人間と人形の幻想演舞   作:天衣

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第五章

 

「 号外ーーー!号外ぃーーーーー!噂の外来人の号外だよーーーーー!! 」

 

 

 

空から何やら叫び声が聞こえる…一体何だろう?

そして同時に新聞が空から舞っているようだ…一枚取ってみる。

 

見出しは…「玄武の沢で大事件!!人形による電撃で河に住む者は大迷惑!?」とある。

 

この出来事は…つい昨日のことだ。いつの間に目撃されていたのだろう?

詳しく内容を見ると、一部大げさではあるもののその時の状況などが詳しく掲載されていた。…あの光とわかさぎ姫との一部始終までもだ。

「里の女の子と熱いキスを交わし」という記載は全くの誤解だ。あれはあくまで人工呼吸の一環と彼女自身も言っている。これが広まったら誤解を生んで大迷惑だぞ…。

 

 

「あやや!“私の新聞”を噂の外来人が読んでいますねぇ」

 

「うおっ!?」

 

 

新聞に夢中で接近に気が付かず、声に驚いてしまう。

いつの間にいたのだろう…ここの住民は普通の登場が出来ないのだろうか?正直、心臓に悪い。

 

 

「初めまして、あなたが舞島 鏡介さんですね?私は射命丸 文(しゃめいまる あや)と言います」

 

「は、はい…どうも」

 

「お噂は兼ねがね聞いていますよ。外来人でありながら、異変解決の為に頑張っていらっしゃると」

 

 

相手はどうやらこちらのことを知っているようだ。

彼女の第一声から考えると、この人がこの新聞を書いた張本人で間違いなさそうだ。

 

何故か文に既視感があると思ったら、前に霊夢と人形バトルをした際に見た人形と同じ見た目をしていたからだった。つまり、彼女がその元になった人物という訳か。

スカウターの情報にも、確か「天狗」とい書いてあった覚えがある…成程、やっぱり妖怪って種族ごとにちゃんと服の特徴があるんだな。

 

「いやはや、ここであったのも何かの縁です。妖怪の山を登るのであれば、是非とも“天狗の里(てんぐのさと)”にもお越し下さい!」

 

「え、えぇ。まぁいいですけど…」

 

「お?言質とりましたからね~?沢山取材致しますので宜しくお願いしますよ!ではまた!」

 

そう言うと文は一瞬でその場を飛び去る。…つい返事してしまい、約束を作ってしまった。大丈夫だろうか?

 

呆気に取られていると強烈な風が遅れて舞い上がり、思わず浮き飛ばされそうになった。

上を見上げると、妖怪の山へ消えていく一つの影が…何という非常識なスピードであろう。

 

 

天狗の里か…そこに行けば、あのいなくなった“はたて人形”にも会えるだろうか?

 

 

 

 

***

 

 

 

 

畔を道なりに進んでいくと、そこには洞窟があった。

 

中に入ってみるとそこは薄暗くてジメジメとしており、どこか心を擽られる。男なら、一度は洞窟探検というものに憧れるもの…それが今、ここで叶ったのが何だか嬉しい。

 

そして、やはりここにも新種の人形が生息していた。

緑髪で常に回転し続けている大きな赤いリボンが特徴の人形、全体が青で統一されていて髪の結い目に金色の串のようなものを挿している人形の二体ともう一体…何やら洞窟の天井に桶がぶら下がってるのが見える。

あれも恐らく人形…なのだろうか?

 

気になりつつも先に進むと、その桶は頭上に来たのを感知したのか突然下へ急速落下。当然こちらはそんなことをするなんて思ってもみなかったので、反応が遅れてしまう。

 

そしてぶつかりそうになったその時、手持ちの封印の糸が反応して素早く自分の頭上で実体化した。しんみょうまる人形である。

しんみょうまる人形は急速落下している桶に対し、咄嗟にヘディングで打ち返した。桶はぶつかった衝撃で激しく揺れて、吊るしていた縄が切れてしまい明後日の方向へと飛んでいく。

 

 

「し、しんみょうまる!!大丈夫か!!?」

 

 

こちらが技を命令する余裕もなかったが故の苦肉の策だったのだろう…お椀を被っているとはいえ、とても痛そうにしている。

そのお椀自体はヒビ一つ入ってないくらい丈夫なのが、猶更頭への衝撃に繋がったのだろう。

 

「僕を守ってくれたんだよね…ありがとう。よしよし」

 

涙目になっているしんみょうまる人形を痛くないように撫でる。もし自分が直接食らっていたらどうなっていたか…感謝してもしきれない。

これは急いで休憩所に行って治療して貰わないといけなくなった。しんみょうまる人形はとてもじゃないが戦闘が出来る状態ではなくなっている。

 

だが何ということだろう。道の途中には水路が広がっており、これでは先に進めそうにない。

水路を渡ることが出来る手段と言えば「波乗り」だが…人形で果たしてそれが可能なのか?…いや、人形では人を乗せて運ぶのは無理があるだろう。

泳いで渡る?しかしそれでは荷物が濡れてしまいかねない。こがさ人形なら水中でも平気だろうが…と、そう思った矢先、またも手持ちの封印の糸から人形が飛び出す。こがさ人形だ。

 

こがさ人形は胸をポンポンと叩き、こちらに両手を出す。まさか、荷物を持ってくれるというのだろうか?

ありがたいのだが、こちらのからっているリュックサックはそれなりの重量だ。果たして大丈夫か?心配ではあるが…折角申し出てくれたのだ。試しにリュックサックを降ろして持たせてみることにした。

するとどうだろう。こがさ人形は少々重そうにしながらもリュックサックを両手で持ち上げる。流石普段から鍛冶をやっているからか、結構力はあるようだ。

もしやスタイルによって変わったステータスの影響もあるのだろうか?…しかし、これでは問題が一つある。

 

「…その状態で泳げる?」

 

「…!」

 

こちらの疑問にこがさ人形はハッとした表情になり、そのまま固まってしまう。

そしてそっとリュックを降ろし、すっかり落ち込んでしまった。そこまで考えが及ばなかったのだろう。

 

「い、いいんだよ!気持ちだけでも十分嬉しかったからさ」

 

体操座りで沈んでいるこがさ人形を慰めるように優しく頭を撫でる。

引っ込み思案なこがさ人形が力になろうと勇気を出してくれたのだ…そこはちゃんと褒めてあげよう。

 

 

しかし、困ったな。

現状では安全にこの水路を突破する手段が思いつかない。早いところ先に進みたいのに…

 

 

 

「 んんっ!何やらお困りのようだね! 」

 

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

突然洞窟に響き渡る謎の声。

どこからの声なのかが分からず、辺りを見回してもそこには誰もいない。

 

すると水面から三本の水飛沫が一斉に舞って、その三つの影は見事な地上への着地を決める。

その正体は前に人形として会った「にとり」と似た服装をした三人組であった。それぞれ黒、金、緑の髪色をしている。

 

 

「こんにちわ!初めましてですかね?」

 

「困っている人形遣いさんの声が聴こえたわ!」

 

「…水のトラブルはお任せあれ」

 

 

「……」

 

 

急な出来事に頭が追い付かないが…うん、落ち着こう。

もう散々こういうシーンには出くわした。そろそろこちらも慣れなければ。

 

恐らくだが、この子達は「河童」だろう。あの緑の帽子と青い作業着のような服装、でかいリュックが何よりもの証拠だ。

言っていることから察するに、こちらを助けに来てくれた…のか?

 

「えっと、君達は何者かな?」

 

 

「私達は人呼んで、“モブカッパーズ”です!」

 

「主に水上のトラブルの専門をやってま~す」

 

「…よろしく」

 

 

「…そ、そうなんだ?」

 

水上のトラブル…ということはこちらがこの先に進みたがっていることを知ってわざわざ来たということか。

確かに自分はこの水路の先に進みたい。そう考えると彼女らの登場はまさにこちらにとって助け舟と言える。

 

「そういうことなら丁度良かった。僕たちはこの水路を通りたいんだけど、泳いでいくにはちょっと厳しくて困ってるんです」

 

 

「成程成程!そういうことでしたら我らにお任せ下さい!」

 

「この河童特製の「三秒で出来上がる安全ゴムボート」があれば、もう水路なんて軽々と行けちゃうよ!」

 

「…簡単に伸縮出来て場所もとらない特注品…お客さんは運がいいよ。さぁさぁ、乗ってみなさい」

 

そう言って金髪の河童は小さくて黄色いゴムボートを膨らませると、水上にそれを浮かばせる。

眼鏡をかけた緑髪の河童から催促され、試しに乗ってみると…

 

「す、すごい。これだったら確かに水上の移動は簡単ですね」

 

 

「そうでしょうそうでしょう!何せ、水と密接に関わっている我々“河童”の作った自信作ですから!」

 

「後ろにあるモーターの操作で移動だって超楽チンだよ~」

 

「このカプセルで収納して、いつでも好きな時に出せるのだ…」

 

 

「(ど、どこの天才科学者だよ…凄い技術だなぁ)」

 

これは願ってもいない展開だ。収納に困らないゴムボートとは、何と都合の良い代物だろう。

是非とも欲しいところだ。…だが、その後の展開にも凡そ見当がつく。色んなゲームをやって来た自分の勘が、そう言っている。

 

 

「 こちら、税込みで“300000”円となっています! 」

 

 

…やっぱりそうか。

 

 

 

三十万…とてもじゃないが払える金額ではない。

上手すぎる話だとは思ったが、そう甘くはないということか。

 

「すみません。そんな大金、僕は持っていません…」

 

 

「あれれ~?そうなの~?そりゃ残念だなぁ~」

 

こちらの返答に対し、金髪の河童はどこかワザとらしい仕草を見せる。

そして他の二人の河童と目を合わせ、軽く頷くとこう言った。

 

 

「支払えないというのなら、こちらをお渡しすることは出来ません。ですけど…」

 

「我々の要求に答えてくれれば、あのゴムボートを“タダ”で譲るのを検討してもいい」

 

 

ふむ、成程…所謂これは交換条件というやつか。

今の言葉で察するに、この河童達は最初からそのつもりでこちらにコンタクトを取ったのだろう。

騙された気分で少々悔しいが、こちらとてあのゴムボートはこの先に絶対必要となる。彼女らの要求とやらを聞こう。

 

「いいですよ。どんな要求ですか?」

 

 

「おぉ、流石は盟友さんです!実は…」

 

「あたしらのアジトが“人形解放戦線(にんぎょうかいほうせんせん)”とかいう奴らに占拠されてしまったんだよね~」

 

「…非常に困ってる。助けて欲しい」

 

人形解放戦線…確かメディスン・メランコリーという人物が率いる人形で悪事を働いているという集団の名前だ。

ここでその名前が出てくるとは…何にしてもそれを聞いたら見過ごすことは出来ない。人形を悪いことに使うなんて間違っている…!

 

「…分かりました。その人形解放戦線を追い払えばいいんですね?」

 

「やって頂けるのですか!?いやぁ、流石はかの有名な人形遣いさんですね!」

 

彼女が言っているのは、もしや新聞の情報だろうか?

さっきの文という天狗と言い、自分もすっかり有名人になったな。何だか照れる。

 

 

「(ほっ…断られなくて良かった~)」

 

「(案外上手くいくもんだね~)」

 

「(相当なお人好しとは聞いてたけど、ここまでとは)」

 

 

モブカッパーズに連れられ、河童の技術で水中へと進んでいく鏡介だった。

 

 




モブ河童の喋り方はふし幻TODを参照してます


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