セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第15話 セフィロスのお宅訪問

研究室に立ち並ぶ培養カプセルの中に浮かぶ異形達をジッと見ていると、俺に気付いた宝条が近寄ってきた。

 

「興味あるのかね、セフィロス」

 

「別にない」

 

「そうか、それは残念だな」

 

そんなことは欠片ほども思ってないだろう、と横目で奴を睨んでいたら聞いてもないのに語りだす宝条。

 

「哺乳類、鳥類、昆虫類、爬虫類、両生類、魚類、あらゆる動物にジェノバ細胞を投与し、魔晄を当て続けた結果どうなるか観察をしているのだよ。

 どれも投与する前に比べ筋力が増大し、凶暴性が増し、中には傷の再生力が上がったものまでいるのだ。

 ただこんなモノは所詮は前座に過ぎんよ。

 本命はあっちにある培養カプセルの中だ」

 

そう言って宝条は巨大な培養カプセルを指す。

培養カプセルの中身は体の一部が異形と化してる人間の男。

この人間がある意味でプロトタイプ、実験体第壱号か。

 

「誰なんだ」

 

「まったくガスト博士もそうだが、そんなに気になるのかね。

 コレは犯罪者だよ、何をしたかは知らんがね。

 サンプルとして健康な男、出来れば体が丈夫そうな者を所望したらコレが送られてきたんだ」

 

犯罪者か、既にミッドガルの警察組織はほぼ神羅と言っても差し支えない状態だ。

奴の希望する条件ならばまずはそこから送ってくるだろうな。

少なくともこの人物は紛れもなく犯罪者だろう。

ただこの先どんどんエスカレートする要望に間に合わせるため、でっち上げられて検挙された者や社内の無能な社員、スラムの者も増えてくるかもしれない。

別に聖人を気取るつもりはないが、見過ごせないと考えるのも事実。

 

「いやいや、あの頃の私を煩わせていた余計な事から解放されてこちらに集中できるのは良い気分だ。

 これなら当初考えていた予定より()()()()()()()かもしれんな。

 ()()ガスト博士には感謝せねばならんなぁ」

 

クックックッと、何度も聞いてる微笑をまた聞かされてうんざりとした気持ちになるが、()()()()()()()という言葉は見逃せない。

それはつまりこの計画で創られた強化人間である兵士(ソルジャー)を戦いの場に出すということ。

ソルジャーとは、ジェノバ細胞を埋め込まれた後に魔晄を照射する事で通常の人間と比べ、圧倒的な戦闘能力を手に入れた存在。

ただし、誰でも成れるという上手い話でもなく、ジェノバ細胞への適合と魔晄の照射に耐えられる者でなければならない。

適性がある者の条件としては、精神力が強いという傾向があり、弱い者は適合不可となるか“魔晄中毒”と呼ばれる廃人化現象を引き起こす。

魔晄中毒とは幻覚を見るようになり、現実との区別が困難でうわ言を繰り返す状態の事。

とはいえそれは人間としての体裁を保っているのでまだマシかもしれない。

過去の神羅で隠蔽された事実の中には目の前の培養カプセルの人間のように異形となってしまった者もいるのだから。

 

取り敢えず俺はいったん思考を収め、これからの予定を伝える。

 

「宝条、前にも伝えたが俺はこれから外に出るが構わないか」

 

「あぁそれについてだが、君の行動範囲は私の一存で決めて良いと許可()()()

 なのでミッドガル内ならば自由にしてくれ」

 

「……だいぶ信用されているんだな」

 

「縛ってばかりじゃ見ることが出来ない事もあると思ったのだよ」

 

過去より交流は増えたがやはり宝条の考えは読めん。

ライフストリームで得たのは知識であって、個々の感情まではわからなかった。

だから奴が何をしたかは知っていても、何を思っていたのかはあくまで俺の予想でしかない。

既に『オレ』の時とは大きな相違が起こっている。

ソルジャーの技術確立は既に大幅に()()()()()

そしてこれから会う予定の人物が何よりの証拠。

ここから先はより注意が必要だ。

事態は悪い方に行く可能性があることも十分に考慮しなければならない。

 

「それなら、これからいちいち報告はしないがいいか?」

 

「……ご自由に」

 

それでも念のため確認をとり、宝条から言質を取ると俺は研究室を出てエントランスホールへと向かう。

エレベーターが開けば1階の【神羅】のパネルの前でガスト博士は待っていた。

俺に気付いたガスト博士が手を上げてこっちだという仕草をしてきたので、少し速足で近づく。

 

「ガスト博士、お待たせして申し訳ございません」

 

「いやいや私も今ここに着いたところだよセフィロス。

 気にしなくて大丈夫だ」

 

「外に出るという許可を貰いました。

 用というのはなんでしょうか?」

 

つい先程、外出はミッドガル内なら自由になったがガスト博士は知らない。

そのため事前に許可を取っておいてくれと頼まれていた件の結果を伝えた。

 

「あぁ君との約束を果たそうと思ってね」

 

「約束ですか?」

 

「なんだ忘れてしまったのかね、あの時は幼かったから仕方ないか。

 まぁ着いてきなさい」

 

すでに再会の約束は果たされていると思うが、他に何かあっただろうか。

俺はガスト博士は信頼しているが、流石に一言一句までは思い出せない。

とりあえず「わかりました」とガスト博士の横を付いていく事にした。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ガスト博士に連れられて着いた先はプレート上層部の伍番街。

とあるマンションの一室の前で立たされた俺に

 

「ようこそ我が家へ、さぁ入りなさい」

 

目の前の扉を開けたガスト博士がそう言って俺を自宅に招き入れた。

そう言えば最近になって神羅ビルから一家で引っ越したことを思い出した。

 

「……お邪魔します」

 

「ただいま、イファルナ。

 セフィロスを連れてきたよ」

 

中に通され、リビングに入ると同居人である嫁に声を掛けるガスト博士。

それを聞いたガスト博士の嫁は、キッチンで料理をしていた手を止めこちらに歩み寄って来る。

 

「お帰りなさい、あなた。

 それといらっしゃい、セフィロス()()

 

「あ…はい…お邪魔してます」

 

セフィロス()()などと生まれてこの方一度も、それこそ過去も含めて初めての呼び方に一瞬戸惑ってしまった。

 

「ふふっ緊張しているのかな?

 もしかして、あなたちゃんと説明していなかったの?」

 

「ちょっと驚かせようかと思ってね。

 あ、エアリスー今かえりましたよー」

 

俺に今日の用事を黙っていた理由を打ち明けた途端にガスト博士に飛びかかる存在が現れた。

二人の娘である。

 

「パパーおかえりー、きょうははやいねー

 このひとだぁれ?」

 

「私達家族の恩人だよエアリス。

 さぁご挨拶しなさい」

 

「こんばんは、はじめましてエアリスです」

 

俺にハキハキとした声で挨拶をするとペコリとお辞儀をする娘。

 

「……はじめまして。

 セフィロス……だ」

 

「さぁさぁ席に着いて、今日は家族で君を歓迎しよう」

 

ガスト博士の言葉を聞き周りを見渡せばダイニングテーブルには料理が所狭しと並んでいる事に気付いた。

料理をマジマジと見ているとガスト博士は俺の背中を押して席に着くように促す。

 

「今日は妻が腕によりをかけて君のために料理を作ったんだ。

 是非喜んでもらえると嬉しい。

 イファルナ、料理はこれで全部かな?」

 

「あとはシチューを少し味の調整して終わりよ」

 

そう言って台所に戻った嫁を見て、ガスト博士は俺の目の前に座り、グラスを差し出す。

俺はそれを黙って受け取るとガスト博士が机に置いてあった瓶の栓を開ける。

 

「これはバノーラ村の特産品である、リンゴを使ったジュースだよ」

 

「…バノーラ・ホワイト・ジュース」

 

「ほぅ、知っていたかね、すごく美味しいジュースでエアリスも好きなんだ」

 

ガスト博士が説明しながら俺のグラスにジュースを注ぐ。

いつの間にか俺の横の席にいた娘が「こっちもー」とグラスをガスト博士に向けている。

 

「さぁお待たせしました、シチューが出来たわ」

 

鍋を持ってダイニングテーブルにやって来たガスト博士の嫁がすでに用意されていたお皿にシチューを取り分け、俺の目の前に置く。

 

「お口に合うといいんだけど……」

 

「大丈夫だよ、セフィロスは好き嫌いせずなんでも食べる子だ」

 

たしかに出された食事を残すという事はないな。

ただそれは好き嫌いというよりかは栄養補給の意味合いが強い。

食事を楽しむという文化があるのは知っているが俺個人がそれを感じたことはない。

シチューが全員に行き渡るとガスト博士の隣に嫁も着席し娘に声を掛ける

 

「はい、エアリス、いつものお願い」

 

「てをあわせて、いただきまーす!」

 

娘と同じように親も手を合わせ「いただきます」というので俺も周りに合わせて真似をする。

さっそく盛られたシチューにスプーンをすくわせ自分の口に運ぶと俺は衝撃を受ける。

 

「…美味い」

 

それを聞いたガスト博士と嫁は安心したように二人そろって「良かった」と呟き笑顔になった。

 

「そうだろう、妻の手料理は世界一美味しいんだ。

 やはり、私が作らなくて正解だった」

 

「別にあなたの料理もまずいわけじゃないんだけどねぇ

 エアリスはあまり好きじゃないから、子供の口には合わないのかもしれないわね」

 

「パパのりょうりはしょっぱいのー」

 

家族(ファレミス家)の談笑を聞きながら俺は黙々とシチューを口に運ぶ。

気付けばすでにシチューは無くなっていた。

 

「セフィロスくん。おかわりはいかが?」

 

「……お願いします」

 

そう言って手を差し出して来たガスト博士の嫁に俺は空になったシチューの皿を渡す。

 

「シチューも美味しいが、こっちのパンも美味しいぞ、それからサラダにソテーに。

 全部美味しいから是非とも食べてみてくれ」

 

俺はハッとした。

料理を楽しむというのはコレの事をいうのかと。

そんな考えを抱くも興味は他の品に惹かれ、ただただすべての料理を()()()()平らげた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ではセフィロスを送っていく」

 

一人で帰れると伝えてもガスト博士は「いやいやこんな夜遅く子供を一人で出歩かせ事は出来ない」と俺を神羅ビルまで送ることを主張してきた。

頑なに言うので仕方なくお願いする。

 

「はい、気を付けて、()()()()()もまたね」

 

「ばいばーいおにいちゃんまたねー」

 

「お邪魔しました」とガスト博士の嫁と娘……イファルナさんとエアリスに挨拶をしてファレミス家を後にする。

 

 

 

――食事をしている中で何度か俺をセフィロス()()と呼ぶので呼び捨てでいいと伝えたのだが、初めは遠慮していたようで俺が気にしないと伝えればちょっと意地悪そうにでも優しく、

 

『そしたら貴方は私の事を何て呼ぶのかな?』

 

と逆に聞かれてしまった。

確かに一度も呼んだことがない、口を閉じ押し黙ってしまった俺を見かねて向こうは助け舟を出して来た。

 

『お姉さん…は流石に自惚れ過ぎね、おばさんで大丈夫よ』

 

『いやいやアナタはお姉さんでも大丈夫ですよ』

 

と隣で言ってるガスト博士は俺も見て、君もそう思うでしょ、と言いたげに目を配る。

それを見て迷った俺は

 

『イファルナさんでいいですか?』

 

『それでいいわ、()()()()()

 

と喜んだ顔をして俺の頼みを認めてくれた――。

 

 

 

「セフィロス、君を招くのに時間がかかってすまなかったな」

 

「いえ、そちらの都合もありますし、お気になさらずに」

 

ガスト博士たちが伍番街に移る前は神羅ビルで軟禁状態だった。

とてもお客を招くなんてことは出来る状態ではなかったので仕方のない事である。

アイシクルロッジから今までガスト博士以外との交流はなく、たまに見かけても会釈程度だったので、イファルナさんやエアリスとここまでお互い近い距離で話したのは初めてだった。

どうしても『オレ』の事もあり避けてしまっていたのだ。

 

「料理を振舞うという約束、思い出したかね」

 

「はい、でも博士の奥さんの手料理とは予想外でした」

 

「いやぁ私は誰の料理かまでは言っていなかったからね」

 

少しバツは悪そうに、でも嬉しそうにするガスト博士。

 

しばらくすると神羅ビルに着く前に少し話したいことがあると道中のベンチにガスト博士は腰を掛け、俺も横に座る。

 

「君がニブルヘイムで私と別れた後、戦闘訓練をしていたと聞いたのは驚いた。

 最初は無理やりやらされているのだと思ったら、どうやら自分から進んでいると聞いてさらに驚いた。

 最初は周りから自分を身を守るために必死なんだと思ったがどうやら違うようだね」

 

「………」

 

「今は大人に混じって実戦に出ている君を見ていると不安になってしまう」

 

「俺に止めろというのですか」

 

たしかにもう俺は既に実戦に投入されている。

ただそれは『オレ』の時と時期はあまり変わっていない。

 

「いや、君が望んでやっているなら私が止める権利はない」

 

「ご安心ください、俺の意志です」

 

「そうか、ただこれだけは覚えていてくれ、何かあれば今度は全力で君を守ろう。

 娘を持った今だからわかる、あの時の私は勝手な大人だった、最低だった」

 

「そんなこと…ありません」

 

その言葉は俺の本心かどうか自分でも分からない。

ただ今はそう返すしか言葉が見つからない。

 

「私は、今度こそ君の父親として振舞いたいと思っている。

 身勝手な自己満足かもしれないがね」

 

「いえ、そう言って下さるのは嬉しいです」

 

「ありがとう、セフィロス」

 

ガスト博士はベンチから立ち上がり「さぁ行こう」と俺に言う。

俺は黙ってついていく。

父親がどういうものかは知っているが、父親とはどういうものか、俺には正直まだ良くわからない。

ガスト博士が守りたいという気持ち。

俺が守る必要があると考える思考。

今の俺には頭で考えて行動は出来ても心で突き動かされるというのがない。

『オレ』から『俺』になった時知った感情は頭で理解しただけかも知れない。

『オレ』にはならないと考えるのが俺を阻害している……

 

「セフィロス、着いたぞ」

 

「あ…」

 

どうやらもう神羅ビルの目の前のようだ。

 

「ガスト博士、ありがとうございました」

 

「あぁまた来たかったら……いやまた呼ぶよ、()()だ。

 おやすみセフィロス」

 

そう言って来た道を戻るガスト博士を俺はニブルヘイムの時と同じようにただ見守っていた。

今度のガスト博士は一度も俺の方を振り向かなかった。

 

 

 

 

 




バノーラ・ホワイトが賞を取った時
すでにセフィロスは活躍していたという設定があります。
年ははっきりと分かっていませんが
その頃は少年だそうです。

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