セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第11話 プレジデント神羅と宝条博士

――かつて()()()()()と呼ばれた会社があった。

その会社は兵器の開発や製造を生業としていたが、従来の石炭や石油に代わる新しいエネルギーについても模索をしていた。

そこで目を付けたのが星命学における精神エネルギーと言われる存在である。

神羅製作所が多大な金額をかけて精神エネルギーの研究を始めても競合する企業(ライバル)達はそんな不確かなモノにかなりの額を投資をするなど馬鹿げていると冷ややかな目で見ていた。

また、それで神羅が傾けば儲けものだとも。

その時は一気に潰してしまうか、それとも買収でもしようか、競合他社の役員達がそんな皮算用を考えていた。

将来逆の立場になるとも知らずに。

 

とうとう神羅製作所は精神エネルギーが星の地下に存在することを発見した。

さらに発見から時間を置かず、これを汲出し電力へと変換するための炉の技術を開発する。

この炉は社内にて精神エネルギーの研究及び開発時に付与されていた仮名称(コードネーム)、“魔晄研究”から名を取り“魔晄炉”と名付けられ、いつしか精神エネルギーも“魔晄エネルギー”と呼ばれるようになっていった。

 

魔晄炉を完成させ電力を供給する事業も着手した神羅製作所は各地のインフラ業を独占、会社名を()()()()()()()()()()と名を改め急成長、通称は神羅カンパニーと呼ばれる世界一の大企業としてこの世に君臨していた――。

 

 

 

神羅ビルの70階で金髪を後ろに流した恰幅の良い男〈プレジデント神羅〉が葉巻を吹かしながら、ミッドガルを見下ろしている。

先程、会議を終えて社長室に戻って一息ついているところだ。

外を見渡せば工事用のクレーン・デリックが散見し、このミッドガルはまだまだ開発途中であることが伺える。

己が開発した大都市を見てもプレジデント神羅の欲求は満たされない。

まだだ、更なる高みに神羅カンパニーを届かせ、世界を支配したい。

しかしそれは、各地に魔晄炉を建設するだけでは手に入らない。

かつての本業でもあった兵器開発にも力を入れねばならぬと。

 

 

 

 

 

「私はまだこんなところで終わらない」

 

現在、兵器開発部門には魔晄エネルギーを使用する兵器の開発に着手させている。

魔晄エネルギーを使って機動する兵器、魔晄エネルギーを攻撃に転用する兵器など試作品を次々と生み出しており、提出された成果とこれからの計画発表をもとに、先程の会議で検討した結果、予算の追加投資も決定した。

ただどうも物足りない感じがするのだ、失敗作の烙印を押すような酷い物を作っているわけでないのだがね。

とはいえ、計画発表の資料にあったマテリアの人工生成とそれにおける兵器転用は今の神羅に必要と感じたモノではあったので兵器開発部門には期待はしている。

 

それに引き換え科学部門はどうだ、ジェノバプロジェクトに何の進展も見られないじゃないか。

かつて魔晄研究ための地質調査で発見された謎のミイラ。

最初はそんなもの博物館にでも送っておけと思ったものだ。

しかし、科学部門の調査でそのミイラは古代種だと判明しジェノバと名付けられたそれを使っての古代種の復活、ジェノバプロジェクトをガスト博士が発案してきた時はなんとも魅力に感じたものだ。

特に私が興味を引き付けれたのは古代種の伝承“約束の地”。

至上の幸福がそこにあるというその場所には豊富な魔晄エネルギーに満ちているという推測。

そしてその場所を特定するために人工的に古代種を作り出し覚醒させ()()()()()()()

ガスト博士はなかなかどうして話が巧く、最初は馬鹿げた話だと思った私だが、最後は本当にあると信じ込んでしまった。

 

「しかしあのガスト博士がな……」

 

頭の中に浮かんだ元責任者の姿がだんだんと現責任者の宝条博士の姿に変わっていく。

“約束の地”は信じてはいるが、今の状況はジェノバプロジェクトではたどり着けないのではないかとも考えている。

実験体の覚醒はまだ報告されず、戦闘訓練の結果報告を聞くたび、私は目的から遠退いている気がするのだ。

たしかにあの戦闘能力は驚かされる、最近では治安維持部部門の実力者を倒してしまったとも聞いている。

息子が『パパがすかうとするまえにおれがすかうとしてやったぞ』と自慢げに話してきたのも覚えている。

幹部達はかなりの期待を寄せているらしいが、だからこそ疑うものが居なければならん。

誰もが諸手を挙げる状況は会社にとっては足を(すく)われる状況にもなりかねんからな。

 

葉巻を吸い終えた私は社長席に戻り、会議で宝条博士が提出してきた資料に改めて目を通す。

 

神羅に蓄積された魔晄の研究技術とジェノバプロジェクトで培ったジェノバ細胞の移植技術を合わせ兵士を作り出す計画書。

確かに兵器開発部門への物足りなさを満たす要素ではある。

だが宝条博士に本来の目的について問いただせば要領を得ない説明で言葉を濁してきた。

確かに今の神羅に必要な計画とは感じるが手放しに承認は出来ない。

だから宝条博士には、()()()()()()()()()()()()()を疎かしないという条件を突きつけた。

納得を行かないような顔で睨まれたが、最高責任者である私を説得させられない奴が間違っているのだ。

最初の目的は“約束の地”であって()()()()などではないのだからな。

 

 

 

 

 

==========

 

 

 

 

 

先程の会議を終え研究室に着くなり私は自分のデスクで足を組みふんぞり返ってしまった。

 

まったく散々な目にあったよ。

あの男はこの研究の素晴らしさを理解出来ないのかね。

幹部共は私の計画に絶賛してくれたのに、これだから科学に疎い凡人は困るのだ。

たしかにガスト博士が提出したジェノバプロジェクトの発案書には期待が膨らむ内容で、説得力が凡人にも分かりやすいよう書かれていたが、アレは私に言わせれば児童書みたいな発案書だよ。

ガスト博士の置き土産がこんなところで足を引っ張るとは予想外だ。

 

とにもかくにも、与えられた条件を達成するためにはそちらの計画の見直しも必要だな。

社長の“約束の地”への執心を甘く見積もっていたのが私の落ち度か。

経過報告のためジェノバを使って約束の地へ辿り着く為の検証実験は何度か行っている。

その度に芳しくない結果が提出されているが、それは予定通りで、それらは仮説という名の虚偽だからだ。

私は既にジェノバでは辿り着く事は()()()と判断している。

ジェノバが古代種ではないと伝えたらプロジェクトの中止も十分にあり得るので伝える気はない。

また新しい仮説を立てる事も考えたが科学者としてのプライドもあるため、結果が分かっている事のバカバカしさにはうんざりしているところである。

 

深いため息を吐いて考え込んでいる私であったが、部下の研究員が何やら報告書を携えてやってきたのに気付いた。

 

「宝条博士、例の監視からの報告があります」

 

「なんだね、ツマラナイことだったら君を実験台にするよ」

 

「貴方が言うと冗談に聞こえませんよ」

 

冗談なものか、計画が承認されていれば私の中では実験台の候補になっているのだよ君は。

まぁこのままじゃそれも実行できそうにないがね。

 

「……内容は?」

 

「産まれたそうです」

 

「そうか、わかった、下がりなさい」

 

失礼しましたと部下が去り、置いていった報告書に目を通す。

必要な情報に素早く目を通し、ニヤリと口角を上げる。

ニセモノで結果が出せないならばホンモノを使って研究をすれば良いじゃないか。

おまけにサンプルが一つから二つになってくれるとはな。

まったくもって今の状況にこの報告は僥倖、実にめでたいな。

 

「出産祝いは……何がいいかね、ガスト博士……」

 

先程の研究員は、その後いつの間にか実験台候補から外れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




プレジデント神羅は中身はどうあれ経営者として有能だと思います。
宝条博士はあくまで科学者
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