金属の弾かれる音が訓練室に響き渡り、後を追うようにカラン…と床に剣が落ちた。
「まっ、参った!」
紺色の隊服を着た治安維持部門の護衛兵が銀髪の少年に対して叫ぶ。
「オイオイ、圧倒的じゃないか…」
「アイツって俺たちの中じゃ一番強かったよな?」
「はー賭けなくて良かったぁ」
「……オレ自信無くすわ」
「すごいやつだ」
訓練室をガラス越しに見ていたギャラリー達が対戦を見た後、それぞれが思ったことを自由に言い合う。
注目を一手に引き受けていた少年は一礼をすると落ちていた剣を拾い尻餅を付きこちらを見ていた対戦相手に柄を向けて指し出す。
兵は何とも言えない表情で立ち上がってそれ黙って受け取ると早々に出口に向かう。
一度相手に振り向いて何か言いたそうな顔をしたが口には出さず訓練室から立ち去る。
兵と入れ替わるようにして白衣のポケットに手を突っ込みながら宝条博士が相変わらず不気味な笑いをして訓練室に入ってきた。
「素晴らしいなセフィロス」
ニヤニヤと見つめながら、セフィロスに評価を下す。
「……これで大丈夫か?」
「おやおや、折角褒めたのに相変わらずの態度だね。
まぁいいとも、彼等も納得しただろうしこれで連れ出しやすくなった」
「……そうか」
目的は達成されたと判断したのかセフィロスは、必要最低限の返事をすると宝条博士に顔も向けずに訓練室から出て行った。
ーーーーーーーーーー
訓練室を出た俺は待機場を目指し歩いていく。
宝条に護衛を申し出た時、思っていたよりもあっさりと奴は認めたので拍子抜けしてしまった。
理由を聞かれた際に「宝条博士が心配だから」とか「宝条博士を守りたいから」だとか適当な返事は考えてはいたが、実際口に出そうとするとどうしても言えなかった。
いや、
過去の宝条はガスト博士より引き継いだジェノバプロジェクトで後にソルジャーを作り出した男。
プロジェクトの責任者になり、俺との接触も多くなった。
『オレ』と違い自ら進んで戦闘訓練を始めるようになっている俺は既に大人の兵士なら相手にはならないくらい戦闘能力が上がっている。
そのため今の俺なら宝条に近付き過ぎて奴に何かされるような状況になっても対処できるだろうと考えた。
『オレ』はあまりにも奴と離れ過ぎていた。
だから取り返しのつかない事も知らなかった、間に合わなかった。
宝条を守りたいのではない。
宝条
奴を殺せば済むかもしれない。
だがそれは『オレ』が気に入らないと人間を殺してきた事と何が違うのか。
「何を考えているんだ俺は……」
時々、どうしようもなく自分が行っている事に理解が出来なくなる。
今自分が行っていることが正解なのか、答え合わせをしてくれる者などいないのだ。
そもそも正しいとはなんだ、間違いとはなんだ。
神になったかのように高尚な……いや御門違いな考えを持つ気はない。
ライフストリームで多くの知識を得て、すべてを知った気でいるようなそんな
「いかん、少し頭を冷やそう……」
考え込んでしまったのか、ふと気付けばとっくに待機場に着いていた。
窓に目をやればプレート上層都市の光が見え、その先には魔晄炉が淡い緑の光を放っている。
腰を下ろし考えるのを止め、ジッとガラス越しにミッドガルを見ていると
「おい、おまえがセフィロスか」
いきなり俺を呼ぶ声がした。
誰だと後ろを振り向くと、金色の髪をした生意気そうな子供が座っている俺を見下ろしていた。
この神羅に俺以外の子供など居ただろうか。
例の古代種の娘はまだこの時は生まれてないはずだが……そもそも目の前の子供は男だな。
せっかく休ませていた頭を再び働かせ、記憶を探る。
「おい、このおれがよんだんだからへんじくらいしろ」
やたら高圧的な態度の子供に年甲斐もなくイラッとしてしまう。
待てよ、俺は今は子供だからいいのか。
「きさま、みみがきこえないのか」
もういい、コイツのために頭を使うのは止めだ、直接聞いた方が早い。
「お前こそ誰だ」
「このおれにそんなくちをきくとは、さすがだな」
「……答えになっていないが」
「ルーファウスだ、いづれおまえを
そうか、コイツが神羅カンパニー現社長〈プレジデント神羅〉の息子ルーファウスか。
そう思いよく顔を見れば、成る程他人を見下す時の顔つきなんてそっくりだ。
「ふっ、おどろいてこえもでないか」
「あぁ、驚いたと言えばそうかもな、それで何の用だ」
そう言って俺は立ち上がりルーファウスの目の前に立つ。
頭一つ程度、俺の方が身長が高いようで、今まで見下ろしていたルーファウスの目は顔ごと見上げるかたちになってしまう。
「さっきのたたかい、みごとだったぞ。
これからもきたいしている」
自分より背の高い相手に対しても怯むことなく態度も変えず、まるで帝王のごとく俺に言葉を投げ掛ける。
「……それはどうも。
わざわざそれだけを言いに来たのか、おぼっちゃま?」
あまりにも態度がアレなので少し皮肉交じりで俺が質問をすると
「いずれおれはこのかいしゃのしゃちょうとなるのだ。
“有能な人間を見つけたら
パパからそうおそわったからな。
だからおまえはおれの
プレジデント神羅の息子への教育が垣間見れた瞬間だった。
それとこの頃はパパって呼んでるのか、それは知らなかった。
ライフストリームにもなかった貴重な情報だなと呑気な事を考えてしまう。
その時、通路の方からスーツを着た男が慌てた様子で近づいてくる。
「あーっ!こんなところにいたのですかルーファウス様」
どうやら男は使用人らしく、勝手に出歩いたルーファウスを探していたようだ。
俺に「またなセフィロス」と声を掛けたルーファウスは使用人には悪びれる様子もなく去っていく。
使用人は俺を見て軽く会釈をするとルーファウスに付き従って来た道を戻っていった。
どうやら俺の将来にタークスの席が用意されたようだ。
二人が居なくなると俺は再び腰を下ろし外を見る。
「アイツに顎で使われるのは御免だな……」
決まりかけた将来を真っ向から否定した俺だった。
セフィロスは書くの難しいですね
内面描写もそんなに多いキャラじゃないから余計に