今年もよろしくお願いします。
今回のメインはBallistaです。責任感の強い彼女が終着点の見えない階段を降り続けるお話です。
決して振り返ってはいけない。
— 合コンとは
明かりのない階段を
永遠に降り続けることである —
とある戦術人形の日記より
暗い階段を懐中電灯だけで進んでいるような気がします。確実に進んでいるのに終着点は見えません。そもそも終着点などというものが存在するのでしょうか。
私は今、ヘリアンさんと一緒に合コンに来ています。彼女の合コンに付き合うのは何回目になるのでしょうか。二十をこえてから数えるのは止めました。
私はグリフィン本部にいたころ、ヘリアンさんの付き人件護衛を務めていました。
数カ月で転属の辞令が出て今のS13地区に来たのですが、ヘリアンさんとの関りは途絶えていませんでした。ヘリアンさんとしては現場の戦術人形の知り合いもほしかったのでしょう。私は特にそういうのはなかったのですが、面倒見のいいひとですし、連絡をとりあっていました。一番の理由はなんとなく気が合ったからだと思いますが。
そんな彼女から久々に連絡が来ました。S13地区のホテルで一般市民との意見交換会があるからついてきてほしいと。ようするに合コンの誘いですね。女性が合コンのメンバーを誘うときは格下を誘うとMDRの持っていた漫画にありました。その漫画では普通の女性が一人で残りの女性はE.I.L.Dのような見た目でした。実際にいたら正規軍を呼ばれるくらい醜い容姿です。
戦術人形ですし、ヘリアンさんの狙った相手をとりませんからね。私自身、恋愛など興味ありませんから格下の認識で間違いないでしょう。
正式な護衛任務ではなく、あくまでもプライベートのお誘いです。私は断ろうと思いましたが、どこからか話を聞きつけた指揮官が「是非うちのBallistaを護衛に使ってください」と強く推し、私はヘリアンさんの合コンについて行くことになりました。
剥げ散らかした指揮官、そんなに興奮したら血圧が上がりますよ。血糖値を下げる薬もちゃんと飲んでください。
ヘリアンさんには戦術人形ではなく親戚の女子大生だと偽ること。相手の電話番号を入手したら私に教えるように言われました。戦術人形だということを隠すのは分かりますが、女子大生ですか。私は学校に通った経験はないんですが・・・・・・。
ホテルの最上階のレストランで相手の男性陣、他の女性陣と対面しました。
事前に教えてもらっていたのですが、相手の男性陣は大企業の御曹司や私でも聞いたことがあるIT企業の幹部などエリート揃いです。そして見た目も爽やかそうです。さぞ女性にモテると思いました。
実際に男性たちのトークは面白く、乗り気ではなかった私も話していて楽しくなりました。ただの付き添いの私は気楽なのですが、ヘリアンさんや他の女性達は、獲物を狙う前のスプリングフィールドさんみたいな目つきをしています。外見こそ穏やかなのですが、獲物を狙う獣の目です。
合コンの合間にはパウダールームで作戦会議をする風習があるそうです。女性たちは会議という名の駆け引きをしていました。私はヘリアンさんに「先に戻っています」と言い、端末でリンの様子を確認するために先に出ました。視界は共有されているし、リンは指揮官さんと一緒に車で待っていますが、やはり心配になります。
端末を操作しアプリでリンの様子を確認していると、相手の男性のうちの一人が近寄ってきました。そしてカードを渡されました。読むと連絡先が書いてありました。
さらに「あの女性たちにはこのカードをみせないでね」と。ヘリアンさんには電話番号が分かったら教えろと言われていたので困ります。どうして私に渡したのか聞きました。
「君だけは僕たちの話を純粋に聞いてくれた。あの人たちは獲物を狙う獣の目で怖かった」
男の人でも分かるんですね・・・・・・男の人は全員女性の笑顔に引っかかると思っていました。
男の人も大変なんですね。
合コンの最後は、連絡先の交換で終わりました。女性陣は全員個人の連絡先なのですが、男性陣は全員仕事用の連絡先でした。
私は合コンから帰った後、副官のAK-12に相談しました。
「いいんじゃない?ヘリアンは電話番号を入手したらって言ったんでしょ。そしてあなたが入手したのはカード。教えなくても問題ないわよ。仕事じゃないから命令違反にもならないわ」
そうですね。教えるのは止めておきましょう。あの男性が気の毒ですし。
はじめての合コンはこれで終わりです。
— わたしはドアを開けただけでした
その先には終わりのない階段があります —
私の予想は甘かったようです。
ヘリアンさんの合コン連敗伝説は皆さんもご存じの通りでしょう。商業地区の喫茶店のマスターですら知っているくらいなのですから。
私はまた合コンに誘われました。断ろうと思ったのですが、今度はAK-12が勝手に承諾しました。NOと言える戦術人形になりたいです。
仕事を終えてから会場へ向かいます。ヘリアンさんと合流し、軽く打ち合わせをしてから会場に入ります。
「なんで私なのでしょうか」
ヘリアンさんにそう聞くとこないだは男の電話番号を入手することがかなわなかったが、感触は良かった。このままBallistaを連れて行けば彼氏をゲットできると。かもどころかできるとはすごい自信です。今だって獲物を狙う獣の目をしています。P7にハンバーガーを勝手に食べられたSPAS-12と同じ目つきです。
合コン会場に入りました。今回はスポーツ選手たちだそうです。
気のせいでしょうか、ヘリアンさんから獲物を狙う直前の獣みたいな声が聞こえます。
合コンが始まりました。相手の男性の話は面白く、スポーツに詳しくない私でも聞いていて面白いと思いました。
今回もパウダールームで作戦会議をしました。とはいっても私は聞いているだけです。
少しだけ聞き、適当に相槌をうってから、端末でリンの様子を確認するため、先にパウダールームを出ました。そうすると相手の男性のうちの一人に連絡先のカードを渡されました。ヘリアンさん達には内緒にしてねと。
ヘリアンさんから見れば金装備でしょうが、私からしてみればいらないものです。
ヘリアンさん達は所属チームの試合のチケットを受け取って合コンは終わりました。
また行こうとヘリアンさんに言われました。
NOと言える戦術人形になりたいです。
— 繰り返される日々
終わりのない階段
後ろを振り返ってみると —
仕事を終えてから会場へ向かいます。ヘリアンさんと合流し、軽く打ち合わせをしてから会場に入ります。
獲物を狙う直前の獣みたいな声が聞こえます。きっと幻聴です。
合コン会場に入りました。
合コンが始まりました。いろいろな話をして、パウダールームで会議です。
そしてリンの様子をみるため外に出たら相手の男性に連絡先の書いたカードを渡されました。
合コンが終わり、ヘリアンさん達は個人の連絡先ではなく会社の名刺を受け取って終わりました。
・
・
獲物を狙う直前の獣みたいな声が聞こえます。
仕事を終えてから会場へ向かいます。ヘリアンさんと合流し、軽く打ち合わせをしてから会場に入ります。
・
・
獲物を狙う直前の獣みたいな声が聞こえます。
合コン会場に入りました。
合コンが始まりました。いろいろな話をして、パウダールームで会議です。
そしてリンの様子をみるため外に出たら相手の男性に連絡先の書いたカードを渡されました。
・
・
合コンが終わり、ヘリアンさん達は個人の連絡先ではなく会社の名刺を受け取って終わりました。
・
・
繰り返される合コン。もしかしてループしているのでしょうか。
日付を確認してみますが、きちんと日にちは進んでいます。
終着点の見えない階段を下りるようです。暗くて光源はわずかですぐそばしか見えません。
獲物を狙う直前の獣みたいな声が聞こえます。
ここに獣はいないはずなのに。
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・
— 振り返らなければよかった —
獲物を狙う直前の獣みたいな声が聞こえます。
ヘリアンさんと合流しました。ヘリアンさんはどこか不機嫌そうです。なにかあったのか聞くとAK-12に合コンの結果を聞かれて先ほども合コンの結果を聞かれたそうです。
すぐにいつものヘリアンさんに戻りましたが、余計な刺激を与えるのは止めてほしいです。
ホテルにつきました。ヘリアンさんによると今日の女性参加者のうち一人は知人だったそうなのですが、その知人が来られなくなり、代理をよこすとのこと。ルシアという名前だそうです。
会場に入りました。ルシアさんという人はAK-12でした。これには私もヘリアンさんも驚きました。
一方の彼女も驚いてはいますが、演技が下手くそすぎてバレバレです。根回しして参加したとしても、彼女にとって面白いことがあるとは思えません。
合コンが始まりました。
いつも通り和やかに進みました。彼女って一般人と普通に会話できるんですね。
ヘリアンさんは表情こそ笑っていますが、逃亡兵を見つけたM1895みたいな気配を放っています。私も逃げたいのに逃げられません。
そしてパウダールームで会議です。
ヘリアンさんと他の女性たちは熾烈な駆け引きをしています。
私とAK-12は先に出ました。端末でユイの様子を確認しようとすると、男性陣のうち二人がこちらに来ました。一人から連絡先が書かれたカードを渡されました。AK-12ももう一人から連絡先が書かれたカードを渡されていました。
私たちが受け取ると男性二人は逃げるように去っていきました。どうしたのでしょうか。
「ヘリアン、これ男性陣のうち一人の連絡先よ。住所も書かれているけどいい所に住んでいるのね」
ヘリアンさんが後ろにいるようです。私たちが男性の連絡先を入手しているのがバレてしまいました。抜け駆けしていると思われたらどうしましょう。
すごい殺気を感じます。鉄血のアルケミストと戦った時を思い出しました。
「どうしたの?ヘリアンはもらってないの?バリスタは毎回連絡先が書かれたカードをもらっているって聞いたから、てっきりヘリアンも合コン相手の連絡先を知っていると思ってたのだけど・・・・・・」
私は後ろを振り返りました。
強烈な殺気で私のメンタルが壊れてしまったのでしょうか、瞳、鼻孔、唇がないお化けみたいでそれでも笑顔なヘリアンさんがいます。
私と視界を共有していたユイの信号が途絶えました。おそらくショックで死んでしまったのでしょう。ヘリアンさんは一歩、また一歩と近づいてきて私の肩に手を載せようとしてきます。きっと私は肩から握りつぶされるのでしょう。
私は逃げました。情けない声をあげ、恥も外聞もかなぐり捨てて逃げました。戦術人形である自分を忘れ逃げました。
逃げる途中、駐車場で待機しているはずの指揮官の姿を見ました。ユイが死んでしまったから様子を見に来たのでしょう。そして指揮官も見てしまいました。ヘリアンさんの顔を。
指揮官は胸を押さえて苦しみだし、そのまま倒れてしまいました。
私は必死に逃げました。救命措置を放棄して逃げました。合コンの獣から少しでも遠ざかりたかったのです。
走り続けて気が付くと朝になっていました。私は走るのをやめ、指揮官の端末に連絡しました。するとAK-12が出ました。
彼女が迎えに来てくれるとのことです。
数十分して彼女が来ました。
抱えられ後部座席に担ぎ込まれました。そしてAK-12にお礼を言おうと思い顔をみたら眼が開いていました。
そのまま私の意識は遠くなりました。
・・・数日後
グリフィンのメンテナンスルームで目が覚めました。ここ最近のことが思い出せません。
何があったのでしょうか。後で誰かに聞いてみましょう。それまでは待機です。
ベッド脇にファッション誌が置いてあったので手に取ってページをめくってみました。
「このファッション誌は・・・・・・まったく、相変わらず緊張感がないですね」
27.いかなる状況下であっても合コン翌日のヘリアントス上級代行官に結果を聞くことは許可されていません。
27-1.AK-12は彼女の合コン相手の電話番号を入手してはいけません。
27-2.入手したとしてもその事をヘリアントス上級代行官に言ってはいけません。偶然居合わせ彼女の顔を見てしまったBallistaの鷹が死んでしまいました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ヘリアンさんの合コンに付き合わされる話です。
負ける合コンって終わらない階段を降り続けるような物だと思うんですよ。
今回モチーフにしたのは下記のSCPです。キレたヘリアンさんって鉄血もはだしで逃げだすくらい怖いと思いますよ。合コンネタで何か探してて偶然これを見つけて連想しました。
SCP-087『吹き抜けた階段』
http://scp-jp.wikidot.com/scp-087
今回の用語など
Ballista:ヘリアンさんと個人的につながりがある。NOと言える戦術人形になりたい。
ヘリアンさん:合コンの負け犬。キレた時の殺気は半端じゃない。
今回の指揮官:ハゲ。血糖値や血圧が気になる。ゴマすりが特異。心筋梗塞で死亡。
S13地区ホテル:比較的治安がいいので上流層向けの婚活パーティーで儲けてる
合コン男性陣:ヘリアンさん達にビビった。
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作者ツイッター@Luna_Ichinose