながら入場してくる。

声援を送られているにも拘らず、人形と戯れ自分の世界に没入しているようだ。

…そしてよく見ると、うどんげ人形の髪型が変わっている。ロングヘアーから短めのボブにしているようだが、アレは彼女の趣味か?

戦いに備えて邪魔な髪を切ったという可能性もなくはないが、恐らく髪型を変えたのは前者が理由だろう。何せ、あの溺愛っぷりだ。

うどんげ人形はすっかり彼女の玩具にされてしまっているが、人形はそんなに嫌そうではない様子に見える。むしろ、お洒落して貰って喜んでいるくらいだ。

 

そして今、決勝で戦う二人がバトルフィールドに揃った。

 

 

「よろしく」

 

「フフッ…うどんちゃん可愛い…フフフッ」

 

「……」

 

 

一応、純狐に声を掛けてみたが反応はなし。二回戦の時はこちらへ睨みをきかせていた癖に、こちらからだとこれか。

そんなに人形が可愛いか?勝つ自信があるからが故の余裕という奴だろうか?随分と舐められたものだ。

 

 

「…ねぇ」

 

「?」

 

「あいつの人形、ぶっ飛ばしなさい。いいわね?」

 

 

自身の人形に喝を入れる。

その言葉にれいむ人形は片腕をまっすぐ伸ばし、元気よく返事をした。

 

久々だ。こんなに誰かにムカついたのは。この大会が始まって以来、鬱憤が溜まっているのもあって余計にそう感じる。

神社が局地的な地震で壊された時と同じくらいか?戦うのが私でないのが残念でならない。

 

 

「さぁ、今バトルフィールドに二体の人形が揃いました!!果たして、優勝はどちらの手になるのかぁ!!?」

 

 

れいむ人形とうどんげ人形はバトルフィールドに放たれると、互いを睨みつけ火花を散らせた。

人形達による「ウルトラ有頂天セット」を掛けた壮絶な戦いも、いよいよ最後となる。

 

 

「 「東方人形劇」決勝戦 !! れいむ人形 対 うどんげ人形 !! 」

 

 

「レディ…………」

 

 

「ファイッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東方人形劇」の決勝戦が始まった。

 

 

「お前には万一の勝機もありはしない」

 

 

純狐は試合開始と同時に、自身の「純化」の能力を発動させる。

自身を白く輝かせると、うどんげ人形の体も同じ光を纏わせて限界を超える強化を果たした。

 

 

「純狐選手!!二回戦で一気に勝負を決めた強化術を早速使っていくぅ!!れいむ人形果たしてこれを打ち破れるのかぁ!!?」

 

 

人形は瞳を紅く光らせ身体を宙に浮かせると、自身の分身を何体も作り出してれいむ人形へと襲い掛かる。

うどんげ人形とその分身達は指先から赤い弾幕を放つ。同じ攻撃でも、圧倒的な物量でそれは凶悪な広範囲攻撃へと変わっていた。

当然れいむ人形は避ける選択をとるが、徐々にジリ貧になっていくのが分かる。そして、何発か被弾してしまった。

 

 

「…右上ッ!!そこに隙間があるわ!避けて!!」

 

 

気が付いたら私は、人形に安全な地帯へ誘導する指示を出してしまっていた。

あのままだとやられる…そう思ったら、口が勝手に動いてしまったらしい。自分自身、今取った行動に驚いている。

 

指示を受けたれいむ人形は、言う通りにその弾幕の隙間へ逃げ込むことで何とか被弾を免れる。

そして人形はこちらを見つめると、感謝しているのか笑顔を向けて来た。

 

 

「……ッ!?」

 

 

その時、頭から何か情報が伝わってくるような感覚がして、軽い痛みが頭に走った。何だ…今のは?

これは…人形の情報?「陰の気力(いんのきりょく)」、「障壁強化(しょうへきょうか)」…一体何のことだ?

 

人形が私にこれを伝えて来たとでも言うのか?…この言葉が何を意味するのかは分からない。

でも、人形にとって重要な情報…そんな気がする。博麗の巫女の勘が、そう言っている。

 

 

「……れいむ!あの右側の人形に 陰の気力 !!」

 

 

先程得た情報から、勘で人形に攻撃が出来そうな対象に指示を出してみる。

するとれいむ人形がその言葉に頷き、赤い弾幕で攻撃を仕掛けていった。その攻撃はうどんげ人形の分身へとヒットし、一体の分身を消すことに成功する。だが、攻撃したのは本体ではなかったようだ。

 

私が「陰の気力」を指示したら紅い弾幕を放った…ということは、さっきの攻撃がそれの技名ということになるのか?

 

「ほう、思ったよりやるな。ならこれはどうだ?」

 

純狐がそう言うと、攻撃を受けたうどんげ人形は更に自身の闇の虚像を作り出して月形の弾幕を仕掛けてきた。

直接指示をしている様子はない。どうやら彼女は、その能力で人形を「操っている」のだろう。こちらでは出来ない芸当だ。

 

 

「…!来るわよ!今度は 障壁強化 !!」

 

 

もう一つの技の指示を出すと人形は自身の周りにバリアを展開し、襲い掛かる月形の弾幕を防いだ。

しかし無傷とはいかないらしく、少しだけダメージを負っているのが分かった。完全防御が出来るものではないということか。

 

 

「こ、これはどうしたことでしょう!!?霊夢選手、先程から人形に直接指示を送っているぞぉ!?」

 

 

 

「何だ?さっきからあの巫女、人形に指示を出してるな」

 

「霊夢の奴、いつの間にそんな人形と意思疎通出来るようになったんだ?」

 

「すごい!人形の方もちゃんと言うこと聞いてるわ!」

 

 

放置して戦わせていた先程までのバトルスタイルの違いに、観客も徐々にざわつき始める。

先程から声高々に指令を出している為、聞こえてしまったのだろう。普通に恥ずかしい…だが、これは人形の扱い方の有力な情報となる。四の五の言ってはいられない。

 

しかし、今の状況は最悪だ。こちらが一方的に攻められ続け、先程の攻撃も本体へダメージを与えられていないのだから。

避け続けなければならない耐久スペルカードを味わっている気分だ。

 

「れいむ!分身に惑わされたら駄目よ!本体は必ず他とは何かが違う筈…よく観察しなさい!」

 

さっきまでれいむ人形は飛び回っているうどんげ人形達を慌ただしく目で追っていたが、指示をすると注意深く観察し始めた。

こうやってちゃんと言ってあげれば、人形の行動もある程度制御出来るようだ。

…でも思い返せば一緒に暮らした際に色々家事を教え、それをしっかり覚えられていた。当たり前と言えば当たり前ではあるのか。

 

 

人形の所持者が人形へと指示を出し、共に戦う。

 

最初はそんなの考えたこともなかったが、今はどうだろう?やってみるとそこまで違和感はない。

自分の中で感じるこの高揚感…一体これは何だ?分からない…分からないが、今はこの気持ちへ正直に従った方が良いと私の勘がそう言っている。

 

 

ここまで来たんだ。どうせなら、あいつをぶっ飛ばして優勝してやろうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 さぁここからどう攻めるれいむ人形!?未だうどんげ人形にダメージを与えられていませんッ!!! 」

 

 

さて、意気込んだは良いものの…試合はてゐの言う通り、まだうどんげ人形の優勢。

 

れいむ人形も健闘はしているものの未だ相手の正体は掴めないままで、こちらも分身の攻略法を見い出せずにいる。

注意深く目で追っている私やれいむ人形に対し、うどんげ人形も素早い動きで攪乱させることによって本体を悟られないようにしているようだ。

成程、相手も馬鹿ではないらしい。これは目で必死に追わせるのは止めた方が良いだろう。

 

相手は鈴仙の能力を持った人形…確か鈴仙の能力は、「狂気を操る程度の能力」。あの紅い瞳は光や音の波長を操り、幻覚などを起こすことが出来るようだ。

さっきから姿が消えたりしているのも、彼女の能力によるものだ。正直、厄介この上ない。

 

私が最初に鈴仙と対峙した時、どう攻略しただろうか…思い出せ。あの時は確か……

 

 

「……そうだ!音よ!目を閉じて耳を澄ませなさい!」

 

 

記憶から導き出した方法を指示すると、れいむ人形は目を閉じて耳の神経を集中させた。

そう、あれは見てはいけない。見て判断していたら騙される。だからかつての私は視覚ではなく、聴覚で相手を判断することにした。

…まぁ結局、最後は自分な勘を頼りに戦った気もするが。

 

鈴仙本人は「幻聴」を聴かせることも出来るが、どうやらあのうどんげ人形には出来ないようだ。

やはり、能力は人形の方が劣っているのは間違いない。まだ勝機はあるぞ。

 

 

「…!そうだ、分身でなかったら当たった時に感触がある筈…すれ違った時にも注意を払って!」

 

 

そして鈴仙と戦った際のもう一つの攻略法。

彼女はその能力を使って、本物と偽物のを織り交ぜる弾幕展開を得意としている。

本物は違和感のないよう分身と同じ動きで攻めてくるだろうが、当たった時の感触までは誤魔化せない。

鈴仙の弾幕は厄介だが、直前まで迫れば後はその時の感触でギリギリ判断することが出来た。

そしてあの人形は今、感触を誤魔化すには向いていない服装をしている。何せあのような白衣、すれ違った際には嫌でも当たってしまう。

 

 

無数のうどんげ人形の取り囲まれている中、れいむ人形は目を閉じながらも先程の指示を聞き、元気よく頷く。

そして何かに気が付いたかのようにその方向へと向き直ると、一直線に走り出した。どうやら何かを感じ取ったようだ。

その動きに合わせ、周りにいたうどんげ人形の分身達も何体か動き出す。

 

 

「 行くわよ! 陰の気力 !! 」

 

 

その人形の勘を信じ、迫り来る他の分身に向けて攻撃の指示を出した。

れいむ人形の放つ赤い弾幕は次々と分身を消していき、勢いは止まらない。うどんげ人形もそれを見て焦ったのか、自身を守らせる為に分身を一箇所に集め始めている。

やはり人形の勘は当たっていたようで、本体はれいむ人形が向かっている先にいるようだ。うどんげ人形自身がそれを教えてくれたようなものだ。

詰めが甘いというか、焦ると駄目になるのもしっかり投影されているのだろうか?何にせよ、これはチャンスだ。

 

うどんげ人形達は一斉に紫の弾幕を放ち、進行を妨げようとする。危ないかと思われたが、れいむ人形はしっかり音を聞き分け、本物に当たらずに無傷で進んでいく。

ここに来て自身の人形が覚醒していた。直接指示をせずとも、攻撃の特性を学習して判断が出来ているみたいだ。

 

 

「凄い!凄いぞれいむ人形ッ!!うどんげ人形の攻撃を紙一重で避け続け分身を消し、とうとう追い詰めたぁ!!」

 

 

 

「いけえええぇぇーーーーーーーーー!!!」

 

「負けるなれいむーーーーーーーー!!!」

 

 

会場の声援の中、遂に人形は捉えた本体の近くへと辿り着いた。

同時に頭から何か情報が流れてくる……これは…新しい技?もしや、あの一瞬で学習したというのか?

分からないが、今はこれを使った方が良い。その時何となくそう思って、その技名を力一杯叫んだ。

 

 

「 れいむ! 幻覚弾(げんかくだん) よッ!! 」

 

 

霊夢の指示を聞き、れいむ人形は手元から紫の弾幕を放つ。それはうどんげ人形が使っていたものと瓜二つで、全く同じ技であった。

まさか、相手の技を模倣したとでも言うのか?だとしたら、何という学習能力だろうか。

 

紫の弾幕は数を増していきながら正面にいる本体のうどんげ人形へと飛んでいく。

「幻覚弾」という名前の通り、幻覚で惑わせる性質の弾幕のようだ。自分には似合わないと思うが、まぁそこはあまり気にしないでおこう。

 

 

うどんげ人形には自分を守る分身がもういない。これでやっと、れいむ人形の攻撃が当たる。

 

 

そう思っていた。

 

 

「……なっ!?」

 

「!?」

 

 

れいむ人形の弾幕はすり抜け、そこにあった分身は消えていく。

そのことに私も、私の人形も驚きを隠せないでいた。まさか、あれも偽物?

 

本物は一体どこに?確かにあの方角にはいた筈だった。辺りを必死に見回すが、地上のどこにもその姿はいない。

彼女の能力は姿を消すことも可能ではあるが、あれは人形に使えるものではないだろうし使えるならとっくに使っている筈…一体どこに…!?

 

 

「……フフフ…ハハハハハッ!!」

 

 

すると、これまで沈黙を決め込んでいた純狐が突然笑い出した。どうやらあの現象は彼女の仕業らしい。一体何をしたというのか?

 

 

「あの状況からよく巻き返した。しかし、その答えにたどり着くまで思ったより時間が掛かったわね?」

 

「お前はそのまま真っすぐツッコんでくるだろうと読んでいた。勿論、私は先手を打った。もしもの時の為に、大技の準備をしていたのです」

 

 

「 不倶戴天の敵、嫦娥よ!見ているか!?この人形が間もなく倒れゆくその姿を! 」

 

 

「…くっ!?」

 

 

純狐は声高々にそう叫ぶと同時に、上空が紫色に染まる。

上を見ると、そこには紫炎を辺りに展開しているうどんげ人形の姿があった。…ということは被弾直前になって分身を作り、本体は上に逃げたということか。見事に騙された。

 

「この技はまだ消耗が激しいだろうが…お前の人形も最早避ける気力などあるまい!死ね!!」

 

「……!」

 

…駄目だ。彼女の言う通り、さっきの攻撃にすべてを賭けていた。

れいむ人形の体力はとっくに限界を迎えている…息を切らして苦しそうだ。もう、駄目なのか?

 

 

そして、うどんげ人形の無慈悲な攻撃がれいむ人形へと降り注ぐ。

 

紫炎がバトルフィールド全体を覆って、絶望がこの会場を支配した。

 

 

 

「 れ、れいむーーーーーーーーーーーーーッ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫炎はやがて収まっていき、徐々にバトルフィールドの様子が映し出されていった。

そこにれいむ人形の姿はどこにもない。

 

 

言葉を失ってしまった。

 

短い間とはいえ、ここまであいつは頑張ったのに。どうして消えなくちゃいけなかったの?私が、私がもっとしっかりしていれば…。

後悔と悲しみで思わず拳を地面に叩き付けた。何故自分のことじゃないのに、こんな気持ちになっているんだろう?今日の私、おかしいな。

 

 

「フフッ…中々楽しい余興だったわ。私としたことが、ちょっと熱くなってしまったみたい」

 

 

純狐はゆっくりと降りてくるうどんげ人形を優しく抱えた。

うどんげ人形は力を使い果たしたのか、「純化」が解けてぐったりしている。

 

 

「え、えぇっと…これは純狐選手の勝ち…でいいのでしょうか?どうやら、れいむ人形は跡形もなくやられてしまったようですし…どう思いますか?解説の針妙丸さん?」

 

「か、解説!?え、ええっと……その……」

 

 

突如、解説役となった針妙丸は事実を言いにくそうにしている。当然だろう。

彼女もれいむ人形とは仲の良かった。私よりもだ。受け入れたくはないのだろう。「死んでしまった」ということを。

 

 

「そう…だね……。これは」

 

 

針妙丸が重い口を開きかけた、その時だった。

 

 

「…ん?いや、待って………あ!」

 

 

嬉しそうな声をマイク越しに響かせる。先程の暗い声色から一変、希望を見い出した針妙丸の声は会場をざわつかせた。

 

 

「い、生きてる!!まだれいむ人形はやられてないよ!!」

 

「…!」

 

 

れいむ人形はまだ生きている。

 

その言葉と指先の先には先程の攻撃で地面が抉れ、そして積み上がった瓦礫があった。確かによく観察してみると微かにその瓦礫が小刻みに動いている。

針妙丸の言っていたことが本当なら、れいむ人形はあの下に?

 

心配になり駆け寄ろうとしたその時、瓦礫が吹き飛んでそこから小さな影が出てくる。

 

その正体は…

 

 

「な、何と!?れいむ人形です!まだ生きています!何というしぶとさでしょうか!!?」

 

「ほら、言った通りでしょ!」

 

 

れいむ人形だった。あの大技を食らって生きていたのだ。何という奇跡だろうか。

しかも傷の状態を見るに、ほとんどダメージを負っていない。何故大丈夫だったんだ?

 

 

「ということは……この試合ッ!!うどんげ人形の事実上戦闘不能によって………」

 

 

 

「  博麗 霊夢 & れいむ人形 の 優勝ぉーーーーーーーーーーッ !!!!   」

 

 

 

てゐのジャッジによって「東方人形劇」の優勝者が今、ここに決まった。

 

 

 

 

正直、実感が沸かない勝利だったが…まぁ今は素直に喜んでおこうかな。

 

まぁ…一番嬉しいのはこいつだろうけどね。

 

 

 

 

 

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