セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第2章
第14話 ガスト博士の復帰


「よし、今日の検査はこれで終わりにしましょう」

 

「はい、ありがとうございました、ガスト博士」

 

「私は宝条博士のところに寄ってから帰るので、先に帰っててください。

 帰り方はもう大丈夫ですよね?」

 

書類を纏めながら、心配そうにイファルナ()に言えば

 

「もう、また田舎者扱いしてー、大丈夫よあなた」

 

「いやいやアナタが心配なんですよ……」

 

と、気恥ずかしそう答えて、まとめた書類を封筒に入れる。

壁に掛けている時計を見れば15時を過ぎたと言ったところか。

妻は帰り支度が整ったようなので、一緒に検査室を出てエレベーターに向かう。

そうだ、とある事思い出し歩いている途中で今日の夕飯の事を聞き出せば

 

「うふふ、それは秘密ですよ。

 楽しみにしてて、それよりわかってる?」

 

と、今日のある計画について、念を押されてしまった。

私は別フロアの宝条博士に報告があるのでエレベーターで下の階へ行く妻を見送り、その後上の階へと昇る。

宝条博士のいるフロアに着き研究室に入室すると、ニブルヘイムの神羅屋敷じゃまずお目にかかれなかったような最新設備がズラリと並ぶのが目に入る。

会社に復帰して本社の研究所に入った時は「流石は神羅カンパニーだ」と科学者の側面を思わず覗かせてしまったものだ。

これまた神羅屋敷じゃ設置できそうにない巨大な培養カプセルの前に探していた人物を見つけたので後ろから声をかけた。

 

「宝条()()、今日の報告のまとめだ」

 

持っていた封筒を手渡せば、「どうも」と短い礼を述べて受け取りながら体を私の方に向けた。

 

「奥方はどうですか?」

 

「星の声はあまり聞こえないと言っている」

 

「……そうですか、まぁあとでコレを見せてもらいます」

 

そういって宝条博士は封筒の中も見ず脇に抱え込むと再び培養カプセルへ向いてしまった。

私も培養カプセルに目を向けると、体の一部が異形と化した人間が目を閉じて培養液の中で浮いているのが確認できた。

 

「中の彼は…どこから?」

 

「おや、気になるのですか、コレはただの犯罪者ですよ。

 罪状は……まぁどうでもいいですね。

 貴方がこっちの方に参加したかったら何時でもどうぞ」

 

「いや、遠慮しておく…

 では失礼するよ、お先に」

 

私は用件を済ますとそそくさと研究室を退出した。

かつて私の主導したジェノバプロジェクトは既に当初の目的は忘れ、全くの別物となっていた。

過去のあの時、宝条博士が口にしていた恐るべき事をとうとう実行に移していたのだ。

とは言え今の私にジェノバプロジェクトの計画を変更する権限はない。

今は私に与えられた職務を全うするのみである。

それを聞いたのはミッドガルに私達家族を護送する途中の時であった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

──ミッドガルの神羅カンパニー本社に向かっている途中の船の中で監視付きの下、私は家族と同じ船室をあてがわれていた。

ただ、私自ら協力することを申し出たのが功をそうしたのか、元から丁寧に扱う気だったのかわからないが思っていたよりは自由が利き、イファルナはエアリスをあやす傍ら外に出て海を眺めたりしていた。

 

「私、こんな近くで海を見るのは初めて」

 

そういって私に微笑む妻を見て私も少しは不安が取り除かれた気がした。

私は宝条博士にこの先どうなるのかを聞きに彼の居る部屋を訪れると、丁度向こうも私を呼ぶ気だったらしく「手間がはぶけましたね」と言ってこれからの事を簡単にまとめた書類を手渡して来た。

私は書類にざっと目を通す。

 

 

 

【セトラプロジェクト(仮)】

 

①概要

この度の計画は昨今のジェノバプロジェクトが当初の目的と相違があると指摘を受け、科学部門で検討を重ねるも修正が困難と判断。

そのためジェノバプロジェクト当初の目的を達成するために立案された計画である。

 

②計画の準備

・この計画は、神羅カンパニー科学部門の主導とする。

・この計画は、ジェノバプロジェクトの指揮下に置かれる。

・この計画は、()()()()()()が選任した者を主任とする。

・選任された主任はこの計画にかぎり()()()()()を持つものとして扱う。

・選任された主任が計画書の作成を行いジェノバプロジェクト()()()()に提出する。

・選任された主任の管理下で実験を行い、詳細は必ず報告書を作成する。

・計画書の提出期限は[μ]―ε γ λ1985年〇月×日とする。

 

 

 

「宝条くん、これは丸投げと言う奴ではないか」

 

私は計画書を見て、これはただの見切り発車では、という疑いを宝条博士に向ける。

 

「あの時言ったではないですか、実験内容は貴方が考えると」

 

「流石にここまでとは思っていなかったよ」

 

私は全身の気が抜けていくのを感じ、ため息を吐く。

 

「見ての通り計画の立ち上げとはいっても、ジェノバプロジェクト内での話になります」

 

「前の私の時と同じで統括はジェノバプロジェクトの総責任者も兼ねているのか?」

 

「そのとおりですよ、しかし統括もお優しいですなぁ

 ()()()()()()をしていた人間にいきなり新しい計画の主任のポストを与えるとは。

 きっと貴方への出産祝いのつもりなんでしょうなぁ」

 

主任に()()()()()を負わせるのは祝いと言うよりは懲罰のような気もするが。

ただ宝条博士の言う事も一理ある。

身勝手にプロジェクトを投げ出した人間にこのポストは破格の待遇でもある。

私に拒否権はない、甘んじて受け入れようと決意した。

 

「では早急に()()()()()()()()()()である私に計画書の提出をお願いしますよ、ガスト博士」

 

「わかりました、宝条()()

 

嫌味かのように強調して伝えてくる宝条博士に、いちいち言わなくてもわかっていると言いたいのを堪えて返事をしたら、嬉しそうにニヤニヤする宝条博士を見ることが出来て、彼の人間味溢れる部分を初めて見たような気がした──。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

研究室を後にした私は、更衣室にへ行き自分のロッカーを開け白衣を脱ぎカバンの中へしまうと掛けてある上着を手に取り羽織る。

今日の白衣はあまり汚れていないが妻には毎日白衣を持ち帰るよう言われているので約束を破らないようにする。

ロッカーの中にはしっかりとアイロンが掛けられ綺麗に畳まれた予備の白衣が数着ある。

過去の私だったら洗いはしてもここまで綺麗に畳まれた状況にはなっていないだろうな。

これも妻のおかげであり、私は果報者だなと誰もいない更衣室で照れてしまう。

とはいえこれはプライベートにかぎる話ではなく会社でもそうなのだ。

逃げた私を蔑み、邪険に扱うなんてことをする人間は一人もいなかった。

無論、内心は違うかもしれないが態度に出してこないだけでもありがたいと思う。

強いて言えば社長が、戻った挨拶に伺った時

 

『長い休暇だったなガスト博士、この次はないぞ』

 

と釘を刺されたくらいかもしれない。

 

ロッカーの中に忘れものがないと確認出来たらカバンを持ってエレベーターで1階のエントランスホールへ向かう。

1階に着けば、神羅製の車が何台か展示され中央には大きく【神羅】と書かれた自社のロゴマークが目に付く。

私はその近くで立ち止まると時計を見た。

時間はもうすぐ18時になろうかとしている。

待ち合わせの時間にはもうすぐだなと、あたりを見渡せば、今日の主役が私を見つけてこちらに向かってくるところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




人事権は統括です
[μ]-εγλはFF7における暦で1985年はエアリスが産まれた年です
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