人間と人形の幻想演舞   作:天衣

92 / 163
※注意


この外伝は、私が書いている小説「人間と人形の幻想演舞」の人形視点ストーリーです。
その為、人形が普通にしゃべります。そのことを注意した上でご覧下さい。

今回ははぐれたユキ人形が、とある人形に出会う話です。


外伝7

 

「グ……くぅッ!はぁ…はぁ……」

 

 

嗚呼、我ながら自分の力が恐ろしい…今宵も我が腕の中で暴れている。

 

 

「暗黒神アスモディよ…し、鎮まれ……ッ!」

 

 

右手に宿る我が力の根源…それを制御するのは決して容易いことではない。

この溢れんばかりの“やみのちから”…流石の私でも、“終焉の右腕(エンド・オブ・ライト)”を使わざるを得なかった。

 

フフ…一体我が肉体はいつまで持つのだろう?

契約の代償として受けたこの“烙印(スティグマ)”は我の寿命を削り、そして苦痛を与える。

 

だがそれでいい。

奴を…奴をこの手で倒す為ならばこの苦痛…何ということはない。

 

 

そう、誓ったのだ。

 

あの地獄のような屈辱、束縛の日々から逃れる為に……

 

自由をこの手で掴む為に……

 

 

 

「 …―――――ッ! 」

 

 

 

遙か東……負の力を感じる。まさか、奴か?

 

…いや違う。奴はもっと、言葉では言い表せないような不気味さがある筈だ。

これは別の、この世のものではない何か。敵か?それとも…

 

 

いずれにせよ、行ってみる価値はありそうだ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

草木を掻き分け、気配のした場所まで辿り着いた。

辿り着いたが…自分が想像したようなものはそこにはなく、人形が一人倒れているだけだった。

 

容姿は全体的に黒く、髪は金髪…どことなくその色合いは親近感を覚える。黒ってカッコいいし。

しかし、金髪か。これは奴に狙われたらタダじゃ済まないだろうな…可哀そうに。

 

さて、この行き倒れをどうするべきか?

そういえばさっきこの山で何か大きな音が聞こえたような気がするが、もしかしなくとも彼女が原因だろうか?

どうやら深刻な怪我も負っているようだし、先程まで誰かと戦っていた可能性が高い。…微かだが、魔力を感じる。まだ死んではいないようだ。

それに、彼女からは私と同じ匂いがする。もしかすると“同胞(なかま)”なのかもしれない。

 

これも何かの縁…助けてやるか。

 

 

私達の源は魔力…ならば、それをこやつに注入してやれば回復する筈。

さぁ、“禁断の左腕(フォービドゥン・レフト)”の出番だ。

 

 

「 フンッ!! 」

 

 

ありったけの魔力を、金髪人形へと流し込む。

 

「…?」

 

何だ?こいつの体から、何か不思議な力を感じる。

まさか、あの時感じた負の力はこれか?これは…凄い。近くにいるだけでビリビリと伝わってくる。

 

「……―――っぷッ!!」

 

すると金髪人形はすぐさま目を覚ました。流石は我が力…効果抜群といったところか。

その過剰な量の魔力に思わず気持ち悪くなってしまったようだが、それも仕方なし。普段抑えている力を解放させた、その反動というやつだろう。

 

「あ、あれ…私一体?」

 

「それにここ、どこなの…?舞君は?」

 

…どうやら彼女は軽く混乱しているみたいだ。何か事情があるように思える。

取り敢えず彼女を落ち着かせるべく、会話を試みた。

 

「やぁ、目が覚めたようだね」

 

「!?だ、誰あなた?」

 

「倒れていた君を丁度見かけたものでね。ほってはおけなくて、こうして助けたのさ」

 

「そ、そうなんだ?助けてくれてありがとう!私はユキよ。あなたは?」

 

「フッ…名乗る程の者ではない。そうだな…“暗黒の殺戮者(ダークネス・スレイヤー)”とでも呼んでくれ」

 

「?えと、だーく……?う~ん、長いから“だーくん”って呼ぶね!」

 

「だ、だーくん…?」

 

「駄目かな?」

 

「あ、いや別にいいけど…」

 

ヤバい。この人“陽”だ。

 

おかしいな…私と同じ匂いがする奴って大概“陰”なのに…この人何かすっごく眩しいんですけど?

まるで太陽のような、私のような闇の者には釣り合わないというというか、多分…いや絶対に会話が通じない。

 

いや、まぁ?元々自分とまともに話が出来る友達なんて一人もいなかったし?別にいいけどね?

 

「ねぇ、だーくん。ここがどこだか知ってる?」

 

「え?ここは妖怪の山で、結構頂上に近いけど…」

 

「!…そうなんだ。…みんな、無事かな…」

 

「…もしかしてお前、人形遣いの人形か?何があったんだ?」

 

「うん…さっきから思い出そうとしているんだけど、どうして自分もこうなったのか分からないの。最後に覚えているのは、あのメディスンっていう妖怪に舞君が…」

 

そう言いかけたところで、ユキ人形は俯き黙り込んだ。

どうやら、思い出したくないことを思い出してしまったらしい。ちょっと悪いことをした。

 

「…それでね、そこからの記憶が全く思い出せないの。はぁ…」

 

「まぁ、その…なんだ。そのはぐれた仲間達はきっと無事さ。希望を捨てるな」

 

「だーくん……うん、そうだよね!私らしくなかった。何事もポジティブポジティブ!!」

 

さっきまでの落ち込みどこへやら、すっかり元気になってしまった。

何という単純さ…少し呆れもしたが、その思考が少し羨ましくもある。

 

「よーし!それじゃあ早速、舞君達を探しに行こう!」

 

「あぁ、頑張ってくれ」

 

「え?」 「え」

 

 

「「 …………… 」」

 

 

恐らく主人であろう人物の捜索を意気込んだユキは、こちらの反応に対し何やら疑問を抱いている。おいおい、勘弁してくれ…そんな眼差しを向けないで欲しい。

こちとら自分を鍛える旅の途中ぞ?そんなことをしている場合じゃ……いや、待て。

 

これはむしろ、彼女に眠る力を手に入れる絶好のチャンスではないか?あの時感じた異常な魔力…あれは恐らく彼女自身の力ではない。

彼女の性格からしても、力の根源は“陰”ではなく“陽”の方。ということは、彼女の中に眠っているアイテムがあの力を引き出したのだろう。

途中まででいい。どこかで隙を見つけて、あのアイテムを手に入れさえすれば後は消えるだけ。

それで今までよりも強大な力を入手出来るのなら、私は…!

 

 

 

「  お前が、欲しいッッ!!!(決まった…)  」

 

 

 

「へ?」

 

「…もしかして、あなたも変態なの?」

 

 

しまった。「の力」が抜けてしまった。

テンションが上がるとつい舞い上がってしまうな。フッ、これも我が“(カルマ)”…か。

 

 

…ん?「も」ってなんだ?

 

 

 

 

 

 

先程の発言の誤解を解き、ユキと同行することになった。

 

山を下山する間、とにかくユキから話し相手として付き合わされることとなったが、その話の殆どが“舞君”とやらについて。

何でも舞君とは運命的な出会いをしたらしく、ユキはそんな彼に好意を抱いているらしい。人形と人の恋…果たして人間の方がどう思っているかは知らないが、関係としてはかなり珍しいケースだ。

その舞君自身も人形という存在にはかなり愛着を持っているらしく、手持ちの人形皆が彼を信頼しているとのこと。…本当だろうか?どうもユキの過大評価のような気がしてならない。

そんな聖人な人形遣いなんて、本当に存在するのか?私が見てきた人形遣いというのはどいつも人形をペットか道具のように扱っている。どうせ我々人形の気持ちなんて考えもせず、自分の都合の良いように利用しているんだ。舞君とやらも所詮人形を着せ替え人形のようにして遊ぶ変態野郎に違いない。

 

「それでね~?舞君は人形バトルも強いんだぁ。今のところ負けなしなんだよ!凄いでしょ!」

 

「…まぁ、人形の方は強いのかもしれないな」

 

「ぶーー!そんなことないもんっ!舞君の指示は毎回的確なの!それに普通思い付かないような奇策だってやっちゃうんだから!」

 

今度は舞君の今までの人形バトルについて話が始まってしまった。

ふぅ…やれやれ。取り敢えず聞き流しておこう。

 

 

「…!誰かいる」

 

「え?」

 

 

歩いていた目線の先に人間が1人、佇んでいる。

 

見たところまだ少年だが、異様に目つきが悪い。何となく嫌な感じがして身を隠そうとするが、それよりもあちらが気付く方が一足早かった。少年は冷酷な目でこちらを調べ始める。

 

 

「ユキ人形に〇〇〇人形だと?ここは生息域ではない筈…となると、強個体の可能性が高いな」

 

「…とりあえずキープだ。 れみりあ!」

 

 

そういうと少年は誓約の糸を構え、同時に手持ちの人形を繰り出す。

 

「ま、まさかあいつ、我らを捕まえる気か!?」

 

「えぇーー!?」

 

不味い、人形遣いになんか捕まってしまったら我が旅路は間もなく終焉を迎える。

そんなの冗談じゃないぞ…逃げなければ!

 

「!逃がすか、おらっ…!」

 

だがそれを見す見す逃す筈もなく、少年は糸をこちら糸を投げつけた。

緑の糸が拘束し、魔法陣が自身の周りに展開される…一体これは?

 

…だが何となく、これはヤバい状態だということは分かってしまう。

 

「だーくん!その状態で戦闘不能になったらあの子の人形になっちゃうよ!こっち!」

 

「…!」

 

ユキがこちらの手を繋ぎ、林の方へと駆け出す。

何とお人好しなやつ…だが今はそれに従う他ないのも事実だ。

 

「だ、大丈夫!いざとなったら私が囮になって少しでも時間稼ぐから!」

 

「……」

 

「私は舞君の人形だから、捕まったりなんかしないし!」

 

「…あの」

 

「?」

 

 

「あなたの身体にも、魔法陣が思いっきり出てますが」

 

「…!?えぇ何でぇ~~~~!!?」

 

 

ユキの無能さに思わず頭を抱えた。

 

後ろを振り返ると、当然だが少年が我らの後を追ってきている…鬼の形相だ。

何故自分がこんな目に合わなければならないのか?こんなことになるなら、助けなければ良かった…。

 

 

「 スピニングエア! 」

 

 

れみりあ人形に指示を出し、こちらを攻撃する人形遣い。風の弾幕が次々とこちらへ飛んでいき、確実に我らを狙う。逃げる先に数発撃ちこんでひるませた後、こちらの自由を奪うよう的確に足を被弾させられてしまう。…敵ながら見事な攻撃だ。

…フッ、これも運命(さだめ)か。最早ここまで…我が人生、実に悔いが残るものとなった。

 

「だ、だーくん…あきらめちゃダメだよ…ッ!」

 

ユキが懸命に呼びかけるが、もうそれに反応する気力もない。

力を欲した者の哀れな末路…これは“審判(ジャッジメント)”なのだ。

 

 

「 止めだ。 ギガンティック! 」

 

 

橙色の閃光がこちらに迫って来る…ハハッ、綺麗な最期の光景ではないか。

 

せめて、あいつにだけでも復讐をしてやりたかった…な……

 

 

 

「 …―――姉…様…… 」

 

 

 





遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。正月は何分投稿が出来ずにいたので間が開いてしまいました。

次回からは通常の週1ペースに戻りますので、今年もよろしくお願いします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。