セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第12話 ガスト博士 その3

「あなた、またビデオ?

 この前とったばかりじゃないの!」

 

あきれる声がする方を向けば、これまたあきれた顔でこちらを見てくる妻の姿が目に入る。

 

「……そう言わないでくださいよ」

 

情けない声で、でも仕方ないじゃないですかと、そんな気持ちを込めて私は返答する。

だってカワイイんです、可愛くて仕方ないんです。

私と貴方の可愛い可愛い娘のエアリス。

親バカなのは重々承知しています、でも娘の成長の記録をちゃんと残しておきたいのです。

 

「そんなにカワイがってばかりじゃ強い子に育たないかもしれない……

 エアリスは、普通の子とは違うんだからこれからどんな人生が待っているか……」

 

「そんなこと言っちゃダメです!

 私がアナタとエアリスをどんなことをしても守ります」

 

そうです、貴方とエアリスは私にとっての宝なのです。

何があったとしても離しません……離すものですか。

そう言って私は妻を抱き寄せる。

 

「あなた…私、今とっても幸せよ」

 

抱いている手で妻の髪を撫で、私の後ろに回された彼女の手は優しく背中に触れてくる。

あぁ私も幸せだとも、()()まだ幸せだ。

私の中には常に、幸せな気持ちとそれに負い目を感じる気持ちが水と油のように存在する。

いつか向き合わなければならない事がある、そしてその時決断しなければならない。

だけど今はこの家族の時間を……

 

コンッコンッコンッと玄関をノックする音がした。

お互い抱き合ったまま私と妻は玄関の方に目をむける。

 

「いったいダレなんですかイイところで」

 

と愚痴をこぼせば、クスクス笑った妻が私を離れ

 

「は~い、いますぐ」

 

と返事をして玄関へ駆け出していく。

呑気な顔してその姿を見ていたが、すぐに私は険しい顔つきになった。

 

「久しぶりですねぇガスト博士」

 

扉から姿を現したのは神羅の兵と、そしてかつての部下の宝条博士だった。

兵を引き連れて訪ねてくるなんてただ事ではない。

近付いてきて兵を両脇に配置し、その真ん中に立つと手を後ろで組む宝条博士。

慌ててこちらに戻って来た妻を自分に抱き寄せ声を荒げる。

 

「――ッいったい何の用だね!?

 宝条くん!!」

 

「久々の再会なのにつれないですな」

 

軽口を叩きながら私と妻をマジマジ見つめる宝条博士に自分達の身の危険を感じる。

黙って彼を睨んでいると相変わらず不健康そうな顔が不気味に笑う。

 

「お子さんが産まれたようで。

 古代種であるイファルナ……奥方との間にね。」

 

「ッな!、何を言っているんだ!」

 

なぜ、何故なんだ、宝条博士は何でそれを知っているのだ。

心臓の鼓動が大きくなる。

頭で必死に落ち着けと繰り返すがこの状況がそれを許してくれない。

 

「もしや!ずっと監視()られてたのかっ」

 

「ガスト博士、ジェノバプロジェクト元責任者の貴方がそのまま野放しなんて。

 貴方が居た場所の事を考えれば自ずとわかる事ではないですか。

 まったく本当に()()()()()状況ですねぇ」

 

妻の怯える表情が目に入り抱き寄せる手に力が入る。

そんな私たちを見てもお構いなしに宝条博士は喋り続ける。

 

「実はですね、ジェノバプロジェクトとは別に計画を立ち上げようかと思いましてね。

 そこで丁度増えたサンプル達が必要なんですよ。

 まだ仮名ですがセトラプロジェクトなんて考えています」

 

「増えたサンプル達だと、ッまさか!だ、駄目だそんなことは私が認めない。

 妻も娘も手は出させないぞッ!

 帰ってくれ宝条くんッ」

 

「いやいや、そうも行きません。

 それにガスト博士、貴方もこのプロジェクトには必要なんですよ」

 

宝条博士は後ろに組んだ手を解き着ていた白衣のポケットに両手を突っ込む。

よく見れば右側の手でポケットを(まさぐ)っている、右のポケットに()()が入っている証拠だ。

 

「まぁこれを見ても同じ言葉が言えますかね、ガスト博士」

 

そういって右ポケットから手を取りだそうとする瞬間、妻が私の腕を振りほどき、宝条博士にすがりつく。

 

「お願いッ!わたしが、私がいればいいんでしょッ!

 だからエアリスと主人を見逃して!!!」

 

「な、何を言うんだイファルナッ!私がそんなことはさせないッ!」

 

必死に懇願をする妻を宝条から引き離し自分の後ろに隠す。

引き離されても微動だにせず、ジッと私達を見つめ口角を上げながらニヤニヤと笑っている。

 

「エアリス…ちゃんですか…

 カワイイ名前ですねぇ、実験するとき呼ぶのが楽しみです」

 

「貴様ぁッッッ!!!!!!!!!」

 

それを聞いた瞬間私は全身にカッと熱が広がり、恐怖など忘れて宝条博士に掴みかかる。

両脇にいた神羅の兵が肩に担いでいた小銃を構える。

奴らの銃口が完全に私の体を捉えた瞬間

 

「待つんだ」

 

玄関の方から声が聞こえ、宝条博士の襟を掴んだまま私はそちらに顔を向ける。

そこには、かつて私との再会を約束した銀髪の少年があの時より成長した姿でこちらを見据えていた。

 

「セフィロス、外で待機してなさいと言ったではないか」

 

「アレだけ大きな声が聞こえれば心配にもなる。

 ……手荒な真似はしないんじゃあなかったのか?」

 

両刃の剣を携えて、つかつかとこちらに歩み寄ってくるセフィロス。

 

「勘違いしないで欲しいな、私は手荒な真似はしていないぞ。

 見てみなさい、銃を向けているのはこっちの兵隊だ。

 私は命令すらしていない。

 ホラ、君たちソレを下げなさい」

 

宝条博士の言葉に二人の神羅の兵が私に向けていた小銃を下ろす。

 

「物はいいようだな……」

 

セフィロスは宝条博士の言葉に不満がありそうに答え、私の近くで立ち止まる。

私は掴んでいた宝条博士の襟を離すと、彼の方に体を向ける。

 

「ご無沙汰しております、ガスト博士」

 

「セフィロス…なのか、どうしてここに」

 

「貴方達を迎えに来ました」

 

懐かしい顔に緩んだ気がその言葉で再び警戒を始める。

 

「私は、いや私達は行かない、もう神羅とは手を切ったのだ」

 

その言葉を聞いた宝条博士はクックックッと笑いだして

 

「まったくさっきのゴタゴタで()()を出せなかったからガスト博士が勘違いしたままではないか」

 

そう言って右ポケットから取り出した物を私に差し出してきた。

 

「これは……私のIDカード、何故だ?」

 

神羅の社員証も兼ねているそのカードを宝条から受け取り裏面を見る。

私の名前、性別、生年月日が記載され【所属:科学部門】の文字も確認出来た。

 

「何故も何も、貴方はまだ()()中ですよ。

 あぁ大丈夫です、そのカードはちゃんと更新しておきましたから」

 

「私は会社を辞めたはずだが……」

 

社長(あの男)が貴方を辞めさせるわけないでしょう。

 今までの状況で休暇扱いは他と比べてだいぶ寛大な処置ですがね」

 

返す言葉が無くなる私に「とはいえ監視付きですがね」と悪態を吐く宝条博士であった。

 

 

 

 




原作だと夫婦の時間は一人称が「ワタシ」になるガスト博士
ここでは「私」に統一します
文字だけの小説で一人称表記がコロコロ変わるのは読みづらいと思ったのです。
イファルナさんも「わたし」じゃなく「私」です
なんかひらがなは幼いイメージついてしまうんですよね
あとセフィロスの正宗はそれで一つ話を作る予定なのでしばしお待ちください。
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